2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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麻野耕司氏(以下、麻野):まとめると、イズムとかバリューとかカルチャーがすごく大事やと。新卒の採用ももちろん大事だけれども、最近は中途で優秀な人が増えてきたからそっちでもチャンスがあると。
ただ、そのときにもちろん実績や能力は大事やけど、カルチャーはちゃんと見なあかんくて、スタートアップが変にお金で釣っちゃうとそのへんが歪むから、お金で釣らない。それだけでカルチャーへの共感があるかという踏み絵にもなると思うので、それで人を増やしていくと安定していく。そういうことですかね。ありがとうございます。
いや~めちゃくちゃおもしろいというか、この御三方の話はめちゃくちゃ豪華やなと思いながら聞いてたんですけど。僕もいっぱい聞きたいことがあるんですが、あと残り20分を切りましたので会場からの質問を受けたいと思います。
予告していたので、弦さんに質問いきますか? とりあえず勝手にミュート解除しました。
田中弦氏(以下、田中):あ~、怖い(笑)。
南壮一郎氏(以下、南):勝手にミュート解除(笑)。
田中:勝手にミュート解除はね~。変な音楽とか流してたら、これやばいですよ。
(一同笑)
麻野:確かに(笑)。
田中:さっきまで娘がウワー!って、横でとんでもない声を出していたので(笑)。今はちょっと寝静まってるみたいなのでいいんですけど。
田中:ちょうどFringe81が今240人くらいなんですよね。なので300人の壁というのは、実はすごくもがいている最中で。なぜかと言うと我々は広告の会社だったんですけど、Uniposというとんでもないものが生まれちゃったので、いきなりポートフォリオ経営になっています。
これはいろんなベンチャーでも起こると思うんですけど、単品でやっているうちに、気付いたらほかの事業もやりたくなっちゃって、ポートフォリオ経営に持っていこうという時に、けっこうしっちゃかめっちゃかに……Fringe81はなっているんですよね。
そうすると、今までの広告の事業の人から「弦さん、飽きちゃったんですか?」というふうに言われて。「いや、そんなことないんだけどさ」みたいな。
単品ビジネスから、言ってみれば飛び地のビジネスも含めてポートフォリオ経営にしていくのが、ちょうど200人から300人くらいの間のタイミングなのかなという気もしています。僕は実際に悩んでいるので、そこらへんでみなさんが気を付けていたことを教えていただけると。
麻野:事業が多角化したときに新規事業にスポットが当たって、既存事業が疲弊症になるようなことだったりしますね。
田中:そうですね~。
麻野:確かに外から見ていても、弦さんUniposしか興味ないんちゃうかって見えますもん。
田中:会社でそんなこと言ったら殺されますからね(笑)。
麻野:どうマネージしてるかとか、ちょっとお伺いしてみたいですね。どうですか?
南:僕は、今から5年前にその300人の壁をまさに通りました。その時に、サイバーエージェントの藤田さんに相談させていただきました。
藤田さんからは、「もし南さんが新規事業に注力して、既存事業を新しい経営チームに任せるなら、まずは、南さんたちが本社を出て、身分相応な雑居ビルに引っ越すべき。絶対オフィスを2つに分けたほうがいいよ」とアドバイスしていただきました。その理由を尋ねると、「もし南さんが既存事業を担う新しい経営メンバーとたまたまオフィスで会ったら、必ず事業の状況を聞き、口出しをしてしまうので、新しい経営チームはやり辛いんじゃないかな」と教えてくださいました。
田中:あ~。
南:そのアドバイスを聞き、我々の場合、自分を含めた創業取締役3名を、全員既存事業から剥がして、ビズリーチ事業については、多田さんを中心とした体制に一気に転換しました。そして、藤田さんのアドバイス通り、創業取締役3名が何人かのエンジニアを引き連れて、10人くらいで道を挟んだ雑居ビルに引っ越しました。
麻野:あ~、おもしろいなぁ。
南:藤田さんからのアドバイスは極めて本質的でした。事業をゼロから立ち上げることが得意な人は、必ずしも事業を急成長させたり、事業を仕組み化していくことが得意ではないと個人的に思っています。得意なことを得意な人に任せる。任せたら、任せられる仕組みを創っていく。適切なスペースと間合いを与えることの大切さを藤田さんから学ばせてもらったおかげで、多事業化の一歩を踏み出せたと思っています。
麻野:鉢嶺さんは、そのあたりいかがですか?
鉢嶺登氏(以下、鉢嶺):うちの会社もネット広告代理店をずっとやってきてさ、その間にいろいろ新規事業はやっているんだけど、ある種サイバーさんみたいに大当たりしてるものはないわけですよ。
僕から見るとトップ自ら思いっきりそこに張りにいく。すべての経営資源をその新規事業に投入しないとやっぱり当たらないんだなということは実感としても思っているので。今回はある種、DXというテーマに対して全社のすべての資源を投下するというかたちです。今はチャレンジ中なので成果はわからないんですけど、そんな感じですね。
麻野:その時に、DXというテーマと違う事業をやっている人たちはどこか後ろ向きになったりしないんですか?
