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会社やめるやめないの学校 case.1 阿部広太郎さんの場合(全5記事)

体験による“気づき”の積み重ねで、感覚は磨かれていく 阿部広太郎氏流の「質は量からしか生まれない」という発想

会社をやめて気のむくままの働き方を手に入れるか、それとも会社の中で独自のキャリアを確立すべきか……。人生の大きな分かれ道に、多くのビジネスパーソンが一度は思い悩むのではないでしょうか? なんと2020年11月末に、そんな悩むを持つ人が通うべき「会社やめるのやめないの学校」が開校しました。過去、そんな岐路に立った経験のあるゲストを招き、選択した時の思いや考え方をお話しいただきます。記念すべき第一回のゲストは、コピーライター&作詞家の阿部広太郎氏。BONUS TRACK MEMBER’S マネージャー 桜木彩佳氏とともに、さまざまなお悩みに答えてくれました。本記事では「幸福に向かって生きていく行動や言葉、すべてコピーになりうる」「もし阿部さんが地方に行ったら?」などについて語ります。

経営者が喜ぶ「一緒にこういうことをしましょう」という提案

桜木彩佳氏(以下、桜木):そしてこれ、すごいリアルタイムな質問で。

「明日、やってみたいお仕事をされている経営者の方に、面談の機会をいただきました。『一緒に働きたい』と思ってもらえるよう企画書を作って持っていくつもりです。阿部さんだったらどんな言葉、どんな話を聞いたら一緒に働きたいと心が動きますか。お聞かせてください」

明日!(笑)。

阿部広太郎氏(以下、阿部):すごいタイミングですね。

桜木:企画書をもう作られているはず。

阿部:一番大事なのは、もちろん真正面を切って「あなたと一緒に仕事がしたい」と言われるうれしさもありつつ、一緒に横に並んで何を目指していけるか、何に向かって歩いていけるか? ということが、一番仲良くなる秘訣なのかなとも思っていて。

もちろん「あなたと仕事がしたいです」という熱量を伝えてもらえるのはうれしいし、喜びもあるんだけれども「一緒にこういうことをしましょう」とか「こういうことをやったらすごくいいんじゃないか」という提案があることによって、同じ星を見ているような、そういう「横に並んで綺麗なもの・ワクワクするものを見つめられる」ような、そういう時間ってとてもいい時間だと思うので。

僕は「だったらこういうことをやりませんか」とか「こういうことをするといいんじゃないですか」という、一緒に前を向けるものを……。

桜木:一方的じゃないような。

阿部:そうですね。横に並んで何か一緒にするのに、したいと思えるものを提案するというのがとてもいいんじゃないかと感じます。

桜木:自分もそれだったらうれしい、ということですね。提案をもらえた場合は。

阿部:そう、うれしいですね。「こういうことをしませんか」ということとか。両方うれしいんだけれども、経営者の方っていつも前に前に向いていて「次は何をやればいいかな?」とか、不安にも思っているだろうし、心配もあるだろうし。

「どうすればいいかな」と、疑心暗鬼になってるし自問自答もしている人だとも思うんですけれども。その中で「経営者の人とこういうことをやってみたいです」という話をするということが、大事かなと。

経営者の人って、ずっと悩んで考えていると思うので、その人の懐に飛び込んでいくような話を1つでもしたほうがいいし。

占いってみんな気にすると思うんですよね。それはやっぱり、自分の未来だから気になるんですよね。商品とかサービスをみんな真剣に考えてると思うんですけれども、やっぱり自分のことがみんな一番気になる心配だと思うので、その人にとって未来を占うような話をすると、とても気になる存在になるんじゃないかなと思います。

桜木:なるほど。とてもわかりやすい。

幸福に向かって生きていく行動や言葉、すべてコピーになりうる

桜木:「言葉」についてのご質問もあって。

「言葉以外の仕事をしてみたいと思ったことはありますか? それはどんな時で、どんな仕事をしてみたいと思いましたか? 今の仕事以外の仕事に興味が湧くことがあり、自分のやりたいことが定まらないため聞いてみたいと思いました。」

だったり

「どういう取り組みで言葉に対する感覚が磨かれたか、お聞きしたい」

「自分なりの価値基準って、どうやったら醸成できると思いますか?」

(スライドを指して)上3つは阿部さんへのご質問で、下の1つは、この方独自のもの。ちょっとまとめてしまったのですが。

阿部:いいえ、大丈夫です。

桜木:「最近、関東から東北地方に引っ越しました。もし自分が今、地方にいたら、こんなことを試したい、やれそうだと思うことがあればお聞きしたいです」

ちょっとざっくばらんで、すみません。

阿部:そうですね。言葉以外の仕事。でもすべての仕事は言葉の仕事だとも思う、というか。教師のだろうが販売員だろうが営業だろうが、すべて言葉というものを通じて相手の方と何をするか? とか、どういう新しい価値観を作っていくか? ということなので、すべてが言葉の仕事だなという捉え方をしています。

