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2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
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三戸政和氏(以下、三戸):それ(Excel管理の問題)ってどうやったらなくなるんですか? ちょっとそれ、めちゃくちゃ知りたいですね。
高橋浩一氏(以下、高橋):本当ですか(笑)。まず、営業を「フェーズ」で捉えることが重要です。よく当社はSFA(Sales Force Automationの略。営業支援システム)の導入支援をやってるんですけど。例えば、見積もりなんかに上がってくるのが5段階目だとすると、4段階目はお客さんの担当者のやりたいという声。その前は、お客さんからニーズと予算の存在を聞く。その前は会ってもらえる。……みたいに、ひたすらその“段階の定義”を、みんなで議論するんですよ。
隠し球派の人は「いやいや、その案件はまだ緩いですから」ていうんですよ。一方で、上司からすると「いや、もうそれってここまで話をしてるんだったら、もう見積もりの一歩手前でしょ」みたいな。「だったらその分、仮でいいから金額を書いてよ」って、やっぱり言うわけですね。
人の数が増えるとめちゃくちゃ定義がズレるので、これを定期的に直す行為というのをやっていくんです。今、セールステックとか、機能を使うとすごく便利に集計ができるので。それを現場のメンバーの人も、マネージャーの人もハッピーになるような使い方をしませんか? という提案をしていて。
セールステックって、気をつけないと、上司が部下を怒る材料がいっぱい入力されるみたいな感じになりやすいんですよ。要は監視ツールで使われちゃう。データが溜まってくると「あれやってないじゃん」「これやってないじゃん」とか、こういうコミュニケーションがけっこう増えるので。
僕はその段階を定めて、例えば「フェーズの5から6に上がったらフェーズアップとか、管理職の人もフェーズアップの件数に注目してください」と。あと新しく案件が作られた、新規作成商談件数というのがあって。「新規作成商談件数が増えているか注目してください」と。「増えたことをどんどん褒めてください」と言っているんですね。
一方で、管理職が気にしている異常や停滞については、アラート表示させるダッシュボードというのを作って、管理職が言う前にメンバーが自分で解消する。だいたいそれって、例えば3ヶ月前に接触してるのにぜんぜん進んでない案件とか。もうすぐ見積もりを出すんだけど、決裁者の名前がわからないやつとか。
そういうのは今まで、マネージャーの人がExcel管理で1行1行見て「これはどうなってるの?」って、聞いたり詰めたりするという、そういう会議があるんですけど(笑)。それはやめて、マネージャーの代わりに「マネージャーが見るポイントはここだよ」と全部システムに表示をさせておいて。
あとアタックリスト、アプローチリストに関しては、アプローチしてるかどうかもすべて表示させて。アプローチするべきところは件数表示させて、(アプローチが終われば)数が減っていくという設定もできるので。それを優先順位順に表示させておけば、もう上司はあれこれ細かいことを言わなくてもいいですよね。
それでいうと三戸さんの「管理職は要らない」という世界に、だんだん近づいてくるんですけど。でも僕が「管理職はいたほうがいいな」というのは、やっぱり褒める人がいたほうがハッピーなので。とにかく僕はもう「褒めることが仕事です」と言って、褒めやすいツールを設計して「また上がったね」と。「またできたね」という感じで。
三戸:それって、どっちともになるんちゃうかなとまだ思うんですけど。新規の数をちゃんと見といてねと言うと「新規が増えたね」って良い上司は褒めてくれるけど、悪い上司は「新規増えてないね」ってなるんじゃないかなと思うんですけど。
高橋:そうすると多くの会社は、ノルマとか目標設定にいくんですけど。Excel管理をしている会社では「目標に対してどのくらいの進捗なのか?」って、実際みんなわからないんですよ。だいたい営業会議でみんな、どんな報告しているかというと「じゃあ営業第一課、報告します」って。
「現在の進捗では目標に対して78パーセント」って言うんですけど「それ結局、期末に100パーセントいくの? いかないの?」という議論は、意外と突き詰められていないんですね。「78パーセントです」と言って「今ある案件はこれこれ、これです」と報告していくんですけど。結局このままいったら到達するかどうか? という大事な情報が見えないままに、みんなやっているんですよ。
だけどSFAだと、その延長線上で行くと着地するかどうかを出せるので。このままいくと達成するかしないかというのは、ある程度データで見えます。そうすると上司はことさら(部下に口うるさく)言わなくても、(データを)見ればどのくらい足りていないかとか、何をやるべきかとか全部出せるので。
三戸:「10月時点で78パーセントだったら、期末には100パーセントになるよね」みたいな?
