接する時間が長いものに、人は愛着を感じる

寺口浩大氏(以下、寺口):なるほどなぁ。エンゲージメントとブランドと、あと時間の関係ってすごくあるなと思っていて。今、やはり広告でも、動画とか接点時間が長いものに対して、人ってどんどん愛着を感じていって、それがそのブランドパワーを高めていくわけじゃないですか。となると「どれだけワンタッチで消費時間を奪えるコンテンツを出せるか」というのが、大事になってくるなと思っていて。

記事広告も、本当にそれで。ブランドパワーを高めるのであれば、まずは相手の時間をとにかく自社のブランドで消費させる。できるだけ長い時間、滞在させるためには読み物系のコンテンツのほうがいいよねというかたちで、企業さんと一緒にタイアップしてきた経緯があります。

ライブも完全にそうで。もう残酷なくらい(テレビの)視聴率と一緒で。おもしろくなかったら学生さん、一瞬で抜けるんですね。別のセミナーでも話したんですけど。複数画面を同時に使って、おもしろそうなやつをメインで見るという感じらしいです。

Z世代のマーケティングの特徴みたいなものが、けっこうあるんですけれども。長い時間1つのものに集中するというのが……YouTubeの動画って、5分から10分ぐらいに絶対なっているじゃないですか。あれも完全にマーケティングで。5分以上は持たないらしくて。なので僕らも「ワンキャリアライブ」で企業さんに来ていただく時は、プレゼンを基本的に5分から10分に納めてもらっています。ワンウェイだと、本当に持たないらしくて。

あと、全部インタラクティブな時間に変えているというのもありますね。できるだけ自社が配信したコンテンツに、長い時間滞在してもらうとブランドのエクイティが高まるというお話です。

話が逸れちゃったんですが、基本的には伝えたいこととしては、学生さんの「オンライン採用のあるあるギャップ」からも、オンラインになってゲームルールが変わっているところですね。メディアの使い方がかなり変わっているというところと、あとやはり体験ですね。

オンラインの説明会とかインターンのところで、みなさまが今までやってきたことを変えた時、意外と大丈夫だろうと思っていることに、学生さんはけっこう引っかかっちゃうというところもあると思うので。

もし「大丈夫だよ」という方は大丈夫だと思うんですけれども。「初めて聞いたな」という方はぜひ、活かしてみていただければなと思います。横断的に「オンライン採用のあるあるギャップ」も「学生さんの企業選び」もしゃべっちゃいましたね。

秋山真氏(以下、秋山):確かに、そうでうね。

「不安」に集まる、学生の共感

寺口:あとは、母集団形成のところがけっこう多かったですね。この「順調な母集団形成、実は練習台に」って。秋山さん、何かありますか?

秋山:これは、僕らもいろいろ肌で感じていることはあります。やっぱりデータ起点で言うと、今年はコロナウイルスが各界に影響を及ぼしていると思います。

学生イシューのエンゲージメントボリュームとして何が一番多かったかというと「不安」ですね。これまでも「人生100年時代にどういうキャリアを考えていったらいいんだろうか」や「いろんな選択肢がある中で、どのようにキャリア戦略を考えていったらいいのか不安」という声は、イシューとしてソーシャル上にも顕在化していました。

やはり今年はもう少し表面的な「行こうとしていた会社がなくなってしまうのでは」「どうやって安定した会社に就職したらいいのか」「氷河期が来るのでは」といった不安が、ソーシャル上で学生さんの声として顕在化しています。

その中で今日、改めて自分たちでデータベースを見ていたのですが、少し発見があったのでいろいろな対象データをここに出してみました。僕らが持っているTHINKって、いろんな機能がありますが、一番簡単なもので言うと、Googleの検索窓のような機能があります。例えば「22卒」と入力すると、そのキーワードが含まれるデータが、ブワーッと出てきます。

これが「エンゲージメント順」といって、要はソーシャル上でいう「いいね」やシェア、コメントなどのユーザーがアクションした数の合算値が、多い順番に出てくる仕組みになっています。

それぞれのデータのソースもそうですし、このツイートにどういう人たちが反応しているのかも見ることができます。エンゲージメントされることで、どれぐらい情報が広がったのかを見られるようになっています。

ちょっと前段が長くなったんですけど「22卒」というデータの中で。すごくエンゲージメントとして多かったテーマは、例えば(画面を指して)これだと1投稿あたり350とかついているんです。何が言いたいかというと、さっきの「不安のインサイト」からくるんですけど。

