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ここだけの話、自治体コロナ対策システム構築の裏側。(全2記事)

2021.01.29

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コロナ禍で増えたのは感染者数だけではない 相模原市がkintoneで実現した、起死回生の給付金管理システム

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が開発するツールの活用事例や、チームビルディングのノウハウなどを紹介する総合イベント「Cybozu Days 2020」が、東京、大阪(※オンラインのみ)の2会場で開催されました。2020年は「エゴ&ピース」をテーマに、さまざまなセッションが行われました。本記事では、「ここだけの話、自治体コロナ対策システム構築の裏側。」の後半をお送りします。特別定額給付金の交付状況に関する問い合わせが殺到する中、相模原市がkintoneを使ったシステムでどう対応したかを担当者が語ります。また、システム導入時の現場の苦労や、自治体業務の未来についても意見を交わしました。

相模原市では、特別定額給付金に関する問い合わせが急増

笠松慎平氏(以下、笠松):では続きまして、埼玉県さまとは違った用途で使われている相模原市さまではどんなことがあったのか、ご紹介いただこうと思います。よろしくお願いいたします。

橋本能宏氏(以下、橋本):みなさん、こんにちは。相模原市総務局情報政策課からまいりました。橋本と申します。本日はよろしくお願いします。

私はふだんはRPAの推進や情報共有基盤の管理、運用といった業務をしています。今回は特段通常の業務とはあまり関連性がないんですけれども、たまたま縁があってサイボウズのみなさんと一緒に、コロナ対応に関する業務をやらせていただきました。

さて、相模原市のここだけの話になりますが、先ほど埼玉県さまからは感染者の健康管理といった観点でのお話があったかと思います。一方で相模原市は、ほかにも重要な課題がありました。

それが給付金の対応になります。今回、法人向けの持続化給付金、個人向けの特別定額給付金、それぞれ各自治体で対応を進めているとは思うんですけれども。この個人向けの特別定額給付金に関して、やはり市民のみなさんからは非常にたくさんの問い合わせを受けておりました。

当然専用の窓口、コールセンターなどを準備したんですけれども、問い合わせの量が多いものでパンク寸前の状況の中、kintoneを使ったシステムでうまく切り抜けられたというお話をしていこうと思います。

さて、給付金の窓口対応についてなんですが、かかってくる電話の内容は、主に2種類が占めていました。1種類はやはり給付金の申請方法に関する問い合わせ、そしてもう1種類が給付金の交付状況に関する問い合わせです。

特に相模原市ではオンライン分の申請の交付が5月末から始まっていましたが、その頃から交付状況に関する問い合わせがかなり爆発的に増加してきました。

おかげでコールセンターが、交付前からそれなりに電話は鳴り続けていた状況なんですが、それ以上に電話が鳴り響きまして、なかなか市民のみなさんに必要な情報を届けられない。行政サービスの質が低下してしまうんじゃないかという懸念がありました。

そんな中、そもそも交付金の交付状況を窓口に問い合わせるのではなくて、自分たちで調べられる。自分の番号を検索することで交付状況がわかるようなシステムが準備できれば、この状況を改善できるんじゃないかということで、検討がスタートしました。

スピードと柔軟性が不可欠なシステムの立ち上げ

橋本:とはいえ、このシステムには2つの重要な要素が必要であると考えておりました。1つはスピード、そしてもう1つが柔軟性です。1点目のスピードについてなんですが、冒頭お話しましたとおり、すでにこのシステムを検討した時には交付が始まっておりました。

今まさに交付に関する問い合わせが増えている。一方、交付状況はどんどん粛々と進んでいくので、時間が経てば経つほどこのシステムの需要そのものがなくなっていってしまう。そんな中、今まさにすぐにでも使えるシステムを準備するだけのスピード感が必要でした。

また、このシステムを検討していた際にはほかの事業者、ベンダーさんから類似のシステムがいくつか出ている状況でしたが、どれもテンプレート型の提供方法に絞られていて。

例えば、相模原市としては非常に単純で明快な検索システムを準備したかったんですけれども、そうではなくて入力の項目が非常に多かったり、項目を削除できないという部分がありました。ですので、いわゆる相模原市の仕様、ニーズを受け入れるだけの柔軟性を持つシステムである必要がありました。

そんな中、加古川市の事例が私たちの目に留まりました。当然それを構築しているkintoneにも注目し、「これならばもしかすると相模原市のやりたいことができるのではないか」というところから、さっそくサイボウズさんとコンタクトを取り、打ち合わせの場を設けることになりました。

