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40歳の起業家と、戦国時代の「戦」の話をしよう。(全8記事)

須藤憲司氏が“戦国の戦”を例に語る、シリコンバレーの凄さ どこで起業しても同じはずの「情報の時代」に、立地が持つ意味

著書『ハック思考』がヒットした起業家・須藤憲司氏と、新刊『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』が出たばかりの歴史好きお笑い芸人&作家・房野史典氏は、同い年の40歳。房野氏が新刊の中で「終わりの見えない戦国の世」と「先の見えない現代」を重ねて人間の面白さ、歴史の面白さを描きだす一方で、須藤氏は『ハック思考』の中で「歴史上の偉人たちのマンガが繰り返し僕に教えてくれたことこそが、世界をハックする方法です」と語っています。そんな中、須藤氏の「戦国武将を起業家と見立てて、話してみたいですね、房野さん」という一言から、今回の対談「40歳の起業家と、戦国時代の『戦』の話をしよう。」の開催が決まりました。2記事目となる本パートでは「実はプリンスで“バッチバチの二世”だった信長」「何でシリコンバレーってすごいの?」などについて、話しています。

1つ前のパートはこちら

投資家はみんな、勝ち戦に乗りたい

須藤憲司氏(以下、須藤):だから、人を惹き付けたりするのにも、大義名分とかミッションとか。

房野史典氏(以下、房野):え、これめっちゃおもしろいな。採用、つまり人材を獲得するために、理念ってのが要るということですね。

須藤:お金を集めるためにもいる。

房野:ほう。なるほど。はい、はい。

須藤:だって、投資家は投資して儲けたいですよね。でも「どこにに投資しますか?」といえば、勝てる戦に乗りたいわけですよね。

房野:はい、はい。

須藤:勝ち戦に乗るにはどうしたらいいか。大義名分がないと勝てないじゃないですか。

房野:もちろんそうですね。

須藤:なぜかというと、そこに人が集まる。だけど「卵が先か、鶏が先か」という話になります。やはりちゃんとしたストーリーというか「何を自分たちは成し遂げたいのか?」というミッションがちゃんとわかった上でプレゼンをして、そこに対して「いいね」となって、資金を調達しながら戦に行くわけですよね。戦もビジネスもまったく同じなんですよ。

房野:へえ。最初の企業理念というか「僕たちが掲げるのはこれですよ」と決めるのって、当たり前ですけどめちゃくちゃ大事ということですよね。

須藤:すごい大事だと思います。

戦は「勝てる雰囲気」が出てくると勝つ

房野:逆にいえば、それが「いいね」とみんなの共感を呼ぶような理念であれば、資金は集まりやすい。

須藤:えーとね。それも僕、その両方だと思っていて。結局、みんなが「いいね」と思ってるものに、お客さんも増えていますよね。

房野:はい、はい。

須藤:なぜかというと、そういうプロダクトとかサービスを、もともと人は求めているということですよね。「それはいいね」と思うから、みんな参加するはず。で、なんとなく勝ち戦に乗りたいなという人が出てくる。「ここに出資しておくと儲かるかもしれんな」という人が増える。

房野:増える。増える。

須藤:勝てる雰囲気が出てくると、戦って勝つじゃないですか。

房野:ああ、めちゃくちゃ重要! はい、はい、はい。

須藤:雰囲気、けっこう重要。

房野:なるほどね。「俺らはイケてるんですよ」という。

須藤:空気ね。

房野:空気、確かに。芸人の話ですけど「俺らはもうドシッと構えてます。おもしろいですよ」というオーラ放っている人、やはりおもしろいですもんね。

須藤:だから、笑いも空気って大切じゃないですか。

房野:笑い、めちゃくちゃ空気です。やはりオドオドしていていたら、ウケないですよ。「何やっても、絶対おもしろいです」という、ふてぶてしいくらいの態度取っているほうが、やはりお客さんにも感じが伝わるんですよね。そうか、そういうの似てるな。

須藤:似てるんです。

実はプリンスで“バッチバチの二世”だった信長

房野:ポジションがやはり大事というか、さっきも立地とかも言っていましたけど。例えば信長の話で、これ、よく起業家の例に出されるのが「信長は、何もないところから(出世して)すごい。そんなに勢力が強くないところから、グワッと来た」というんですけど。

けっこうこれね、最近じゃ「いや、そんなことない」となっているんです。オヤジの力が超強かった。お父さんが優秀で、信長のそのあとにも影響を与えているんですけど。信長って、すごい経済を大事にしているんですね。

これ、すごく重要なんですけど、お父さんがもともと、信長にその背中を見せていたからなんですよ。具体的な例で言えば、パパは川湊を押さえているんです。津島湊と熱田湊というところ。そこで、簡単にいえば貿易をします。それで商業が発展していって、土壌がめちゃ整って。信長ってざっくりいえば、プリンスなんですよ。

須藤:プリンス。

房野:ね! そこで、荒くれ者だどうだと言っているけども、バッチバチの二世なんですよ。

須藤:バッチバチのボンボン。

房野:(笑)。はい。あの人の力はすごいし、大化けしたのはもちろん信長自身の力だけど、基盤があったというところがめちゃポイントだと思うんですけど。

立地がいかに大切な要素か

須藤:なるほど。僕、実は立地も大事なんじゃないかと思っている。立地。尾張って、実はすごい重要なポジションですよね?

