2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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小禄卓也氏(以下、小禄):じゃあ次のテーマにいきましょうか。テーマ2つ目「電子書籍時代の漫画の価値」というところですね。
赤松健氏(以下、赤松):価値ってあれですか? 定価のことでいいんですか?
小禄:値段も含めてですね。これは赤松さんと事前打ち合わせした時に、電子書籍の価格についていろいろ言いたいというか、ディスカッションしたいみたいなことがあったので、ちょっと入れさせていただきました。
赤松:再販制度(再販売価格維持制度)というのがあって「日本中どこでも、同じ値段で漫画を売らなくちゃいけない」みたいな紙の時代があったわけですけど。電子書籍の時代には、再販制度は通用しないんです。
小禄:適応されない。
赤松:そこに関して、ナンバーナインさんはなにか考えているんですか?
小林琢磨氏(以下、小林):それは考えてますね。僕らとしては……僕らというかナンバーナインと言っていいのか、個人的意見と言ったほうがいいのか。これ、どっちで言ったほうがいいですか?
小禄:とりあえず言っていただいて大丈夫です。気にせず。
小林:じゃあナンバーナインとしては、電子書籍はもっと自由に設定すべきかなと思っています。
赤松:値段ね。
小林:値段も。もっと言うと、ページもですね。
赤松:あ~。
小林:紙の本の場合はどうしても、ページ数がある程度ないと単行本として販売できない。
赤松:200ページくらいね。
小林:200ページだったりとか、ジャンプコミックスだと180ページだったりとか。ひと昔前の某出版社さんだと「220ページないとダメ」とか、いろいろあったんですけど。電子書籍だと、言っちゃうと20ページでも8ページでも販売できるんですよ。ってなった時に、紙の本と同じ金額で出したりとか、紙の本のページ数と合わせて出すっていうのは、ちょっとナンセンスかなと思っています。
例えば今、僕らナンバーナインだと『異世界行ったら、すでに妹が魔王として君臨していた話。』っていう漫画をオリジナルで作っているんですが、これは単行本を1巻80ページくらいで出しているんですよ。
これ紙じゃ絶対できなくて、電子書籍からやっているんですけど。通常の半分くらいのページ数にして、価格も半分くらいの250円くらいで販売しているんですが、けっこうスマッシュヒットしているんですよね。
こんなかたちで、価格をけっこう自由に決められるというのは電子書籍の良さかなと思っているので。価格は漫画家さんのほうでいろいろ検討して決めていくっていうのが、いいんじゃないかなと思っています。
赤松:過去の漫画に関して、同じページ数で同じ大きさでの場合はどうですか?
小林:これは非常に難しいところなんですけど、個人的には少し安くしていいかなと思っています。というのも、個人的な考えとしてなんですけど、とにかく漫画って多くの人に読んでもらうべきだと思っているんですね。1人でも多くの人に読んでもらう。
電子書籍のいいところは、紙だと絶版になっちゃって読めない漫画とかも電子書籍だと読めたりする。もっと言うと、読んでない人からすると10年前の作品も20年前の作品も、その人にとっては新作なんですよね。そういったかたちでいうと、価格を下げすぎるのはよくないとは思います。
ただ電子書籍って、やっぱり紙の時とは違って原価が紙よりかはかからないというところもあるので、もっともっと多くの人に読んでもらうためにも価格を少し下げていくっていうのは、いいことなんじゃないかなと個人的には思います。
赤松:そこのところなんですけど。出版社にその意見はもちろんあるんだけど、本屋に対してすまん(申し訳ない)のでできないんですよ。ここはどうですか? そういうこと言う人は、みんな本屋を無視してる。
小林:いや、そういう話するとちょっと炎上しそうなので非常に難しいんですけど(笑)。
赤松:出版社にとって本屋はもう糟糠の妻みたいなもので、ずっとやってきたあれだから。「もういらねぇよ」っていうことはできない。
小林:いやいや、僕はですね、紙と電書って違うものだと思っていて。
赤松:内容同じじゃないですか。
小林:いや、だからわかりやすく言うならば、ラーメンと蕎麦みたいなものなんですよ。どっちも同じ麺類なんですけど、蕎麦とラーメンってぜんぜん違うじゃないですか。電子書籍と紙の本も同じようなもので。ラーメンと蕎麦って“食べ物”っていうものでは同じですけど、紙と電子書籍ってラーメンと蕎麦くらい違うんですよ。
もちろんラーメンが売れまくると、相対的に蕎麦を食べる人は減るかもしれない。でも蕎麦の文化はなくならない、って思っています。
赤松:もう1個、例えば『ワンピース』はめっちゃ売れるから高く、もしくはいっぱい売れるから安く。計算式で最適な価格がたぶん出る、と。だから売れないものは高くするのか、売れないから安くするのかわからないけど。みたいな計算式があったとして、それが計算で求められるとしたら実行したいですか?
小林:実行していくのは、普通に考えて当たり前のことじゃないですか?