そこからは、非常にスピード感がある展開でものごとがどんどん進んでいきました。6月19日に打ち合わせおよび検討を始めて、私たちのやりたいことをサイボウズさんに伝えたところ、どうもkintoneとkViewer、この2つのツールを使うことで私たちのやりたいことが実現できそうだというお話をいただけまして、そこから3日後に庁内での調整が完了し、kintoneでシステムの構築がスタートします。

そこからは私たちが主に構築をしたわけではなくて、笠松さんや瀬戸口さんの協力のもと、気づけば1週間後にはシステムの大枠ができあがっていまして、さらにそこから1週間かけてホームページでの公開に向けたブラッシュアップを実施。そして、7月7日には特別定額給付金申請状況の管理システムというかたちでホームページ上に稼働を開始させていただきました。

ここに映っているのが実際のシステムのイメージです。市民の方は自身の受付番号を入力していただいて、検索のボタンを押すと、今の自身の申請状況がわかると。非常に単純明快なシステムになっています。

市民が1日1万回以上も検索する、便利なシステムが完成

橋本:さて、このシステムを構築するうえで非常に重要だったのが、先ほどの埼玉県さまのお話にもあったとおり、私たち情報政策課と担当課、そしてサイボウズさんとの密な連携でした。

担当課からの細かな要望を私たち情報政策課で吸い上げ、サイボウズさんにお伝えしました。翌日にはだいたい一晩で、私たちが伝えた要望が実際にシステムとして反映されていて、もう見て触れるような状況になっていました。

それをまた担当課にフィードバックして触ってもらったり見てもらったりして、また出てきた意見を私たちが取りまとめ、サイボウズさんに伝える。アジャイル型の開発が実際にできたのかなというところで、非常にスピード感を持って、かつ私たちのやりたい仕様に沿ったシステムが完成できたのかなと思っています。

そして、作成できたシステムの導入の結果、1日1万回以上、市民のみなさんに検索されるようなシステムになりました。おかげで市民のみなさんは、わざわざ電話をかけなくても、気になる交付状況がすぐに見られる状況ができた。さらに交付状況に関する問い合わせもかなり数が減りまして、結果的に職員負荷の軽減にもつなげることができました。

まさにこのkintoneで作成したシステムは、今回の給付金の交付にあたっては起死回生のすばらしいシステムになったのかなと思っております。本当にその節はサイボウズのお二人にお世話になりました。ありがとうございました。

笠松:kintoneの強みと言える柔軟性やスピードの部分を非常に評価していただいたことに加え、体制を整えていくというところで現場の方の声を吸い上げていただいたからこそ、スムーズに成功したシステムだと我々も思っております。橋本さん、本当にありがとうございました。

システム導入時に現場が苦労したこと

笠松:さて、ここからはここだけの話トークセッション編ということで、先ほど登壇いただいたお2人に加え、実際に現場で構築を担当された方々にも登壇いただきながら、システム構築の現場での大変だったところも伺っていきたいと思います。

ここだけの話トークセッション編では先ほど登壇いただいた2名に加えて、現場で構築を担当された埼玉県の上野さま、相模原市の山澤さまにも同席いただきます。それでは上野さんから簡単に自己紹介をお願いいたします。

上野結里氏(以下、上野):埼玉県の上野と申します。よろしくお願いします。

山澤里奈氏(以下、山澤):相模原市の山澤と申します。よろしくお願いいたします。

笠松:どうぞよろしくお願いします。時間も押してきていますが、さっそくガンガン質問をしていきたいと思っております。

まず1つ目は、導入にあたって苦労した点や、それをどんなふうに乗り越えてきたのかについて、実際に現場で構築を担当された上野さん、山澤さんからお話を伺いたいと思います。まずは上野さんからお願いいたします。

上野:苦労したことは、まずはスケジュールがタイトだった点です。あとはこのシステムの成功は庁内でも注目度が高かったので、その都度幹部にも説明をする必要がありました。またゴールデンウィーク中ということもあって、各所との連携にも苦労しました。

笠松:ありがとうございます。埼玉県さまはゴールデンウィーク中に休みを削って構築されたというところがあったので、そのへんは非常に大変だったと思います。我々が見えていたところはそこだけだったんですけれども、庁内の方々とのやりとりが大変だったということで、そのあたりは本当に裏側の部分かなと思います。

実際庁内の調整以外のところでは、どんなふうにタイトなスケジュールを乗り越えられたのでしょうか?

