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第一部「デジタル・クライシス白書2021」発行のご報告(全2記事)

炎上ツイートに含まれる単語、2020年の1位は「#拡散希望」 日本初の“デジタル・クライシス”研究機関による、年間調査発表

デジタル上で発生したクライシス(危機や重大なトラブル)を研究する日本初の研究機関、シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所。同研究所が、一年間の研究成果をまとめて発表する『デジタル・クライシス白書』の発行を記念して、オンラインイベント「デジタル・クライシスフォーラム」が開催されました。本記事では「第一部『デジタル・クライシス白書2021』発行のご報告」の模様を公開します。

後編はこちら

デジタル上で増加・深刻化する、危機や重大トラブル

桑江令氏:ではさっそく、第一部をスタートさせていただければと思っております。まず『デジタル・クライシス白書2021』のご報告をさせていただければと思います。

最初に『デジタル・クライシス白書2021』の概要についてでございます。近年、デジタル上で、危機や重大なトラブルといった“クライシス”が増加・深刻化してきていること。そして、今後さらなる拡大が想定され、高度化・複雑化・グローバル化することを鑑みまして、ソーシャルメディアを中心としたデジタル上の各種媒体と、クライシスの特性や傾向と論調を把握する目的で制作いたしました。

内容としては「炎上事案」や「デマ情報の統計データ」を掲載しております。後ほど詳しくお話させていただければと思います。このセッションを通じて、デジタル・クライシスに対する予防や準備を検討、または実行する上での一助となればと考えております。

では最初に「炎上発生件数」についてお伝えしていければと思っております。弊研究所では、昨年(2020年)1月に2019年度の白書も発行しておりますので、前年との比較も行えればと思っております。

炎上=SNS上で100件以上の言及があったネガティブな事象

まず前提となる「炎上の定義」ですが、SNS上で100件以上の言及があった。つまり、リツイートやリプライが一定数発生したネガティブな事象のことを炎上と定義しております。

こちらのグラフをご覧ください。2019年と2020年の「炎上発生件数の比較グラフ」になっております。黄色の部分は、コロナに関連する炎上事案をまとめております。

まず2019年と2020年の炎上件数を見ていきますと、2019年が1,228件だったのに対して、2020年が1,415件。昨年との対比だと15.2パーセントの増加になっておりました。これは1日平均にしますと、約3.9件の炎上が発生していることになります。

そして、そのうち新型コロナウイルス関連の炎上が158件。全体の11.2パーセントを占めておりました。これを見ても、コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、炎上件数を押し上げていることが言えると思います。ちなみに昨年、最もコロナ関連のネガティブなツイートが多かった日は、志村けんさんがお亡くなりになった3月29日と30日になっておりました。

そして、(初の緊急事態宣言や感染者が拡大した影響で)日本に社会的不安が増大した4月の炎上発生件数は245件でした。昨年と比べますと、約3.4倍も増加したことが見て取れます。つまり、社会的不安が炎上件数の増加に直結していると言えるのではないかと思っております。

では、なぜ大きな社会的不安があったにも関わらず、炎上発生件数が前年比15パーセント増にとどまったのかと申しますと、昨年の後半から、企業側が積極的なPRやプロモーションを控えていたことが挙げられます。そういった状況の中で、15パーセント増になってしまったことに留意しなければいけないかなと考えております。

「炎上」をテーマに記事化するメディア自体が増加している

では次の「炎上事案を放送・記事化するメディア」について見ていきたいと思っております。炎上事案が発生してSNSで拡散した後に、メディアがその情報を放送・記事化したか? について調査したところ、2020年は(炎上事案を記事化したメディアのうち)98.7パーセントをデジタルメディアが占める結果になりました。昨年が78.6パーセントでしたので、デジタルメディアの数値が大幅に増加をしていることが挙げられます。

また、炎上事案を放送・記事化したデジタルメディアの数は、2019年は合計13個でしたが、2020年は44個と約3倍に増えております。これは「炎上をテーマに記事化をするメディア自体が増加している傾向がある」と感じております。

続いては「炎上事案が発生してから放送や記事化されるまでの速度」に関する調査結果になります。グラフを見ていただくとわかるとおり、24時間未満で放送・記事化されたものが、ほぼ半分の48パーセントになりました。

2019年が21.4パーセントでしたので、倍以上のスピード感になっています。炎上が発生してから放送・記事化に至るまでの速度が格段に早まったことが、お分かりいただけるのではないかと思っております。

炎上ツイートに含まれる単語、2020年の1位は「#拡散希望」

続いては「炎上事案と関連性が高いキーワード」の調査結果でございます。まず炎上事案のツイートに含まれる単語を分析した結果が、こちらになります。

2020年の1位は「#拡散希望」となっており、2位が「#炎上」3位が「#korekore19」というワードという結果でした。2019年の場合は、1位が「#炎上覚悟で嫌いなものを言う」、2位が「#炎上」、3位が「#拡散希望」でした。

これを見ていただくとわかるとおり「#拡散希望」というハッシュタグを付けて投稿する方は、世の中に拡散させたい気持ちで投稿しているわけですね。つまり、いちユーザーが「世間に投げかけたい」「拡散させたい」という思いを持って投稿していることが、実際の炎上につながっていると言えるように思います。

2020年の新型コロナウイルス関連から申しますと、9位に「#東京脱出」、19位に「#新型コロナウイルス肺炎」がランクインしております。また「#korekore19」という、YouTuberのコレコレ氏を指した言葉もありました。YouTuberを筆頭に、SNSや動画サイトを使った生配信が炎上のきっかけになるケースが増加していることも読み取れると思います。

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