名刺をデータ化することで得られる情報

大津裕史氏(以下、大津):まず簡単な自己紹介をさせてください。私はSansan株式会社で、CPOという立場でプロダクトの責任者をやっております、大津と申します。

我々Sansanは、社内向けの機能も持っているのですが、やはりメインは社外向けの機能になります。この社外とのつながりを強くしていける名刺管理システムが、弊社の主軸となるプロダクトですので、現状からどう良くしていくかに主な時間を費やしている状況です。

そして昨今、いろいろな会社さんが名刺管理のシステムを出されています。その中で「Sansanの名刺管理だと何がいいんですか?」というお話があります。

やはり、多くのプロダクトは名刺を管理して、データ化するだけに留まっていますが、我々のサービスは、それを元にアクションにつなげられる点が優れているように思います。あるいは、社外とのリレーション作りに変化を起こすところがポイントだと、よく説明させていただきます。

具体的に言えば、我々は名刺はただのきっかけでしかないと考えています。よく名刺をすごく丁寧にホルダーにしまっている方がいらっしゃいますね。「正直これってデータにする必要あるの?」と考える方もいらっしゃると思います。

私たちは、名刺をスキャンしてデータ化していただくと「それをきっかけに情報が生まれるんです」とお伝えしています。この情報がビジネスを推し進めたり、新しいビジネスのスタートを作ったりという価値を発揮すると考えています。

例えば、名刺をスキャンすると人事異動のニュースの通知が来るようになるのですが、これは一番わかりやすいベネフィットになっています。3年前に出会ったA社さんの○○さんが、今年にB社に転職した場合。○○さんの人事異動情報が届くわけですね。あとは決算の情報などの企業動向に関する情報が届く仕様になっています。

要するに、名刺だけを物理的に持っていても、企業や人の動きは伝わってきませんが、Sansanに名刺を入れていただければ、そういった最新動向も情報となって届くようになるわけです。

中川紘司氏(以下、中川):ここはポイントですよね。私も毎朝Sansanから送られてくるニュースをよく見ますが、「あぁ、この方に最近連絡してないな」という気付きがけっこうあって。そういう情報ってなかなかキャッチアップできないじゃないですか。

情報を得たことをきっかけに、「あのお客さまに久々にご連絡してみよう」といった動機を毎朝いただけるので、そこは素晴らしいなと思っています。

名刺から得られる情報を適切にお客様に届けていく

大津:ありがとうございます。そういった社外とのつながりを強くすることに強みを持っていると考えています。

あと、最近非常に注目していただいているのは、「反社チェック」という機能です。名刺をスキャンすると、リフィニティブさんと共同で作っている反社のチェックというシステムに自動で照会されて、反社会的勢力とのつながりがある可能性がある場合は注意の通知が飛ぶようになっています。

他にも、直近にリリースした話で言えば、「叙勲の情報提供」があります。高齢の方とリレーションがある会社の場合は、叙勲に載ったことをいち早くキャッチアップしてご挨拶することは、非常に重要な業務になっています。

こういった情報を、名刺を入れておくだけで、該当する方がいる場合に教えてくれるようなサービスになっています。

中川:なるほど。確かにここまで目を行き届かせていなかったですね。意外と見落としがちなところですよね。

大津:我々の役割としては、みなさんが能動的には拾いにいかないけれど、受け取るとうれしい情報を探し当てて、適切なタイミングでみなさんに届けることが大事なんだなと、最近強く感じています。

やはり、名刺をスキャンすることをコストと見ると面倒なわけです。ですので、Sansanを導入いただくと、初期のお客さまからは、「いや、これ続かないよ……」というご意見をいただくこともあるんですが、スキャンしたことをきっかけに情報が届く体験をしていただくと、「これは意味があるからがんばろう」となるわけです。

中川:やっぱり何事も、自分自身にベネフィットがないとダメですよね。

大津:なので、名刺を読み取ったらどんな情報が届くのかについて、もっとリッチにしていきたいと考えてリリースを出しています。

Sansanが1ヶ月に100件以上のリリースを出した裏側

大津:これは最近出た叙勲のリリースなんですが、実は1ヶ月に100~130件ぐらいのリリースを世の中に出してました。

中川:1ヶ月に100件以上ですか。すごい数ですね!

