一瞬で虹のように色を変える、特異な魚

ローズ・ベアドントウォーク氏:つがいを惹きつけたり周囲に溶け込んだりするために、表皮の色を変える生き物はたくさんいます。

しかし、一瞬で姿を変化させ、ぱっと虹のように色を変えるタマムシサンゴアマダイは、非常にユニークです。

この魚が特異であることには疑念の余地はありません。研究者たちは、タマムシサンゴアマダイのこの離れ業の仕組みと、他の生き物とはまったく違う点を、実はすでに解明しているのです。

タマムシサンゴアマダイは、日本やフィリピン沖など、主にインド太平洋(インド洋・西太平洋)地域に生息しています。さらに、近年では水族館でも人気です。この魚を見たことがある人なら、別名の「フラッシングタイルフィッシュ(flashing tilefish)」という名前のとおり、この魚が玉虫色のブルーから明るい赤や黄色へ、瞬く間に変わる様を目撃したことでしょう。

タマムシサンゴアマダイが瞬時に変色するメカニズム

『Pigment Cell & Melanoma Research(色素細胞学と黒色腫研究)』誌上で2017年に発表された論文では、ある研究者が、タマムシサンゴアマダイの変色の仕組みの解明を試みました。まず手始めに、タマムシサンゴアマダイのうろこの色は「虹色素胞」という、一群の細胞によるものであることがわかりました。

例えば、赤い色素であれば赤い光しか反射しませんが、なんと虹色素胞は反射する色を変えることができます。虹色素胞は、反射を調整できる「血小板」という細胞からできているためです。

血小板は、虹色素胞の中に重なって並んでおり、体が発する化学成分のシグナルによってその間隔と位置が変化します。この配置の変化により、虹色素胞が反射する色が変わるのです。

さて、玉虫色の生き物は多くが虹色素胞によって色が決まり、その中には変色するものも多いため、これは取りたてて特異であるとは言えません。しかし、アマダイにおいて不思議なのは、色彩が、時には半秒ほどで瞬時に変化することです。

研究者たちは、このアマダイの特技は、血小板の配置に関係があると考えました。玉虫色の生き物の多くは、血小板は虹色素胞の全体に広がっていますが、アマダイの場合は、血小板は虹色素胞の端に並んでいるだけです。そのため、血小板は容易に配置を変え、反射する色を迅速に変化できるようなのです。

体色を変える他の生き物と同様に、このような配列の変化は、脳が体内に情報伝達する際に使う、ノルアドレナリンという有機化学物質によって引き起こされます。つまり、筋肉を任意で動かせるのと同様に、アマダイは自在に体色を変えられると研究者たちは考えているのです。

しかし、これが何のためなのかはまだわかっていません。カメレオンの名とは裏腹に、カモフラージュのためというのは、魚が瞬時に変色する理由としてはいまいちです。

しかし、生き物が色を変える理由は、他にもたくさんあります。例えばカメレオンは、隠れる以外にも、戦いや、つがいを引き寄せるために体の色を変えます。

外敵に反応して体色を変える、グッピーのような生物もいます。グッピーは、捕食者の目の前で目の色を黒く変えるのです。

これらのいずれかが、アマダイの変色の理由なのかもしれません。しかし、理由はどうであれ、アマダイがカラフルなショーを見せてくれることには間違いありません。