2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小池克典氏(以下、小池):ありがとうございます。両社で共通していることとしては、スピード感がすごくあったなと思います。川邊さんにぜひ教えていただきたいんですけれども、特にギグパートナー制度など、だいぶ早い決断をどんどんされて。それこそWebに出るまでに当然、さまざまな施策などもあったと思うんですけど、意思決定が非常に早かったなぁと思っています。
社内に対してどういったオーソライズや動き方があったか、話せる範囲で教えていただいてもよろしいですか?
川邊健太郎氏(以下、川邊):結局、移動時間がなくなったので、考える時間が莫大に増えたんですよね。働いている時間の14パーセントが空いたわけですから。めちゃくちゃいろいろなことを考えられているんですよ。ギグーパートナーの募集もそういう考えの中から発生して、当然内容が良ければすぐ意思決定できるわけですから。
意思決定の早さより、この完全リモート下においてたくさん考える時間ができて、いろいろな方と意見交換ができたことが大きかったなと思っていますね。
小池:なるほど。LIFULLもさまざまな部分をどんどん決めていったと思うんですけれども、井上さんは意思決定に関してはどういう考えをもって動かしていましたか?
井上高志氏(以下、井上):LIFULLという社名は造語ですけど、「あらゆるLIFEを、FULLにする。」ということで、あらゆるLIFEの中には従業員も入っているわけですよね。従業員にとっていい状態はどういうものだろうと。
これはすぐに役員陣で集まって、新型コロナが来ているけれども、「今どうするか」という短期的な対応と、「永続的にどういうものがあるべきかたちなんだろうね」ということで、社員のWell-being、幸福度をどうやって上げていくかということでやってきました。
これもたぶん思考の壁があったんだろうと思うんですが、さっき川邊さんも言っていたように、今まで(テレワークは)月間5日間と言っていたと。うちも「まあ週2日までだろう」と。「スウェーデンの実証実験で、2日が最も生産性が上がるというデータもあるぞ」というふうにして、やっていたんですけれども。
新型コロナが来るとそれどころじゃないので、テレワークを4日とか5日やってみたら「なんだか別にぜんぜんOKじゃない?」というふうになっていったので(笑)。やっぱりこういう環境になったおかげで思考の壁を取っ払えて、やってみたというのがすごく大きいですよね。それで見えてきた世界が広がっていると思います。
小池:まさにその辺りの実行力という部分が共通しているのかなと思います。その中で、今回、テレワークなど制度を変えた会社も多かったと思います。うまくいっているところ、いってないところの大きな違いは、カルチャーが事前にあるかという部分が非常によく言われると思いますけれども。
そういった部分で、ヤフーは「どこでもオフィス」を前から実施していると思います。そういったカルチャーの醸成に関して、川邊さんはいろいろなことをされていたと思うんですけれども、どうお考えになって、どういう打ち手を取ってきたかを教えていただいてもよろしいですか?
川邊:僕がヤフーに入社した2000年には、社員同士のコミュニケーションはYahoo!メッセンジャーでやっていました。隣の人と話すのもYahoo!メッセンジャー。結局、非同期コミュニケーションのほうが効率がいいわけですよね。電話とメールの違いみたいなものですけれども、時間泥棒をしなくていいわけですから。
そういうことをやり慣れていた土壌がまずあり、そのうえで2014年からどこでもオフィスを導入して、いろいろなところでリモートワークをしてみて、「自分のパフォーマンスが最も発揮できる場所はどこなんだろう」ということを、みんながそれぞれに体感していたことは大きかったと思います。
ただ結局、月5日以上に増やすことにつながらなかったのは、全員が同時にリモートワークになることがなかったので、「結局オフィスに行ったほうが効率がいい」となっていたと思うんですよね。必要な人がいたり会話ができるから。それが一気にリモートワークになった結果、フルリモートでも変わらないじゃんということがわかった。
文化はそうやって作られたわけですが、準備をし続けてきたことのほうがはるかに重要だったかなと思います。例えば、1人2端末まで全社員がVPNの接続ができる環境が整っていたわけですね。
それがコロナ禍になり、即席でリモートワーク環境を作ろうとした会社は、そもそもVPN準備できないとか。あるいはセキュリティポリシーが整わないので、会社に来てくださいとか。さまざまな混乱が起きたんだと推察します。
コロナ禍の前に、どこでもオフィスを通じていろいろなチャレンジをやってきたことが大きかったなと。未来を先取りするようなことは、少しずつでもやっておくことが大事かなと思いますね。
小池:まさにヤフーさんは思考停止しないというか、常に挑戦し続けている。前例のないことにどんどんチャレンジするところがすごく印象的だなと思うんですけれども。井上さんから見て、ヤフーの働き方や制度はどういうふうに映っていますか?