大津:しかもその半分近くが、いわゆるUI/UXに関わるリリースになっていて。本当に大きな変化もあれば、小さな変化もあるんですけども、それぐらいのスピードで進化しています。

中川:1ヶ月に100件のリリースって、非常に興味深いのですが、少し深掘って伺ってもいいですか(笑)。

大津:はい、もちろんです。

中川:リリースタイミングってどうやって決めてらっしゃるんですか?

大津:リリースタイミングについては、週単位で「リリースする日」を共有しておりまして。それに間に合うプロジェクトが相乗りする感じで、リリースされていく流れになっています。

弊社には、Slackに「リリースチャンネル」がありまして。リリースの度にみんなでお祝いするチャンネルなんですが、ほぼ毎日リリースに関する情報が行き来しています。

中川:100件となるとそうですよね、毎日じゃないと間に合わないですもんね。いやー、すごいです。

大津:もちろんその中には、メンテナンスのリリースもあるので、すべてがユーザーさんの体験に変化を及ぼすものではないんですけどね。ただ、それぐらいのスピードで進化しています。

そして、我々はこの行動を通じて、「社外とのつながりをより強くしてほしい」とか、「よりアクションを起こしやすくしてほしい」という想いを持って開発を続けています。

SaaS企業が売っているのは、自社の製品だけではない

大津:昔は仕組みを自社で開発しようというお客さまも多かったと思うんです。

しかしその場合は、本当に多大なリソースを自社で抱えなければなりません。社外のSIerさんに依頼して作ってもらうとしても、本当に膨大なお金が必要になります。

ですので、我々Sansanを選んでくだされば、そういった日々の進化をするための開発チームもセットで導入いただくようなフィーリングになるかなと思います。

中川:そこに対しては、僕も共感します。我々も毎月新しい機能をリリースさせていただいていますが、やはり「電話帳のことをこれだけ考えている会社は他には絶対にない」という自負のもと、お客さまにご提案しています。

大津:はい、そうですよね。

中川:そして、ご利用していただけると、本当に高いご評価をいただけます。もちろん、まだまだ改善点はたくさんあるんですけれども。

やっぱりSaaS企業は、その企業にある製品を売ってるわけではなくて、将来まで含めてお客さまに評価をしていただけるところが、非常に素晴らしいサービスだなと思いますよね。

大津:そうですね。そういった進化をすることが我々の使命であり、義務でもありますよね。先ほどは1ヶ月のリリース量の話をしましたが、質についても重要だと思っています。

こういった叙勲に関するリリースも、使っていただいたお客さまにしっかりアンケートをしたり、ご意見をいただいたりするところまでやらせていただいています。

そして、昨今の環境の中で、オンラインでお客さまとのコミュニケーションをしていく中で、「名刺のスキャンってどうすればいいの?」といったお話が3月ぐらいから出てきました。

中川:環境の変化による、要望の変化はかなりありましたよね。

コロナ禍で変化した名刺交換の意味

大津:我々の対応としては、オンライン名刺という機能を作っていまして。名刺URLを送り合うことで、お相手がSansanのユーザーでなくても、電子名刺を受け取っていただけるようなサービスを作っています。

このオンラインの環境の中での名刺交換は、リモート環境がメインになってくる中で、「まだ必要なの?」というお声もありました。

しかし名刺交換がないと、相手の役職や部署がわからないとか、お話のきっかけがなくなってしまうといった実情もあるわけですね。

特に、イベントやセミナーなどを行うチームの方には、オンライン名刺機能を喜んでくださる機会が非常に多くありました。今までオフラインイベントは、受付で名刺交換をすることで、誰が会場に来ているかを把握していましたが、オンラインイベントになると、誰が来ているかわからないですと。

