2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:物の値段も下がるんですか? いつか。
高橋浩一氏(以下、高橋):物の値段も下がると思いますね。
司会者:出版社も営業部がなくなったら、1,500円の本が1,200円になったりするかもしれないし、著者への印税額が上がったりするかもしれないなと思ったりするんですけど。そうするとみんながハッピーに……。
高橋:でも出版の世界って、すでに著者が営業するようになっていますよね。僕もめっちゃ営業しています。
三戸政和氏(以下、三戸):でもそれで言うたら、Kindleとかもまさにそうですよね。別にKindleになっちゃえば営業なんていらないし、流通もいらないし。中間マージン、ほぼなくなる状態ですもんね。
高橋:そうですね。
司会者:ですよね。安くなりますしね。
三戸:そうそう、安くなる。全員がハッピー。
高橋:「営業がいなくても大丈夫」という前提で組織を設計することは、違う角度でめちゃくちゃ大事だなというのは、三戸さんの本を読ませていただいてすごく感じたことで。「営業がないとだめ」な感じにしとくと、組織があまり良い方向に行かないなという。
三戸:何でかということを、経営目線でいうと。我々、経営者チームで飯を食って話をしてると、やっぱり商品設計だとかサービス設計の時に「アホでも売れる商品を作る」というのがキャッチフレーズなんですよね。ということは、アホでも売れるということは「なにもしなくても売れる」ということなんです。
だから会社にアホがいるから「アホのためになにか(仕事を)」というだけの話になってる。ということはやっぱりそういう、上流工程でそこをきっちりやっておけば、自然と増えていくという。売り上げ上がっていくという。
高橋:それが、大量生産・大量消費の時代だと「誰でも売れる」という言葉でやられてたと思うんですけど。でも誰でも売れるというふうにして、若い営業の子たちをたくさん採用するみたいな感じの会社が増えちゃうと、たぶんあまり世の中ハッピーじゃないと思って。
人がいなくても売れるという状態にしておいて、アドオンで「喜ばれるための仕事をする人が、気付いたら営業の役割を果たしている」というのが一番、自然な姿だと思うんですよね。
司会者:お二人の意見というのは「営業はなくなるだろうが、営業力は必要だ」というところに落ち着いていく……。
高橋:おっしゃる「営業」というのは、営業職のことですよね。
司会者:営業職は残る?
高橋:営業専門職がなくなって、営業力は……。
司会者:営業力は非常に大事になってくるというところ。なるほど。
高橋:でも今、営業だけでなく、マーケの世界も荒れてきているなと思って。ウェビナーの案内と、お役立ち資料とか、すごい量来るんですよね。
三戸:あ~、そうですよね。
高橋:だからこのままいくと、もしかしたら三戸さんが『マーケは要らない』とか書いてるかもしれない(笑)。
(一同笑)
高橋:Salesforceの『THE MODEL』は、誤解されて浸透しちゃっているんじゃないかと思います。
三戸:それしかやることがないからでしょ?
