2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
We Might Finally Be Able to Treat the "Stomach Flu"(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:病気は誰にでも不快なものですね。特に、自分や子どもが昨晩の夕食を吐いてしまうようなものなら、なおさらです。ところが、「お腹の虫」や「お腹の風邪」と呼ばれる類のものは、単に不快では済まされません。毎年、何十万人もがこの病気で亡くなっており、これには多くの子どもが含まれています。
現時点では、このウィルスに感染してしまったら、あまり打つ手はありません。まず、HIVやインフルエンザに対するような抗ウィルス剤がありません。医師は、水分を多く摂らせるなどの対症療法を施してはくれますが、実際の感染症の進行を遅らせる、止めるなどといったことはできません。ところで、正確には「現時点では」と言うべきかもしれません。
先週、『Science Immunology』誌上で新たに発表された論文は、いつかこの病気の治療法ができるかもしれないという希望を新たにしてくれるものでした。この論文の焦点はなんと、私たち自身が持つ免疫システムを武器として、この悪質なウィルスと戦う新薬です。しかもこの薬は、あらゆる恐ろしいウィルス性感染症に対しての治療の助けとなるかもしれません。
「お腹の虫」、専門的にはウイルス性胃腸炎の原因ウィルスは、単に不快であるだけではありません。感染症そのものには致死性はありませんが、付随する脱水症状により死亡することがあります。胃のむかつき、嘔吐、下痢などの症状は、5歳以下の小児は重症化する傾向にあります。
そのため、世界保健機構をはじめとするヘルスケアの専門機関は、胃腸炎の主な原因ウィルスである、ロタウィルスやノロウィルスの感染症の治療法を、熱心に研究しているのです。どちらも体外でも長時間生きることができ、未感染の集団に接触すると急速に感染が拡大することで悪名高いウィルスです。
しかも不運なことに、どちらもごく普通にいるウィルスです。世界のどこの子どもも、5歳の誕生日までに少なくとも1回はロタウィルスに感染しているはずですし、ノロウィルスには毎年何億人もが感染しています。
さて、ロタウィルスにはワクチンがありますが、数多の研究にもかかわらず、ノロウィルスにはありません。ワクチンはすばらしいものですが、地域によっては接種が難しく、100パーセント有効というわけでもありません。しかも、体の免疫反応が正常に働いていれば有効ですが、免疫不全患者には役に立ちません。
そこで、医師らが必死に試みているのは、発症してしまった感染症と戦うことです。そしてどうやら、これをたいへんすばらしい方法で実現できそうなのです。なんと、人体そのものの攻撃機能を拡張しようというのです。
ロタウィルスとノロウィルスはどちらも、本来であればこれらの外敵から人体を守る役割を果たす、上皮細胞に侵入します。上皮細胞は、外部と接触する全身のあらゆる場所を覆っています。皮膚、咽喉の粘膜です。そして体内ではありますが、口を経由して外界から来る食品その他と接触する内壁である、すべての消化器官です。これら腸管上皮細胞は、消化器官が順調に機能するために、水分や栄養分のバランスを整える大切な役割も果たしています。
ウィルスに感染すると、まず小腸が本来の役目である吸収を停止し、消化活動全体にブレーキをかけます。すると、大量の未消化物が、結腸へとなだれ込みます。本来あるべきではない場所に到達した未消化物が、体内から水分を奪ってしまうため、下痢が発生し、ひどくなると脱水症状を起こします。
しかし体のほうも、指をくわえて見ているわけではありません。ロタウィルスやノロウィルスに感染すると、免疫システムはサイトカインという成分を生成します。サイトカインは、ウィルス分子を感知したという警報を発動し、防衛のための攻撃を開始させます。
たとえば、ある種のサイトカインは上皮細胞を変化させ、ウィルスが細胞と結びついたり、細胞に侵入して増殖することを防ぎます。
このたび発表された論文では、このサイトカインの有益な力のコントロールを試みています。初期の結果は有望でした。少なくとも、マウスを使った実験ではそうでした。
研究チームは、IL-18とIL-22という2つのサイトカインが、共闘して「お腹の虫」を排除することを発見しました。IL-18は、ウィルスに感染した上皮細胞に死滅するよう指令を発します。その一方で、IL-22はすべての上皮細胞に増殖する速度を上げる指令を出し、感染部位での細胞の入れ替わり、つまりターンオーバーを促進します。2つの働きにより、このデュオはマウスのロタウィルスとノロウィルスを急速に減少させたのです。
この研究は、いわゆる「お腹の風邪」を、どんな生物からも、速やかかつ効率的に排除できる標的治療を開発する、第一歩となるかもしれません。この治療はうまくいっただけでなく、理論上では免疫不全患者にも適用可能です。なぜなら、フル活動できる免疫システムは、これには必要がないためです。
さらにこの治療は、将来的には「お腹の虫」退治にとどまりません。寿命の短い上皮細胞をターゲットとするどんなウィルスにも有効です。COVID-19パンデミックの原因である、コロナウィルスも例外ではありません。
もちろんこの治療が、マウスだけではなく人間にも有効であり、かつ安全であるかを調べるには、まだまだ研究が必要です。
仮にこの新薬が市場に出なかったとしても、体に備わった免疫システムを武器としてウィルスを排除する戦略は、医療の大きな未来を担っています。
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