井上:逆に川邊さんに聞きたいのが、どこでもオフィスをやってみようと最初に思い立ったきっかけはなんだったんですか、ということ。
あとはこれはすごい部分だなと思うんですけれども、川邊さんが率先して館山から通勤していたり。社長自ら率先して週1回社外で働くことは、文化を作るうえでは最強だなと思うんですよね。そもそもそのスタートは何がきっかけだったんですか?
川邊:それはやっぱりあれじゃないですかね。宮坂前社長も僕も比較的自然が好きで、いろいろなところへ行っちゃう、あるいは行っちゃいたい……まあ遊び人ですよね。簡単に言うと。
井上:ははは(笑)。
川邊:自分たちもいろいろなところへ行って仕事したいと思っていたし。そういうところで物事を考えると発想が変わるということも体感的にわかっていたので、それが大きかったんじゃないでしょうかね。
井上:なるほど。一方で、こういう新型コロナが来ても社長の考え方次第では、「いやいや出社するもんだろう」「這ってでも会社に来い」という文化の会社もあるじゃないですか(笑)。
そういう会社の社員は「コロナが落ち着いたら絶対転職してやる」と心に決めていたりとか。会社の経営トップとか文化によって、方向性や舵取りは本当に大きく変わるよなと思いますね。
川邊:今はコロナで一時的に人が会社を選びづらいとか転職しづらいという状況が発生していると思いますけれども。少なくとも日本の長期トレンドは労働人口不足ですから、ぜひみんな自分の波長に合う会社を選んだらいいんじゃないかなと思いますね。
井上:そうですね。これ、ファシリテーターから何かシナリオがあるかもしれないけど。
小池:いいですよ。どんどん。
井上:これからの働き方と日本の未来というテーマの中でちょっと話したいのは、働き方で言うと、それこそ孫正義さんとジャック・マーさんの対談で出ていた話としては「20年後にはAIが普及して、週に3日3時間働けばいいような社会が訪れるぞ」と言っていて。僕もそれはすごくアグリーなんですよね。
もしかしたら20年もかからないかもしれないなと思っているんですけど。そうなった時に「会社が残るのか」ということが1つの問いかけで、「会社の正社員である必然性は何なんだっけ」ということすら薄れていって。
重厚長大な何かをやらなきゃいけない時は会社組織が必要かもしれないですけれども、サービス産業やホワイトカラー系だったら会社じゃなくてもいいんじゃないのと。僕は10年15年くらいでそういうふうに変容していく社会が来るんじゃないかなと思っているんですけど、川邊さんはどんなふうに見ていますか?
川邊:おっしゃる通り、AIなどによって、いわゆる単純作業が人間からAIなどに置き換わっていって、むしろ人間はAIを駆使してもっと創造的なことができるようになると思っています。
その時に少なくとも正社員と非正社員といった概念はなくなってしまっていて。会社に何の目的で集まるのかが露骨になっていくんじゃないでしょうかね。
「これをやるために会社が必要なので会社があります」「これをやるために会社に勤めます」ということになり、特に会社で働く必要がなければ個人でネットワークを駆使して、あるいはAIを駆使して自己実現はできますからと。知識情報産業になればなるほど、そうなっていくんじゃないかなと。
コロナがなくても15年くらいでそうなるでしょうから、もっと加速しちゃうんじゃないですかね。
井上:コロナで加速されますよね。
川邊:そうですね。やっぱり個人をエンパワーメントすることがITの1つの本質的な目的だと思うんですけれども。ITによってエンパワーメントされた個人がどんどん活躍していく社会の中で、会社などの組織の役割は、少なくとも主役ではなくなって、サポートする側に回るんじゃないでしょうかね。
井上:サポートするサービスであって、会社である必然性もなくなっていきますよね。
川邊:そうですね。
井上:コミュニティやネットワーク、業務を効率化するサポーターとしてのプラットフォームやサービスが増えていくんだろうなという予感がしますね。
川邊:そう思います。
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