高橋:「ホワイトペーパー何個作りました」みたいなのがKPIになって、それがメールにジャンジャンいってしまうと、変な感じになりますね。それで(資料がお客さまに)見られなくなって。それをまた攻略しようみたいな方法論が、バーッとなってみたいな。結局「本当にお客さんに喜ばれるか?」というのを抜きにした分業は、あまり良い方向に行かないなって思っています。
司会者:じゃあもしかして、一回りしたらまた「やっぱり営業、必要なのでは?」って戻ってくることも、あり得ることですか?(笑)。「マーケにやらせるなら営業力を彼らに身に付けさせて、作った彼らがやればいいじゃん」みたいなのじゃなくて。やっぱりその専属の営業所が必要なんじゃないか? って、一周回って売る可能性も……。
高橋:僕は単純に、マーケの人も自分で電話したらいいと思うんですけどね。でも電話の人は別なので、お手本トークを見てそのまま延々とかけるんですよ。だから不在着信履歴がまた増えていくという感じで。
三戸:でも普通は営業モデルの人って、そこを『THE MODEL』的に、そこが分断されて、両方を効率化させたほうがいいみたいな。MAがあって、SFAがあって、CRMがあって。普通「分断させて、ここの全部の効率を上げていきましょう」という発想ですけど、違うんですね。
高橋:商品を営業が完全にいじれないという前提だと、分業はある程度は機能しますが、今どきの商材は結局、柔軟な設計はどこかで必要になってくるので。柔軟な設計が必要だと、お客さまとの会話もどんどん複雑になっていくじゃないですか。
そうすると、営業の人とせっかく話をしたのに、納品になったら別の人がやってくるというのは、お客さまからすると、不満の要因になりかねない。
三戸:あれはあれで違うんですね。
高橋:カスタマイズの変数が少ない商材については『THE MODEL』って、すごく合理的だと思うんですよ。でも、商品がだんだん複雑になってくると、分業のリスクはあるかなと。
三戸:なるほど。その次はまた違う世界なんや。
高橋:商品が複雑だと、営業が風呂敷を拡げて受注して、デリバリーで炎上するというのはよくある話ですね。
三戸:あるあるですよね。
高橋:つい受注しちゃいました、という。
三戸:スクラップ&ビルドしていく、というのか。
高橋:そうですね。そうすると今度はまた、営業の人が悪者になっちゃうという(笑)。
三戸:いやだから、もう無理があるんですって。そうやって金稼ごうという発想がもう。「金を稼がないようにしよう」ぐらいの気持ちでやったほうがいいんですよ。
司会者:三戸さんに1つ聞いていいですか? 営業をいらないって言われて、営業マンの人はビビるじゃないですか。今、営業マンという人は、何を目指せばいいのかなって…。
三戸:いや、それは個人的な考え方とビジネスマン的なところの違いはあると思いますけどね。個人的なというかパーソナルな部分でいうと、稼がなくても生きていく方法を探しに行ったほうがいいと思います。私、六本木に住んでいたけど、千葉に引っ越したんです。家賃が5分の1になりましたよ。そしたら「別にそんな稼がんでもええやん」ってなるじゃないですか(笑)。
それでどっちが生活のクオリティ高いかというと、別に変わらないし。千葉のほうが毎日ゴルフできていいなみたいなのもあるし。今まで六本木で何十万もお金を払わされていて、飯を食いに行ってね。何だろうな、これ? ってなるじゃないですか。
おそらくafterコロナは、そういう時代にもっとなっていくと思うから。だから、とにかく住宅ローンとか車のローンとか。本当に住居費のために、ご飯を食べるためにお金を稼がないといけないという思考を止めないと。たぶん「次、何したらいいですか?」って絶対なるけど、その「次、何したらいいんですか?」って聞くやつって、次何もできないやつだから。
その時点で、絶対に無理が生じると思うんですよね。営業公害から始まって、いろんなことが起こると思うので。だからそこの発想も転換していかないと、けっこうきついと思いますけどね。営業できる人がビジネスマンとしてどうするかは、それは別になにをやっていてもできるので。マーケサイドに行ってもできると思うし、その人が技術職を目指して、技術をある程度は極めれば別にそれでビジネスマンとしては成立していくと思うし。
経営者なんかにも向いてると思うし。ビジネスマンとしては、営業ができる人はそもそもそういうのができると思うし。だから「働かないおじさん」というのはね。
(一同笑)
三戸:無理してるんだもん。だってコロナでわかったやん(笑)! もうみんな無理してたよねというのはわかったから(笑)。もうそれやめようよと。
高橋:でも大企業とかだと、やりがいのピークが45歳ぐらいで来て、そこから急降下してくるんですけど。給料のマックスが50から55歳にやってくるので、みんな40ぐらいになった時に、降りられないという。この降りられない人たちを大量に生み出しているのが、大企業のそういう社会的位置にあるので。やっぱりみんな、大企業に入りたいというのも変わらないですし。それはちょっと、どこかで変えたほうがいいとは思いますけどね。
また、コロナの影響でアポの数とか電話がつながる数は激減していますので「会わないでどうやってお客さんに必要とされるか?」というところを、ちゃんと手段として持たないといけないと思うんです。要は、コンテンツですね。
僕も5月からTwitterをけっこう本格的にやり始めて。5月……3ヶ月前だとフォロワーの人、2,500人ぐらいだったんですけど。今(イベント当時)、5,000人ぐらい増えて、合計で8,000人にぐらいになったんですけど。そうするとやっぱり「Twitter見ました」とか「Twitterでいつも見てます」というお客さんが急に増えて。
アメリカの調査で「57パーセントの顧客が、営業に会う前に購入を決めている」というのがありますけど。たぶんその傾向は、これからさらに強くなるだろうなと思うんですよね。だから営業の人は、会社でやってくれなくても、自分でコンテンツを作ってみるぐらいのことは求められる。
お客さんに送って反応を見て、ちゃんと引き合いを作るみたいな。「マーケティングは自分の仕事じゃない」のように、分業のままでやっているとけっこうしんどいと思いますね。
司会者:自然消滅とかも、追いかけていったほうがいいんですか?
