独自の使命を持った「Business Sweden」

カーステン・グローンブラット氏(以下、カーステン):みなさん、こんにちは。本日はBusiness Swedenについてご紹介できることを非常にうれしく思っております。私からもエコシステムでどのような取り組みがあるかをご紹介したいと思います。

Business Swedenは、通商と投資促進のための公的な機関です。そして、政府から依頼されて、スウェーデンの企業がビジネスを国際市場に拡大するサポートと、国際企業がスウェーデンで適切な投資先を見つけるサポートをしています。

私たちの事業、環境が大きく変わっていく中において、国際的なビジネスの開発、そしてハンズオンでの実装をお手伝いすることが重要だと考えております。

ビジネスサイクルが変わってくる中で、新たなスタートアップが既存の産業の垣根を越えて参入してきています。また、データへのアクセスやデジタル化によって、産業をまたいだかたちでのイノベーションや新たなビジネスモデルの創出が可能となってきました。

私たちは、各産業の中で先頭を走っている革新的な企業と協業することが多いのですが、彼らが新しい環境にどのように適応していくのかを非常に興味深く見ています。そこで課題となるのは、さまざまな異なるステークホルダーを相手にしていかなければならないということです。より幅広く、そして深い能力が必要とされるわけです。

従来の企業の8倍の価値を創出する「ネットワーク・オーケストレーター」

それからまた、売り手・買い手の関係が変わってきていて、コラボレーションや共創という関係になっています。従来のインハウスで価値創造を行ってきた線形のモデルは、業界を超えた敏捷性やコラボレーションが重要となってくるこの新しい環境においてはうまく機能しなくなります。

私たちは、ネットワークとエコシステムのアプローチへの移行に対処できる企業こそが成功できると考えています。そして、彼らを未来の企業の「ネットワーク・オーケストレーター(Network Orchestrator)」と呼んでいます。

ちょっと理論的で、また抽象的に聞こえるかもしれませんが、この2つのモデルは環境を異なるものとして捉えており、それぞれの成功要因も異なります。これまでのリニア(線形)で価値を創出するうえでは、効率よく資本やノウハウを活用するといったようなことが重要でした。

他方、ネットワーク型のアプローチでは、その分野における最高レベルの能力へのアクセスが価値を創出します。多様性、ノーズ(結節点)の数、相互作用の機能性といったところが、新しいアプローチで重要になってきます。

ここで、私どもが取り組んでまいりましたモデルをご紹介したいと思います。ネットワーク・オーケストレーターこそが最大の価値を獲得できるということですが、実のところ、従来の企業に比べて8倍の価値を創出できるのです。

このモデルは価値創造の方法を横軸に取っており、いくつかの企業が移行している段階を示しています。多くの企業はまだこの旅路の最初の地点にいるかもしれません。データによると、多くのスウェーデンの企業は移行期間にあり、パイオニアとしてよりオープンなエコシステムのアプローチを取ろうとしています。この取り組みをさらに発展させた話が今後できるようになることを楽しみにしております。

企業の優位性を見極め、適切にマッチングする

宮田裕章氏:カーステンさん、ありがとうございます。実は日本にとっての大きな学びの1つは、今日この場の設定そのものだったりするんですよね。政府の会合でも話をしているんですけど、やはり現地の大使館が、国内の企業であるスウェーデン企業をどう世界に羽ばたかせるかといった取り組みは、日本の課題の1つであると思います。

まさにスウェーデンは、日本の国益にもなるようなかたちで、こうした素晴らしい場を設定してくださっていると思います。カーステンさん、ここで少し質問なんですが、こういった場を設定することに対して、スウェーデンとしては、例えば「これはある一企業の利益になるんじゃないか」といった、いろいろな意見も出るかもしれないと思います。そういった意思決定はどのようになされているんでしょうか?

カーステン:私どもはエコシステムに関して、2つのことを見ています。1つは適切なケイパビリティ(企業が持つ優位性)の組み合わせが重要だと思います。これをアセットと呼んでいます。

ですから、マッチングして会社をご紹介するときには、私どもはある特定の能力を持っている人たちを組み合わせていきます。そして、もう1つはそのような能力が役に立つと思われる人にそれを伝えていくことです。

そして、もっと大きなシステムに育てられるところに伝えていきます。それからまたアクセスを与えて(ネットワークを促進していきますが)、最初の基本的なイントロダクションが、とても重要な一歩になると思います。