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全Webマーケター必見!沈黙シリーズのヒットを支えた「17の演出メソッド」一挙公開!(全6記事)

「ちなみに」から始まる物語 『沈黙』シリーズ著者が初めて明かす、記憶に残る伝え方

シリーズ累計10万部を超え、第一作『沈黙のWebマーケティング』の改訂版リリースも決定した、ハードボイルドWebマーケティングノベル『沈黙』シリーズ。その生みの親である、株式会社ウェブライダー 代表取締役 松尾茂起氏が登壇するイベント「全Webマーケター必見!沈黙シリーズのヒットを支えた『17の演出メソッド』一挙公開!」が開催されました。同社の広報 赤木遥奈氏、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ パフォーマンスマーケティング部 ゼネラルマネージャー 吉田崇氏とともに、制作当時の裏話などについて熱く語ります。本パートでは「それぞれの登場人物が持つ“役割”」などが話題に上っています。

それぞれの登場人物が持つ“役割”

松尾茂起氏:(『沈黙』シリーズが成功した8つの理由の)2つ目ですね。『沈黙』シリーズの特徴として、読者が自己投影しやすい登場人物があります。

『沈黙』シリーズにはたくさんの登場人物がいます。これは『沈黙のWebマーケティング』の人物相関表です。適当に登場人物を出演させているわけではなく、みな役割を設けています。

『沈黙のWebマーケティング』の場合は、大先生がボーン・片桐。その大先生の話をよりわかりやすく、平易な言葉に置き換える役目がヴェロニカさん。マーケティングやったことないけど、この本で学ぼうと思う読者の人たちが感情を投影できるキャラクターとして、超初心者の松岡めぐみさん。

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初心者の中には知識を覚えてくると「こんなの覚えなくていい」「もうこれできちゃう」みたいな人もいると思うんですけれども、そういう方って機会損失してると思うので、あえて“上級者ぶってる初心者”として高橋裕太さん。あと中級者でそこそこマーケティングを覚えた、吉田守さんという登場人物を設定しました。それ以外にも、スパマー(スパムメールを送ってくる人間)の遠藤さんや遠藤さんをさらに翻訳する井上さんもいます。

とにかく読者がロールプレイできるコンテンツを意識しました。『ドラゴンクエスト』とかロールプレイングゲームって言いますよね。あれはどういう意味かと言うと、ロールをプレイする。ロールはいわゆる役です。役を演じるゲームのことをロールプレイングゲームって言うんですね。

『沈黙』シリーズも読者がそれぞれの登場人物に共感したり、同意したりしてロールプレイができる設定にしています。『沈黙のWebライティング』もそうです。同じように大先生と先生の翻訳者、超初心者、上級者ぶる初心者がいます。上級者ぶる初心者って言葉がよろしくなく、そこはちょっと申し訳ないですけど。

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あと中級者、スパマー、スパマーの翻訳者。必ずスパマーは出てきます。これはあとで言いますけれども、やっぱり『沈黙』シリーズは『半沢直樹』と同じで勧善懲悪の世界。その世界が繰り広げられるからこそおもしろいので、スパマーは絶対いるんですね。これは悪い例なんで、みなさんはスパマーになっちゃダメですよ。

こういったかたちで登場人物をしっかり設定することによって、読者の方々にロールプレイをしてもらっています。このキャラクターは実際どういう気持ちでいるのか、どういう性格かがわからないとその役を演じることができない。だから各キャラの内面もしっかり描きました。

人は「感情のないコンテンツ」には共感できない

私たちは理性よりも感情で動く生き物だったりします。なので感情がしっかり見えるように、各キャラクターがどういった感情を持っているのか。悔しい時にはしっかりと悔しい感情を出したり、うれしい時にはうれしい感情を出すところを大事にしています。

そうすることで共感してくれる読者が増えるんです。共感という言葉は、共はともに、感は感情の感ですよね。つまりともに感情を共有することなので、感情のないコンテンツに共感はできないわけです。だから『沈黙』シリーズではしっかり感情が見えるような演出を行いました。

別に『沈黙』シリーズだけではなくて、ウェブライダーが展開している『美味しいワイン』のメディアの中でも感情をしっかり伝える。(スライドを指して)『美味しいワイン』に関して言うと、左側にいるワインの頭をしたキャラクターがワイン伯爵って言うんですけれども。右側には私がいて、これは『沈黙』シリーズでいうところの超初心者です。左の頭が赤ワインになった赤ワイン伯爵は、ボーン・片桐の役割なんですね。

『美味しいワイン』は初心者の方が見に来ることが多いので、詳しい人と初心者を設定することによってロールプレイすることができる。そういった演出を行っています。沈黙シリーズだけではなく、いろんなところで使える演出が、読者が自己投影しやすい登場人物を設定することです。

