2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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武田双雲氏(以下、武田):この前、亮潤さんが出演するNHKの『炎舞』で「炎」と「舞」という字を書かせていただいたんですけど。亮潤さんは最近、かなり気付かれたことがあったと、番組の最後のほうにおっしゃって。「楽しく」「楽しい」と「笑顔」とかって、そういうかなりポジティブなキーワードをおっしゃられていました。もう一度、どういう心変わりがここ最近あったのか、個人的に聞きたいんですが。
塩沼亮潤氏(以下、塩沼):あの時の質問は「修行して修行して修行する前と後、ビフォー・アフターで何が変わりましたか?」と聞かれて、私は「笑顔が多くなりましたね」と答えました。
武田:笑顔。
塩沼:はい。人間関係とか人生の中で、どうしてもネガティブなことってたくさんありますよね。そうすると、自分の心の針が「どうして?」「なんで?」と。結局、我々は思い通りにならないと「どうして?」「なんで?」と恨み憎しみの暗い方向に、心の針が行ってしまうんですよね。
でもイラッとした時に、ここに着火点となって相手に悪いほう悪いほうに引っ張られるんじゃなくて、グッと戻して明るいほう明るいほうに、自分の気持ちを前向きにポジティブに持っていこうって。それが笑顔につながったんですよね。
だから、少々嫌なことがあっても、全部「災い転じて吉となす」と。もう人生、生きているだけで笑顔という、そういう方向に修行が終わって変わりました。
溝口勇児氏(以下、溝口):なるほど。
武田:ありがとうございます。
溝口:僕は吉岡先生とは毎週のようにジャパンハートの件でミーティングをさせていただいたりとか、お考えに触れることが多いんですけれども。吉岡先生にお伺いしたいなと思って。
まずジャパンハート自体は、昨年は海外だけで約35,000人くらいの子どもたちを中心に治療されたと。約500人くらいの医師がボランティアで関わってくれたり、医師や看護師に関わらず、日増しにボランティアのスタッフの方たちとか、応援してくれる人たちが増えていると思うんですよね。
ジャパンハートにいろんなヒントを得て、新しいチャレンジに今つながっているんですけども、僕が学んだことは、それこそ「孤独」や「退屈」や「不安」が本当に21世紀の課題だとするならば、それは挑戦する人を応援したり支援したり、またはなにかしらのかたちで関わっている間は、それらの3つの感情とは無縁だなということを気付かされたんですね。
吉岡秀人氏(以下、吉岡):はい。
溝口:吉岡先生たちが考える「ポストコロナの未来」じゃないですけれども、人と人とがどうつながっていくべきかとか、どう生きていくべきかとか。人々が幸せになるために自由になるためにどうあるべきか? みたいなことを、吉岡先生の観点でお聞かせいただくことはできますか?
吉岡:わかりました。溝口さんの話をベースに話してみますね。簡単にいうと、未来に生きるか、過去を始末するか。この2つだと僕は思っているんです。特に日本人たちは。
どういうことかというと、溝口さんが言われたように、退屈とかそういうことがこれから未来の人たちにはすごく問題になるじゃないですか。それは、日本人たちには問題になるということですね。
でも現実に世界を見たら、まだ20世紀の課題に取り組んでいる人たちがいるわけですね。貧困とか病気とか。僕らにとっては、もうそこは克服したところなので、未来に生きないといけないんですけれども、その時にもっと未来に進むのか、それとも過去の課題の始末に取り掛かるのかという2つなんですね。
吉岡:僕は25年以上、海外で医療をやってわかったことがあるんですよ。何かというと、医療というのは、所詮、盾でしかないということなんですね。社会の中で、うまくいかなくて溢れてきた人をなんとか助ける盾なんだと。
じゃ、矛は何かというと経済なんですよ。やはり経済が発展しない国ではたくさん死ぬし、衛生知識も広がらない。だから、それこそ聞いていられるみなさんは矛なんですよね。矛を持っているんです。
医療の僕らは盾しか持っていないんですね。盾は受け続けたら必ず破られるじゃないですか。完璧な防御は攻撃であるということと同じ観点でいうと、僕らのやっていることは、必ず完璧には人を助けることはできない。でも、もし矛が優れてどんどん経済を含めて前に進めることができれば、僕らが助けるよりも、本当にたくさんの人が助かると思うんですね。
去年、アフガニスタンで撃ち殺されて亡くなられた中村哲さんという人は、最初は医療やっていたんですけれども、きりがないということで、水路を作って経済を発展させるといってやり始められたんですよ。すなわち、彼は盾から矛に持ち替えたんですよね。
まさに、溝口さんが言われたように、僕はずっと死ぬまでたぶん盾の役割なんだろうなと。僕という人間は、生まれてからずっと時代の狭間とか、組織の発展の狭間で常に自分が位置していることを理解していますので、その時代のしんがりを務めることになるだろうと思うんです。
すなわち、これから数十年で医療は劇的に発展して、多くの人たちが助かっていく。ただ、その時に今、みなさんが現実に見ているような貧富の差は広がって、まだまだ取りこぼされる人たちがいる。
その人たちを助けるのが僕の役目なんですよね。その意識に目覚めた人たちが、僕のところにどんどん来ているんです。要するに、過去の課題に取り組もうとしている人たち。過去の課題に取り組もうとしている人たちが、僕のところに来ていると。