上野:構築の部分は、登壇されているサイボウズ社のお二人にかなり手厚い支援をいただいていたので、スケジュールどおりにこなせました。休日の夜20時くらいから「打ち合わせさせてくれませんか?」という時も快く対応していただいたので、本当に感謝しております。ありがとうございます。

笠松:ありがとうございます。今日は褒められっぱなしで、非常にいい気持ちで寝られそうな気分になっております(笑)。そうしましたら同じ質問なんですけれども、山澤さんからも導入にあたって苦労した点と、それをどう乗り越えたかについて教えていただけますか?

山澤:リリースまで時間がないにもかかわらず、現場から細かいニーズがあがってきたことです。例えば文字の大きさや色など、現場部門の指定がたくさんありました。その点についてはサイボウズさんに都度ご相談させていただいて、すぐにレスポンスいただくことで解決しました。

笠松:ありがとうございます。相模原市さんのシステムはオープンに公開するホームページに載せるものだったので、現場の担当者の方々が非常にユーザーのインターフェースを気にされたところがあったんですね。

そういった部分の細かい要望をきちんと吸い上げていただいて、それを我々に教えていただいて一緒に作ったこともそうなんですが、何度も画面を見ていただきながら作っていけたところが非常によかったのかなと思っております。ありがとうございます。

システム導入後に残ってしまった課題

笠松:では続いて、導入後に残ってしまった課題についてもお話を伺っていきたいと思います。これも実際に現場で構築を担当された上野さんからお話をいただいてもいいですか?

上野:元の所属に戻った際の引き継ぎに課題が残りました。私たちはコロナ業務が落ち着いた5月末に元の所属に戻ったんですけれども、kintoneをもっといろいろな用途に活用したかったんです。けれども、現場にkintoneのノウハウを引き継ぎきれなかったことが悔いが残っている点です。

笠松:ありがとうございます。そうですよね。埼玉県さまは最初に佐々木原さんからも紹介があったのですが、緊急でドナドナのようにとおっしゃっていましたが(笑)。緊急で集められたということもあって、急に元の所属に戻るということがけっこうたくさんあったんですよね。

そんなお忙しい中でも、もちろん今使っているシステム自体は引き継いでいただいて、今も運用いただいているんですけれども。その後、こういうふうにしていきたいと上野さんや佐々木原さんに思っていただいていたところがなかなか実現できなかったということだと思います。ぜひまたお二人に戻ってきていただいて、今後のkintoneの活用を広めていただければと思っております。

同じ質問を山澤さんにもお答えいただきたいと思います。導入後に残った課題はどういったところがありましたか?

山澤:kintoneには非常に高い可能性を感じている一方で、インターネットクラウドでの利用が基本となるため、別の業務で利用しようと思った時に情報セキュリティポリシーに引っかかることが多いです。

笠松:なるほど。ありがとうございます。まさしくこれはセキュリティポリシーが非常に厳しい自治体ならではの要件かと思います。ちなみに、どういった用途でkintoneをもうちょっと使っていけるんじゃないかというお話があがってきたんでしょうか?

山澤:例えば職員向けのポータルサイトでの活用や、本庁と出先機関での情報共有基盤としての活用にも期待しています。最近では押印を減らす動きもあるので、そちらでも活用できるのではないかと思っています。

笠松:ありがとうございます。最近私もよくニュースで見ますけど、押印の申請をどんどん減らしていこうという動きが国からも出てきているので、そういったところでもぜひクラウドサービスの導入が早い場合も多いですので。そのへんのハードルが下がってくるようなふうになってくればいいなと私たちも思っていますし。

そのきっかけとしてぜひ事例をどんどん出していきたいなと思っていますので。相模原市さまだったりとか埼玉県さまにはどんどんトライして、我々も一緒にご支援をさせていただけたらと思っております。ありがとうございます。

自治体業務のデジタル化が進む中で求められること

笠松:ちょっと時間も押してきているので最後の質問になるんですけれども、自治体業務の今後について、最初にトークセッションでお話いただいたお二人にお話を伺いたいと思います。最後の質問に関しては相模原市の橋本様より、自治体業務が今後どうなっていくのがいいのか、今どんなふうになっているのかをお話いただいてもいいですか?

