2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
kintone hive tokyo vol.12/ kintone AWARD 中国・四国地区代表:有限会社中山靴店 藤原 靖久 氏(全1記事)
提供:株式会社サイボウズ
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相馬理人氏(以下、相馬):それでは続きまして、2つ目の事例発表に参りましょう。中山靴店の藤原さんです。それでは藤原さんお願いいたします。
藤原靖久氏(以下、藤原):みなさん、こんにちは。岡山から参りました藤原と申します。本日は「町の靴屋の業務改善、小さな会社の大きな一歩」と題しまして、僕が経験した失敗と、その中で得た気付きを共有したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは弊社の紹介です。中山靴店は、岡山県の小さな港町で創業した町の靴屋です。従業員数は45名。平均年齢は30歳。1店舗あたり数名で運営している小さな靴屋です。
そんな僕たちのコンセプトは、職人が売る靴屋。職人がお客さま一人ひとりの足に合わせたインソールを作成し、地域のお客さまの健康を支えることです。
改めまして自己紹介をさせてください。私は藤原靖久と申します。好きなものは猫と安室ちゃん。猫のために、妻の実家を建て替える暴挙にも出ました。中山靴店へは2016年中途で入社しました。前職の経験を生かして、経理財務の担当でしたが、社内の管理体制がまったく整っていなかったため、バックオフィス業務全般を担当することになりました。
そして2017年、社内の業務管理のための業務改革が始まりました。結果、現場には膨大な報告業務が降り注ぐことになりました。しかし、社員は職人ばかりです。事務作業や報告業務が苦手なんです。こちらがせっかくフォーマットを準備しても、一度印刷したものに手書きで記入をして、メールで添付して送ってきたり。現場も情報も大混乱となりました。
そんな状況に嫌気がさした職人たちは、次々と辞めてしまったんです。経営会議では、毎回退職者が発表されていました。社内の会話は、次は誰が辞めるのか……といったうわさ話ばかりでした。残ってくれた職人たちにも、辞めていった職人が担当していた業務が重く負担になっていました。やがて、結果の見えない業務改革に、不平不満が噴出するようになっていきました。
そして、中山靴店はバラバラになっていきました。そして当時の私は、人手不足を解消するために採用活動に注力していました。経験のない業務だったものの、なんとか新しい社員を採用しましたが、雰囲気の悪さからすぐに辞めてしまうケースが続いていました。そうすると、現場からも管理側からも、僕に対してクレームが殺到するわけです。僕の心も限界を迎えていました。
(スライドを指差し)こちらは当時の日報です。この頃は日報もメールで上司にのみに共有する形式でした。予定通りに休みが取れなければ、日が変わってから退社するのは当たり前。そんな状況の当社の離職率は25パーセントにまで上昇していました。4人に1人が辞めていったんです。
そんな時に出会ったのがkintoneでした。とにかく普通の時間に自宅に帰れるようになりたい。そんな思いで、社長を必死に説得して導入にこぎつけました。そして販売会社様の富士ゼロックス岡山様の協力を経て、弊社でのkintoneの運用が始まりました。
でも、最初はまったく使われなかったんです。当時は予算的にも制約が多い中、なんとかkintoneを使ってもらおうとあらゆるプラグインを利用して、さまざまなアプリを作っていました。
そんな時、運命の日を迎えました。初めてCybozu Daysに参加したのです。そして、2年前のこの場で業務改善に出会いました。私はここで理想を見つけたんです。みなさんのチームワークに憧れたんです。
サイボウズさんの離職率が高かった時代からの変革や、当時登壇されていたユーザーのみなさんの発表を聞いて、kintoneでなら僕らでも業務改善ができるんじゃないかと思ったのです。業務改善をやろうと決心したんです。周りを巻き込んでやってやろうと。(職場のみんなが)楽しくなさそうなので、楽しくしてやろうと思いました。
そして、ここで聞いたみなさんの素晴らしい取り組みの表面的なモノマネをしたんです。周りには「kintoneってこういう使い方ができるんだよ」「あの会社はこういうアプリを作っているよ」と、kintoneをむやみやたらに推し進めていました。
そんな中、弊社のkintoneがどうなっていったかというと、やっぱり使われないんです。理想の活用なんて進まないんです。コメントなんて使われない。そもそも入力すらされない。
当時の僕の気持ちは、「なんで使わないの!?」「情報の共有をすればもっと楽になるのに」「なんでメールで送ってくるの?」「社内と外部のメールが混ざって面倒くさい」「なんで今電話してくるの!?」「今、手を止められるのは本当に勘弁してほしい」
みなさんもそんなふうに思われることはないでしょうか。ただ、当時はアプリに問題があると思っていました。アプリが使いにくいからダメなんだと。始めにつくった日報アプリも、コメント欄を追加して無理矢理に共有を進めようとしました。ただ、その結果がどうなったかと言うと、やっぱり使われないんです。気がつけば導入から1年が経過しようとしていました。この時は、本当に業務改善を諦めようと思いました。
でも、心のどこかで諦めきれなかった僕は、サイボウズさんに長文の相談メールを送りました。すると、サイボウズさんの社員で、岡山でリモートワークをされている松森さまから返信がありました。
「kintoneは現場レベルからじわじわ使いこなされていくもの。そこには現場を回ってしつこく使い方等を啓蒙していく泥臭い努力も必要となってくる」と。
大切なのは、この言葉だったのです。冒頭でも紹介したとおり、弊社の平均年齢は30歳と若い。スマホなんて、言われなくても使いこなしているのです。僕自身がkintoneを手探りで使ってきたこともあり、勝手にアプリに対して苦手意識なく使ってくれるだろうと思っていたんです。なによりみんな現状を、なんとかしたいと思っているはずだと。そしてkintoneはなんとかできるツールなんだと、理解してくれていると思っていたのです。