早めに22卒の準備とか学習をして、いろいろインターンで試してと言ったら失礼ですけど……試して、練習をして。「自分の軸やキャリアの軸を不安だから定めておきましょう」といった投稿に、共感の声が集まっているんです。

他にも「5月のエントリー期の時点で、不安を払拭するためにこういうことをしっかりやりましょう」「こういう可視化とかをしましょう、整理をしましょう」といった投稿に、共感の声がついていますね。

あとは、データで言うと7月ですが「インターンの考え方として、練習台として自分の軸をしっかり整理する時間に使おう」といった投稿に、すごくポジティブなエンゲージメントが寄せられています。

これから採用活動を始める企業さんもいらっしゃると思いますが、エントリー数が、今年すごく増えたところが多いのではないでしょうか。もちろんオンラインだからアクセスしやすかったという話はあると思いますが、その背景としては、不安からくる「早めに整理しなきゃ」「それをちゃんと社会人に話せるように練習しなきゃ」といったインサイトの増加も考えられます。ここは1つ、僕らのデータ起点からも発見だと思っています。

重要となりつつある、体験者の二次発信

寺口:なるほど。確かにそうですね、おもしろいですね(笑)。いわゆるUGCってあるじゃないですか。User Generated Contents。いかに二次的にユーザーにコンテンツを増やしてもらって、それを使ってどれだけマーケティングできるかというのが、重要だったりするんですけど。

ワンキャリアライブもこのハッシュタグ自体が、日本のトレンドに載ったんですよね。この大型のライブをする前に、けっこう何人かの学生さんがメモを挙げたりとか、グラレコを挙げたりとかという、アクションがもうすでに生まれていたんですよね。

なので「ワンキャリアライブという、おもしろそうなものをやっているよ」というのを僕らが直接言うよりも、見ている学生さんに良い体験をしてもらって、シェアをどんどんしてもらうというほうが、確実にその学生さんをフォローしている学生さんにちゃんと届くなと。情報流通網の変化が明らかに起こっています。

何が言いたいかというと、こういったかたちで「いかに、体験してもらった人に二次発信をしてもらうか」というところが、本当に肝になってくるんだなというのは今年特に体感しました。

あとは、さっきのエントリーの話なんですけれども。僕らワンキャリアのエントリーデータから見ても、今インフレしていて。夏の時点で、業界によっては去年の300パーセント以上になっています。

みんなエントリーがいっぱいある状態です。なので、企業さんの次の悩みとして「そのエントリーの志望度をどうやって高めていけばいいのか?」というご相談を、今受けています。

実際にお話をしているのは、基本的に、時間をどれだけ自社に使ってもらえるかというところが勝負になってくるので。テーマを変えて、いろんな角度から自社がわかるようなかたちでいろんなライブをやっていこう、というので。いわゆる記事広告型ライブみたいな感じのものを、一緒に作っていたりはしますね。

今年からは、いかにこのいっぱい集まった……でも一つひとつは薄いエントリーを、どれだけ濃くしていけるかというところが、たぶん中長期戦になると思うので。「時間奪い合戦になるな」というところは話していますね。あとは企業さんの採用がかなり早期化しています。

エントリーも全体的にインフレしていて。かつ早期に動きがちなコンサル・IT以外の、いわゆる経団連のルールがあった時にそれをしっかり遵守していた企業さんたちの活動が、かなり活発化しているなんていうところは、データからも明らかかなと思っています。

ベンチャーと大手企業は、比べるものではなくなった

寺口:あと「夏前にしか接点が持てない学生」というところも、最後……これやっぱり、(イベントが)1時間じゃ足りないですね。

秋山:もう第2弾ですね(笑)。

寺口:第2弾、やらせていただきたいんですけど。アンケート時間、QA時間、残してあと5分かな。一旦行こうと思うんですけど。「夏前しか接点が持てない学生」というのは、これは何か兆候とかあったりするんですかね。

秋山:これもSNSのデータからですが、今みなさんが持っている仮説がすごく当たっていると思います。いわゆるベンチャー志向。今、ベンチャーと大手企業は比べるものではないとも言われています。

一例ですが「会社の福利厚生や環境」というよりは「どのような事業に携わりたいか」や「いつかは自分で事業を作りたい」といった意思が大切な、成長意欲の高い人やビジネス・事業を見て仕事を選ぶ学生さんたちは、この夏前に接点を持つチャンスが広い。

でも11月から12月になると、その幅も狭くなっていく傾向があると思います。どういうことかと言うと、(スライドを指して)これはTHINKのデータを見やすくまとめたものになりますが。

