サイボウズ法務チームのテレワーク対応

深澤修一郎氏(以下、深澤):みなさん、こんにちは。本日はCybozu Days 2020にお越しいただきまして誠にありがとうございます。

本セッションは「押印や他部署からの契約相談はどうしている? 法務チームのテレワーク対応」といったところで、サイボウズの法務チームは現在テレワークで業務をどう行っているのかを実際の担当者の方に伺っていきたいと思います。

本セッションは2名体制で進めさせていただければと思います。モデレータを務めさせていただきますのは、私、サイボウズの深澤です。よろしくお願いいたします。

簡単に自己紹介をさせていただきますと、現在はビジネスマーケティング本部というマーケティングの部隊に所属し、主にテレワークのコンテンツ制作を担当しております。

もう1名ゲストをお呼びしております。サイボウズ法務統制本部の三浦さん、自己紹介をよろしくお願いいたします。

三浦修平氏(以下、三浦):法務統制本部の三浦と申します。

私はこのスライドにある通り、2018年に中央省庁の1つである総務省からサイボウズの法務統制本部に転職をして参りました。普段は契約書の作成・レビューであったり法務相談、社内規定の作成といった基本的な企業法務の業務を担当しております。

本日は他にも、営業本部長や人事本部長が出るセッションがある中でこのセッションにお越しいただいたということは、かなりコアな企業法務の方がいらっしゃると思います。そういった方たちに少しでも参考になるお話ができればなと思っております。本日はよろしくお願いいたします。

深澤:よろしくお願いします。

企業法務が「実名アカウント」でTwitterをスタート

深澤:では今日は法務チームのテレワーク事情について、いろいろと教えていただければと思います。

最初に2点お知らせをさせてください。本セッションはSNSでのシェアOKとなっております。#CybozuDaysでつぶやいていただければと思います。何か気になったことがあれば、ぜひ拡散いただければと思います。ちなみに三浦さんも最近Twitterを始めたと伺っておりますが。

三浦:そうですね。2、3ヶ月前ぐらいから実名のアカウント(@ShMiura)で始めまして。企業法務担当者が実名のアカウントでTwitterするのってなかなか難しく……。

「つぶやいちゃいけないことがいっぱいあるんだろうな」と日々いろいろ考えながらやっているんですけど。その結果、仕事に関係ないネタツイートをしてしまったりとか、いろいろ工夫しながらやっています。もしご関心ある方がいらっしゃいましたら、ぜひフォローしていただけたらと思います。

深澤:ありがとうございます。「三浦修平」で検索すれば出てきますか?

三浦:はい。「三浦修平」と検索すれば劇団の人と私の2人が出てくるので。私はたぶん、一目でわかると思うので。ぜひ検索してください。

深澤:ぜひ興味ありましたらよろしくお願いします。あともう1点ですね。本日はスライドの撮影OKとなっております。何か気になるところがありましたらぜひ撮影いただきまして、持ち帰っていただければと思います。ではさっそく本題に入っていきたいと思います。

深澤:ではさっそく話を伺って行きたいのですが、その前に、こちら会場にいる方のなかには、サイボウズの法務チームが、サイボウズ社内でどのような役割をしていて、またサイボウズの法務チームは、どんな特徴を持っているのかご存知ない方もいらっしゃると思います。三浦さんからお話をいただけますでしょうか?

三浦:弊社の法務チームの役割は大きく4つございまして、1つは法務ですね。契約書の作成といった業務をやる企業法務の役割と、2つ目は監査ということで、法定監査なり認証監査といった監査業務も行っております。3つ目は知財ということで商標・特許等の出願を管理する仕事もしております。4つ目は統制で、広く決裁権限の整理といった社内の仕組み作りをしております。

深澤:ありがとうございます。企業によって部署が分かれていますけど、サイボウズだとこちらの4つを担当されているのですね。

自社のクラウドサービスを業務でも使うメリット

深澤:では続きまして、サイボウズの法務統制本部の特徴について伺っていきたいと思います。

三浦:サイボウズの法務チームならではの特徴は3つございます。

1つ目は、ビジネスの中身としてクラウドサービス事業が中核になっているということです。クラウドサービス事業を中核とする場合の特徴としましては、基本的なサービスの条件として利用規約といった統一的な契約条件を準備しておりまして、その内容の管理がメインになってくるといったところがございます。

