2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:サイボウズ株式会社
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チームビルディングのノウハウやツールの活用方法を紹介する、サイボウズ株式会社の総合イベント「Cybozu Days 2020」が東京、大阪の2会場で開催されました。2020年のテーマは「エゴ&ピース」。果たして“我慢しない”と”チームワーク”の両立は可能なのか。両会場にて、我慢しない働き方を考えるさまざまなセッションが行われました。 本記事では、大阪にてオンライン開催された基調講演の模様をお届けします。一人ひとりのエゴをピース(PEACE)に変えていくために、多様な個性を重視するために、これから会社で求められるスキルとは。
熱田優香氏(以下、熱田):まだ20分ぐらい時間がありますので。
大槻幸夫氏(以下、大槻):ここからはぜひ、ハッシュタグでいただいたものをお話しできればなと思っています。
熱田優香氏(以下、熱田):「想像責任」とか、ヨッシーどうですかね。
吉原寿樹氏(以下、吉原):先ほどの「がんばるな、ニッポン。」の話の延長になると思うんですけど、サイボウズには「質問責任・説明責任」という行動指針があります。
その中で、「じゃあなんでも質問したらいいんだよな」と、あまりに気軽に言えるようになってしまうと、時には誰かを傷つけるような言葉になってしまうかもしれない。だから「また何か新しいフレームが必要なんじゃないか」と、今年、社内でときどき話題になったんですよね。
もしかすると、その1つが「想像責任」なんじゃないか、という話が出ていて。先ほど青野さんも「自分の給与を公開したらどうなるかを想像したんです」とおっしゃいましたけど。
そういうかたちで、何かアクションを起こすとか、あるいは言葉を出した時に「一体どういうことが起こるんだろう」と、一歩立ち止まって想像することが、もしかしたらデフォルトとして必要なんじゃないか……という話題が今年ありましたね。
青野:これはサイボウズが掲げている4つの文化の中だと、「多様な個性を重視する」というものにもつながってくる考え方ですよね。自分はこういう言葉を投げかけられても気にしないかもしれないけど、やっぱりいろんな人がいると。
それが100人のサイボウズだと100通りだったわけですけど、1,000人のサイボウズだと1,000通りあるわけです。この1,000通りの個性を重視して考えたときに、ちょっと想像しないといけないねと。まさに「多様な個性重視」を強化するための、1つのプラクティスになればいいなと思いますね。
大槻:これもトレーニングが必要そうですけど、何か想像をうまくするコツはあるんでしょうか?
青野:究極的に言うと、やっぱり「相手がどう思うかはわからない」というのが結論だと思います。アドラー心理学の岸見(一郎)先生などは「聞いてみたらいいじゃん」とおっしゃっているんですよね。「僕がこう言った時に、あなたはどう感じましたか?」。岸見先生がおっしゃっているのは、例えば褒めたときに相手は「侮辱された」と思うこともあるらしいんですよ。
吉原:あぁ、なるほど!
青野:「〇〇くん、よくできたねー」って、なんかすっごくバカにされた感じがありますよね。
大槻:普通のことを褒められたりした時に。
青野:そうそう、「いや俺、そんなところで褒めてほしいとはぜんぜん思っていないんですけど」ということがあるんですよ。それを確認するには、やっぱり聞いてみるしか究極的にはないし、それを聞ける関係(であること)。
「自分の言葉に対してどう感じたか、どう解釈したかをぜひ教えてください」と。それをまた「フィードバックしてください」と。その中で想像力が高まっていくように思いますね。
大槻:なるほど。「聞く」というのは本当にポイントな感じがしますね。想像という部分でもそうですし、最終的に意見を言う段階でも、まず自分の意見を書くのではないんですね。
「こう思っているんですけど、どうですか?」「そう見えていますけど、どうですか?」とか。必ずしも正しい見え方じゃないかもしれないところに、いきなり強い意見をぶつけてしまうのも、なかなか難しいですもんね。