この言葉で認識のズレに気付かされた私は、社外でのハンズオンセミナーに参加し、社内でのハンズオンセミナーを繰り返していくことになります。また、社長に直訴して、大阪のCybozu Daysに参加してもらいました。そこで社長からも「kintoneいいね!」と言ってもらったんです。
どんなアプリを作っても使ってもらえない。人は辞めていく。そんな状況の中で、心が折れなかったのは社長の理解があったからでした。またお隣の広島県で開催されていたkintone Caféにも参加しました。kintone Caféは、全国でkintoneのユーザー同士が学び教え合う勉強会のコミュニティです。それが岡山では開催されていなくて、広島で開催されていたので、思い切って参加しました。
そこで初めてkintoneを通じて話ができる仲間ができました。年齢も仕事もバラバラなのにkintoneを通じてつながれた。そして、悩んでいるのは僕だけじゃない。自分一人じゃないんだという気持ちにさせてもらいました。
そうした日々を過ごしていくと、社内にも少しづつ変化が起きてきます。入力されていなかったコメント欄に、少しずつですがコメントが入力されるようになってきました。ある社員は自分だけじゃなくて、一緒に働いた仲間の分まで報告してくれるようになりました。また、社内にもアプリを作る仲間が増えました。休み明けにログインすると、知らないアプリやスレッドが増えているんです。
社内にも仲間が増えたこと。これは本当にうれしかった。そして、長年待ち望んでいた変化の時を迎えることになりました。そのきっかけは、仲間が作ったプラグインもカスタマイズさえ使われていない、たった一つのすごくないアプリでした。
お客さまから注文いただいたものの納期や、製作状況を管理するためのアプリでした。これは、以前ならば紙で管理されていました。ですが社内の仲間が、これをkintoneのアプリにしたんです。
紙の場合だと、自店の状況しかわからなかったものが、kintoneでどの店舗がどの程度の受注があり、どういった状況なのかが共有できるようになったんです。そして受注が重なり、納期に追われる京都の店舗に対して、札幌の店舗が声をかけて手伝ったんです。このことをきっかけに、距離を超えた助け合いが頻繁に行われるようになりました。バラバラだった職人たちがチームワークを取り戻したのです。
kintoneでアプリを作ることが簡単でも、kintoneでの業務改善は簡単ではありません。成功事例を聞くとキラキラして見えるし、ワクワクすると思います。
でも実際使い始めると、なにもない箱を渡されるわけです。自由に想いを詰めなさいと。そして想いをどんどん詰めていく。成功事例はみんなの想いがうまく詰め込めたものということを忘れないでください。今、僕たちの箱には、これだけの想いが詰まっています。
たくさんの思いを詰め込めれて、チームワークも取り戻せる。そんなすばらしいkintoneですが、kintoneが業務改善をするわけではありません。
業務改善は、100ある作業をワンクリックにすることだけが成功ではないのです。100ある作業を99にすることも立派な業務改善なんです。そもそも100ある作業をワンクリックにするすごいツールがあったとして、それを使えるのは1人だけ。あなただけだったら、業務改善が成功してると言えるのでしょうか。
kintoneは単なるデータベースではありません。感情を込めることができるんです。だからこそ、そこにみんなが集まると気付きが生まれ、工夫が生まれ、助け合いやチームワークが生まれるんだと僕は考えます。
業務改善は何のために行うんでしょうか。誰のために行うんでしょうか。僕はここに映る、一緒に働く仲間のためだと考えます。そして業務改善はそんな仲間たちが、自然に助け合いができるようになること。これこそが第一歩だと思うのです。そして、みなさんはここに来ることによって、そんなチームワークがあふれる未来への一歩をすでに踏み出しています。
これから壁にぶつかることもあると思います。でも決して、その歩みを止めないでください。僕もみなさんとチームワーク溢れる未来を一緒に作っていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
相馬:藤原さん、ありがとうございました。それでは藤原さんのZoom応援団の方もお呼びしたいと思います。
藤原:(笑)。
相馬:どうですか、みなさん応援してくださっていますね。「がんばれ」ってコメントがたくさんきていますね。みなさんもありがとうございます。
相馬:ではお話をお伺いしていこうと思います。3年間という長い期間、本当につらいことがありながらで。ご自身は改善をしているつもりだけど、なかなか現場はずっと使っていただけないという。その中で、一番つらかったのはいつでしたか?
藤原:そうですね。やっぱりこういったイベントに来て、みんなに感動を伝えたいんですけれども、それがなかなか伝わらない。本当に泣きそうになりましたね。
相馬:いや、本当に裏で聞いてて悲しくなりました。スライドでもおっしゃっていただいたんですけれども、kintoneって空っぽの箱から始まるので、今同じように会場にいるみなさんも「作ったけどなかなか浸透してくれない」「やり方が悪いのかな」と迷われている方がたくさんいらっしゃると思うんです。そういった方にアドバイスいただけることってありますか。
藤原:やっぱりはじめは真似から入ると思うんですけど、それぞれのチームや企業によって、文化や風土があると思うんです。やっぱり、それを変えていくのはツールだと思うのですが、いきなり変えるのはやっぱり難しい。なので根気強く諦めずに、あと1回を繰り返すことじゃないかなと思います。
相馬:ありがとうございます。3年間それで歩まれているので、ものすごい説得力があって。みなさんもぜひ参考にしてください。改めまして事例を発表いただきました藤原さんです。みなさん、もう一度大きな拍手をお願いいたします。
(会場拍手)
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