高橋:そうですそうです。
三戸:それが50パーセントとかだったら「おいおい!」みたいにはなるってこと?
高橋:やっぱり基準値までいかない人というのはいますよね。そうすると今度はトレーニングの話なんですけど、今って動画がめちゃくちゃ使えるじゃないですか。スマホで簡単に撮ったりできるので、基本的には動画教材を作りましょうということをオススメしていて。
ある会社さんで新人の方々の営業研修を、テキストと演習みたいな感じでやっていたんですけど。ある年から動画教材を入れたら、新人配属前の仕上がりのレベルが平均的にぐっと上がったんですよ。それはやっぱり、今時の若い人って動画に慣れているので。見本とかも、どんどん見られる状態にしておくと、勝手に「良い営業ってこういうものなんだ」みたいな。
今までそれがやりづらかった理由ですが、昔のトレーニングって、ほとんど「しゃべる練習」なんですね。お客さんを見ないで、一生懸命に「このトークをそのまましゃべる」という練習をする。だから練習すればするほど「お客さんを見ない営業」になってくるという。でも動画って、お客さまとのやりとりがわかりやすくできるじゃないですか。
トークがうまい人がお客さん役をやれば、ちゃんと引き出されるお客さんとかもできますし。その動画の教材を作ることによって、なるべく感覚とか、筋をつかみやすくするとか。
あとSFAをちゃんと使うと、うまくいっている人とそうじゃない人のやり方というのが、すべて記録に残るので便利なんです。他にも「だいたい(商談を)何日放っておいたら危ない」とか。つまずくポイントを、ある程度は減らせるんですね。「この段階まで来たら、この入力項目が書かれてないとまずいよ」とか。「この段階までうまく進まない人は、これを見たらいいよ」というのを、全部埋め込んでおけますから。
あらかじめ転びにくいように、(チェックポイントになるものを)SFAで作っておく。動画の教材については、特に最近だとオンライン商談が増えているので、オンライン商談だったらお客さまの許可をいただければレコーディングができますから。生のイケてる商談というのは、山ほど社内にありますので。
それをちゃんと見やすく、使いやすくする、と。それがあってもわからない人は、正直、ちょっとどうにもなりづらいというのはあるんですけど(笑)。ただ、手段は、数年前に比べるとものすごく使いやすくなっているので。
マネージャーの人がそれを正しく使えさえすれば成果は上がるんですけど、今のマネージャーの人って、育ってきた現役時代が「Excel・ノルマ」の時代なので。一方的なトークで成果を上げてきた人たちって、やっぱりやり方がわからないんですよね。
司会者:そのテクノロジーというか、動画とかの技術さえ使えば、どんな人であっても一様にスキルはフェーズアップというか、均一にというか。「(先輩社員の)背中から学ぶ」とかいうのではなくて、教材からしっかり学べるからそれなりの質は担保される、という理解で。
高橋:そうですね。さっきので言うと、なかなかスキルが上がらない人もロープレをやらせて、そのロープレ動画を撮ってもらって。これをアップしてもらうやり方を使えば、その人の実力値というものは見えますので。
だんだんつまずくポイントを減らすというのは、システムの力を使うとすごくやれるんですね。あとは本当にそのマネージャーの人ができるかどうか、使いこなせるかどうかになるという。
三戸:その人の能力次第。
高橋:そう。それが行き届くと「マネージャーの仕事は、褒めること」という世界にだんだん近づいていくんじゃないかなという。
三戸:褒めることになっていくのかな?