橋本:やはりこのコロナのもと、テレワークやWeb会議の環境がひととおり揃いまして、今まで対面でやっていた打ち合わせや研修などはどんどんWebでできるような状況になりつつあります。

また先ほど山澤からも話があったとおり、押印を減らしていこうという動きの中で、どんどん自治体業務のデジタル化が進み、推進する立場には追い風が吹いているのかなと思っています。

今後は自治体のデジタルトランスフォーメーションですかね。こういった動きの中で情シス部門に求められるスピード感がとても重要になってくると思っていて、それを反映させていくうえでは、やはり機器の調達等が不要なkintoneに代表されるクラウド型のサービスはどんどんどんどん重要度が増していくんじゃないかなと思っています。

一方で、やはり先ほどの話にもあったとおり、セキュリティポリシーの部分をしっかりと整理していくことが大きな課題になっているのかなと思っております。このあたりの整理を進めつつ、どんどんクラウド型のサービスの拡充を進めていければと考えております。

笠松:情シスに求められるスピード感といったところは、本当に今一般企業でも言われていることで、DX改善をしていこうという中で、そういうお話がたくさんあがってくるんですけれども。自治体の中でもそうしたところが今後求められそうということですね。

加えて、セキュリティポリシーをどう担保するかという課題も越えていく必要があるということで、今後どうなっていくかはわかりませんが、スピード感を持った自治体情報システムが生まれてくるといいなと思いますので。ぜひ一緒にがんばっていきたいなと思っております。本日はありがとうございます。

kintoneを活用しつつ、“役所あるある”を乗り越えていきたい

笠松:それでは埼玉県の佐々木原様からも、自治体業務の今後について語っていただいてもよろしいでしょうか?

佐々木原:私はこのコロナの対応を通じて、やっぱり県庁の業務体系自体を変えないといけないのかなと改めて強く思いました。私も幸いながら、現場の声を聞く機会が今回コロナ対応の中でございまして。

例えば県内のホテルであったり、あとは保健所や衛生研究所という、いわゆる県庁内でもコロナ対応の最前線を担うところで奮闘される職員の声を聞いていたんですけれども。

その中でいろいろと事務処理的なところの話にもなったんですけれども、正直まだまだ現場はエクセルを使った力技でのアナログ的業務が多々あるなぁと思っておりました。

こういったkintoneのようなツールを使えばまだまだ業務が効率化されると思いましたし、私のようなスキルのない人間でも簡単に操作できるというところもございましたので。やっぱり自分たち主体でkintoneのようなものを使えば業務を変えられるんだということがわかりましたので、今後も幅広く運用をしていきたいなと思いました。

ただ一方で、実際に組織がコロコロ変わってしまって、なかなか引き継ぎがうまくいかなかったという話はまさに“役所あるある”なのかなという話で。実際にkintoneを入れるのはいいとしても、やっぱり組織自体も柔軟にうまくできるようなかたちで整備をしないといけないのかなと思いました。

笠松:ありがとうございます。深いですね。現場の方が変えていけるツールがあったとしても、体制の面で整わなかったら、コロコロ変わってしまったシステムをどう引き継いでいくのかであったりとか、理想像がもうちょっと先にあるのに途中で断念してしまうこともあるので。

ツールだけでなくて風土や体制の部分も一緒に整えていく必要があるということですね。勉強になります。ありがとうございます。

最後に、公共チームの瀬戸口から今日のセッションを踏まえて、今後の自治体業務の話や締めの言葉をお願いしたいと思います。

自治体の業務効率化や働き方改革を推進していく

瀬戸口:時間もオーバーしているので手短に。改めまして埼玉県さま、相模原市さま、このたびは誠にありがとうございました。今お話にあったとおり、コロナ対応といういろいろな新しい業務が生まれてきたというところで、私たちとして見えている部分と見えていない部分があったんですけれども。そこの苦労まで含めてお話をお伺いできて、非常に参考になりました。

お話にもあったとおり、今回のコロナ対応を踏まえて、自治体の現場でもより一層業務効率化や働き方改革が加速していると私たちも感じておりまして。そういったところを推進していくうえで、kintoneのようなクラウドシステム、ICTツールが果たせる役割はさらに広がっていくと私たちも実感しております。

今後もkintoneは自治体向けに新しい取り組み等もいろいろ企画していたり、ご相談を受けて対応しているような案件もたくさんありますので、引き続きkintoneの自治体分野での活躍にもぜひご期待ください。

このたびは誠にご清聴ありがとうございました。

笠松:ありがとうございました。

(会場拍手)

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