2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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原健一郎氏(以下、原):さっそく、今回のテーマである『ポストコロナの投資』についての話をやりたいと思います。みなさんコロナで働き方の中心がリモートになったことで、例えば投資先でこんな成長があっただとか、リモートっぽい投資を行ったとか。少しぜひ具体的なお話をしていただければと思いますが。ではグローバル・ブレイン代表取締役の百合本さん、いかがでしょうか。
百合本安彦氏(以下、百合本):はい。個別名でも構わないんですよね?
原:はい。
百合本:私のところは、家入一真さんのCAMPFIREというクラウドファンディングの会社に投資をしていまして。もともと昨年投資して、選択と集中ということで進めていて。実は今年に入ってコロナの影響もあってけっこう急成長しはじめて。
これは今、コロナウイルスのサポートプログラムをやっているんですけれども。飲食業とかけっこう厳しい状況に置かれている方々に対して、資金調達をして支援するプログラムなんですけれども。
実はKDDIさんが太っ腹で、クラウドファンディング決済手数料・サービス手数料を全部負担してくれて、集まった資金を全部事業に投下できるすばらしいプログラムとなっています。これを受けて今、急成長している状況ですね。あとは、いわゆるヨーロッパの非接触型の経済社会に対応するチャレンジャーバンクにけっこう投資するんですけれど、比較的コロナで伸びています。
例えばBitwala(ビットワラ)みたいな西ドイツのチャレンジャーバンクなどはすごく伸びている状況ですね。
原:ファイナンスの方法も、けっこう変わってきていることは確かにあるのかもしれないですよね。
百合本:そうです。
原:グロービスさんはいかがですか?
高宮慎一氏(以下、高宮):そうですね。短期的に言うと、実はそんなに変わらないかなというのはあるんですね。もちろんコロナの影響を直接受けるようなところ。例えばインバウンド系とか飲食系、もしくはBtoBの一部みたいな広告系は、直接短期的にダメージを受けているんですけれども。
まず1つに、そのダメージが一過性のものかどうか。我々VCは5年10年の目線で投資をしているので、afterコロナでも十分間に合うので。「一過性のものを乗り切れる資金を僕らが提供すればいいだけじゃん」という話もありますし。
あと、逆にコロナで伸びるところもけっこうあって。デジコン(デジタルコンテンツ)とかの巣ごもり消費系、あとはECとか。リアルに買い物に行けないからオンラインで買おうとか、ベタなリモートワーク系とか。普通に会議や採用をリモートでするものも伸びたりしています。
なので短期的に言うと、実はそんなに変わっていないのかなというのもありつつ、たぶん5年・10年先の長期を見据えた時に、緩やかに大きな変化が起こっているのかなという感じですね。
いわゆるニューノーマル的なものができあがった時に、ガラガラポンが起こるんじゃないか? みたいな感覚はすごくあって。じゃあガラガラポンが起こった時に「ベンチャーがとれる事業機会ってどこなんだろう?」という話は社内でもよく議論しています。
原:なるほど。高宮さんがおっしゃったように「将来起きるはずだったことが早めに起きた」みたいなことが、ECでもおそらくあるんでしょうね。Nikeもこの数ヶ月で売り上げの30パーセントが、いきなりデジタルになっていて。それって2030年ぐらいのゴールだったみたいなので、3年から5年で起きるはずだったことが今起きて。
ただ5年10年で見ると、また別の見方をしなきゃいけないのかなと思っていたところです。
高宮:そうですね。ECに限らず、最近、DXと言われているような、古い産業に全部IT・インターネットが染み出していって変革を起こしていく、みたいなことが全部ワープしている感覚はありますよね。
やっぱりリーマンの時とか、東日本大震災の時とかも、危機がそういうイノベーションを加速したみたいな側面はあると思うので。特に日本みたいに外圧とか、自然災害の危機に瀕しないと変わらないような国の場合、そこが転換点となるパターンは大いにあるんじゃないかと思っています。
原:ありがとうございます。堀さんはいかがですか?
