陸上でも18時間は生存可能な、ウォーキングキャットフィッシュ

マイケル・アランダ氏:魚は、通常は水の中でないと生きていけません。泳ぎや呼吸などの生きるすべは全て、水中でのみ可能です。ところが「ウォーキングキャットフィッシュ」は不思議なことに、陸上に適応しています。なんと、水から水へ陸上を移動するにあたって、18時間も生き続けることができるのです。その秘訣は、水があって生きることができる場所を、うまく嗅ぎつけられる点にあります。

ウォーキングキャットフィッシュは東南アジア原産ですが、現在はアメリカ合衆国を含むさまざまな場所で見ることができます。というのも、そのひょろ長い灰色の胴体で、新兵の訓練さながらに陸上を這うことができるからです。

空気中ではエラ呼吸ができないため、魚が水から水へ陸上を這うのはリスクが非常に高そうですが、ウォーキングキャットフィッシュはこの点をうまくクリアしています。なんと陸上では、肺に似た器官を使っているのです。とはいえ、ずっと陸上で暮らすことができるわけではありません。迷子になって身を潜ませる水が見つからなければ、乾燥して死んでしまいます。

水場を探すため、彼らは「臭い」を頼りにする

そのため、科学者たちは、ウォーキングキャットフィッシュは具体的にどうやって目的地を把握できるのかを探ってきました。他の魚であれば、反射する水面を目で見つけてそこへ向かいます。しかし、ウォーキングキャットフィッシュは違います。

2020年に『Journal of Fish Biology』誌上で発表されたある論文によりますと、ウォーキングキャットフィッシュは、なんと臭いによって水を検知するというのです。

科学者らは、フロリダの沼地でウォーキングキャットフィッシュを150匹採集し、大学の温室内の水槽に移しました。そして、新しい環境に慣れたタイミングを見計らって子ども用プールに移し、特定の臭いに向かって移動するかを調べました。

するとウォーキングキャットフィッシュは、魅力的な沼の臭いには惹き付けられて近寄りましたが、酸素が欠乏した溜まり水から発せられる硫化水素の刺激臭を避けました。

不思議なことに、ウォーキングキャットフィッシュが方向を決めるのに使うのは、嗅覚ではなく味覚であると研究者らは考えています。というのも、突き出た口ひげが味蕾で覆われているためです。それだけではありません。なんと体全体が味蕾で覆われているのです。

さらにウォーキングキャットフィッシュは、アミノ酸の一種であるアラニンの臭いに向かって這うことがわかりました。アラニンは、水棲生物が味を感じることで知られる成分です。

ウォーキングキャットフィッシュには鼻の孔があることはありますが、空気中の臭いの検知に使われているとは考えられていません。鼻の組織や鼻の筋肉は水は通しますが、空気を通すことはできないのです。とはいえ、ウォーキングキャットフィッシュは嗅覚に関する遺伝子群を通常より多く持っており、これが空中の物質を認識するためのものかもしれないと考える研究者もいます。

さらにウォーキングキャットフィッシュは、なんと鼻ではなく、肺で臭いを「嗅いている」ようなのです。しかし、ウォーキングキャットフィッシュの呼吸器内には、嗅覚受容器細胞はまだ見つかっていません。というのも、研究する者がいないためです。最新のこの研究結果が、もしかしたら研究者たちの背中を押してくれるかもしれません。

迷子になってしまうウォーキングキャットフィッシュがたくさんいるとはいえ、科学者たちは、これらの魚にはなぜ進むべき道がわかるのか、解明したいと考えています。研究が進めば、野生生物保護機関の、外来種個体数の把握に役立つかもしれません。さらにこの驚くべき魚が、どのように進化して陸上と水中の二つの領域を動き回るに至ったかが判明するかもしれません。