難しい説明でも「とにかく読んでみよう」と思える演出

続いて3つ目ですね。苦難のハードルを越える「シュガーコーティング」をしました。シュガーコーティングが何かと言うと、お砂糖でコーティングすることですね。

良薬は口に苦しという言葉がありますよね。いい薬は苦くて飲みにくいものですが、甘くコーティングされているとお菓子みたいになって飲み込めるというのがあります。(スライドを指して)例えばこんな具合です。Adobe Stockで「薬 お菓子風」のワードで検索すると出てきたもの。これたぶん薬だと思うんですけれども(笑)。

『沈黙のWeb』シリーズが意識したのは、実はタイトルを見ていくと難しいことを解説しているんです。

専門書1冊分、もしかすると2〜3冊分。ジャンルでいうとWebマーケティングのいろいろな知識を広範囲に渡って取り上げている中で、普通に文章書くと「難しい」ってなるんですよ。せっかくいいお薬で、これを覚えるといろんなことが改善するのに、学ぶのにすごく躊躇してしまう。

そうなると、こちらがいいノウハウを発信しても届かない。だから我々が考えたのが、このシュガーコーティングなんですね。苦いお薬だからこそ甘くコーティングしてしまう。どう甘くコーティングしたかと言うと、設定そのものを「おもしろそうだ」と。「わかんないけど、とにかく読んでみよう」と思ってもらえる演出を施したということです。

例えば『沈黙のWeb』シリーズを読んでいくと、時に爆風が起きたり、急に服が破れて筋肉ムキムキで『ドラゴンボール』みたいに気を高めたりとか。あとタイピングが速すぎて見えないとか、さらに宇宙爆発が起きるとか、めちゃめちゃですけれども実はシュガーコーティングのテクニックを使っています。

難しい知識もユーモラスにおもしろそうだな、ワクワクするなと持っていけば、まずは口にしてくれる。そこから先のノウハウをしっかり紡がないと、ただユニークなだけのよくわからない作品になるので、しっかり丁寧に紡いでいく必要もあります。

そうすることによって、Amazonの中でこういったレビューをいただけるに至りました。例えば「眠くならずに読める」「物語は大げさな表現が入っていますが、まあおもしろいですね」。あと「どんどん読んでしまう」「マーケティングってすぐ眠くなるけども、この本はストーリーがあってのめり込んでしまう」とか。あとこちらの方も「表紙のキャラ濃すぎ……」でも「まあまあよかったですよ」みたいな。

こちらに関しては「ヤバそうだなと思わず気軽に読んでみると、良い学びを得られました」とあり、この本は本当にヤバく見えるんだなと口コミを見た時に感じて、若干反省しましたね(笑)。

とにかく読んでもらえるための演出がすごく重要なんです。このシュガーコーティングも弊社ではいろんなメディアで実際に施しています。『美味しいワイン』もワインという言葉だけ聞くとちょっと高尚な雰囲気がする。

それでも、このサイトのように顔がワインになった謎の3人組が登場したりすると、「なんかおもしろそうだな。とりあえずスクロールしてみよう」となるわけですね。それがシュガーコーティングの力です。

ちなみに、このスライドも実はワクワクするフォントをあえて使っています。みなさんがワクワクされているかはちょっとわからないんですけれども(笑)。これ「新ゴ」というすばらしいフォントを使っており、例えばフォントをちょっと変えるだけでも印象は変わります。

例えば私がこのフォントを使って最初から最後まで話すと、まじめな感じがセッションの中に現れてくると思うんです。どんなフォントを使ってどう演出するかによって感じ方が変わるので、何かをシュガーコーティングして届けたい場合には、どういった演出をするのがベストかを考えるといいでしょう。

人間の脳は、本筋とは関係のない横道のほうが覚えやすい

続いて4つ目、語りたくなる背景情報がある。

例えば、これは『沈黙のWebマーケティング』のあらすじですが、ちょっと読みあげますね。

松岡めぐみの父親が経営するオーダー家具の販売会社「マツオカ」。その会社のWebサイトはある理由から検索結果の表示順位が急激に低下し、売り上げが激減していた。そんな経営危機に陥ったマツオカに謎の男「ボーン・片桐」が現れる。重さ40キログラムのノートPCを操る男の目的とはいったい……!? 

今度は『沈黙のWebライティング』のシナリオです。前半読まずに途中から読みます。やがてそんなみやび屋に1人の男が来訪する。その男の名は「ボーン・片桐」。重さ39.9キログラムのノートPCを操る謎の男の目的とはいったい…… !? そしてみやび屋に忍び寄る邪悪な影の正体とは……!? みたいなことが書かれているんです。

正直、このあらすじを見た時に心に残るのはこれだと思います。

40キログラムのノートPCがあるのかと。39.9キログラムのノートPCがあるのかと。この本ふざけてんのかというのが一番印象に残ると思うんです。

なぜ印象に残るかと言うと、トンデモな設定が施されていることもあるんですが、それ以外に我々の脳の仕組みとして、本筋とは関係のない横道のほうが覚えていたりするんですよ。