鉢嶺:どうなんだろうねぇ。もともとネット広告代理店をやっている人たちのほうが90パーセントくらいいるわけですよね。だけどある種、僕がやらなきゃいけないことは、その90パーセントの社員の人たちの洗脳というか。「いやいや、広告代理店マンとしてDXをやるとみんなのスキルも上がるし、市場価値も上がるじゃない」と。「お客さんも求めてるじゃん」と。
「2000年代前半にインターネット広告を売りに行った時に門前払いされて、うちはマス広告やってるからいいよ、って断られてた時と一緒だよ」と。でも今は誰もがネット広告をやっているし、ネット広告の効果測定やってるじゃん。
それと同じように、今DXを僕らが普及させることが、ある種ベンチャー企業としての存在意義だから。それを全力でやろうぜと言っている者に共感してくれる社員の数をどんどん増やす。そうすることが彼ら自体のバージョンアップにもなると思っているので、それをやり続けるしかないのかな。
麻野:さっき南さんがおっしゃったようにオフィスを分けたり、どちらかと言うと会社を分化させていくというベクトルですけれども。オプトはDXでいろんなものをグッと統合して取っていくという。
鉢嶺:そうだね。昔の話で言うと、うちはまだ本当に会社が小さかった時に「これからはネットの時代だ!」と言って、4つも事業をやっていたんですよ。大赤字だったんですよ。その時に、これはネットバブルだからやばいってネット広告代理店だけに絞って、ほかの3事業は全部凍結したんですね。この時からガーっと伸びたんだけど。
やっぱり4つも事業をやっていると、社内での議論がバラッバラなんですよ。それを1つにすると、全社の会話がネット広告だけになってめちゃくちゃ一体感が生まれたんです。そういう意味で言うと、やっぱりベンチャーは大企業と戦うにあたって、資源をフォーカスする。一点突破でいくことは王道だと思っているので。
DXといったってマーケットはめちゃくちゃ大きいし。大手のコンサルも含めていっぱい参入してきているので、そういう意味で言うと僕らは1,500人のデジタル人材がいるとはいえ、なかなか簡単に勝てるマーケットじゃないから、「この1,500人全員でぶつかりに行こうぜ!」という感じにしないと勝てないなという感じ。
麻野:なるほど、ありがとうございます。よく経営をグー、パー、チョキに例えますよね。最初にベンチャーとして始まったらグー1個の単一事業で突き抜けて、そのあと多角化したりするけど、やっぱり最後にどこで勝負するかということを絞っていくとチョキになるという話があるんですけど。どこで勝負するかにフォーカスすることも時に大事ということなんですかね。
鉢嶺:そうですね。
麻野:ありがとうございます。質問がある方いらっしゃいますか? けっこうみんな映像は切っているのであれですけど。当てますか?
南:僕、むしろ青野さんに質問があります。
麻野:あ~いきましょ、いきましょ。
南:青野さんは、事業の多角化にもチャレンジした上で、やっぱり自分はグループウェアに絞ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。グループウェアがどんなに好きでも、人間、いろんなことをやりたくなってしまう生き物なのではないでしょうか。何か規律を保つ秘訣があるのでしょうか?
青野慶久氏(以下、青野):それはですね。実は多角化にそんなに興味がなかったんだと思いますね。性格的に同じことを何十年もやり続けられるタイプの人間はいると思うんですよ。イチローさんみたいな感じですよね。ある意味、めっちゃルーティーンじゃないですか。でも、何十年間も続けて職人みたいに極めるのが好きな人もいると思うんですよね。僕はたぶん、そっちなんですよね。
南:なるほど。
青野:それこそ、そういう人間が「上場企業の社長になったから、売り上げを上げないといけない」「利益を上げないといけない」「規模を拡大しないといけない」と思った時がやっぱり怖い。
自分の棚卸しは大事だなと思うんですよね。僕はもう職人でいこうと思って。売上が伸びるというようなことは、正直僕は関心が低いわけだから、たぶん狙うと失敗する。ただ、いいグループウェアを作ることだったら、GoogleやMicrosoftと戦う自信がある。だったらそこへ行こうと。結果的になんとなく今会社が大きくはなってきてるけれども、それは狙ったものではない。
麻野:めっちゃおもろい、その話。自分の棚卸しね。
南:それはM&Aをいろいろとしなかったら、わからなかったことですかね?