中川:いやぁ、そうなりますよね。

大津:オンラインイベントに誰が参加したかが、後々にでもわからないと、次のアクションにつなげられない場合があるわけです。やはり環境が変わっても、名刺を交換する手段は必要ということですね。

オンライン名刺の機能は、おそらく6月ぐらいにリリースさせていただいて、もう半年程経過しています。本当に、今年で一番変更を加えた機能だったんじゃないかなとは思いますが、まだ改善を続けています。

個人向け名刺アプリEightというサービスも提供しているんですが、Eightとの連動も完全に行われています。企業と個人のやり取りも完全にスムーズになりました。

中川:もうスムーズにできますもんね。

大津:あとは、こういったオンラインイベントのために、我々は「Smart Entry」というサービスを新しく提供しています。QRコードを読み取れば、チェックインする時に名刺を提示できるサービスです。

イベント主催側は、今誰が申し込んできているかを、名刺でわかるようになっています。今は、EightでもSansanでも対応できるように対応を始めています。

中川:よくオンライン会議でありますよね。6人お客さまに入っていただくのですが、「どなたが一番偉いんだろうな」ってドキドキしながらしゃべっていたり(笑)。

大津:わからない時もありますよね。

中川:ヤマ勘でいつも話始めるんですが、だいたい外れますよね(笑)。

大津:顔を映していただけない時もあるじゃないですか。「顔を映していただけますか?」とお声がけするのはなかなか抵抗感がありますが、「ちょっとお名刺の交換できませんか?」というお話であれば、抵抗感が薄いんじゃないかなと思ってます。

このように、事前も事後も複数人でも、時と場所を選ばずに、社外との名刺交換を可能にするために、我々は改善を行っています。

コラボレーションでさらなるソリューションを

大津:先ほどPHONE APPLIのお話でもありましたが、社外の気付きやつながりに関する情報を、Sansanからたくさん得られたとしても、それを活かすためには「社内でどうコラボレーションするか」という考えを持つことが非常に重要になります。

我々の営業シーンにおいても、「Sansanのサービスはすごくいいんだけど、これは置いておいて……、今は縦割りの組織でもっと情報共有やコラボレーションしやすい組織にしたいんです」といったお話が最初の課題になることがあります。特に大企業との場合に多い印象なんですが。

中川:「となりのチームには名刺共有したくない」みたいなところもありますよね。

大津:はい、そうですね。そもそも「みんなで名刺を共有しましょう!」という文化や雰囲気ができていないと、Sansanを導入してもただ100人がサービスを使っているだけになっちゃうんですね。なので、縦割りの組織のクローズドな考え方を、どうオープンにしていくか? という施策が必要だったりします。

中川:なるほど。

大津:我々は今まで、Sansanのサービスの中で、どうお客さまをお手伝いしようかと考えていたわけですが、今回のPHONE APPLIとSansanの連携が実現しましたので、PHONE APPLIでの組織変革を踏まえつつ、ご説明していけたらと考えています。

そうすれば、我々が提供している新しい機能や数多くの情報が正しく機能し、社内のコラボレーションにつながるんじゃないかなと思っています。前半のお話を聞きながら、PHONE APPLIとSansanでうまく連携が取れれば、パワフルさが一層大きくなるだろうなと感じました。

中川:社内のコラボレーションをまず作って、その上でお客さまの名刺を起点とした情報を流通させるということですよね。

大津:そうですね、なのでプロダクトにおいても、お互いのサービスの中で、ワンタップでPHONE APPLI PEOPLEとSansanが行き来できることは、非常に理に適った連携だなと思っています。

中川:ありがとうございます。本日はご聴講いただきまして、ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

大津:どうもありがとうございました。