生産性とメンバーの幸福度の向上を両立

なかむらアサミ氏(以下、なかむら):みなさん、こんにちは。数あるセッションの中で、このセッションをご視聴いただきましてありがとうございます。オンライン時代のマネジメントについて考える40分のセッションで、ぜひ何かお持ち帰りいただけるヒントがあればと思っております。

まず最初に、私たちについて少しご紹介させてください。サイボウズはご存知の通り、ソフトウェアの会社なんですけど、3年前から「自分たちの働き方のノウハウを他社でも活かしてもらえるなら」ということで、チームワーク総研という部署を作り、働き方やテレワークなど、組織をよくするためのお手伝いをしています。

生産性を追求することも大事なんですけど、私たちは自分たちの経験から、それだけでは組織は疲弊する、と考えています。そこで、メンバーの幸福度も上げるような組織作りを支援しています。

コンサル会社ではありませんので、ノウハウは自分たちがしてきたことに限られてしまいますが、社員の共感を得ながら情報をオープンに見える化していき、人事や特定の部署だけが何かを決めるのではなく、社員を巻き込んで一緒に組織を作り出していく。最近では自律分散型組織と言われたりしますが、そうしたお手伝いをしています。

申し遅れましたが、私はチームワーク総研 シニアコンサルタントのなかむらと言います。2006年にサイボウズに入社して人事を数年、その後は広報・ブランディングを担当して現在に至ります。

「なぜ私たちが組織のノウハウ提供を?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。現在はサイボウズと言えば、「働き方改革で有名な」と言われることも増えたんですけど、実は私たちサイボウズ自身が、昔はまったくブラックな会社だったんです。

サイボウズはまだ創業して二十数年の会社です。創業して10年にも満たないドベンチャーの時期ももちろんありました。その時に、離職率が28パーセントという時期がありました。具体的には、80人だった会社で年間25人が辞めるという状態です。同時期に下方修正を二度出したりとか、M&Aしたけど失敗して業績も悪化といった試行錯誤を繰り返していたんですね。

これが2005年の話なんですけど、ここから15年かけて、現在のような会社に少しづつ変えていったという背景があります。このノウハウを(作るまでに)私たちは15年かかったんですけど、他の組織だともっと数年でできるかもしれない。社員自身が自分ごととして良い組織にしていくことを、一緒に実践していきたいなと思っています。

コロナによって問われる働き方・生き方

なかむら:さて、2020年はまさにコロナという1年でした。テレワークを初めて経験された方、そして日常に馴染んできた方、それぞれいらっしゃると思います。私たちは、このコロナが及ぼした影響が2つあると思っています。

1つはまさに今の「Withコロナ」ですね。企業として今後テレワークを続けていくのか、併用していくのか、それとも以前の働き方をするのか、決断を迫られている時だと思います。

それと同時に、働いている方自身も、「自分の職業人生の中で在宅勤務をするなんて思ってもみなかった」という方も多かったんじゃないでしょうか? 家で仕事ができるなと感じた時に、会社だけではなく家でもできることの自由さを感じた。

それによって、働くことのさまざまな価値観が表出してきているのが、まさに今ではないかと思っています。例えば「駅近に住んでいる意味があるのか」とか、「都心に住んでいる意味があるのか」とか。まさに今、明石市に移住した(サイボウズ社員の)セッションもやっていますけど、サイボウズも移住者がどんどん増えている状態です。

「コロナによって、自分たちは働き方をどうしていこうか」「生き方をどうしていこうか」というところを問われているんだと思っています。それと同時に、オンライン化も進みました。今まで全部紙でとか、会社に行って仕事をするのが当たり前だったスタイルから、すべてオンラインに情報を載せていくと。

仕事をするために必要な情報を家で取得できるようにすることが徐々にできてきた企業と、まだこれからやっていかないといけない企業がそれぞれあると思うんですけれども、今多くの人が悩んでいるのは、ビジネス情報の取得ではなく、「感情の情報をどうやってオンラインに載せていくか」というところで悩まれている企業さんが増えてきています。

例えばオフィスに行ったら、ちょっと元気がない人の顔を見て「大丈夫?」と声をかけたり、みんなでお菓子を分け合って、「おいしいね」と言いながらお土産を食べるようなことがなくなってくるわけですね。

そういった時に、何か楽しいとか寂しいといった感情をどう共有していくのか。気持ちよく働くために感情情報を共有することは大事なんですけど、オンラインだとこれが難しいという声が上がってきています。

日本的風土改革のコンサルティング会社「スコラ・コンサルト」

なかむら:実は私たちチームワーク総研は、日本でも老舗のコンサルタント会社のスコラ・コンサルトさんと、数年前から共同でコラムを連載したり、セミナーを行ってきました。

今年はこのnoteで、まさにこのオンラインのマネジメントについて、私たちの思うことやノウハウについての記事を書いていますので、ぜひ「サイスコ」で検索していただいて、好きを押していただいたり、お気に入りに入れていただければと思います。

