Femtechという言葉が生まれた背景

林亜季氏(以下、林):あらためて、今回の「Femtech」という言葉、概念について、会場の中でご存じの方はどれぐらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

半々……過半数という感じですね。半分ちょっとという感じで、みなさんご存じなのかなと思うんですけど、あらためましてFemtechについて、寛子さんから教えていただければと思いますので、バトンタッチします。

中村寛子氏(以下、中村):みなさんご存じの方も多いので、リキャップも含めて、Femtechについてお話しさせていただければなと思います。

「Femtech」は、「Female」と「Technology」を合わせた造語になっています。

定義として一般的にいわれているのは「健康課題を解決するために開発された、女性の心身にまつわる固定観念、そして価値観を変容するテクノロジーを用いたプロダクト」という意味合いになります。

(この言葉が)生まれたきっかけは、2012年、ドイツのベルリンに「Clue」という月経管理アプリがあるんですけれども。

日本には「ルナルナ」などもあるかと思いますが、そのドイツ版を作ったIda Tinさんという方がいらっしゃいます。

みなさん、2012年を思い返していただくとわかると思うんですけれども、iPhoneが出てきて数年後のタイミングでした。彼女はもともとバイク乗りで、iPhoneが出てきて「自分の生理管理ができたら、バイク乗りのスケジュール管理もできるのではないか?」というところで……。

:えっ、そういうことだったんですね。

中村:そうなんですよ、こういうアプリを作ったのが最初と言われています。

その時に「もしかしてこれはビジネスになるのではないか」ということで、投資家の方を回り始めたところ、経血とかいわれると「えっ、ちょっと……うーん」という感じでなかなかお金が集まらなかったと。

そこで「ウェルネス産業の中にFemtechという新しい産業が生まれているよ」と見せることによって投資を集めようということで、生まれた言葉と言われています。

逆風に負けずに伸びる、Femtech業界

中村:ここから大きく3つに分けてお話しさせていただければなと思います。まずは投資額というところで、2012年は、まさにFemtech業界に60億円の投資がされていたという実績から、今年は1,300億円まで投資額が上るともいわれています。

:めちゃくちゃ拡大してますね。

中村:そうなんですよ。めちゃめちゃ拡大しているということのもありまして。今回はコロナということもありますが、ある意味、逆風に負けずに伸びている業界ではあるかなと思っています。昨年(2019年)、初めてIPOで上場した企業も出たんですね。

:うーん、なるほど。

中村:(スライドを指して)こちらは企業向けの不妊の治療保険を出している会社さんなんですけれども、去年初めて出て。今年は数社また出して、上場している企業が出始めています。

(Femtech関連の)会社の数もすごく伸びてきています。実はアメリカのあるマーケティングのリサーチ会社によると、2017年には50社でした。

私たちが「これってもうちょっとアップデートしてもいいんじゃないかな」ということで、昨年9月にアップデートしたところ、221社まで伸びていたと。

:あっ、このマップを作られたんですね。

中村:そうなんです。

:なるほど、すごい(笑)。

中村:自分たちで作ったんです。というのは、私たちはすごく好きだから「Femtech、Femtech」といっているけれども、昨年の9月のタイミングだと周りからまったくその声が聞こえなかったんですね。「あれ、もしかして私たちだけなのではないか?」と。

そう思った時に「確かに日本で海外のFemtech企業さんはあんまり見ないな」と思って「どれぐらいの企業が日本に来ていないのか数えてみたいね」というところから「カオスマップ作ってみる?」ということで、作ってみたのがこれですね。

:なるほど、すばらしい。こんなにいっぱいあるんですね。

中村:そうなんです。最初はもう「作ろう」と言ったことに一瞬、後悔を覚えたぐらい(笑)。でも、作ってみて改めて確信できたのが、やっぱり9割以上が日本に来ていないということです。これがわかったのは、やっぱり大きなfindingsでした。実は、今年(2020年)3月にまた更新をしていまして……。