高橋:褒めることというか……承認と賞賛みたいな。職場の中にポジティブなコミュニケーションを増やすという。例えばうちの会社もさっきのフェーズアップ、Slackのチャンネルを作って。「褒めるためのチャンネル」というのがあるんですけど。
三戸:へー!
高橋:フェーズが上がると通知が飛んできて、案件が作られたら飛んできて、みんなにとってすぐわかる。それをピックアップして社内で共有するという。
三戸:なるほど、それもう意図的にやっているんですね。
高橋:そうですね。
三戸:それで、お互い気持ちよく……。
高橋:気持ちよくというか(笑)。
三戸:いや、いい意味ですよ!
高橋:そうですね。さらに今って「MiiTel」という文字起こしを自動でやってくれて、分析してくれるツールがあるんです。
三戸:営業トークを?
高橋:そうそう。営業トークを。
三戸:分析までしてくれるんですか?
高橋:うちも入れてるんですけど。どのくらい間を置いているかとか、会話の分析も、全部自動的に出てくるんですよ。ただ、売れている人のトークをそのままやろうとすると、どうしても一方的な感じになっちゃうので。
一方的に相手を見ないでやる行為を減らすというのは、やっぱりどこかで必要だなぁと思っているんですね。セールステックがいくら進化しても。例えば「川崎のどこどこの会社でこういうニーズがあったから、大分のどこどこの会社にニーズがあるはずだ」と思っていても、相手を一切見ないでアプローチしちゃったら、やっぱりズレるじゃないですか。
だからズレをなくすという行為はさっきの「営業力」という観点だと、やっぱりすごく根幹だなと思っていて。
三戸:なるほどな。私も高橋さんの本を見ていて思うのは「“営業”を科学している感」というよりかは「“コミュニケーション”を科学している感」だなと思っていたんですよ。
高橋:そうですね。
三戸:『無敗営業』のサブタイトルが『3つの質問と4つの力』だから、メインタイトルとサブタイトルが一致しているようで、実はしてへんのんちゃうかなと思って。
高橋:初めはこのサブタイトル(『3つの「質問」と4つの「力」』)で、もうAmazonに流通しかけていたんですけど(笑)。
三戸:そうでしょう!? やっぱりそうでしょう!?(笑)。
高橋:土壇場で『無敗営業』というタイトルを差し込んで。
三戸:やっぱりそうなんだ。「営業の本じゃないな」と私は思っていたんですよ。『営業はいらない』を書くために、営業の本を100冊か200冊ぐらい読んだんですけど。
コミュニケーションノウハウ、伝え方とか言い方とか。心の開かせ方とか、けっこう科学的な感じを再現性高く書いてらっしゃるから。そっち系の本っぽいなと思って、読んでいたんですよ。だから「何で営業なんやろうなぁ?」って、ちょっと思っていたんですけど(笑)。
高橋:実際、僕も商談で「買ってください!」とか言わないですし。「楽しく話していると、いつの間にか契約くださる」というのが一番理想なので。そう言われると「営業」というより、もう少し広い概念で「生きる力」というのが、自分のビジネスというか、人生のテーマなんですけど。やっぱり、たくましく生き抜いていく上でコミュニケーション、相手のズレを解消して、ちゃんと一緒にハッピーになるというのは、これはもうすごく大事だなと思うんです。
「自分はこうやってきたから、こうしなさい」という管理職が指導している世界観では、ずっとそこに出会えないんじゃないかというのは、やっぱりあって。
三戸:なるほどな。今、もう俺は腑に落ちましたわ。やっぱりそうなんやなぁ(笑)。なるほど。
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