2つ目は、グローバルということで、弊社の場合はアメリカ、中国、オーストラリア、他にも駐在員事務所も含めると海外の拠点が複数あります。当然ながら海外の案件も増えてきている中で、外部のローファームとも協働していくといった業務の広がりがございます。

最後3つ目は、システム改善ということで、これはサイボウズ特有かと思うんですけど。弊社ではクラウドサービスの「kintone」「Garoon」といったグループウェアを提供していますので、会社の中でもグループウェアとして自社の製品を使っております。中でもkintoneという製品についてはノーコードで業務用アプリが作れるということで、現場の担当者もアプリケーションを自由に改善できます。

自分たちの法務チームで使うアプリケーションですとか、他部署に対応をお願いする押印申請のアプリケーションといったものも、法務が主導してアプリケーションの中身を作っています。そういったシステム改善やワークフローを考えていくことも1つの大きな業務となっているのが、サイボウズ特有なのかなと思いますね。

深澤:ありがとうございます。最後のシステム改善もやっているところが非常に興味深いなと思いましたので、こちらも後々詳しく伺っていければと思います。

サイボウズ法務チームの主な業務

深澤:では続いて話を聞いていく中で、具体的な業務でどんな業務を担当されているのかについて、概要を教えていただければと思います。

三浦:具体的な業務としましてはここに8つほど例を書かせていただいておりますけれども。

企業法務の方でしたら、なんとなくイメージが湧くと思うのですが、一般的な法務相談ですね。あとは契約書のレビューをしたり、押印申請の仕組みを整えること。4つ目としては商標・特許の管理をしている。5つ目は社内規定を作って、更新管理をしているという仕事があります。あとは利用規約を管理する仕事がございます。

あと、当然ながら法律の調査ですね。リーガルリサーチというかたちで法令調査をするという仕事もございますし、弁護士・弁理士といった外部の専門家の方々とのやり取りもございます。以上の業務が主なところかなと思います。

深澤:ありがとうございます。

在宅勤務を余儀なくされた法務部の実情

深澤:ではこういった業務をご担当されている中で、法務チームの方はどのようにテレワークに対応していったかについて伺っていきたいと思います。

法務の仕事でよくある課題として、例えばテレワークをする中でやっぱりハンコの業務があって出社しないと対応できないとか、契約書の関係で紙のやり取りがあるので、こちらもやっぱり出社しないといけないとか。

あとはメールや電話で外部の方ともやり取りをしないといけないので、会社に出ていかなければいけないこともあって、けっこうテレワークが難しそうだなという印象があります。

その中で、今年は特にコロナウイルスの感染が広まって緊急事態宣言があり、その中で多くの企業が在宅業務を余儀なくされていったと思っております。

最近もまた感染者が増え始めてしまいまして、またテレワークに移っていかなきゃいけないと。そういった状況の中で、法務部メンバーの方がテレワークに移られたといったところだと思うんですけど、実際のところ移ってどうだったでしょうか?

三浦:実際に今年の2月か3月ぐらいから移ったんですけど、特に大きな問題はなかったかなと思っています。チームメンバー13人全員が在宅勤務に移行しました。もちろんまったく問題がなかったわけではないんですけど、そこまで大きな業務上支障が生じるようなトラブルは特になかったなというところですね。

コロナ以前から取り組んでいた電子契約サービスの導入

深澤:では先ほどの3つについて、課題を挙げさせていただきましたが、ハンコや紙のやり取りや電話といった部分の対応については、どう工夫されたのか教えていただけますでしょうか?