青野:そうですね、やっぱり聞いて確認するというね。
熱田:コロナでテレワークじゃないですか。今年の新卒の方はもう出社しないで、フルリモートになってしまっているから。最悪、会ったことがない人のほうが多くなっている中で、本当に想像責任はめちゃくちゃ大事だなぁと思いますね。
大槻:多くの会社で求められるスキルになっていくかもしれないですね。
熱田:あとは「20代女子が中根さんにダメ出し」というのが話題になっていたんですけども。
青野:Cybozu Days 東京の講演で、中根さんなどがまさにワーキングマザーとして道を切り拓いてきて、結婚しても出産しても働き続けられる・働きやすい環境を作ってきたんだけど。それでも20代の女性社員にしてみると「まだまだ不安です」という意見でしたよね。
熱田:そうですね。これはCybozu Days 東京の公開セッションで行われたダメ出しセッションなんですけど。人事本部長の女性役員で中根さんという方がいらっしゃって、中根さん世代からすると自分たちは就職氷河期の中で就職して、働きやすい環境を切り拓いてきた背景があるんですよね。なので今のサイボウズは時短も選べるし、すごく選択肢があると思っていた状況だったんですけど。
でも、私の世代だと、「育児をしたら退職する」という時代ではないじゃないですか。子どもを産んでも育休で、フルタイムで復帰してバリバリやりたい子が増えている中で、「なんかサイボウズ、子ども産んで復帰したら新人よりお給料低いんだけど」ということがまだあって。
「それってどうなんですか」というのを役員にぶつけるようなセッションがあって。これはまだ今も議論中なので、すごくおもしろいテーマだなと思っていますね。
大槻:でも本当に、言われないと気づけない感じがしますよね。年配の女性社員の方々からすると、当たり前のように「働けてありがたい」というマインドでずっといたから。
こうやって、若い人たちがエゴで問題提起してくれたことで、「確かにありがたいけど、給料が安くていいとは思わないね」という感じで、今いろんな意見が出てきていて。昨日も確か、ランチミーティングをしていましたよね。
熱田:そうですね。世代によってかなり感想が違っていて。今40代のママの方だと、そもそも子どもを産んだら退職するのが当たり前という中で、雇ってくれる会社が少ないから、新人よりも給与が低くてもありがたいと思っていたんですよね。
でも、私たち(20代の)世代からすると「え、ムリ」みたいな(笑)。「退職する!」レベルで不安だったりするので、このへんの議論が進めばいいなと思っています。
吉原:このセッションを聞いていて個人的におもしろかったことがあります。
中根さんは今の時代はすごくよくなっているという認識だったんですけど、若い方からするとそうじゃなかった。「就職氷河期を乗り越えて」という中根さんのバックグラウンドの説明があると、共感するかは別として、一旦まず(中根さんの認識を)理解はできるなというのがすごくおもしろいなと思って。
さっきの「聞いてみるのが大事」という話に近いのかもしれないですけど、「なぜそう思うんですか」と聞いていくと、まずは一旦理解というところに届く。その上で、僕らはその先を議論していくことになるのだなと思って聞いていました。
大槻:確かに。これは古い世代からすると、エゴを言われた時に「うっ」となるというか(笑)。受け止める力もすごく大事だと思うんですけど、どうしたらいいんですかね。エゴの中に「え、お前そんなこと言う?」ということもあると思うんですよね。
青野:やっぱりこれもトレーニングですね。私なんかもずっと「うっ」「うっ」と言い続けながら15年やってきてるんですよ。
(一同笑)
最初だって、「残業したくない」と言われた時、どれぐらいカチンときたか。
(一同笑)
だって、サイボウズってITベンチャーですよ。「ITベンチャーに入社しておいて残業したくないって、そもそも文脈的におかしいだろ!」と最初は思いましたよ。でも、これを受け止めてみて、「まぁ辞められるよりいいか」というので、残業をしなくても済む選択肢を用意しました。そうすると、その人がイキイキ働けるようになって、「あれ? なんとなくうまい感じで回ってるね」ということの繰り返しですね。