でも、まだ意識が20世紀に拘束されている人たちがたくさんいて、その人たちは「なんで自分で金払ってまでボランティアに行かないといけないんだ」とか思っていると。だけど、時代は一気にこれから振れますので、おそらくそういう時代をさらに未来へ進める人と、過去の課題に取り組む人と大きく分かれていくと。
それは、自分がどちらに興味があるかとか、どちらにやりがいを感じるかということになっていくんだろうなと思っています。
武田:吉岡さんから今「矛になれ」というアドバイスをいただいたと思うんですけど。IVS関係に関わるこの矛のメンバーに対して、それがどういう矛なのか、経済を回すみなさんにもっと具体的な矛の話をもう少し聞かせてください。
吉岡:それぞれの分野で、それぞれがやればいいと思うんですけど。ただ、今言ったような時代の中で、例えば、僕の子どもはまだ中学生くらいなんですけど、小学生の頃から意識が変わっているんですね。
昔の僕らの時代は「物が豊かになる」とか「贅沢をする」ことがすごく豊かなことだったんですね。今の子どもたちはそうではなくて、例えば人の役に立っているとか、社会から必要とされていることをものすごく求めているというんですかね。お金持ちになれば良かった時代じゃないので、僕らの時よりは非常に難しいわけです。
武田:本当、そうですね。
吉岡:そういう意味では、今の人たちは高いハードルに向かっているかもしれないんですけれども、それがこれから未来に課せられていることなので。経営者の人たちにどんどん経済を発展させてほしく、そして物理的にも幸せにしてほしいんですけれども。でも、それだけでは未来の人たちって幸せになれないんですよ。
やはり、そこにさっき言ったような経営者の哲学というんですかね。「世の中のためにこれをやっているんだ」とか、「世の中のためにこれを作っていくんだ」とか、「世の中のためにこれをしていくんだ」という哲学を浸透させていく。そういうことを同時にしないといけなくなると思います。
昔はダイエーでもそうですけど、経営者というのは、ただ1兆円売り上げるところだけを目指して、最後まで走り続けますね。でもああいう生き方は、未来の人たちは誰も望んでいないんですよ。ですから、世の中を幸せに、本当の意味で心が幸せになるようなものを、サービスを作って導いていくということになると思うんですね。
武田:いやー、いい話。ミゾ(溝口氏)は、今たぶん日本では一番起業家とか若手ベンチャーとかの界隈を見ている1人だと思うんだけど、吉岡先生のおっしゃったような「いい志」というか、社会の幸せを考えている起業家は増えてきていますか?
溝口:そうですね。いくつかの組織を自分も経営したり、見てきた中で明確に言えるのは、競争に勝とうぜということで刺さる20代、30代の起業家も社員も少なくなっていると思いますね。
「あの会社に勝とう」「あいつよりも絶対にうまくいきたい」「あいつよりも絶対に高いところに登るんだ」ということではなくなってきているとは、明確に感じます。
「あそこの会社よりも売り上げが」とか「時価総額を」という起業家はまだまだたくさんいますけれども、働く社員は「時価総額で」とか「売り上げをいくらで」とか言われても、ポカーンとする人が圧倒的に増えているように思えてて。
そうじゃなくて、自分が生きる意味とか働く意味をすごく大切にする人が増えているんじゃないかなと。今日のお三方の特徴としては、それを地でずっとやってこられてきた方たちだなと思うんですよね。
例えば、今日は千葉(功太郎)さんとかもいて、けっこう素晴らしい方たちがたくさん参加してくれているんですが、投資家もどうですか? 千葉さん、難しいですよね。
いわゆる株価がしっかり伸びて、キャピタルゲインが大きいところと社会的なものとか、そういうものってどうですか。リンクすると思いますか? 社会的意味と意義と資本的成功みたいなものとか。
千葉功太郎氏(以下、千葉):僕はリンクすると思っていますよ。それがないと長続きしないですよね。
武田:長続きしない。
溝口:それはどういう。
千葉:2~3年くらいお金を稼ぐために割り切っているんだったら、リンクしている必要はまったくないと思っているんですけど、やはり何かを成し遂げるというのは何十年単位だと思うんですよね。
そうなると、自分の中で続けられる。まさに吉岡先生もそうだと思うんですが、本当に自分の中に、社会的意義と自分の生き様がリンクしていないと続けられないんじゃないかなと思っています。これは何事もじゃないですかね。起業家に限らず。
溝口:そうですね。
吉岡:僕は息子たちに言っていることがあるんですよ。それは、お金を儲けるのはたぶん20代でも30代でも、今だったら10代の人でもできるかもしれない。けれども、100年生きる時代に人の幸せというのは何かというと、本当に社会から大切にされる。社会から必要とされる。社会から求められる。年を取っても。それが人としての幸せじゃないかと、子どもたちに言っているんですね。
そうなるためには、若いときから積み上げて、やはり40過ぎてこないとなかなか実感として湧かないから。「だからそこを目指して、あらゆる行動を起こしていかないといけないよ」という話はしますね。すごく時間がかかるものだと思うんですね。
経営者がお金を儲けるってどんどんやってほしいんですけれども、その時に経営者も学ばないといけない。感じないといけない。そういうものの世界を与えてくれるのが芸術であり、双雲さんとか亮潤さんたちの生き様が経営者の人たちに浸透したり、あるいは一般の人たちに浸透して、社会が少しずつ精神的に変わっていくのかなというのは、僕は感じます。
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