今日は、私たちサイボウズのオンラインマネジメントのノウハウだけではなく、スコラさんが数多くコンサルティングされている中でのノウハウも共有しながら、オンラインマネジメントについて考えていきたいと思います。では、ここからはスコラさんとのセッションに入っていきましょう。どうぞお二人、お越しくださいませ。

会社紹介をよろしくお願いします。

内田拓氏(以下、内田):スコラ・コンサルトと申します。よろしくお願いします。

我々は、人の自発性とチームワークを原動力にした、日本的風土改革のコンサルティング会社です。「ともにつくる」ということを大事にしていて、「こうしてください」とか、「戦略を描いてやってください」と言うんじゃなくて、一緒にどうしていくのかを考えることを大事にして風土改革をやっています。

創業者が柴田昌治というんですけど、ここに書いてある通り『なぜ会社は変われないのか』とか『なぜ社員はやる気をなくしているのか』という本を書いて、世に出た会社です。創業34~35年経っているんですけど、だいたい500社ぐらいをコンサルティングでお手伝いをさせていただいていて、短期の研修などを含めると1,000社ぐらい支援させていただいています。

なかむら:ありがとうございます。ではそれぞれの自己紹介をぜひお願いいたします。

二足の草鞋を履いて生きるコンサルタント

塩見康史氏(以下、塩見):塩見と申します、よろしくお願いします。私はスコラではもう十何年と働いていまして、ベテランとか中堅ぐらいの位置なんですけど、例えば風土変革の仕事や、ワークショップの中で一緒に戦略を作っていったり、創造性を伸ばす研修などをしています。

私は実は作曲家でもありまして、サイボウズさんじゃないんですけど、二足の草鞋をうまく履いて生きていきたいなと思っております。そういう意味では、ちょっとわがままに生きているところがあります。ただ、そういう知見がやっぱり本業の仕事にも生きているんじゃないかなと思っています。よろしくお願いします。

なかむら:吹奏楽でもよく演奏される曲。

塩見:よくでもないんですけど(笑)。演奏されることもあります。

なかむら:作曲家とコンサルティングって、なかなかいないですよね。

塩見:珍しいかもしれないですね。

なかむら:内田さんお願いします。

内田:内田拓と申します。よろしくお願いします。僕は1978年生まれで、今スコラに入って7年目ですね。塩見は朝日作曲賞を取ったんですけど、僕は最近オカリナを始めました。

(一同笑)

なかむら:楽器(笑)。

内田:オンラインショップで3,000円のオカリナを買って吹いているんですけど、たぶん来年のCybozuDaysでは披露できると思いますね。

(一同笑)

なかむら:なるほど(笑)。

内田:オカリナは、音色がけっこう癒されるんですよ。

塩見:確かにそうですよね。

内田:そんな感じで、よろしくお願いします。

情報共有と「ザツダン」の重要性

なかむら:よろしくお願いします。本日のご質問はSli.doで受け付けますので、セッション中に気になったことを、どんどん書き込んでいただければと思います。

オンラインマネジメントということなんですけど、緊急事態宣言から半年ぐらい経って、特に慣れてきた企業さんから「部下が見えないのどうしよう」と。まさにこのタイトル通りのことをよく聞かれたり、「サイボウズさんどうしてますか?」と言われることが増えました。

私たちは最初に、「場づくりとチームづくりの2つが大事です」という話をしました。この場づくりをさらに分けると、情報を共有するところと、あとは私たちは話す場を大事にしているんですけど、「ザツダン」をするようにしています。

情報の共有というところから、みなさんと話していきたいなと思っているんですけど、サイボウズはもともと情報共有のソフトを作っている会社なので、ここにはこだわりがあるんですけど、世の中に情報は溢れていまして、日々のニュースや近所の情報など、私たちはいろんな情報の中にいます。

以前仕事をする時には、例えば、上司と部下とのメールや電話でのやり取りで完結していたと思うんですけど、今は世の中に情報が溢れていることを多くの人が知っているので、自分のところに情報量が少ないと思うと、それだけで人は一気に不満を持ってしまうんですよね。

情報量が多くなった影響の1つは、一定の人たちのやり取りで終わるのではなく、変な不満や疑義を生まないために、自分が持っている情報をどんどんシェアしていきましょうと。例えば上司が「自分はこういう情報を持っているんだよ」と。現場の情報はやっぱりメンバーがよく知っているので、メンバーが持ち寄ると。

チームでお互いが情報を持ち寄って、最適解を作っていくことがすごく大事になってきている。情報は、以前は偉い人が抱えていたものから、シェアするものに変わってきている。この取り扱い方の転換が必要で。特にオンラインになってきた今、自分のところに情報が来ないと、日々のことにおいてもすごく不満に感じてしまうんですよね

ただ、「自分の上司は知っていることを全部教えてくれるよね」となると、それだけで信頼感が一気に増すので、自分の持っている情報をどんどんシェアしていきましょうというところを私たちも実践しているし、いろんなところでお話させていただいています。この辺りで、スコラさんがいろいろな方とお話しされている中で何かありますか?

