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次世代の個の市場価値の高め方(全3記事)

SNSは無名の人のための“魔法の杖” 黄未来氏が説く、資本も人脈もなくてもやりたいことを実現する方法

多くの起業家は本業にフルコミットするために、自分と会社がイコールの状態だったり、個人と法人が一体になっているもの。そんな中、本セッションでは、個としても活躍の場を広げている稀有な経営者らに、「個の市場価値」を高める方法をお聞きしていきます。多忙な中でもあえて時間を割いて、個としての活動や発信に取り組む理由とは? 本記事では、モデレーターに株式会社HARES 代表取締役社長の西村創一朗氏を迎え、株式会社BOLD 代表取締役の川名麻耶氏、株式会社ウツワ 代表取締役のハヤカワ五味氏、株式会社div 代表取締役の真子就有氏、中国トレンド情報局の黄未来氏が、それぞれの事業と個としての活動について紹介しました。今回は、登壇者らが市場価値を高める具体的な方法についてアドバイスを贈ります。

経営者としても個人としても活躍できるわけ

西村創一朗氏(以下、西村):今回のテーマは「市場価値の高め方」というHowがテーマです。個の市場価値を高めるメリットやビジネスでプラスになることはわかりましたが、どうやったら高められるのかをお聞きしたいです。

Twitterのアカウントも持っていないし、持っているけどフォロワー数百人しかいないという方々も多いので、「市場価値=フォロワー数」ではないという前提に立ってお話できればと思います。

真子就有氏(以下、真子):すみません、その前に質問いいですか。極端な話、会社経営していたり、個人事業をやっていたりすると、結果を出せば出すほど市場価値って高くなるじゃないですか。

西村:おっしゃるとおり。

川名麻耶氏(以下、川名):それが当たり前のことで、今回その話はいらないとなると、我々の語る「個」とはいったい何なのか。ビジネスノウハウの話をしてもしょうがないと思うので、具体的な観点で話したいです。

西村:基本的には起業家って自分と会社がイコールの存在で、個人と法人が一体になっている人が多いと思うんですよ。でも、今日登壇いただいているみなさんは、代表取締役として本業にフルコミットしつつも、あえて時間を作ってその時間を投資している。真子さんはマコなり社長としても市場価値を高めているわけで。

この違いが登壇者として呼ばれている理由だと思うんですよね。そうした時に、なぜ個人として発信し続けて市場価値を高めるのか。発信だけでなくても、どうやって個人として市場価値を高めているのかが、このセッションのアジェンダだと思っています。

真子:ありがとうございます。非常によくわかりました。

SNSで目立つという“弱者戦略”

西村:というわけで、黄未来さんにぜひお聞きしたいんですが。3年前に自分が中国トレンドマーケターとして出版をして、IVSに登壇することは想像できなかったと思うんですけど、どんなふうにご自身の市場価値を高めていったんですか?

黄未来氏(以下、黄):結論から言うと、個人でも法人でもSNSで目立つこと自体が弱者戦略だと思っているんですね。私は大手企業の中でぬくぬくと働いていた時期もあったので、すごくよくわかるんですけれども、三井物産クラスであればSNS発信しなくても億単位の政府案件が来るんですよ。電通の人が頭を下げて「お仕事ください」って来たり。

なのでSNSでおもしろいことを言う必要なんてまったくないですし、そんなことしなくても仕事が回る。稼げる額を増やすとしても、自分の市場価値を気にしなくても稼げると。目立つ必要なんてまったくないんですよね。

それで個の市場価値という問いに戻るんですけど。仮に、今の自分の肩書きをなくした時、それか大企業じゃなくてベンチャーのゼロイチでみんなにまだ知られていない企業であったとする時に、どうやって人を採用するのか、仕事を取ってくるのかとなったときに、SNSは魔法の杖だと思うんですよね。

法人も持っていない、三井物産の会社員でもない、ByteDanceですらない私。こんな私でも何かやりたいとTwitterでつぶやけば、「一緒にやりたい」という協力者がたくさん集まりますし、お客さんも集まる。

本当に冷静に弱者戦略として自分の仕事を取る。自分のやりたいことを実現するための道具として、SNSを使って自分の価値を高めているという考えですね。

西村:うんうん。

:昔の同僚などは私を羨ましがることはまったくなくて。みなさん強者なので、強者の戦略があって、弱者には弱者の戦略がある。その棲み分けだと思っています。

西村:そういう意味では、資本や強いネットワークがなくても、弱者にとってはSNSが魔法の杖になるわけで、使わない手はないという話なわけですよね。

:そうですね。資本と人脈がなくても、SNSという魔法の杖でその2つを手に入れることができたので。

BOLDの「スキルの投資家」という仕組み

西村:Howのところでいうと、何を意識して、どう行動して個の市場価値を高めてきたんですか?

:私の場合は本当に純粋にマーケットが欲しているもの、かつマーケットに出ていないものが合致したときに情報を出せばいいと。その市場で求められているものにプラスして、自分がそこにハマるかどうかですね。

簡単にいうと、私が最初に大失敗したのが、恋愛系のおもしろい記事をひたすら出していたんですけど、まったく読まれなくて。恋愛系ブロガーを目指していて、はあちゅうさんが人生のメンターで憧れだったんですよ。

ハヤカワ五味氏(以下、ハヤカワ):そうなんだ。

:「100パーセントキスができる癖」みたいな、どうしようもない記事を出して、ぜんぜんバズんなかったんですよ。やっぱりこれって誰が語るのか、例えばお金を払ってでもその記事を読みたい、情報が欲しい人はどういう層なのかという市場性が大事で。

あと個人としてのハマり度が大事だと学んで、自分のタグを洗い出した時に、中国だというところと、そういった情報が市場にそんなになかったので、そっちに出したら一気に跳ねた感じですね。

西村:ありがとうございます。川名さんの会社では、スキル投資というところをビジネスとしてやられていますが、川名さん流の個の市場価値の高め方についていかがですか?