でもコピーライター以外ということであれば……コピーライターって、個人的な結論としては“生き方”だなと思っていて。僕は「コピー・言葉を企画すること」だと言っていて「企画するということは、幸福に向かう意志だ」と言っているんですけど。

つまり「幸福に向かって生きていく、行動や言葉がすべてコピーになりうる」と僕は思っています。なのでそういう生き方をしながら、講座を自分で立ち上げて、自分で学びの場を作ったりもしていますし。

今の仕事をしながらやりたいと思ったことは、やってみるという。フィルムの写真が好きになって、たくさんフィルムで写真を撮ったりとか、一時期めちゃくちゃしていましたし。質問では「やりたいことが定まらないため」だとおっしゃっていたんですけれども、やりたいことを片っ端からやってみたらいいと思いますけれどね。

揺れながら、たくさんどうしようかと思う。でもやっているうちに体が正直なんで、わかっていくと思うので。

まずは定まらなくてもいいんですよ。そのうち定まっていくんで。というのを、1つ目の質問には、思いましたね。

“気づき”を貯めていくことで、感覚は磨かれていく

阿部:2つ目で「どういう取り組みで言葉に対する感覚が磨かれたかお聞きしたいです」という質問をいただいたんですけれども。

取り組みでいうと1つ。「質は量からしか生まれない」ということで、量に取り組む。たくさん、自分の中での経験値を貯めていくことが大事で。でもやみくもに何かを経験をしていっても、それでオッケーというわけではなくて。やりながら、自分なりの気づきを増やしていくしかないと思います。

「あぁ、こういうふうにやったらうまくいったんだな」「これ、こうやったらちょっとうまくいかなかったんだな」とか、そういう気づきを貯めていくことが、磨かれていくことだなと思うので。

言葉というものを学びながら、勉強しながら「なんかうまく伝わらなかったな」とか「これ伝わったな」という。それは日々の生活の中で、家族とかパートナーとか仕事の仲間とか、なんでもいいんですけれども「うまく喜んでもらえたな」とか「なんか怒らせちゃったな」とかそういうことを積み重ねていくのが、めちゃくちゃ重要かな。

個人的にはドキッとしたことも、うれしかったことも、ハッとしたこともそうですけど、それをメモして残しておく。残すことによって、磨かれていくと思います。

数を打ちつつ、フィードバックを忘れないみたいなことですよね。数はもちろん、何もしないよりかは、少しずつ自分の中で検証していって。ABCDEFGと試していったほうが「そのうちのCが一番いいな」というのがわかってくると思うので。

磨き方として「何かにまみれる」というのは、とても大事かなと思います。

価値基準を醸成する「選ぶもの」と「選ばないもの」の繰り返し

桜木:その「ABCの中でCだったな」というのが、価値基準のお話とかにつながる。基準、ラインの話だと思います。

阿部:そうですね。価値基準、ものさし……ものさしを選んでいく、醸成していくというのは、やっぱり選ぶものと選ばないものという、そういう繰り返しだと思うんですよね。

そこでの、自分の中での「これは選んだ、選べなかった」というのを自覚的、意識的になることが大切だと思っていて。

『バチェロレッテ・ジャパン』という、Amazonでやっている恋愛リアリティーショーを見た方も多いと思うんですけれども。『バチェラー・ジャパン』も『バチェロレッテ』も、男性は女性を選ばないといけない、女性は男性を選ばないといけないという、自分の中での価値基準・判断基準がないと、自分の中での価値観というのは形成されていかないと思うんですけれど、みなさんもそうだと思うんですよね。

「今日のお昼、どこの定食屋で食べようか?」とか、そういう選択を常々していると思うんですけど。いつもなんとなく選んでいるものを「今日はすごく寒かったから、やっぱりあったかい汁が飲めるうどんがいいな」とか。

そういう「意識して選ぶ」とことで、自分の中での価値観が磨かれていく、醸成していくと思います。

もし阿部さんが地方に行ったら?