「大手ポジティブ」や「ベンチャーポジティブ」といった切り口を、少し抜粋して持って来ています。例えばこの「安易なベンチャー志向の弊害」では、安易に「ベンチャーだから成長できる。行こうよ」は危険ということ。

こうした投稿に集まっているエンゲージメントって、去年のものももちろんありますが、主に12月から3月にかけて、ポジティブな共感が生まれやすい傾向です。逆に「いや、大手だからって安心なわけじゃないよね」という切り口もあります。

このようにベンチャーやスタートアップのスピード感、変革・チャレンジに言及している文脈が反応されている時期は、先ほどの切り口とはズレています。12月以降ではなくて、基本的に早期。7月から11月です。

僕らが調査したSNSのデータ起点では、成長志向の高い学生さんにアプローチするのであれば、11月までにまず認知を獲得する必要があります。あとは知ってもらうだけでなく、さきほど寺口さんがおっしゃっていたように、知ってもらった後に、企業理解をオンライン上でしてもらわないといけないんですね。

なので、11月までにしっかりコンテンツを拡充していくことが、すごく重要だと思っています。「夏前までしか」というわけではありませんが、この辺の志向性を持っている学生たちとは、(獲得するためには)タイムリミットが近いと僕らは整理しています。

勝敗を分ける「スルーされないコンテンツ」

秋山:寺口さんはどうでしょう?

寺口:めちゃくちゃおもしろいですね。おそらく当たっているなと思っていて(笑)。夏前の学生さん、僕らも企業さんのイベント出展とかライブ出演とかの時にお伝えするのは、5~6月に活動している学生さんと、9~10月ぐらいで活動の時期がピークになる学生さんと、あと年明け、3月以降。いわゆる「解禁と同時に」という学生さんと。実は志向性も違えば、その時に企業さんに求めているコミュニケーションもまったく違うことが、クチコミからも明らかになっていて。

ワンキャリアクラウドで見ても、学校や地域で動き出しの時期とか変わってくるので、インサイトも変わればアクションのピークみたいなものも、ぜんぜん変わるんだなと思っていて。なので、始めたての学生さんに、新たに興味喚起したいんだったら「ここの大学のこういうイベントに出たらいい」とか。そういうお話とかはけっこう、企業さんにしている感じですね。

やはり、スパイスボックスさんがおっしゃった「何がエンゲージするのか?」みたいなところの定性情報からしても、どういう訴求で学生さんが興味を持ってくれて、インターンとかでどういうコンテンツを提供すれば、それがまた満足度の高いコンテンツになり、学生さんがまた広めてくれるのか? みたいな感じで。 自社でどんどん認知をコントロールしていこうというより、その流れをうまく使って、どう言ってもらうかという。

逆算してやっていくというふうに全体として変わってきているんだろうな、と今日の話を通して思いました。僕、勝手に締めたんですけど。秋山さん、今日話してみてどうでしたでしょうか。

秋山:そうですね。実は寺口さんとも今日、初めてになるので。まだまだ語れることがあると思いますし。第2弾、ぜひぜひ。まだ今日は半分くらいしか答えられていないので(笑)。近々、この11月、10月からでも活かせるようなティップスを、まとめてお話をしたいです。けっこう通ずるところもあると思うので。

1個前の質問、テーマで、寺口さんにおっしゃっていただいた「コンテンツの拡充、動画でも企業の理解を深めていくようなコンテンツが、これから重要になる」というお話がありましたが。まさに今年はオンライン上でどれだけその企業について理解してもらえるか、共感できるコンテンツを置いておけるかが、これから学生さんが具体的に企業を絞っていく中で、すごく重要なので。

やっぱり地上戦が、今年はなかなかできないですよね。一緒にご飯に行こうって口説くとか、できないと思うので(笑)。URLをシェアしてしっかりとわかるような情報を、どれだけWeb上に置いておけるか。それが僕らの整理では「スルーされないように、きちんと見てもらえるコンテンツになっているか」が、勝敗を分けると思っています。

寺口:ありがとうございます。じゃあ次はたぶんアレですよね。秋以降とか、冬のトレンドとかをまとめて、また企業さんのこれからの採用の作戦のところに活かせるようなウェビナーをできればなぁと思います。

秋山:そうですね。

寺口:ありがとうございました。やっぱりギリギリになりました。

秋山:なりましたね(笑)。

寺口:それではみなさん、本当に今日はお忙しい中、ありがとうございました。

また次、希望テーマとかも教えていただければなと思います。ではみなさん、本当にありがとうございました。秋山さんも、ありがとうございました。

秋山:いえ、こちらこそありがとうございました。