血液型が変化する可能性

マイケル・アランダ氏:どんな人にも、生まれながらの血液型があります。AB型Rh陽性、O型Rh陰性などがありますが、何であれ普通は終生変わりません。

しかし例外もあり、血液型は時に変化します。原因の一つに、骨の中の細胞が関係してきます。

一般的な血液型の分類法は、「ABO式」と「Rh式」です。これは、赤血球表面の抗原(免疫反応を引き起こさせる物質の総称)、別名「マーカー」の違いによるものです。血液型がA型の場合はA抗原、B型はB抗原、AB型は両方の抗原を持ち、O型はいずれも持っていません。

さらに陽性(+)や陰性(-)という符号は、「Rh因子」というたんぱく質の種類を示しています。Rh因子を持っていることを陽性、持っていないことは陰性を意味します。

いずれにせよ、血液型は通常であれば、生まれ持った型がそのまま保持されます。

自分の血液型は、知っておいた方が良いものです。人体は、輸血などで自分の血液型に適応しない血液を認識すると、重篤な副作用を起こす危険性があるからです。

そのため、血液型が変化する可能性があれば、ぜひ把握しておく必要があります。

細胞移植で患者の血液型が変化

現時点で知られている代表例が、「造血幹細胞移植」です。造血幹細胞はHSCと略記され、主に骨の中で見られ、全身に存在します。がんやその他の病気で損傷したり機能が失われて、新たに移植が必要とされる場合があります。移植する造血幹細胞は他者の体から得られ、ドナーから提供されることもあります。

このような移植が行われると、患者の血液型が変わることがあるのです。

要点はこうです。造血幹細胞が患者の体内に定着すると、赤血球などの大切な細胞を生成し始めます。異なる型の血液を生成する遺伝子を持つ他者から造血幹細胞移植を受けた患者は、異なる型の血液がどんどん生成されるようになるのです。

この仕組みがぴんと来ない人でも、造血幹細胞移植の一つである「骨髄移植」は聞いたことがあるでしょう。この移植は名前のイメージとは異なり、ある骨の内部の組織をそっくり入れ替えるわけではなく、造血幹細胞を移植することを指します。例えば、がんに侵された造血幹細胞だけを入れ替えるのです。

血液型を通して再認識する、人体の驚異と複雑さ

さて、前述したように、体は適合しない血液細胞を攻撃することがあります。そのため、「造血幹細胞移植のドナーは、患者と同じ血液型である必要があるのではないか」と考えてしまいますね。

しかし、実はそうではありません。臓器移植とは異なり、造血幹細胞移植ではABO式血液型は考慮に入れられません。その代わり、「ヒト白血球型抗原(HLA)」の型が同じである必要があります。

体は、A抗原、B抗原などと同じく、HLAの型で細胞が異物かどうかを判別します。そして造血幹細胞移植においては、赤血球上の抗原(A抗原、B抗原など)よりも、HLAの方が重要になってきます。

造血幹細胞はやがて赤血球になりますが、まだA抗原、B抗原を持っていません。しかしHLAは持っています。これが不適合の場合は、合併症を引き起こしてしまうのです。

症例によっては、移植を行わないよりも、移植を行って血液型の変化を受け入れた方が良い場合もあります。この仕組みは、人体の驚異とその複雑さを再認識させてくれます。下手に抵抗するよりは、仕組みを理解した方が早いのです。