2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
3 Fish With Built-In Flashlights(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:闇の中で物を見ようと思ったら、明かりをつけますよね。よく見えるようになるからです。ところで、明かりをつける生き物は、実は人間以外にも存在します。
アクティブフォトロケーション(active photolocation)という、すばらしい技を発達させた魚がいるのです。ちなみにこれは、視界をよくするために光を出すことの、単なる“しゃれた”表現です。
捕食者の多くは、目視できれば獲物を容易に捉えることができます。しかし、いかに視力が良くても「見る」ことは容易ではありません。水の中であればなおさらです。水はたいてい濁っており、さらには光を遮断してしまいます。つまり水深が深いほど、辺りは暗くなるのです。人間以外で、アクティブフォトロケーションの能力を持つことが知られているのが、すべて海の生き物であるのは、これが原因かもしれません。
ブラックフェイスドブレニー(Black-faced blenny)はその一例です。この小魚は、自ら光ることはできませんが、太陽光を増幅させることができます。
ブラックフェイスドブレニーの目を覆う球形のレンズは、頭上からの日光の一部が瞳に直射することを防ぎます。つまり、日光が目を直射することはありません。日光は目の直下の鏡状の組織に跳ね返り、横に照射されて、目の火花「オキュラースパーク(ocular spark)」と呼ばれる光線を発射します。
深海の生き物の多くは、ネコのように光を反射する目を持っており、研究によれば、ブラックフェイスドブレニーはこの光の方向を自在に操って獲物を見つけることができるようです。さらに、日光を反射する目をかすかに動かすだけで、この光を自在に明滅させ、色を変えることもできるようです。
瞳の下部には青い色素がある箇所があり、日光が照射すると青い光だけが外部へ反射します。他にも、青い光を吸収する働きを持つ蛍光色の成分があり、今度はエネルギーの低い赤い光を反射します。そのため、日光が照射すると、魚は赤い光を出すのです。
さらに研究によりますと、魚が見ているバックグラウンドによって、発光色が変わるというのです。これは、すべての物が青く見えるのに、わざわざ青い光を反射する物を探すことには意味が無いため、納得できます。
ブラックフェイスドブレニーが光を出さなくてはならないのは、実はこれが理由かもしれません。ブラックフェイスドブレニーが好むエサは、カモフラージュが非常に巧みなのです。ブラックフェイスドブレニーは、藻類によく間違えられる小さな生き物をエサにします。しかし藻類には光を反射する目などは存在しないため、光を当てて探せば、エサを藻類と見分けるには有効です。
オキュラースパークは、外敵を見分ける手段としても有効です。研究者たちがブラックフェイスドブレニーに光を通さない小さな帽子を被せたところ、魚たちは天敵に狙われていると勘違いして逃げようとしたのです。
オキュラースパークはとても役に立つ能力であるため、ブラックフェイスドブレニー以外にもこの能力を持つ魚はいます。
オキュラースパークが見過ごされてきた理由は、これがごく小さなスケールの物であるためだと研究者たちは考えています。オキュラースパークが見つかったのは、つい数年前のことなのです。
もっとあからさまに発光する魚もいます。「ヒカリキンメダイ(flashlight fish)」です。そのものずばりの名前ですね。ヒカリキンメダイは、目の下にインゲン豆大の発光器官を持っています。ところで、ヒカリキンメダイが狩りを行うのは夜であり、日光の手助けは得られません。発光するのは、共生発光バクテリアなのです。
この役に立つ微生物は、ヒカリキンメダイの目の下の器官に住んでいます。そして、500ナノメートルほどの波長の青緑色光を発します。この光は便利なことに、他の可視光線に比べて海中ではより遠方に届きます。
それぞれの器官は小さな袋になっており、背後は大きな鏡面になっていて、外部へ光を発散させる役割をしています。これが目の端につながっており、まばたきをすることにより光を発したり消したりすることができるのです。
ヒカリキンメダイもまた、敵の目に光を当てて相手を見つけます。さらに、この光は互いのコミュニケーションにも使われますし、敵から逃れる際にも活用されます。
ところで、青い「懐中電灯」を持っている魚はヒカリキンメダイのグループだけではありません。これまたそのままの英名を持つハダカイワシ(lanternfish、カンテラ魚の意)や、ワニトカゲギス(dragonfish)もまた同様です。
ワニトカゲギスは、英名のとおり、たくさんの尖った歯を持つ獰猛な捕食者です。彼らもまた、目の後ろに青く発光する器官を持っています。驚くべきことに、これらの魚は、バクテリアの助けを借りずに自らが発光するのです。
ところで、なんとも不気味なことに、目が赤く発光する深海に住む種が、少なくとも9種は存在します。
この光は、最初は他の魚と同様に、目の後ろから青い光として放たれます。ところが、青い光を吸収する蛍光色素に接触すると、赤い光として放たれるのです。種によっては、その上さらにフィルターを持ち、ごく限られた波長の光のみ発光するものもいます。ところで、これらの魚はなぜこういった面倒な工夫をするのでしょうか。
赤い光は、可視光線の中でももっともエネルギーが弱く、水深が深くなるにつれ消えていきます。つまり、赤い光は深海には決して届かないのです。そのため、ほとんどの深海魚は、進化の時を経て、赤い光を視る力を失ってしまったのです。ところが、ワニトカゲギスはそうではありませんでした。
ワニトカゲギスのいくつかの種は、赤い光を感知する、光に敏感に反応するたんぱく質を目の中に持っています。また、植物が光からエネルギーを得る色素である、クロロフィルのような働きや、クロロフィルそのものに由来する、特殊な色素を持つ種もいます。この色素は変異したもので、赤い光のエネルギーを吸収して、魚の体内の、光に反応する他のたんぱく質にこれを渡し、視界の幅を広げるのです。
深海では、赤い光を視ることができるのは他のワニトカゲギス以外にはいないため、獲物や天敵を刺激することなく好きなだけ発光させることができるのです。つまり、ワニトカゲギスは、なんと生まれながらのナイトヴィジョンを持っているのです。
これらの魚や、その他の光を巧みに使いこなす魚を研究すればするほど「見る」ことの複雑さ、特に水中において物を見る複雑さが明らかになります。それはつまり、海中やその他の一般的な場所において、機械や人間がよりよく物を見ることに役立ちます。さらには、魚眼について知れば知るほど、魚の習性や環境についての理解が深まります。
つまり、アクティブフォトロケーションの研究は、暗い深海で起こった進化に、光を当てることになるのです。
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