2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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赤松健氏(以下、赤松):じゃあ、次!
小禄卓也氏(以下、小禄):あはは(笑)。
赤松:だってもう45分だもん(笑)。
小林琢磨氏(以下、小林):これね、1時間じゃ足りないやつ(笑)。
小禄:次いきましょうか。「漫画家の生活問題」というところでですね。ここも赤松さんから。
赤松:まず小林さんは、ジャンプとかでアンケートが低いから、もしくはコミックスが売れないから打ち切りっていうのはどうですか?
小林:僕は打ち切りに関しては、あって然るべきだと思っています。これは「商業誌でやるなら」っていうことです。要は商業誌で連載をしていくのであれば、打ち切りっていうのはすごく必要なことですし。
菊池(健)さんという方がやっていた「トキワ荘プロジェクト」っていうのが前にあったんですけど。(菊池さん)が言っていた「あなたに必要なのは締切です」っていうキャッチコピーでやっていて。(自分は)2年間しか、そのトキワ荘にはいられなかったんですけど。そういった“区切り”を決めるのはすごく大事なことだと思うので、打ち切り自体は絶対あるべきかなとは思っています。
ただ「打ち切りになった作品は、もう2度と連載しちゃダメだ」とか、そういうのは間違ってて。今だと打ち切りになった作品を、例えばそのあと個人で連載していくとか。そういうのはぜんぜんありじゃないかなとは思います。
赤松:出版社メインでやっていると、まず1個連載が終わったと。『ラブひな』終わったあと『魔法先生ネギま!』まで1年あったんですけど、ネームを持っていくわけですよ。それでボツるわけですよ。
小林:え、赤松さんでもボツるんですか!?
赤松:『ラブひな』は60回ボツったから。
小林・小禄:えぇ!?
赤松:(週刊少年)マガジンは、(新連載の会議に)3回までしか同じ漫画は出せないんですよ。担当に60パターン目のやつ書いて「よし、出すか!」「ダメだった」って。2回目出して「またダメだった」みたいなのがあって。
それで「もうほかの雑誌に行きますよ」って言ったら「まあ待ってくれ。たぶん当たるから!」って、編集長まで来て「次で通すから、ここだけ直して」っていうので3回目でようやく決まって『ラブひな』は大当たりしたんですけど。
小林:『ラブひな』はもう大成功、大ヒットですよ。
赤松:なんだけど、その間のネーム代金っていうのはないんですよ。ネーム代金はないし、連載して売れなかったら1、2巻で打ち切りでしょ? 終わりでしょ? そのあと別に退職金もなにもないわけですよ。こういうのはね、すごく「使い捨て感」はあるの。
小林:それは同意見ですね。そこはやっぱり直していかなくちゃいけない部分なんですけど。
赤松:使い捨てな代わりに一攫千金なんですよ。我々としては「使い捨てでもよくて、一攫千金を」なのか、それともアニメーターさんみたく、ある程度ちゃんと……安いかもしれないけど決まってて。
小禄:安定的なベーシックインカム的な。
赤松:「当たっても当たらなくても、その代金はもらえる」ってシステムのどっちがいいのかっていうと、たぶんほとんどの漫画家は「使い捨てでもいいので一攫千金がいい」って言うんですよ。
小林:言うと思います。
赤松:だからいいんですかね?(笑)。これね。
小林:すごく難しい問題で、今の話は打ち切りからまた別の問題になってるじゃないですか。論点がちょっとズレちゃったんですけど、打ち切りは僕はあって然るべきだと思うんですけど。
ただ連載準備前に何度も何度も、半年とか1年間とかネームをやらせてボツになってとか。「これって1年間、漫画家さんはどうやって食っていくの?」みたいな。霞食って生きていけばいいの? みたいな。当然それはないから、そこはなにかしら新しいことというか、考えていく……。
赤松:ベーシックインカムみたいな?(笑)。
小林:ベーシックインカムみたいなのは、あってもいいんですけど……
赤松:ネーム期間中はベーシックインカムあるの?(笑)。
小林:ベーシックインカムは絶対無理なんです。絶対無理なんですけど、だからこそ今だとパトロンサービスっていうのがあるんですよね。だからそういう人たちは、まずナンバーナインを使いましょうって思いますし。
小林:ナンバーナイン以外にも、例えばpixivFANBOXだったりとか、noteだったり、ほかにもファンティアとかいろいろあるんですよね。そのボツになったネームを、例えばpixivFANBOXで公開すればいいんですよ。例えばですけど。
小禄:ファンつけて収益化をまずやって……。
小林:ネームは誰のものかって、出版社のものではなくて作家さんのものなんですから。
赤松:まぁね。
小林:それをどう使おうが自由なわけですから。せっかく書いたものをそのままボツにするのはもったいないので、それをpixivFANBOXにして「100円払ってくれたら見られますよ」とか。
赤松:たまに「打ち合わせのネームも、電子書籍会社に属する」みたいなところもあるみたいですけど(笑)。
小林:えぇ!? そんなこと言う人いるんですか?