桜木:そして一番下は……。

阿部:そうですね。関東から東北にということで……。

桜木:もし阿部さんが地方に行ったらという「阿部さんならでは」の話だと思うんですけどね。

阿部:そうですよね。でも、どこにいても変わらないかな? とも思っていて。やっぱり僕はコピーライターだし、自分で何か事業を起こすよりかは、どちらかというと一緒に何かやったりとかすること、共に育てていこうという仕事をしているので。

自分の価値観で「この人おもしろいな」と思う人に会いに行く。会いに行って、何か一緒にできるんだったらそれをやっていく。この方に個人的にオススメしたいのは、何かおもしろいことをやっている人って全国にいるので、そういう人に出会いに行ってほしい。話をしてほしい。話を聞いてみて、例えば「自分だったらこうできるんじゃないか?」って提案してもらうとか、感想を伝えるだけでもいいんですけれど。

そういう関係性やつながりを作っていくと、何かひょんなことでお仕事につながったりとか、自分のやれるところにつながっていくんじゃないかなと思いますね。

桜木:なるほど。場所に限らず、それはでも今もしているし。

阿部:絶対できると思います。

桜木:やむを得なく引っ越したとしても、それをするのがいいのではということですよね。

「応援されるような組織のやめ方」が理想的

桜木:次の質問は

「理想的なやめ方があれば、お聞きしたいです」

阿部:まだ僕はやめてはないんですけれど。

桜木:そう。阿部さんはやめてないんです。

阿部:でも、あれですよね。応援されるというのがやっぱり大事ですね。応援される、応援されていくことが望ましいですよね。何か新しいことをチャレンジするという。「挑む」と「逃げる」という漢字って、似てるじゃないですか。真ん中に兆しというのが両方とも入っているんですけど。

これは言い方一つなんですけれど「逃げてるんじゃなくて、挑みにいくから出ていくんです」という見せ方や伝え方ができないかなと。「出ていく」ということはまったく同じなんですけど、どういう気持ちで出ていくのか? をちゃんと伝えたほうが、僕はいいなと思います。

何をしてそこから出ていくのか。どうして“輪”から出ていくのかという部分は、例えば長くなったとしても、自分の思いを心の中にとどめておくんじゃなくて、出したほうがいいなと思っているし。

だから、常々思っていることを「旗を立てるように」ちゃんと発信しといたほうがいいなと思っていて。

桜木:お話の最初でも言われていますね。

阿部:このイベントのことをSNSとかでシェアするのって勇気がいるけど。この「会社やめるやめない」って……。

桜木:すみません、シェアしづらいタイトルで(笑)。

阿部:「やめようとしているのかな?」と思われるんじゃないかな、とか思ったりしたんですけれど。でもFacebookでも「シェアしてもいいや」と思って。むしろ、会社で働くことの良さとかも伝えられるんじゃないかなと思って。

そうしたら、シェアしたこのイベントのページを、今の会社の上司が「気になる」ボタンを押してたりとか。

桜木:(笑)。

阿部:そういう、ドキッとはするんですけど。

桜木:「阿部、どうした!?」ということですよね。

阿部:なんかいろいろ思ったんだろうな、とは思いつつ。でもやっぱり「自分がこう思えるからこうしてるんだ」という部分を、人に伝えておいて損はない。もちろん読んでもらえるかわからないけど、そういうところでちゃんと見てくれてる人は、見てくれるとも思うので。

結局、何をするにしても「応援されるような組織のやめ方」というのが理想ですね。

判断基準となる、自分が一番健康的でいられるかどうか?

桜木:あとはやめるというキーワードからだと思うんですけれども「人生の岐路に立った時、何かを判断する時、選択する時の基準は何ですか?」。

阿部:一番はやっぱり「健やかでいられるか」だと思っていて。WHOとかが定めている健康の基準というのが「これをクリアするのは難しい」って、Twitterとかで話題になっていたことがあったんですけど。

やっぱり心身ともにすごく健やかで、生きていく意志とかが溢れてるような状態が、おそらく健康で。それが損なわれていく。「ここにいて、ずっと何か削られていってる感覚が辛いな」というような時は、やめたほうがやっぱりいいと思うし。何か決断する時というのは、自分がより自分らしくやれる。「自分がより健やかでいられるのは、やっぱりAじゃなくてBだったんだな」と思えた時は、Bを選ぶべきだし。

自分が健康的でいられるかどうかということを、いつも選ぶようには考えるようにしていて。でもその上で無理はしないようにするし、うまく逃げたりもするし。

桜木:健やかのためならという。

阿部:そう。自分が一番健康的でいられるかどうか? ということは、考えていますね。

桜木:では明確な基準な気がします。

阿部:そうですね。

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