情報共有の3つのレベル

塩見:最近、いろんな会社さんにお伺いすると「情報共有をどうやる?」という話がすごく多いんですよね。逆に言うと、そこで悩んでいることが多いんじゃないかなと思います。

情報共有は古くて新しい問題というか、情報がないと人は思考できないという意味では、今はすごく情報が多い時代ですから、身の回りが情報で溢れているような環境を作ることが必要だと思うんですよね。

でも、逆にリモートで「情報が減っているんじゃないか」と言われていると思うんですね。私たちは情報共有と一口に言うんですけど、3つぐらいのレベルがあるんじゃないかなと思っています。

1つは業務の情報共有。これはいわゆる報連相と言われるもので、ルーティンで進めていくにあたって報告しなきゃいけない、連携しなきゃいけない。

そういうものはやっぱり、リモート間でもちゃんとやっているんですよね。これは必要な情報共有なのでやると。ただ日本人は、職場での雑談を通して共有していた情報が、実はけっこうあって。それは例えば、レベル2の背景情報の共有ですよね。

自分の仕事とダイレクトに関係ないかもしれないけれども、そのことをすごく把握することで、戦略や仕事の意味がわかったり。そういう背景情報が実は重要だったということがあるんじゃないかなと思います。

同時に、日本では飲み会などで、レベル3のような情報と情報がぶつかり合うことが起きていたと思うんです。そういう生成的な情報共有が、実はけっこうあったんじゃないかなと。今はリモートワークになることで、レベル1はなんとか仕事を回すためにやっているんですけど、レベル2、3が少し弱くなっている感じがします。

今はいいと思うんですけど、将来的にレベル2、3の共有ができないと非常に行動力が弱まってしまうんじゃないかと思います。そういう意味からも、マネージャーの方々といろいろ話をしますけど、みなさんもそういう問題意識を持っていらっしゃるんですね。情報共有をしっかりやろうと非常に一生懸命やっているなと思います。

リモートワーク中の情報共有の難しさ

塩見:ただ、リモートなのでけっこう難しいんですよね。情報共有と言っても、いくつかルートがあるかなと思っていまして。一般的なのは、この図でいう一番左のラインですよね。例えば、上司と部下で話す1on1とかですね。今は部下がすごく見えにくくなったので、1on1をしようという話を聞きますよね。それを一生懸命やっていらっしゃると。

ここには「ピア」と書いていますけど、情報共有と言いますと「同僚同士の横の連携や情報共有」も実はけっこう大事だったと。これは職場で雑談をすることで自然にできていたんですけど、今ちょっと薄れている状況があるかなと思います。

あとはメンバーでの情報共有ですよね。例えばチームでミーティングをするとか、チーム間のインターチームみたいな、横とか斜めの情報共有がちょっと薄くなっていて、そこを意図的に作っていかないといけないんじゃないかなと思っています。

次に、おそらく1対1の情報共有をしても、その情報共有をした人にしかわからないと思うんですよね。ですので、「AさんとBさんがしゃべりました」ということがあったら、AさんとBさんがしゃべった内容が、CさんやDさんにもしっかり見える。こういう情報共有のスペースを作ることが理想的なのかなと思っているんですね。

そういう意味では、ラインやピアでやり取りしたことがオンライン上にどんどんアップロードされる。そういう情報が他の人にも見える。私たちスコラという会社でもサイボウズさんのグループウェアを使っているんですけど、例えば情報をどんどん載せていくわけですよね。そうすると、CさんとDさんが少し揉めてるとか、自分がダイレクトに関係がないものも横から見えるので(笑)。

職場でもその場にいればわかるわけですけど、それがオンラインの中でもわかる。それによって、「自分がどうやったら全体で役立てるんだろうか」という発想が湧いて、そのアクションが起こる。だから、そういうことをやったらいいと思うんですね。

ただ、これは実際けっこう難しいんですよね。先ほどアサミさんがおっしゃったように、情報は偉い人が持っていたり、そもそも不必要な情報を出すことがあまり良くないんだ、という前提がある会社は、未だに多かったりするかもしれないですね。

なかむら:そうですね。オフィスでは何となく身体的にわかっていたかもしれないけど、オンラインだとそれが見られなくなるから、「まずライン(上司部下)で情報共有を」となっちゃいますよね。

塩見:上下(上司と部下間)は、けっこう一生懸命(情報共有を)やっているイメージがありますよね。

なかむら:まずは、このラインの情報共有から始めていくのがいいのかもしれませんね。インターチームというのは、部署間という感じですかね。

塩見:そうですね。部署間やグループ間などです。