三浦:先ほど触れた大きな課題が3つあったと思います。まずハンコの物理的な押印に関しては、弊社においてはコロナの影響を受けて在宅が始まる前から電子契約のサービスを導入しておりました。コロナの影響で出社が難しい状況になった際には、なるべく電子契約のサービスを使ってもらうように社内にお願いさせていただきました。

2つ目の紙のやり取りやメールの情報共有の部分については、先ほど少し触れたkintoneという弊社のグループウェアを使ってコミュニケーションを取ることで対応してきました。

最後ですね。電話対面会議ということで、法務の仕事をするには必ず現場担当者の方とのミーティングを通して実態を把握していくことが必要になってきます。そういった物理的なミーティングが難しい場合にはWeb会議のシステムを使ってコミュニケーションを図る対応をしておりました。

深澤:なるほど。こういったクラウドサービスをあらかじめ活用していて、オンライン上でコミュニケーションを取れる仕組みを整えていたんですね。

ドラッグ&ドロップでシステムを作れるkintone

深澤:ここからは実際にどんなシステムを使ったかについて、お話しいただきたいなと思っています。

三浦:業務設計の話をしていく上でkintoneは欠かせないサービスになってくるんですけど、この会場の中にはkintoneがどんなものかご存知ない方もいらっしゃると思いますので、kintoneというサービスについて深澤さんからご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

深澤:わかりました。では説明します。kintoneはデータベースのサービスになっており、業務に関わるデータをクラウド上に保存し管理できます。溜めたデータを一覧形式で見たりグラフ化することによって、利用者が見たい切り口で情報の管理をしていただけるサービスとなっております。

kintoneの最大の特徴は、ドラッグ&ドロップでシステムを作れるところです。この仕組みを利用して、法務チームのシステムは、法務チームのメンバーがkintoneで構築していると伺っています。

三浦:そうですね。

契約書レビューから押印申請まで通貫するアプリ

深澤:では実際にその業務の流れと、どんなアプリを利用しているのかについて伺っていきたいと思います。

三浦:具体的な業務アプリの説明をさせていただく前に、まず全体の業務設計を俯瞰的に見ていきたいなと思っています。

最初に法務依頼ですね。企業法務の場合、契約書の作成だったり法律相談といったかたちで、他部署から依頼されることからまず業務に入ることが多いと思うんですけど。

依頼者とのコミュニケーションのために法務相談箱というアプリを準備しておりまして、そちらに依頼者の方から「契約書レビューしてほしいんだけど」とか「この法律に基づいてどうやって対応したらいいのか」といった依頼が登録されます。その登録されたタイミングで法務にも通知が来まして、依頼をすぐに把握できる仕組みのアプリとなっています。

深澤:その中で押印業務があるものに関しては、どのように業務を進めるのでしょうか?

三浦:レビューが終わった契約書についてはそのまま押印申請に進むということで、法務相談アプリと連携してシームレスに押印申請にも進めるようなアプリケーションを準備しています。

深澤:図を見ると、こちらはその先に電子契約の仕組みがあるということですね。

三浦:そうですね。押印申請が完了して承認が下りると同時に電子契約のサービスと連携しまして、自動で取引先のお客さまに対して契約書が送られる仕組みにしておりますね。

深澤:ありがとうございます。

複数のアプリをkintoneプラットフォーム上に集約

深澤:次に図を見ると、タスクの管理に連携しているようですが。

三浦:法務相談箱に登録されたタスクについては、法務内のタスク管理アプリにそのまま連携して登録されるようになっています。そのタスク管理アプリ上で具体的なタスク対応のコミュニケーションを法務チーム内でやっていくかたちになっています。

深澤:なるほど。続いて図には中長期のプロジェクトを管理するアプリがあるようですが、タスク管理アプリと分けて管理されているのでしょうか。

三浦:依頼された仕事以外にも、例えば〇〇法改正の対応とか社内体制の整備といったものは、依頼ベースではなく法務がプロジェクトベースで進めていくタスクもあると思うんですけど。

そういったものについてプロジェクトベースで管理するアプリが別にあって、プロジェクトから枝分かれした個別のタスクについてはタスク管理アプリに集約させています。これにより、タスク管理アプリで現在進行中のタスクを一括的に管理するような仕組みにしています。

深澤:そして、日々の活動は日報アプリに登録されているのですかね?

