2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小池克典氏(以下、小池):今回のテーマである働き方の現状について、さっそく各社にお伺いしたいと思います。川邊さん、まさに昨日の日本経済新聞でヤフーの新しい働き方について大きく取り上げられました。ぜひヤフーの取り組みなどをご説明いただけますか?
川邊健太郎氏(以下、川邊):みなさん、こんばんは。ヤフー社長の川邊です。みなさん、「Yahoo! JAPAN」をご利用いただき、本当にありがとうございます。そのYahoo! JAPANを運営している会社が、この7月に「オンラインに引っ越します」という宣言をしました。それがいよいよ10月1日から開始される日が近づいてまいりました。
もう少し詳細をご説明します。そもそもヤフーは、リモートワークないしは在宅勤務という言葉は用いておらず、「どこでもオフィス」という言い方をしています。自分のパフォーマンスが最も発揮される場所で働いてもらうことが、ユーザーに一番報いることができるよねと。
自分のパフォーマンスを最大限に発揮できる場所は、おそらくそれぞれ異なるでしょう。そうすると、それらのメンバーが集まって共同作業をする時の共通の作業空間は、当然オンラインになっていくでしょうねと。それが前述の「オンラインに引っ越します」ということです。
「どこでもオフィス」という制度は2014年に導入して、コロナ前は月5回という上限を設けていました。今にして思うと、なぜ上限を設けていたのかなと思いますが。
コロナが起きていなければ、東京オリンピックの時に混雑緩和への協力のために、一定期間どこでもオフィスを活用して、紀尾井町のオフィスには来ないで各自が最もパフォーマンスが上がる場所で働いてください、ということをやろうとしていました。それがコロナ禍となり、今は、どこでもオフィスの月5回の上限をなくしている状況になっています。
川邊:結果、エンジニアが約半数の会社だったことが大きいと思いますが、移動時間がなくなって作業に集中できたり、作業効率が良くなったり、非常に社員からの評判がいい。そして、コロナ前の働き方の時に予定していた開発項目はそんなに影響が出ることなく開発できたうえに、コロナ対応のさまざまな開発までできました。
例えば、今年1月に提供を終了したエリアや駅周辺の混雑度を表示する「混雑レーダー」をコロナ発生後に再開発して、再度提供を開始したり、クラスターを推定するために、統計データを国に提供するとか。そういうことも含めて、フルオンラインでもパフォーマンスが出たので、いよいよ回数制限は未来永劫撤廃してもいいんじゃないかな、となりました。
今までは出社前提で、コアタイムが決められている中で働いていたんですが、みんながそれぞれパフォーマンスの出る場所で、パフォーマンスの出る時間帯で仕事をやってもらうため、コアタイムも廃止しました。
また、通信費の補助も拡大しました。リモートワークにおいて通信環境が決定的に重要になっています。今までは、Yahoo! BBなど一部の通信サービスのみ毎月補助していましたが、他社の通信サービスも含めて補助の対象にして、オンラインに引っ越せる支援も行っています。
通勤前提ではなくなるので、交通費は実費支払いとしました。あと最後に大きいのが、結局、「どこでもオフィス」が前提の勤務スタイルになった時に、移動がなくなったのでものすごく時間ができたんですよね。
私も自分の時間を分析しているんですが、全体の労働時間の14パーセントくらいを移動に使っていたんですね。その移動時間がなくなったのですから、ある人はよりたくさん仕事をして自分のパフォーマンスを上げたり、ある人は家族と過ごす時間を増やしてQuality Of Lifeを増進させたりしています。
川邊:その中で僕が思ったことは、自己研鑽したい人、成長したい人がいっぱいいるだろうなと。新しい知識や経験を体得することが最も成長につながりますので、副業をどんどんやったらいいんじゃないか、ということです。
ヤフーは、副業を1996年の創業当初から許可していたんですけれども、2~3の会社にコミットするのは当たり前の世の中になっていくから、どんどん副業してくださいということを言いました。
実は私が社員に副業を奨励しているのと同じように、フルリモートワークの会社でも起きているんじゃないかなと思いました。ぜんぜん異なる経験や知識を持った人が、ヤフーでも副業をしてくれるようなすごいチャンスが訪れているんじゃないのかなと思いまして、副業人材(ギグパートナー)募集という制度を作り、ヤフーに副業人材を受け入れる取り組みを開始しております。これは約100人の枠に4,500人以上の応募が殺到して、今厳選採用中なんです。
ヤフーは、各自が最もパフォーマンスが上がる場所であれば、どこで働いても問題ありません。ただ、全社員が共通して働く場所はオンラインであることは間違いないので、ヤフーは「オンラインに引っ越します」という表現で、世の中に広報をさせていただきました。
もちろん、オフィスに来なければならない内容の仕事をされている方もいますし。莫大な、いわゆるエッセンシャルワーカーの方々の支えによって、我々がオンラインに引越しができているということなので、それには感謝をしたいと申し上げております。そういった方々もオンラインに引越しできるような技術開発、サービスの開発に努めることで、我々も社会へ還元していきたいと考えています。
長くなってしまいましたが、ヤフーのLivingAnywhere的な説明でした。
小池:ありがとうございます。ヤフーさんの規模でこういった取り組みをやるというのはすごい決断ですし、これを進めたのはすごいなと思うんですけれども。井上さん、これに関してぜひご意見をいただきたいなと思いますが、どうですか?
