Uniposのポイント制度は内発的動機? 外発的動機?

斉藤知明氏(以下、斉藤):こういう質問もいただいていますね。

「Uniposのポイントは外的要因でもあるかなと思ったんですが、スタート地点は外的要因がある程度は混じってもオーケーなのでしょうか?」。

兼清俊光氏(以下、兼清):これね「たくさんお金がもらえるからがんばれる」って本人が意味づけていたら、外発的動機ですね。「自分がやったことが周囲に認められて、さらにチャレンジしよう」と自分で意味づけしたら内発ですね。外側に置かれるUniposのポイントもなんでもそうなんですけど、基本的にはそこには意味は付与されていないので、自分で意味づける力が高まったら外発じゃなくて内発にできます。

ただし意味づけをする力が弱い集団の人たちが、インセンティブで相手を動かそうというマインドセット、カルチャー、フィロソフィーで使っていたら外発的ですね。それも同じで、Uniposも単なる道具ですからどう活かすかっていうのは使う人次第、使う組織次第ということだと思います。

斉藤:Googleさんも、ピアボーナスってやってらっしゃるじゃないですか。「一人ひとりの行動に対して従業員が送れる」っていう。だいたい四半期に一度「1万円くらい×3」くらいの権利を持っている中でやってらっしゃるというところも、すごく重要だなと思っていて。彼らの給与レンジからして1万円という金額になると、年収の約0.1パーセントくらいですと。

Uniposは1ポイントあたり1円とか2円くらいで、月1,000円、2,000円くらいに制限しちゃっているんです。たまに10円とか20円でやりたいって言われて「いや、それやめたほうがいいと思いますよ」みたいな話とかは、まさに今の兼清さんの観点かなと思いました。コーヒー1杯100円分もらって、飛び上がるほど嬉しいっていうことはなくてですね。メッセージのほうがやっぱりうれしいんですよ。

SDGsのターゲット169項目から、ポイント寄付先を選択できる

兼清:そうそう。お金よりもポイント、っていう言い方でいいと思うんですけど。あとお給料にどういうかたちで反映させているか僕は知りませんけど、ある人は社内通貨とか、もしくはなにかの物っていうんですかね。

行動経済学でいうところの「マーケットノーム」という市場規範に思考が入らなくて、社会規範、ソーシャルノーム、友情や愛、仲間のためとか社会のためっていう意味が入るようなことが選択できるんだったら、Uniposの“いいね”の数に対するポイントの転換の仕方っていうのは、とてもいいなと思いますけどね。

もしそういうのが選べるんだったら。わかりませんけど、例えば「ある得点までいったらバーベキューセット」とかそういう感じ。そうすると「家族のことを大切にしてほしい」というメッセージングにもなったりするじゃないですか。

斉藤:はいはい。

兼清:そういう感じだとよかったりするのかな? って思いますね。

斉藤:まさに「SDGsプラン」と銘打って、自分たちが会社として大事にしている……(SDGsのターゲットが)169項目あるじゃないですか。その中でも「どの項目が重要だろう?」と選択していただいた寄付先に、自分のポイントを寄付できる。もしくはギフト券で受け取る。というのを選べるようにしているプランもご提供していて。ここでは紹介してないんですけど。

そっちのプランにした時って、自分が寄付するっていうのを選ぶんですよ。選んで、自分の貢献がそこにつながっていって、提供したポイントが寄付につながっていって、それが「こういう貢献になりました」っていうレポートをもらうという、一連の体験を用意している。これね、なかなか素敵なんですよね~。

自分自身が「ここに寄与している」というのを実感できるのは素敵なんだけど、なかなかそこに対してはまだハードルが高いから。まずは感謝を送り合うところから、ピアボーナスのプランのほうでご選択いただいているところ多いかな? っていうところが今の実態で。徐々に徐々に移していけるといいな、っていうのは虎視眈々と思っているところではありますね。

生産現場ほど、自分たちで仕事に意味づけることが大切

斉藤:次の質問は「企業においては内発的動機でよくなる業務だけではなく、フォードの例であったように外発的動機で動かしたほうが効率としてはよい業務が混在している場合があると思います。その場合『あのチームは自由に仕事ができてうらやましい』『我々は毎日決まった仕事しかしていない。利益が出るのは我々なのに』というような、外発的動機で動いているグループからの苦情が出る場合があると思います。どのように対処するのがよいでしょうか?」というものです。