赤松:ありますよ。「アイデアも全部会社が持ちますよ」って。
小林:えぇ!? そんな会社ないよ!
赤松:あるある(笑)。
小禄:それはそれであれですね。契約書をちゃんと見なければいけない、みたいな罠はありそうですね。
赤松:ちゃんと契約書に書いてある。
小林:あと最近、いいじゃないかと思ったのは……これ売れてるというか、連載されている方じゃないとダメなんですけど。それこそ大リーグのイチローさんって、シアトル・マリナーズで活躍されていた時にめちゃくちゃ高い年俸だったんですけど、それをあえて半分とかしかもらわなかったんですよ。もらわなかった分の給料を、自分がプロ野球選手を辞めたあとに10年かけて払ってくれ、っていう契約にしたんです。
赤松:あ~、聞いたことある!
小林:これめちゃくちゃ頭良くて。漫画家さんも例えば、連載してる時って最初はけっこう生活苦しいかもしれないですけど、途中からは印税入ってきて楽になってくるじゃないですか。
赤松:そう。あと必要経費がないから、すごく税金高い。
小林:そうなんです。税金を抑えるためにしてるんです。
赤松:あ~そっか。なるほど!
小林:仮に原稿料が2万円だとしたら「いやいや、今は5,000円でいい。その代わり残りの1万5,000円はプールにしといて、自分が連載が終わったあとに10年かけて払ってくれ」と。
赤松:ある程度わかったらアリだ、それ。
小林:そうすると節税にもつながるし。
赤松:なるほど。それ、すばらしい~。
小林:ただ出版社がやってくれるかですけどね。
小禄:出版社のみなさん、どうですか?
赤松:『ラブひな』当たった時、法人化してなくて税金3000万円以上で。(笑)
小林:これ僕ね、すごくいいんじゃないかなと思ってるんですよ。ナンバーナインはこれやってもいいと思ってるんですけど、出版社が……。
赤松:それかぁ。
小林:でもよくないですか? 赤松さん。節税にもつながりますよ。
赤松:基金がそういうのがあって。それがなくなっちゃったとか困るから。
小林:もちろん、もちろん。
赤松:でもそれ、すばらしい。
小禄:それがあれば、次の連載準備期間中のお金も、ある程度は担保される。
小林:そうそう、その1年間に。
赤松:これあれだ。鬼滅の先生とか諫山(創)くんとかね(笑)。急に……
小林:赤松さん、それ「©️ナンバーナイン小林琢磨」って言ってくださいね。
小禄:どれくらいの基準なのか? とかはありますけどね。
赤松:平均課税とかいろいろあるけど。へ~、おもしろい話。
赤松:もうあと(残り時間)5分じゃねぇか!
小禄:なにかあります?
赤松:俺からいいのかな。質問して? ナンバーナインは二次創作はやらないんですか? オリジナル同人誌のマネタイズはなんか……。
小禄:はい。オリジナル同人誌のマネタイズはやりました。
赤松:二次創作は手出さない?
小林:二次創作は、うちはNGにしています。
赤松:なんで?
小林:明確な理由がありまして。うちは取次さんを通して、日本中の150のストアに配信させてもらっているんですけど。二次創作は当然、配信しているストアさんがピッコマだったりとか、LINEマンガさんだったりとか、Kindleとか、コミックシーモアとかに出しているんですけど。そこらへんの公式ストアに配信させていただいているので、二次創作はできない。
赤松:それは正論ですよね。
小禄:なんで赤松さんそんな話を?