青野:そうなんですよ~。そのへんが僕のやった失敗なんですけど。ちゃんと自己認識ができていれば、余計な遠回りをする必要がなかったと思いますけどね。
南:でも、M&Aしなかったら自己認識できなかったと思いますが、そのあたりはどう思いますか? よくある、たらればの話ですけれども、自分として、どうすればいいのかなと思いまして。
青野:そうですねぇ。どうだったでしょうね。
鉢嶺:僕も日本電産の永守さんに言われたのはね、「社長の仕事はとにかく決断することだから、とにかくいっぱい決断しまくれ」と。失敗したっていいと。「会社を倒産させない限りはいっぱい決断して、いっぱい失敗しろ」と言われたんですよ。だから僕も電通と提携するっていう大失敗をしちゃったわけだ。
(一同笑)
鉢嶺:10年間も苦しめられたわけだからさ。でもまあ潰れていないんだから、まあしょうがないじゃないですか。次に行こうぜって、それを糧にしてがんばるしかないかなと思うので。僕は青野さんのそのジャッジは必要な失敗だったんじゃないかなと聞いてて思いましたけどね。
青野:会社を潰さない程度でよかったです(笑)。
麻野:ありがとうございます。うわ~めちゃめちゃおもしろかった! 僕、あと1~2時間くらい、ぜんぜんお三方の話を聞けるんですけど。あと3分くらいになりましたので、これから300人の壁に立ち向かっていこうというようなメッセージをお願いできればと思います。
さっきの弦さんのような経営者の方々がたくさん聞いてくださっていると思うので、何かコメントやメッセージをもらえればと思います。どなたかから、いかがでしょうか?
南:3人のなかでは最年少ですので、私からいかせていただきます。私にとって、経営において重要なのは「願い」だと思っています。ほとんどの起業家は、会社を300人にしようとか、1,000人の組織を作りたいと、最初から思って会社を創っていません。事業を通じて世の中をどう変えたいのか。未来の当たり前をどう創っていきたいのか。なぜスタートアップで働いているのかということを、ぜひ起業家として意識してもらいたい。
先ほどの青野さんの話にもありましたように、1つの商品、1つの製品、プロダクト、事業で世の中を変えたいと本気で思い、圧倒的な成果を出したならば、その願いの先で、勝手に組織は大きくなります。
ですので、自分自身の事業創りに込めた願いを、ちゃんと自分の中で再確認してもらいたい。そして、究極は、事業創りを通じたお客様の課題解決に、どこまで本気で腹を決めてやり切れるのか。その成果の先では、組織がどんどん大きくなっていくので、結局解決せざるを得なくなっていきます。
ただ絶対その事業で世の中を変えるんだ、という強い意志を持ち続ければ、組織の問題は必ず解決できます。なので、組織の人数の壁にぶつかったら、ぜひ自分自身に問うてもらいたい。その壁をブレークスルーするだけの、強い意志が自分にまだあるかを。
麻野:めっちゃええ話じゃないっすか! 僕、何かグッときたわ。南さん、ありがとうございました。
南:ありがとうございます。
鉢嶺:もうなんかね、同じと言っちゃ悪いけど、南さんの話と似ていて。さっきも言ったけど、2000年代前半に「これからインターネットの時代になるんですよ」「ネット広告やりましょうよ」と言っても、ほとんどが門前払いだったわけですよ。そういう時に普及させていくことが、今から思えばすごく楽しかったし、やった意味があったなと。
これからの時代は、「デジタル産業革命なんだからDXしないともう生き残れないんですよ」と、心底そう思っているので、1社でも多く、1日でも早くDXしてもらうことが国力を上げることにもなるので、それをやると。
会社の規模は結果論でしかないので、ある種、本当に南さんが言ったことそのままです。何をやりたいのか。きれいな言葉で言うと、どういうふうに社会貢献するのかというところを自分の心に持っていれば、結果として人数や規模は後から付いてくるんじゃないかなと僕も思います。
麻野:いや~ありがとうございます! めちゃくちゃいい。最後のこの話。最後、青野さんお願いします。
青野:本当にいい勉強になる時間をありがとうございました。やっぱりキャラが大事ですね。これが必ず成功じゃなくて、キャラに合ったかたちを作るという大事さを教えていただきましたと共に、大失敗しない程度にいっぱい失敗すると。
鉢嶺:ははは(笑)。
青野:これもある意味、自分を知るうえでもすごく大事なことかなと思いました。今日はどうもありがとうございました。
麻野:ありがとうございました! いや~めちゃくちゃおもしろかったし、めちゃくちゃ勉強になりました。僕も今後に活かしていきたいと思います。
南:ビズリーチの契約お待ちしてます(笑)。
麻野:はい、連絡します(笑)。明日からがんばってダイレクトメールを打ちたいと思います。
鉢嶺:麻野さんのこれからの成長の軌跡を語るのに、またここで登壇してよ。
麻野:いや~がんばります。先輩たちの背中を見ながら、登壇できるようにがんばっていきます。ということで18時ぴったりでございます。では、今回ご登壇いただいた青野さん、鉢嶺さん、南さん本当にありがとうございました。
青野・鉢嶺・南:ありがとうございました。
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