兼清:ルーチンに近いような仕事の人たちが、自分たちがやっている仕事を意味づける力が見出だせていない、ということを言っているんだと思うんですね。イメージわかりますか? どんな仕事にも価値はあるわけで。その価値は自分で見い出だすものですよね。

3年くらい前からずっと、組織全社の変革をお手伝いしているんですけど。高卒の新入社員の人が工場の現場に配属される時も、新入社員ですからまだ仕事を始める前なんですけど「1年後に自分はどうなっていたいか?」というのを、1年後の現実的達成状態=ビジョンをシナリオで書いて、それをシェアードビジョン、共有したのをたまたま聞いていたんですけど。

「朝目が覚めてすっきりと気持ちよくて、身支度を整えて『今日も会社に行って、世の中の人たちのためになる仕事をするんだ』って言って家を出ていく」って書いているんですね。やっていることは工場で生産ラインにいるんだけど、自分の仕事は社会のためになることをやっているんだっていう、意味づけを持っているわけですよね。

だから彼は新入社員の時に「同じことが繰り返されている」という認知に入ってなかったんですね。まだ仕事を実際にやる前で。そして、やったあとも変わってなかったんですね。そういう意味では、工場とか生産現場みたいなところほど「関係の質」「思考の質」を高めて、やっている仕事の意味を自分たちで意味づけていったり、自分の成長につながっているとか、会社の貢献につながっているとか、僕らがいなかったら社会に価値を提供できないよね? っていうのを自分たちで見つけられる力を付けていくということが、質問者さんの組織においてすごく大事な取り組みになるんじゃないかなって思いますけどね。

斉藤:『新幹線 お掃除の天使たち』というローランド・ベルガーの遠藤(功)さんが書いた本が、大好きなんですよね。

新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?

兼清:同じ、同じ。

斉藤:ですよね。もしよかったら調べてみてください。テッセイさんという、新幹線の清掃をされてらっしゃる企業さんの本なんですけど。7分間で新幹線をきれいに清掃できて、パパッと1分の遅延も起こさないでやり続けている会社の物語なんですけど。彼女たち、従事されてらっしゃる清掃スタッフのみなさんは「7分でできている世界で一番のクオリティだ」ということで、誇りを持って働いてらっしゃるというストーリーで。

やっていることは「7分間の掃除を毎日毎日繰り返している」っていうことなんですけど。どうやって誇りを持っていったか? というストーリーなので、ぜひぜひ。僕はすごく好きで。遠藤さんともお話した時にお伝えしたんですけど。いいなぁと思っているので、よかったら読んでみてください。

「思考の質」と「行動の質」はどちらが先にある?

斉藤:では次の質問。「『関係の質』『思考の質』『行動の質』と進化を伝播させていく、その終着点が共創行動であるとのことですが。この中で、変革への第一歩が『関係の質』の進化であることはまったく同意なのですが『思考』と『行動』はどちらが先か、少し違和感があります。『行動』があったからこそ『思考』を変えるという考え方も、コーチングの学びからあるんじゃないかなと思っているんですけど。どちらが先なんでしょう?」ということですね。

兼清:Ocapiという、みんなで回答するとチームの実態が“見える化”できるWebアプリがあります。例えば、外資系のセールスの人たちとかマーケティングの人たちとかだと「関係の質」がすごく低いのに「行動の質」がやたら高い、っていうのがあったりしますね。「自分たちは自分でやってるから」とかですね。「周りの関係に左右されない」みたいなのがあったりするんですけど。

じゃあ「思考の質」がどうなっているかというと、それは人によってバラバラです。このモデルは僕らが頭で考えたんじゃなくて、いわゆるパターンランゲージを使って3万人の変革に取り組んできた人たちの「小さく生み出した変化」というパターンを記述化して、それを並べていって、そのグラフを作り出していったんですね。概念で作ったものじゃないんですよ。

それを今度は3万人を超える人たちに、僕らが変革していないところの人たちに回答してもらって、解析をかけたんです。解析をかけて、それを日本人だけでなく、アメリカ人にも実施してエビデンス取っています。

頭で考えて「こういう順番じゃないかな?」って作ったんじゃないので「そうじゃないんじゃないか?」っていうのに関しては大きな潮流です。ただし小さいチームとか、小さい単位で見るとバラバラです。ただ5,000人とか1万人の会社全体の動きは、この「関係」「思考」「行動」で縦に進化しながらスパイラルアップしていく、というのは出ているんですね。そういうふうに考えていただけたらいいかなって思います。

斉藤:ありがとうございます。