赤松:そうなんだけど。漫画家から言わせると、同じ雑誌に載ってる『UQ HOLDER!』と久米田康治の作品があったとして……。
小林:なんで久米田さん(笑)。
赤松:俺のが奴のより……奴のが500円で私のが200円だったら「ヤロウ!」っていうことになるんですよ!(笑)。そこはね、漫画家側は飲めないんですよ。同じフォーマットだったら同じ値段にしてほしいな、それはなんとなく恥だからっていうことで。儲からなくても同じ値段みたいな(笑)。
小林:でもそれは、もちろんそういった考えがあるのは普通のことだと思いますし。ただ、そういうふうに思わない方もいらっしゃると思っていて。選択肢が1つしかないのが問題かなと思うんですよね。
大切なことは、もちろんみんな一律にしようっていう考えもあってもいいと思うし。「いや、俺は気にしない」と。「赤松さんは500円だけど、俺は1,000円で出したい」とか「赤松さんは500円だけど、僕は250円で出したい」っていう方も、いらっしゃってもいいと思うんですよ。
その時に「業界として500円じゃないとダメ!」っていう考えしかないと、それは可能性というか、多様性を失ってしまうんじゃないかなと思うので。もちろん「500円で統一しましょう」って方々がいてもいいし。「いや、私はもっと多くの人に見てもらいたいから、250円にしたい」という方がいてもいいかなとは思う。
赤松:その方法論もわかるんだけど、印税率っていうのが漠然と決まっているんですよ。今、紙だと10パーセントじゃないですか。電子書籍も漠然と決まってて。そこも本当は変えられるはずなんですよ。
小林:僕らは変えてますから。ナンバーナインは先ほど(イベントの)冒頭で小禄が説明しましたけど、ナンバーナインに入ってくる金額の80パーセントを印税で渡していますから。これって、出版社さんに言うと「何やってんだ」っていう金額かもしれないんですけども(笑)。おっしゃるとおり、変えられるんですよ。だから漫画家さんも選べるんですよ。
ただ、僕らはなんで80パーセントも戻しているかというと、原稿料を払ってないからです。出版社さんはきちんと漫画家さんに最初にリスクを取って原稿料を払っている分、多く印税を取るというか。取るっていう言い方が、ちょっと語弊がありますけど。
リスクを取ってる分、戻せる印税が低くなる。これは当たり前だと思うんです。逆に僕らはリスクを取っていないというか。原稿料というリスクを取っていない分、当然ですけど多く戻すことができる。
だからこそ漫画家さんも、いろいろ選択肢があると思うんですよ。「まず原稿料をしっかりもらいたい」だったら、やっぱり出版社の商業誌で連載をして。でも商業誌で連載すると、(印税率は)どうしても紙だと10パーセント、電子は出版社によって違いますけど10~15パーセントかな? みたいな。
でも自分でnoteとかTwitterで連載して、それをナンバーナインに預ける。そうすると80パーセント戻ってくる。これは選んでいくことがいいと思っているので。なのでページ数も価格も印税も、選んでいけばいいんじゃないかなと。
赤松:それって経営者的なあれがいりますよね。描くことだけに集中させてくれないとかですよね。
小林:なので僕らのようなエージェントに頼ってほしいなと思いますし、大事なのは、漫画家さんにそういう可能性があるよって知ってほしいということです。大事なのは本当、知ることなんですよ。やっぱり漫画家さんは漫画を描くことに集中する、これすごく大事なんですけど、出版社に持ち込むしか漫画家さんとしてデビューできないかというと、そうじゃない。
もちろんこっちは主流ですし『鬼滅の刃』だったり『ワンピース』とかもそうですけど、大ヒット、世界的ヒットを目指そうと思うんだったら、絶対に出版社に持ち込んだほうがいいです。
でも、それだけじゃないっていうのはわかってほしいし、大事なのは意見とかが分かれた時に、Aの意見だけじゃなくてBの意見も聞くことがすごく大事で。というように、いろんな考えがあるっていうのを知ってほしいなと思いますし、それを今回のミライ会議でみなさんにわかってもらえるといいんじゃないかなとか思いますね。
赤松:このあとのセッションで、そのへんの研究がどうやらなされるみたいですね。期待してます。
小林:そうですね。ちょっと怖いんですけどね。僕も(笑)。
赤松:じゃあ次いきます? もう時間が半分いっちゃってるもん。
小禄:そうですね。すごくいい感じに。最初はハラハラしましたけど。一言だけちょっと補足だけしておきますと、ナンバーナインって本当に価格自由というか「売上の80パーセントお戻し」といったところって、やっぱり「紙を販売しない」という決断をしたからっていうところがあって。「僕らも紙もやるんだ」ってなったら、たぶんここまでできてないと。
そこはやっぱり、先人の方々の努力とか積み重ねがあったうえで「じゃあ今の時代にそぐうかたちで、僕らがやるとしたらどうか?」みたいなところで始めているので。
赤松:ほかの電子書籍会社の夢っていうのは、紙でやりつつ、IP……権利を確保して、それでどんどん海外に向けてのマネタイズを、昔はどの電子書籍会社も夢見ていたんですけど。
小林:僕らは紙は一切やりません。
赤松:そうなんだ。
小林:なので、うちでもオリジナル作品を作っているんですけど、紙を出したいってなった時は出版社さんと協業させていただいて、出版社さんから出させていただくんですけど。僕らとしては、出版社さんとどんどん仲良くしたくて。僕らは紙を出すつもりは一切ないので!
小禄:仲良く(笑)。
小林:でも売れてる作品とか出てきて、漫画家さんは紙も出したいと言うので。「紙はうちでは出せないから、出版社さんを紹介するのでそっちで出しましょう」というかたちでやっています。
赤松:なるほど。
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