三浦:そうですね。タスク対応したあと、そのタスクにどれだけ時間がかかったかという工数管理も日報アプリで合わせて行っています。

深澤:残りの各種情報は別途アプリで管理されているのでしょうか?

三浦:そうですね。契約書の雛形ですとか、商標の取得状況の管理ですとか。社内規定の最新版と過去の改訂履歴の管理といったものも、それぞれアプリケーションを準備して管理しています。

深澤:一見アプリが別々に存在して見えますけれども、すべてkintoneのプラットフォーム上にあるのでデータ連携しやすい作りになっているんですかね。

三浦:そうですね。相互間に行き来できるように、同じプラットフォームでリンクを飛ばしやすく、連携させやすい状況になっていますね。

深澤:ありがとうございます。このような方法で管理されているとのことでした。

法務相談を全社公開している理由

深澤:では具体的に、ひとつひとつのアプリをどのように使っているかを見ていければと思っております。

まず他部署からの法務相談をどう対応しているのか、実際の画面で見ていければと思います。ご説明いただいてもいいですか?

三浦:こちらが法務相談箱のアプリになっていまして、左の欄には依頼者の方から内容を登録していただくスペースになっております。こちらにはファイルの添付も可能で、契約書のレビューが必要な場合には契約書のファイルをこちらに添付していただいて、レコードを登録していただく。レコードが登録されると、法務に通知が飛んでくることで把握できるようになっています。

具体的な契約の中身の確認を含め、右のコメント欄のスペースで依頼者と法務との回答内容のやり取りが保持されるかたちになっています。法務回答が終わって次は押印に進んでといったステータスの管理についても、こちらで行えるようになっています。

深澤:他社ではメールやExcelを組み合わせてこのようなやり取りや管理をしますけど、この法務相談アプリは一画面でやり取りができるんですね。ちなみに他部署からの相談は具体的にどういった内容のものが多いんでしょうか?

三浦:契約関連だとよくあるのはやっぱりNDA(秘密保持契約書)や業務委託契約です。あとは例えば「お客さまからクラウドサービスの利用規約について質問があったんだけど、どのように回答したらいいか教えてほしい」といったような依頼が多いですかね。

深澤:ありがとうございます。こういった法務相談用のフォームがあると、入力する側もちゃんと入力できて、法務側も聞きたいことがちゃんと聞けて、お互いにとって便利な仕組みですよね。

三浦:そうですね。このレコードは基本的に全社公開しています。もちろんアクセス制限している相談もあるんですけど、基本的には全社公開なので、過去の相談内容とかも他の担当者の方がご覧いただけるようになっています。

添付ファイルの取り違えをなくす仕組みづくり

深澤:ではその中から押印作業が発生した場合はどのようにしているか、実際の画面で見ていければと思います。

三浦:先ほどの法務相談箱アプリに押印申請アプリに飛ぶアクションボタンというのがありまして、そこをクリックするとこの押印申請アプリのレコードが自動で立ち上がるような仕組みになっています。

法務相談箱アプリと押印申請アプリを連携させた趣旨としては、レビューが終わった契約書データと押印申請で添付される契約書データについて、申請者の手違いで添付したデータが間違っているパターンが過去によくありました。そういったことを防止するために、法務が法務相談箱アプリで回答したレビュー後のデータが押印申請アプリ上で自動で参照されるような仕組みになっています。

なので申請者がファイルを取り違えに気を遣う心配がなくなった、というのが大きなメリットかなと思っています。このアプリ上で上長に承認・確認を取っていくといったかたちの仕組みになっています。

深澤:ありがとうございます。これは電子契約サービスとも自動で連携しているんでしょうか?

三浦:そうですね。電子契約サービスと自動連携をしまして、承認者が最終承認のボタンを押すと同時に自動でお客さまのところに契約締結依頼のメールが飛ぶ仕組みにしております。

深澤:どうしても押印が必要なものはマネージャーが出社をして押印をしているんでしょうか?

三浦:そうですね。電子契約ができないものについては物理的に出社することもあります。

深澤:ありがとうございます。