:また増えてる(笑)。すごい。

中村:そうなんです(笑)。実は今また更新をかけていまして、480社以上になっています。

日本だけでも、今年(2020年)4月に出させていただいたタイミングで、実は51サービスあります。

こちらも今まさに更新をかけているんですけれども、90サービス以上になっています。実は、日本のプレイヤーさんの中でも更年期のプレイヤーさんが生まれてきていたり、本当に今までいなかったプレイヤーが登場してきています。

「女性の健康」の進化が遅かった、4つの仮説

中村:「実際にどう進化してきているんだっけ?」というところなんですけれども、まずは「女性の健康」の進化が遅かったわけを、弊社で4つの仮説を立てさせていただいています。

1つは文化ですね。実際に生物学的女性として生きているなかで、ウェルネスやセクシャルウェルネスに対して話すことがタブー視されていたという文化。2つ目は医学。医学に関しても、医学研究に生物学的女性の差を反映されていなかったところ。

あとは投資ですね。正直、男性社会の投資業界で、この1.4という数字。これは、昨年(2019年)メディカル業界に投資をされた中の1.4パーセントだけが、女性のウェルネスに投資された数値と思っていただいて大丈夫です。

:えっ、わずか。

中村:わずか1.4です。それは男性だけだからというわけではなくて、実際に女性の投資家も今は徐々に伸びているタイミングなので、もちろん今後また見込めるかなと思っています。

4つ目が起業で、正直、女性の起業家がまだまだ少ないというところで、この5パーセントしかいないんですけれども。まさに今日の「meeTalk」のように、今、E-EconomyならぬSHE-Economyの成長が見込まれているので。女性がどんどん世の中に出て働くというところに関して、SHE-Economyの成長がどんどん伸びると、ここ(Femtech)もどんどん伸びるのではないかなと私たちは思っています。

フェミニズムに起きている、4つのムーブメント

中村:私たちfermataは、フェミニズムに4つのムーブメントが起きているのではないかなと思っていまして、今、私たちは第4のウェーブにいると思っています。

:なるほど。わかりやすいですね。

中村:ありがとうございます。まさに第1ウェーブが投票をする権利で、第2ウェーブは経済的自立をする権利。第3がみなさんの覚えもあるかと思うんですけど、#Metooムーブメントの「女性」らしさからの解放の権利。そして今、2000年以降は、自分の身体の一番の理解者になる権利を訴えるフェミニズムの4つのウェーブになります。

対象範囲も第1波、第2波、第3波、第4波となっています。

第1波がまさに(Femtechが)生まれたタイミングですね。例えば「生理」と書いてあるんですけど、上の写真にもあるように、ナプキンやタンポンを必要としない吸収性の高い生理ショーツもあったり。こういういろんなものもあるんですけれども。

あとは、第2波に関しては更年期、第3波に関してはセクシャルウェルネス、今の第4波に関しては女性特有疾患ということで、いろいろな流れが起きていると思います。

2019年のセクシャルウェルネスとかすごくわかりやすいと思うんですけれども、CESで「Sexual Wellness」の……。

:そうですよね。CESで本当に盛り上がってますよね。

中村:そうなんです。2019年にまさにban(禁止)されて、そこで女性たちが訴えて、2020年のコロナになる直前のCESで初めて「Sexual Wellness」というカテゴリが認められたというぐらい、本当にどんどん成長している分野にはなるかなと思っています。

最後にちょっと規模もお話しさせていただきたいなという意味で、入れさせていただきました。

:いや、もう大事です。大事です。

中村:2025年までには5兆円規模と言われています。

今「世界市場規模」と書かせていただいているのですが、これは北米だけの市場の規模と考えていただければと思っています。ここにアフリカや欧米やアジアが入ってくると、まだまだどんどん伸びるのではないかなというところと。

あとは亜里咲さんもだと思うんですけれども。昨年は私たちが本当にずっと「Femtech、Femtech」といっていても、誰もなかなかピンと来なかったんです。それが今年に入っていきなり、本当にありがたいぐらいにメディアの方に取りあげていただくことによって、徐々にいろんな方に知られるような産業になってきているのが、今のFemtechかなと思っております。

ちょっと短く簡単にはなるんですけれども、そのような市場がFemtechになります。