高橋:自然消滅はまた別の問題です。オンラインって温度感がすごく落ちちゃうんですね。顔を直接合わせている相手じゃないですから、お客さんも思い入れがなくて、すぐ忘れられちゃうし(笑)。家の中とかだと、下手したら子どもの相手をしながら商談してるお客さまとかいるじゃないですか。だからお客さんが商談を切るのが、わりと簡単になってきちゃっているので。
オンラインの場合って、けっこう細かく刻んでたくさん接触するみたいな感じで、ちゃんと一緒に合意を作っていくというスタイルじゃないと、やっぱり受注が取りづらくなっているんですよね。その分は無駄な商談を減らして、ちゃんと見込みのある、買ってくださるお客さまと密にコミュニケーションを重ねるみたいな。
司会者:見込み客を絞っていくということですか?
高橋:そうですね。手あたり次第というのは、もうきついですね。今、コロナの影響で、テンプレメール・電話というのがすごく増えています。
三戸:でも「接触の濃度」を高められないわけですよね、リアルじゃないから。だから「接触の回数」で全体の濃度を高めていくということですよね?
高橋:そうです。提案書とか企画書を、お客さまと一緒に作るというアプローチ。300人ぐらいのお客さんに「オンライン商談のうまい人の特徴」というのを聞いたんですけど、それは「一緒に作るということをちゃんとやってくれる人」だったんです。例えばパワーポイントとかだと、オンライン商談、ZoomでもTeamsでも同様。画面共有の機能があるんですけど、あまりうまくない人は、プレゼンモードでひたすら1個ずつ説明していって終わっちゃいます。うまい人は編集モードにして、お客さんの発言をその場で書き込んでいったりとか。ページをその場で新しく作ったりとかして。「一緒に作った企画ですね!」とやっているんですね。
三戸:なるほど、それはおもろいな。
高橋:だから提案書とか企画書の見た目がぐちゃぐちゃで、よくわかんない書類を作ってる人のほうが、受注獲得率が高いという。
三戸:それは巻き込んでるの?
高橋:巻き込んでる。
司会者:その場でもう、濃密にやってしまおうということなんですね。
高橋:そうですね。濃密に。
三戸:その巻き込みテクニックはおもろいですね。なるほどな。
司会者:あと予算縮小とかになった場合は「1年後にしようかな?」みたいに、予算を後ろ倒しにしていったりするんですか?
高橋:お客さん側には対応のテンプレートというのがあって。「コロナによる予算縮小とかで、ちょっと緊急度が下がってる」って、お客さまはとりあえず言うんです。
営業の人は営業の人で、そうなると「目標が達成できないから、なんとか今月までにお願いします。そしたら安くしますよ」と言ってしまう。お客さん側も、値引き前提のクロージングをすごく浴びているんですよね。だから営業としては、まず「テンプレじゃないですよ」というところから入っていく必要があって。
弊社の事情は置いといて「今コロナでいろいろ大変だと思うのでどうですか?」って言って、お客さまの文脈を聞いて。お客さまの文脈を聞いた時に、どこでお困りごとが発生しているのか? とか、何に行き詰まっているのか? というのを聞いて。そこに「じゃあこういうふうにお役立ちができるんですけど」って、あとから差し込めばいいんですけど。結局、お客さまのお困り事やお悩みに寄り添えるかどうかですよね。
司会者:勉強になりました、ありがとうございます。じゃあ本日はお開きということで。
三戸:はい、ありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。
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