房野:めちゃくちゃいいです、あそこ。

須藤:そう。でも、周りを敵にめちゃくちゃ囲まれている。

房野:そうですね。

須藤:敵は敵で信長と挟まれて、けっこう辛いです。

房野:辛い、辛い。自分も強いけど、周りも強いから。

須藤:そうそう。あれって周りを囲まれているから、みんな敵なんだけど、バランスとりながらやっていくと、戦えるわけですね。

房野:なるほど、なるほど。

須藤:非常に重要な京都にも近いし、かつ、要所を押さえている。周りは敵だらけなんだけど、でも、敵は敵のやり方がある。

房野:確かに、確かに。

須藤:と考えると、場所とか立地もすごい大事。その時にまさに「これまでどういう経験してきたか?」というのも。すごい大事だなと思って見ています。

房野:本当に能力があっても……例えば武田信玄は、山梨ですよね。マジ、山しかないです。

須藤:キツい。

房野:めちゃくちゃかわいそうだなと。

(会場笑)

房野:海があるとないではぜんぜん違う。

須藤:違う。

房野:ほんで、耕せる田畑の量が違う。だから僕、信玄が好きな理由は、そこもあるんですよ。「この土地でよく、あそこまで」という。

須藤:だって、雪降った北国って辛いですよね。

房野:辛いです。だって、戦いに出られませんから。

須藤:そうですよね。

房野:「1回休憩、1回休憩!」って言いながら進むとか、無理なんだもん。

(会場笑)

須藤:行けないです。

房野:そりゃあ無理無理。

何でシリコンバレーってすごいの?

房野:ビジネスにおける「場所」ってどんな差が出るんですか。

須藤:いっぱいあるんですが、例えばなんだろうな。今みたいなITベンチャーだったとしても、例えば「東京にいるのと大阪にいるのって、どっちのほうが有利ですか?」というと、情報が集まるのは東京でしょ。

房野:東京、めっちゃ集まる。

須藤:人が集まっているじゃないですか。何でシリコンバレーってすごいのかというと。何世代もあそこで回っているからですよ。

房野:あそこで?

須藤:インテル出てきて、その後、MicrosoftとかGoogle、FacebookとかUber出てきて。7世代、8世代くらい回っているんですよ。

房野:そんなにいっているの?

須藤:だから、シリコンバレーって、シリコンバレーバンク(SIlicon Valley bank)という、起業家のための銀行があるんですよ。

房野:そこに?

須藤:そうそう。あそこで起業した人たちは「旧来の銀行はクソだ」と。

房野:そうなんだ。

須藤:なぜかというと、旧来の銀行は起業家のビジネスに向いていない。だから「起業家のための銀行を作ろう」といって、銀行を作ったんです。弁護士とか会計士とか、起業家のためのスタッフが揃っている。

房野:うーん!

須藤:だから、世界中からシリコンバレーに集まるわけですよね。そこで競争して集積しているんです。

房野:集って行っている。

須藤:そう、そう。集積するんですよ。場所。特別な場所ですよね。

房野:シリコンバレーって、特別な場所になっているんですね。

須藤:そうなんです。情報の時代だから、別にどこから起業したっていいじゃないですか。実際、本当にいいわけですよ。でも「戦いを有利にしたい」と思う時に、そこの近くにいるとか、そこで知っている人がいるとか大事じゃないですか? それが戦国時代は、物資が集積してくる港だし、今の時代は情報が集積してくる東京やシリコンバレーなんかの立地を押さえる事が、戦を有利に進めていく上で重要なんだと思います。

才能のある人たちが集まって切磋琢磨したら、すごく伸びる

房野:大事だと思います。ただし、最初にスタートは決められないわけじゃないですか。例えば日本でいえば、今だったらどこで起業するかは選べるけど、生まれた場所は選べない。それでいえば、(戦国時代の場合)京都に行かないとダメなんですよね。

須藤:戦国?

房野:戦国は。まず、京都。この本『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』にも書きましたけど「天下」というのは、今の時代の僕らの認識と違って「畿内」と呼ばれる、今の京都・奈良・大阪あたりのことを指して「天下」といっているわけです。「天下を取る」というのは「京都を取る」ということです。

13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。

須藤:なるほど。

房野:さっきのお話と繋がるんですけど。大義名分を押さえるということは、朝廷がある、室町時代の幕府がある京都を押さえないことには、自分の力を誇示できないわけですよ。

須藤:なるほど。

房野:(ビジネスだと)シリコンバレーに行かないとダメな感じですか? 

須藤:そんなことないです。今はそんなことないと思うんですけど、でもすごくわかりやすくいうと、都市って集積しているんです。人も情報もお金も。例えばアーティストとかだったら、パリにいっぱい集まったんですよね。

房野:イメージとしてそうですよね。

須藤:“ある時代”に、いっぱいそこに人が集まっていたから「あいつがイケているんだったら、俺も、俺も」となるわけです。

房野:なります、なります。

須藤:そうやってアーティストが育っていくわけですよね。たぶんお笑いの世界もきっとそうで。

房野:そうですね。

須藤:なんか集まるんです。無駄に集まると、それぞれすごく伸びていきますよね。

房野:はい、はい。無駄に集まると確かに伸びていくのは、吉本興業でいえば、(所属タレントが)6千人いますからね、公表では。

須藤:そうですよね。その才能ある人たちが集まって切磋琢磨したら、すごい伸びますよね。

房野:そうか。人が集まると。

須藤:吉本興業になぜ人が集まるのかというと、そこで切磋琢磨しているから。だから伸びていく。シリコンバレーに何で起業家がいっぱい行くのかというと、あそこで切磋琢磨しているから。

房野:はい、はい。なるほど。ちょっとだけ認識が違いますね。戦国当時の京都とシリコンバレーとは。

須藤:たぶん戦国時代は、勝利の条件が「京都を取ること」なんですよね。そういうことですよね?

房野:そういうことです。

須藤:一方でシリコンバレーは、勝利の条件ではない。

房野:なるほど! 勝利の条件ではないのか。

須藤:条件でない。

房野:すげぇ。

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