まさに成功を1つ1つ重ねながら、自分たちで「これでいいんだ」と受け止められる能力が高まるのかなと思ったりしますよね。
大槻:なるほど。青野さん的には、このサイボウズの中で「良いエゴ」と「悪いエゴ」の境目ってあるんですかね。
青野:そうですね……もし「良いエゴ」「悪いエゴ」というふうに分けるとするならば、「自分がこうしたい」は良いエゴ。「あなたにこうしてほしい」が悪いエゴ。
熱田:あぁー。
吉原:なるほど。
青野:例えば「私はもっと給料がほしいです」と。そのエゴ自体は別に悪くはないし、その人がそう思っているんだからそれを否定することはできない。
けれども、「お前の給料はこれぐらいしかもらわないべき」「新卒なんだからこれぐらいだ」と言われると、ちょっと価値観の押し付けを感じますよね。多様な個性を重視しているのか、と。いろんな人がいて、いろんな給与でいいんじゃないのと思うと、「あるべき」という人に押し付けるエゴは、もし自分が口にしていたら「うっ、これは悪いエゴになってるかもな」と思ってもいいかもしれませんね。
大槻:わかりやすいですね。自分発信、自分のことなのかということですね。
青野:そうですね。やっぱり主体がどこにあるのかということをね。
大槻:確かに。先ほど出てきたものも、熱田さんもそうですし、吉原さんもそうですけど、みんな「自分がこうしたい」といういう話で。先ほど20代女子も、山田さんと渡邉さんは「自分がこう思う」という話でした。「自分が」何かおかしいと思う。「女性がみんな思ってるよ」と主語を広くした途端に、何か違う話になってしまうけど、「私が不安に思っています」ということだったから、すごく共感を呼んだところがありましたよね。
熱田:そうですね。サイボウズだと「5,000兆円ほしいです!」という給与交渉をする後輩がいるんですけど(笑)。
大槻:いますねー……(笑)。
青野:えっ、5,000兆円?
熱田:大槻さんに対して「5,000兆円ほしいです!」って(笑)。
青野:1億円は聞いてたけど……。
(一同笑)
5,000兆円きた(笑)。
熱田:でも、「5,000兆円ほしい」と言うのは、良いエゴってことなんですよね。
大槻:そうですね(笑)。
熱田:でも、5,000兆円もらえなかった時に、「それはおかしい」となるのは価値観の押し付けなんだなというのは、なんとなく今(思いました)。
青野:そうですね、「5,000兆円くれるべきだ!」というのは違う気がしますね。
青野:新型コロナウイルスで在宅勤務が進んだら、今度は「東京にいる必要ないんじゃない?」という社員も増えてきましたよね。
今日は酒本夫妻が兵庫県明石市に東京から移住したというお話があるので、ぜひ楽しみに聞いていただければと思います。
大槻:ものすごいエゴですよね(笑)。
青野:ね。しかも社内に「移住します!」と貼り出して、オーシャンビューの動画とか、「新しく住むマンションはこんな感じです」とずらーっと出された瞬間に、それは働く気をなくしますよ。
(一同笑)
でも本当に、地方にとってはチャンスですよね。今日は大槻さんのセッションでもありましたけど、まさにこれを機に「働くために東京に出てくる」ということがなくなる時代がくるのかもしれませんね。
大槻:確かに。青野さん的には、社員に対してはもうどんどん行ったらいいじゃないかと。
青野:そうです。そして私も行きたい。
(一同笑)
私のエゴとして(笑)。
大槻:なるほど(笑)。
熱田:おもしろいのが、社内のグループウェアの中に「移住を考える」というスレッドがあるんですよ。それで、移住を考えている方たちが「ここがいいんじゃないか」「金沢市が良いらしい」とか、「ネット回線はこういうのがいいらしい」とか。「引越しはどこを使ったらいいですか」とか、移住のテクニックを社内のグループウェアの中でめっちゃ情報共有してるのが、すごくサイボウズらしいなって思いますね。
大槻:自由ですね(笑)。
熱田:自由ですね、はい。
大槻:なるほど、ほかには来ていないですか?