井上高志氏(以下、井上):いや~すごいですね。川邊さんは本当に爆速でいろいろなことを決め、いろいろ進めていくので本当に尊敬しています。あとはLivingAnywhere WORKの賛同企業としても、いち早く「賛成するよ」と言っていただいて、本当にありがたい限りです。ありがとうございます。
川邊:いえいえ。
井上:今の話を聞いていて、僕らもインターネットの会社なので、現状はテレワーク、在宅ワークが中心になっています。2日から4日間在宅してくださいというふうにしていて、それぞれの部署や事情がありますから、その中でフレキシブルですよと。ただし週に1日はチームで顔を合わせようよということで、週1出社を推奨しています。
ただ、例えば子育てや介護、看護といった諸々の事情があれば、今は週5日間全部在宅でもOKですよという制度にしていますね。あと、コアタイムも時差通勤したほうがいいよねということで、廃止はしていないんですけれども、10時からだったのを11時からということで幅を広げたりもしています。
費用補助に関しては、3番と4番はヤフーさんと考え方が似ていまして。僕らは費用補助というのは、一時金は出したりしたんですけれども、毎月というわけではありませんでした。これはまだ社員に正式に発表してないので、ここで言っていいのかという感じなんですけど(笑)。あと数日で社員にも伝わるのかな。大幅にベースアップします。
なので、交通費はもう実費支給にしてしまって、通勤定期代は廃止しました。それを補填するだけだと、通信環境や光熱費もかかるし、椅子やデスクも揃えたいしというところがあるので、けっこう大盤振る舞いで10パーセントくらいベースアップして、全社員に提供するというふうにしました。あとは自由に使ってくれという感じですね。
井上:あと副業も今はOKになってます。川邊さんもそうだと感じていると思うんですけれども、副業というと、たぶん自分の会社からすると社員がほかのフィールドで仕事をしてくることによって、多様なスキルを身につけて成長してもらう機会になると思います。
ただし、「そっちの仕事のほうが楽しいや」となって「会社辞めまーす」とか「フリーランスになりまーす」ということがあり得ると思うんですよね。そこは経営者からすると人材流出というふうになりますけど。
逆に言えば、このギグパートナーという制度は、たぶん採用活動にもなっていくなと思っています。逆にこういう制度をどんどんやっていって、「うちの会社の仕事おもしろいよね」とか「魅力的でしょ」「成長できるでしょ」という機会を提供して。転職する時って、結果的には実際には入ってみないとわからないということがいっぱいあるじゃないですか。
ところが、こういうふうに副業でパートナー制度をやっていると、「あ、なんかヤフーっていいな」「LIFULLいいな。こっちも素敵だな。転職しちゃおっかな」というふうに来てくれるようになるといいなと思うんですね。
なので、これからは副業をさせないというよりは、副業をどんどん解禁していって、働く人にとって魅力的な場所を作らないと、人材獲得という意味では企業の競争力は失われていくんだろうなと思います。もっと言うと、シビアになるかなと思います。ピンチをチャンスに変えるという意味では、副業をどんどんオープンにしていきたいなと思っています。
あと、うちも社員同士のいろいろな社内イベントがたくさんあるんですけれども。これも全部オンラインに移行して、この前も「街バル」というイベントをやりました。もともとは営業利益を達成したらみんなで打ち上げやろうよ、というイベントだったんですが、前回は恵比寿で飲食店を25店舗とか30店舗くらい貸し切って、LIFULLのTシャツを着た社員が恵比寿界隈をグルグル回って、いろいろなお店をはしごするということをやって。
お店に行くと、社員たちがいろいろなエンターテインメントでおもてなしをする。これをリアルでやっていたんですけど、今年はそれを全部オンラインに移植して、どこまでオンラインでできるかなぁと思ったんですけど、社員たちがすごく知恵を出してくれてですね。めちゃめちゃおもしろいことになりました。
オンラインでのVRで田舎のはとバスツアーみたいなものをやっていたり、バリスタを呼んでコーヒーの淹れ方を学びながら、みんなが自宅で超おいしいコーヒー飲むとか。クッキングスクール形式で料理を作るといったものが30個くらいあちこちであったので、社員さんたちも非常に満足度が高かったなと思います。
井上:今現在、本社は半蔵門にあるんですけど、本社の稼働率5パーセントから10パーセントくらいです。あと5年は解約できない契約になっているので(笑)。ちょっと別の用途で、コミュニティとか面と向かって会う時にこそ必要なオフィスというものを考えなきゃなということで、目下検討中です。
自社の働き方については以上なんですけれども、僕ら「LIFULL HOME'S」という不動産のポータルサイトをやっていますから、そこのデータを少し共有させてもらうと。いわゆる田舎、地方と言われている47都道府県中の37都道府県をピックアップして、昨年と今年でどのくらい問い合わせや閲覧回数が増えているかと言うと、37県中33県、およそ90パーセントの田舎エリアで問い合わせや反響や閲覧がゴンっと増えているんですね。
川邊:それはそうでしょうね。
井上:はい。みんなが新型コロナの影響を受けて、トイレで仕事をしているお父さんもいれば、ウォークインクローゼットで仕事をしていたり、自家用車の運転席で仕事をしていて腰を痛めちゃうようなことが続くとですね。
「いっそのこと引っ越そうか」なんて言って、郊外に行って、同じ支払額でも倍くらいのスペースの家になるような人がすごく増えていますし。郊外の中古戸建てや別荘が今は飛ぶように売れているんですよね。値段は下がっていなくて、成約がどんどん上がってきている。そんな状態です。
今日ファシリテーションをしている小池も、都心に住んでいたのをさっさと郊外のほうに引っ越して……どのくらいのスペースになったんだっけ?
小池:同じ家賃で3倍になりましたね。
井上:3倍になった(笑)。
小池:ただ、もっと移動してもいいなというくらいに思っていますね。
井上:ちょっと長くなりましたけど、我々の取り組みや不動産市場でいくとそんな変化が現れています。
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