赤松:二次創作、先週炎上したんだけど。二次創作が嫌いな昔の人が、けっこういるんですよ。
小林:あ~、いらっしゃいますね。炎上してましたね。炎上というか、話題になってましたね。
赤松:それは聞いてみれば確かにそうで、本当にひどいカップリングのやつもたまにあるんですよ。「これ動物だろう!」とか、そういうのもあって(笑)。
小禄:まあ、ありますね。探せばね。
赤松:それをわざわざ作者に届けに来るっていって(笑)。それ届けちゃダメだろう、本人にとか思ったけど。
小林:あはは(笑)。
赤松:私の頃はね。『ラブひな』の頃は、テレカですよ、当時。私が行ってテレカを渡して「ありがとうございます」って言うと、向こうも土下座するみたいな(笑)。そういうのはいつまでもコソコソやるのは嫌だから「ガイドラインを作って、公式にしてよ」みたいな作家さんもいるんだよ。
小林:赤松さん、やられてますもんね。
赤松:コソコソやるのが嫌だっていう作家さんもいると。その時に公式化して、もしそれが全世界に……特にBLなんかフランス人の方とか大好きだからね。公式化して、マネタイズしたらすごくいいんじゃないかなと思ったんだけど。
さっき聞いたら、やっぱり海外に行かないっていう話だったので。この話題は別にいいかなっていう感じがするんですけどね。
赤松:今日は意外な話を聞いて、使えないネタがずいぶん出ちゃった。
小禄:でも聞いていただいていいですよ。ちなみに僕ちゃんと仕事してるんですけど、タイムラインを見てて。経営者視点と漫画家視点の違いが、ある意味で見えて興味深いですね、だったりとか。お金のプールのお話に関しては「10年出版社が潰れない前提だよね」みたいな話とか。
小林:あ、そうそう。
小禄:やっぱり、ちゃんとシビアに見た時にそういう意見とかがあって、興味深いですね。
赤松:大手出版社は、漫画があるとことに限っては増収増益をめっちゃ続けてるから。
小林:まあ、小・集・講が潰れることは100パーセントないです。
赤松:漫画がない出版社は、けっこう今、ヤバい。講談社系だと光文社とか漫画がないから。
小林:今日出てましたね。ランキングが。発行部数ランキングみたいなのが出てて。集英社がコミックでいうと50パーセントくらいあるのかな。全出版社の中で。2位が講談社で、3位が小学館で、4位がスクウェア・エニックスかな。
赤松:全体として盛り上がるんですよね。私、今回ダウンロード違法化の時に最後、(集英社の)堀内(丸恵)社長と(講談社の)野間(省伸)社長と一緒に飲んだんだけど。
小林:うわ、すごい。
赤松:「鬼滅のおかげで本当に全体が盛り上がって、ついでに講談社のも売れたのでありがとうございます」って堀内さんに野間さんが言ってたけど。そのあと堀内さんは「いやいや、進撃の時は本当に助かりました。本当に全体が盛り上がって」って。ケンカはしないです。誰かが売れるとついでに売れるんですよ。業界がバーっと盛り上がるからすばらしい。鬼滅のおかげで本当に助かってます。
小林:そうですね。
赤松:嫉妬とかではないですよ。ここまで来ると。
小禄:それこそ、小学生の方とかが横読み漫画に親しみを持てるようになる、みたいなのは本当にすばらしいなと。
赤松:本当すばらしい。
小禄:一応、生活問題というめちゃくちゃシビアな話。「漫画家さんが健康診断とか受けない」みたいな問題とか。
小林:大事なんですよね。
赤松:出版社の編集者は受けるんですけど、漫画家に受けさせるのはなかなか難しい。その前に「締切守れよ」っていう話になっちゃうから。
小林:でも僕は本当に、漫画家さんは健康診断を受けて欲しいんですよ。
小禄:人生の締切が……。
赤松:血液検査くらいはね。
小林:1回、僕らのナンバーナインでも漫画家さん向けのサービスで「健康診断サービスやろうよ」ってしたんですよ。「めちゃくちゃいいね」ってなったんですけど。そのあとに漫画家さん10人20人くらいにヒアリングしたら「めっちゃいいけど面倒くさい」って言われて。
赤松:そうです。時間あっても行かない。それだったら休むし。
小禄:休むし(笑)。
赤松:漫画家協会のやつ(文美保険)では、無料で人間ドックが受けられるシステムがあるんですよ。なのに行かないです!
小林:そう!
赤松:それは漫画家の“性(さが)”としか言いようがないんですよね。
小禄:性で片付けていいんですか(笑)。
小林:本当に漫画家さんこそ、健康診断に行ったほうがいいんですよ。
赤松:漫画家は、けっこう若くして死んじゃう人たちが多くて。
小禄:本当にね、それだけは悲しすぎるんですよ。なんとかしたい。
小林:本当に健康診断はしてほしい。
赤松:そこはね、なんとかしたいとは思ってますよ。
小林:それこそ漫画家協会で、漫画家協会に入っている人の条件として「年に1回は必ず健康診断を受ける」とか。
赤松:率先して、まず松本(零士)理事とかが行かなきゃいけない(笑)。
小禄:はい、じゃあそんな感じですごく楽しい話題が。
赤松:ほらぁ、時間足りないから。
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