青野:また9つのやつ、表示できますか? いや本当に、地方移住が盛り上がっていまして。福岡などもやりますよね。地方からしますと、今度は逆に「移住者を受け入れるためのスキル」が求められてくると思うんですよ。
都会から人が行く時に、例えば排他的な地域で、「新しいやつが来やがって」という、まさにさっきのエゴとエゴの戦いになりますけれども。「俺たちの楽しい空間に変なやつが入ってくるのは許さん」というエゴをむき出しにされると、たぶんそこには人が集まらない。
だから、移住者をうまく受け入れる。「よそ者・若者・馬鹿者」という言い方をしますけれども、この「よそ者」を受け入れる、多様な価値観・いろんなエゴを受け入れる能力が、これから伸びる地方には求められるような気がしますね。
大槻:なるほど。できる地方とできない地方で、ちょっと差がついちゃいそうですね。
青野:そうなんです。まさにさっきの、人のエゴに対してどう振る舞うかが問われているような気がしますね。
熱田:最後に、「『法律との戦い』が聞きたいかも」ということで、「時には法律と戦う?」です。これはたぶん働き方などの話だと思うんですけど。
青野:そうですね。まず基本的な考え方として、私たちは「法律は守らなければならない」と思っていると思うんですよ。それはそれで一面は正しいんですけど、そもそも「法律は何のためにできたか」ということもぜひ問うてほしいんですよね。
法律は、僕たちを幸せにするために作られたはずなんですよね。例えば「赤信号は止まりましょう」というルールは、安全に交通するために、安全に移動するために、そして効率よく移動するために作った法律なわけだから。
もしその幸福感が損なわれているような法律があるのであれば、その法律を見直したほうがいいよね、という。そこに立ち戻らないといけないわけですよ。
特に働き方は、法律がずいぶん古いままになってたりしますよね。また会社の中の社内規定で「複業禁止」というのも、まだ実はほとんどの企業が複業禁止をしていたりすると。「それって僕たちを幸せにしてますか?」と。
もし幸せにしていないんだったら、ルールを変えようぜと。法律は守らなければならない。でも自分がそこに不快感を感じている・不幸になっているのであれば、法律を変えにいこうと。これがやっぱり本来のあるべき姿。
僕たちももちろん法律は守っていきますけれども、おかしいと思ったらそれは国に対して言っていく。「国会議員、なにやってんだ」と。「仕事サボんな、俺たち不幸だぞ」と。選択的夫婦別姓などもそうかもしれませんね。あれで不幸になってる人は、いっぱい見出せるぞ、と。法律を変えなきゃおかしいよね、というところまでがんばりたいなという感じがしますよね。
大槻:本当に、僕らがより良く生きるために、こういうルールを作っておいたらいいよねというツールのはずなのに、それが守らなきゃいけないものになってしまっているという。この発想を変えていかないといけなくて。
青野:そうです。人間のための法律なのか、法律のための人間なのか(笑)。主従が逆転しているよ、と。
熱田:サイボウズが先進的すぎて、法律が追いついてない部分もけっこうありますよね。「法律を守るか、守らないか」という議論を経営会議でされていた時に、「何のために守るべきか」という議論がされていて。
それがすごいなというか、普通の企業だったら「法律でこれを守ってください」と言われたら「はい」となるんですけど。
そこをサイボウズは「でも、私たちがこれをやっているのはこのためであって、目的達成しているから、だったらその法律は必ずしも守る必要があるのか」という、そこからめちゃくちゃ議論するんですよね。詳細をどこまで平社員の私が言っていいかわからないから言えないんですけど(笑)。法律と戦う姿勢みたいなところがすごいなぁと思いました。
大槻:「戦う」というよりは、より良いものを一緒に探す感じですよね。
大槻:いい感じの時間になってまいりましたので、まとめに入っていきたいと思います。
今たくさんのサイボウズで進行中のエゴを見ていただきましたけれども。サイボウズもここまで10年以上かかってたどり着いておりますし、今後もまた変わっていくと思うんですが。こうやって試行錯誤をしていますよ、というところ。ちょっと中の人も登場して、リアルな会話を見ていただきました。
熱田:リアルすぎて大丈夫なのかなという(笑)。
(一同笑)
吉原:心配になってきましたね(笑)。
大槻:(無観客で)なんの反応もないから、だいぶ言いたい放題に言ってますけど(笑)。こんな感じでサイボウズもやっておりますので、ぜひみなさまの会社でも、まずはエゴを言ってみる。法律すら覆すようなかたちで(笑)、捉われないで、自分のエゴを言うということを大事にして。
サイボウズが今気づき始めているところは、その先にピースがないとやっぱり大変だなというところです。想像責任とか無責といった考え方もございますので、そちらも合わせてトレーニングして、エゴ&ピースな職場を作っていただければと思います。
ということで、こちらのセッションは終わりとさせていただきたいと思います。ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
青野:引き続き、Cybozu Daysをお楽しみください。
サイボウズ株式会社
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