川名:SNSってすごくパワーがあるけれど、マスに向けてアピールをして、マスからの認められ度合いによって価値が上がっていくと思うんですよね。でも、SNSを使うのがすごく上手な世代が増えてきている中で、次にもう1回上手な人同士の中で差別化をしていく時に、どこに力を入れていくのかなって。

そうすると、もう1回リアルの世界に戻っていって、この人に認められれば価値が高いと思われる会社や業界のキーマンに深く刺していけるかが、1つの戦略だと思っています。

個々のクリエーターでいうと、これまではどこかがまとめて仕事を受けて下請けの外注に出して、発注する人と下請け先の関係で、その人の価値は発注元が決めてしまうかたちだった。

それだと自分の価値を高めていきたくても、なかなかチャンスがなかったりするので、BOLDでは仕事をしてくださるクリエーターの方はギルドメンバーなんですけども、「スキルの投資家」というふうに呼んでいます。

発注元と下請け先ではなくて、一緒にスキルを投資していく投資家の仲間として、さらに価値を高く出せる投資家同士で集まって、より大きなインパクトを出していく取り組みをしています。

西村:なるほど。スキルの投資家として、自分の時間だったりお金を投資していくと。そこでリターンを得ていくというのは、すごくいいキーワードだと思いました。

なぜ起業家たちはプログラミングを学ぶのか?

西村:真子さんにもお聞きしたいんですが、YouTuberの活動以外に、本業でテックキャンプというプログラミングの授業をやられていて、起業家の方々がプログラミングを学んだりするじゃないですか。これも起業家のスキルの投資だと思っていまして。

真子:そうですね。

西村:なぜ起業家たちはプログラミングを学ぶのかなと。個の市場価値の高め方に紐付けるとどんな感じでしょうか。

真子:基本的には「コンプレックスを克服したい」ということが大きいと思います。IT企業やテクノロジーの業界で会社を大きくしていこう、経営していこうとしているのに、その根幹であるプログラムについて理解していない。書いたこともないのはいかがなものかと思ってくださる経営者の方が多くいますね。

西村:コンプレックスを解消し事業をよりグロースさせるために、あえて時間とお金を投資して学んでいるんですね。

真子:短期の海外留学みたいなものです。1ヶ月アメリカに行ったからといって、大して英語をしゃべれるようにならないし、第一線で活躍できるわけでもない。でも、違う文化に触れてみたり、やって気づくことって意外と多いんですよね。頭で考えるよりも、やってみて気づくこともたくさんあるので、優秀な方ほど体験価値を理解しているんですよ。

「学んで何の役に立つの?」とか、頭で考えてみんなが納得することって、もう価値がないと思っていて。すごく先進的な経営者であるウェルスナビの柴山和久さんや日本交通の川鍋一朗会長、スカイマークの佐山展生さん、サッカーの本田圭佑さんなどは考えるよりもまず動く。そういう瞬発力で受講していただいた感覚があります。もちろん、テックキャンプに来ている人だけが先進的というつもりはまったくないんですけど(笑)。

西村:うんうん(笑)。

真子:それってもうマジョリティ、コモディティなので。結局、市場価値を上げるということは、ある意味みんなが納得しないことをやる。このIVSで話していないことをやる。それが価値を上げることの本質だと思いますね。

西村:逆張りですね。

真子:市場価値が高いことは少数ということなので、みんなと同じことをやってはいけないと思いますね。もちろんこういう話を土台に何か発展した発想するわけですけどね。こういう話が意味ないとは思わないですけど、基本的には周りがやっていないからやるというのは大きいと思います。

経営者でプログラミング、40歳超えてプログラミング、ゼロから1日10時間、1週間やるということはみんなやらないので。すごい優秀な方はそういうところに嗅覚を働かせて、「第一線で俺がやってやるよ」という勢いを感じますね。

先行者利益が得られる場所に飛び込む

西村:なるほど。そういう意味では、僕は「メタバース(注:仮想空間上のミラーワールド)」という概念を学ぶために、子どもたちや奥さんとフォートナイトを毎日やっているんですけど、これもけっこう時間や体験価値を得るための投資なんですけど。

真子:今のおじさん世代はフォートナイトをやってないじゃないですか。でも、明らかに新しいSNSのプラットフォームとして確立してきていて、そういうのをやったほうがいいと思うんですよね。僕もフォートナイトやろうとしています。

西村:みんながやっていないものをやって、それがこのあとブレイクするか誰もわからないけど、まずはやってみるのが必要だと。

真子:YouTubeだってそうですよ。まずやってみるという感じで、あまり考えすぎると結局みんなと同じことをやっちゃいますよね。

ハヤカワ:それこそ先行者利益ってなんだかんだあると思っていて。私のTwitterやnoteはフォロワー数が多いんですけど、単に早めにやっていたというだけで、特に何か仕掛けていたわけではないんですよね。

みんなが合理的だなと思ってから始めると先行者利益って起きづらかったりするので、1つ手っ取り早くというか、マーケ的な側面じゃなくてちょっと前乗りでやる力も必要かなと思いますね。

場所が伸びていくのに乗っかって伸びることもできるので、やはり成熟しているところに参入するのは難しいというか。やはり私は今からTwitter始めるのは無理だと思うので、これから伸びるところに乗っかるみたいなことは、TIPSとしては1つありだと思いますね。

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