これは脳のストレスと関係していると思っています。覚えなきゃいけないとか、学ばなきゃいけない時は緊張している。ですけど、緊張が解かれた瞬間に脳が解放されて、その時のほうが記憶力がよかったりする。

ここでいくと本当に覚えるべきは、Web集客が奮わず経営の危機を迎えているストーリーですけれど、そういうところはちょっと緊張しちゃうから、緊張が解けた瞬間に「重さ39.9キログラム……何これ?」となって覚えちゃう。そういうところがあります。

こういった、私たちの脳の仕組みも考えながらコンテンツを作っていくといいと思います。ただし、横道が多すぎるとそれが本筋になってしまうので、あくまでも横道は横道というのを覚えておいてください。

小さい物を熱く語れば語れるほど“物語”になる

(スライドを指して)あと意識したのはこちらですね。『沈黙のWeb』シリーズはマーケティング本なので、説明がいっぱい出てきます。説明が多すぎると正直どんどん頭が痛くなってきます。

私自身も難しい本を読むのは懲り懲りなので、できるだけシンプルにわかりやすく説明してほしい。でも説明からは逃れられない時に、物語を意識したんです。

どういうことかと言うと、物(モノ)って何かと言うと、私が今話しているこのマイク、これ物です。目の前にあるパソコンも物です。これを語るんですよ。

例えば私がしゃべりながら「実はですね。このマイク、私何気なく使ってるんですけど、私が初めてバンドのステージに立った時の、スタジオのオーナーがスタジオを閉めた時に私に手渡してくれたゴッパーのマイクなんです。

ゴッパーはダイナミックマイクと言って、コンデンサーほど値段が張らないかもしれないですけど、ずっと現役でがんばってるマイク。こういった広いところのステージで反響を適度に拾わず、そして演者の声をいい感じに響かせてくれる。すごいマイクでこいつは歴史に残る武器なんです」と言うわけですよ。

すごく情報の密度が濃く感じなかったですか? なぜかと言うと、このマイク小さいですよね。この小さい物に僕は意味をたくさん込めたんです。熱く語れば語るほど、実は物語になるんです。

今までのセミナーで言ったことないんですけど、これは僕の人生の処世術です。小さい物を熱く語れば語れるほど物語になる。物を語ってるから。それが物語を簡単に作るテクニックです。

『沈黙のWeb』シリーズを思い出してほしいんですけど、やたらカバンの話が出てきます。『沈黙のWebライティング』はミクロサイズのチップの話をずっと展開していきます。だから物語になっているんです。

ボーンがやたら荘厳な夢を語っていくと、確かにそれも物語になるかもしれないです。ただ、わかりやすい物語にはならない。抽象度が高すぎるわけです。

なので、何か物にフォーカスして語ることは具体度を上げていくので、実はすごくわかりやすいしイメージしやすい。大きなものはイメージしにくいけど、小さなものはイメージできるといったテクニックを使っています。

弊社が今展開している「クマレル」というソーシャルリスニングサービスがあるんですが、そこでも物語る練習をしています。お金を払うので、私がこのVAIOというノートPCに込めた思いを語らせてくださいと。

なぜこんなことをするかと言うと、私の物語力を上げるためにあえて訓練しています。物語力やストーリー力を上げたいのであれば、小さなことをできるだけ濃く話す訓練をすれば、めちゃめちゃ上がります。

このアプローチをいろんなメディアでも使っています。『美味しいワイン』の中でもワインのラベルに関する話を何度も何度も繰り返しています。ラベルはワインのボトルで言うと小さな部分ですが、そこに対してしっかり語れると物語になります。

もうちょっと簡単にまとめると、物について語ると記憶に残りやすいのは、単位面積あたりの情報の質量が多くなる。例えば、ポインターについて語るとすごく小さいですが、こんな小さいものにものすごい意味を与えると、すごい密度になるんです。

やたら大きな夢を語る……夢を語るのもすごく重要ですよ。素敵ですけれども、それよりも目の前にある小さなことに目を向けて語れると物語になります。こういった話はいろんな自己啓発本に書かれていると思いますが、私はロジカルに考えた時に小さな物を語れる人は強いなと思ったんですね。

では、小さな物について熱く語れるためにはどうすればいいか。1つ簡単な方法をお教えします。これは今日から使えます。ふだんの会話の中で「ちなみに」って言う癖を付けたらいいと思います。

「このマウスめっちゃ好きなんですよ。ちなみにこのマウス……」「ちなみにこの電池……」「ちなみにこのシール……」みたいなことで「ちなみに」を入れると、絶対に付加情報を入れないといけない。それが言えないってことは、この物に対してそれ以上愛着がないか、わかっていないんです。

だから「ちなみに」を無理やりにでも入れると必ず物語れるようになるのが、みなさんに届けたいノウハウです。正直な話、この物語のノウハウだけ話せば今日は満足なんです(笑)。でも、そうはいかない。まだいっぱいあります。

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