堀新一郎氏(以下、堀):うーん……。まぁ投資先はもちろん、アソビューさんとかはものすごい影響を受けましたよね。投資先だけじゃなくてグループ企業で見ると一休も、ものすごい影響を受けましたね。
あと、投資先でいくと、PoC系(注:Proof of Conceptの略。概念実証の意味)で政府などから受託して開発していたところも、一旦、政府系の機関がステイホームで出社できないから決済できないということで、PoCの予算が下りないみたいな煽りを受けたことはあったんですけど。
高宮さんがおっしゃったように、リモートワークだったり、巣ごもり消費で伸びている会社はたくさん出てきています。
ヤフー自体も広告がかなり売り上げに影響を受けているんですけれども。もうこれからは、広告を主体としたBtoCに関した広告じゃなくて、投げ銭しかりコンテンツ課金しかり、そういったところで伸びていくビジネスに今、積極的に投資をしている感じですかね。
原:確かに本体の情報も様子もわかるのは、投資家としてすごくいいですよね。
堀:毎回、カンニングしながら投資するのをモットーでやっています(笑)。
佐俣アンリ氏(以下、佐俣):うらやましいなぁ(笑)。
原:アンリさんのファンドはいかがですか? 投資先の変化や影響だとか、新しい投資という意味でいうと。
佐俣:投資家はみんな反射的にポジティブなことをけっこう言うので、あえて言うと「僕はエグジットが近いファンドを多く持っているので、これはけっこう、くらっておりますな」という話です。
今、進行中のファンドはむしろコロナと投資開始が被ったので、すごいチャンスで。このテーマで乗っけようというのがあるんですけど。冷静に120社投資先があって、それを棚卸しして見ると、広告が返ってこないですね。
それはテレビ広告とかじゃなくて、普通に運用型広告とかもぜんぜん数字が返ってこなくて。広告はマジきついぞと思っています。堀さんもおっしゃっていますけど、大企業のPoCのコストってけっこうダブついていたもので、やっぱり畳みやすいので。すごくちゃんと畳まれているなと。
精査が進むという意味ではいいんですけど、棚卸ししてみると意外とくらっている会社がいっぱいあって。もちろん僕らは投資家なので、その戦略に沿って新しい投資についてけっこう考えているし。
僕らにとっては、DXがテーマの会社とかはむしろ追い風なんですけど、けっこう上場に近かった会社で広告とかだと、ちゃんとくらっちゃっていて。これはこれで影響を無視できないなというのは、厳然として感じています。
原:そうですね。アンリさんがおっしゃったように、明暗がけっこう分かれているというか。高宮さんが例に出したように、ECもそう、リモートワーク系も純粋な追い風がある一方で、当然グローバルでも大変な業界、Airbnbなんてまさにいい例だと思いますが、明暗がくっきり分かれて。なぜかコロナ禍でファンドレイズがうまくいっている会社もあれば、その逆もあるのが本当に顕著ですよね。
原:せっかくアンリさんと堀さんが投資業界関係で本を出しているので、お二人に聞きたかったのが、コロナの環境下だったり、今後5年、10年を見据えて起業家に対して見るべき視点だとか、求める資質は変わるものなんでしょうか?
堀:むしろアンリさんのほうが、もっとより起業家の資質を見ているので、僕よりも絶対おもしろい話ができるというプレッシャーを先に掛けておきますけど(笑)。
僕は逆に、出資させていただいている起業家のたくましさとか情けなさみたいなものの両方を垣間見ることができて、いい経験ができたなと思っています。
一番感動したのがアソビューの山野智久さんで、ここまでちゃんとできる人だと正直思っていなかったというのがあって(笑)。これを見ていたら怒られちゃうんですけど。アソビューなどは本当に影響を受けるビジネスモデルだったわけですけど、真っ先に人材などの手配を含めて早く動いていて、ここまで頼もしい人だと思わなかったというのがあったし。
逆に「え、まだあの高いオフィス契約してるの」とか「え、まだ何も手を打っていないの?」という起業家が出てきたりして。1つ勉強させてもらったのが、危機に強い起業家・弱い起業家というのはすごく明確になりましたよね。ただ、これって1~3時間の経営者面談じゃ、絶対わからない資質なので(笑)。
投資する時に、応用できるのか見るためには毎回こちらから危機を準備して。サバイバルゲームで生き残った人に投資する、みたいなことができたらいいんですけど、それはできないので(笑)。
佐俣:追い風に強い起業家と、向かい風に強い起業家ってそれぞれ存在していて。両方強い人もいるけど、どっちかだけ強い人はやっぱりいるなと感じました。
高宮:なんかでもback to basicみたいな話で、経営者の経営力とかリーダーシップが今回如実に出た感覚はあって。
やっぱり経営力やリーダーシップがある起業家って、2月の時点で「コロナやばくない? コンティンジェンシー(不足の事態への対応策)練ろうよ」みたいな。世の中が「まだ武漢の話でしょ?」って時に、そういう感じで考えていて。
ダイヤモンド・プリンセス以降「日本にも来るんじゃない?」という時にはもうプランができていたし、固定費の圧縮みたいな話とか、事業計画の練り直しはもう終わっているところもあったりして。
実際、緊急事態宣言下になった時にメンバーが不安になるところに、最悪を想定してコンティンジェンシーを練りながらも「withコロナはチャンスだ」とか「抜けた後に俺たちの時代が来る」みたいなことを言って鼓舞したりして。
やっぱり起業家の原点として、経営力・リーダーシップは一番大事なんじゃないのかと思い知りました。
原:百合本さんも不景気を2回、VCとして経験されていると思うんですけど。
百合本:そうですね。
原:リーマンショックとかその前のバブルの時とかも、同じように危機や不景気に強い人がいたり、特徴があるものですか?
百合本:基本的にうちの会社って、大きな物価の降下を3回経験していて。ネットバブル……、いわゆるドットコムバブルですね。それからリーマンショックと、ホリエモンショックがあって。これもけっこう深かったんですけど。
僕は特にそうなんですけど、やっぱり死の谷が見えた時に、そこでQuitしてしまう人ってけっこういるんですけど。
でもそうじゃなくて。ステークホルダーの顔を見ながら、ちゃんと上り詰めることができるみたいな。そんな力がすごく重要かなと思っていて。今回もそれが非常に試されていたなと思いました。実はこれからが本番で、今、第2波が来ていて、おそらく今年の年末から来年に掛けて、相当厳しくなると思うんですけど。
やはりここをチャンスと捉えるかどうかが、起業家としての本来の本懐みたいなものじゃないかと私は思うし、そういう会社に投資をしたいなと思っております。イメージ的にはイーロン・マスクとか。ああいうタイプかなと思っているんですけど。
堀:原さん、ちなみにDCMはどうなんですか?
原:投資の話からすると、未上場の会社が12社あって、モロにくらっているトラベルとかはないんですけど。例えば中国だと、それこそ「売り上げが95パーセント減です」って会社が何社もあって。かなりデータの会社でも、みんなオンライン教育にピボットしました。
百合本:すごいですね(笑)。
原:そこの意思決定の早さは本当にすごいなと思いました。例えば歯科矯正の会社とかにいきなり変わっていたり。「とにかく食らいつくぞ!」というハングリー精神は、中国特有だなと感じましたね。
あと、やはりアメリカは早かったです。もちろん人に対する考え方が日本とだいぶ違うのですが、けっこうおもしろいなと思ったのは、うまくいっている会社でも、まず組織を小さくする。なぜかと言えば「いい人がマーケットから出てくるから」という発想で。
佐俣:なるほど。
原:だから今のうちに枠を作っておいて「Airbnbからいい人採るぞ!」ということを先にやっている人がいましたね。
百合本:勉強になった。
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