風土づくりの成功の秘訣と失敗するときのパターン

南形潔賜氏(以下、南形):このあと木場さんに質問しますが、他にも質問のある方は、コメント欄に「質問あるで」と入れていただけたら、板谷さんが振りますので。

この後、木場さんから質問もらいますが、その後はフリーにしたいと思います。木場さん、聞こえますか?

木場圭寿人氏(以下、木場):聞こえます。

南形:お願いします。

木場:こんにちは。しーさん。どうもありがとうございました。

竹林一氏(以下、竹林):ナイスガイ。木場さん。

木場:いつも楽しい話をありがとうございます。たぶん、いろんな方がすごいハードルと思っているのが、日本は武士の組織で変化を恐れますと。そこにずっといると、自分もそういうタイプになっていくんだろうなという恐れも持ちながらたぶんやっていると思うんですけど。

そこを変えるには、「風土づくりを仕掛けるのがポイント」とおっしゃっていたんですが、今までの経験の中で、風土づくりを仕掛ける時の成功の秘訣と、失敗するパターンをシェアいただきたいなと思っています。

竹林:コロナで何が起こったかというと、上を押さえたんですね。木と一緒なんですよ。上を押さえちゃうと、根って横に伸びるんですよね。横に広がると垂直型の組織じゃないから、ピラミッド構造がないんですよね。根が横に伸びる時、あるいはネットワークを横に広げる時に上下関係を作ったらダメです。それが1つのポイントですよね。

今までは、課長がいて部長がいて事業部長がいて役員がいてという、垂直型で意思決定していたんですけど、上下というのは意思決定の役割と責任の話であって、偉い、偉くないという話ではないんです。なので激動の時代には、フラットに議論することがより重要になってきますね。なかなか難しいんですけど。

でも、横に広がっていってみんなが同じ情報を持ったら、報告や連絡、情報共有はリモート会議でリアルタイムで。より「雑談や相談」が重要になってきます。

フラットな横のつながりを広げ、使えるものは何でも使う

竹林:これは社内でも社外でもそうです。コロナの間に何が起こったかというと、社会人と学生が一緒に議論して、大学生の悩みを聴くという勉強会にもメンターとして参加していたんですね。

勉強会に参加していたら、参加者の中に高校生がいて。高校生たちが毎朝Zoomで「高校を横断したSDGsの勉強会をしているから、そこで話してくれ」と言われてお話しさせていただきました。コロナの間に大学生とか高校生のFacebook友達がいっぱい増えているんですよ。これ、フラットなつながりなんですよね。おっちゃんに合わせてFacebookで友達申請してくれているとは思いますが。

彼らがどんな媒体で何をやっているのかが全部わかってくると、次のビジネスを考える上で、ものすごくプラスになってくるんですよね。僕が偉いわけじゃないんです。大人やから偉いんじゃないので、彼女、彼らのほうが現場の感性を持っていたりするわけですよね。そして海外へもネットワークを広げていく。それもやはりWillがないと無理ですよね。

木場:横のネットワークを作って情報をいろいろ仕入れて、最後はやはり稟議で上げていくという仕組みが残っている会社がほとんどで。その稟議を上げていくところで挫折する人って、けっこういるのかなと思うんですけど。

竹林:最近おもしろいのは、新規事業をやっている部署の方々が風土を変えなあかんという話になっていて。「役員の方々に竹林の起承転結の話を聞いてもらいたい」という声が増えてきました。なので、経団連の月刊誌8月号にイノベーションを加速させる「忍者」と「武士」を投稿させていただきました。

木場:なるほど。そこをみなさんがしーさんのほうへ相談させていただくことが出てくるかもしれないですね。

竹林:そうなんですよ。したたかに僕を使ったらええという話ですよね。使えるものは何でも使えって。猫の手でもしーさんでも使えという話ですね。

木場:(笑)。

竹林:本気でやるんでしたら。

木場:そうですね。ありがとうございます。

経営層と現場の社員がお互いの意思を共有するには?

板谷友香里氏(以下、板谷):次に質問を寄せてくださったマーケティング会社のAさん、お願いします。

質問者A:マーケティング会社の社長をやっております、Aと申します。本当に勉強になりました。ありがとうございます。

竹林:ありがとうございました。

質問者Aエフェクチュエーション(優れた起業家が用いる意思決定理論)の話に非常に共感しました。私は会社の社長をやっていますので、自分でエフェクチュエーションをやっていくというのは覚悟があるのでいいんですけれども。

立場を変えて企業の中にいる人は、自分がエフェクチュエーションしていても説明するのが難しいと思いますし、上の人から見ても「こいつがわらしべ長者になるのかどうか」というのが、見極められないんじゃないかと思うんですけれども。

質問はこの2つですね。本人は企業の中でどういうふうに説明していけばいいのか。あるいは上の人は、「こいつは目的を持っている」というよりは、「とにかくなんとかするやつなんだ」というのを、どう見極めていくものなんでしょうね。

竹林:エフェクチュエーションというのは、行動の思考パターンなので、これは全面に出す必要はないと思っています。でも、企業の中でも新規事業を立ち上げている人は、絶対にこういうふうに動いているんです。

ただ、経営側に見せる時はそこで翻訳をしなあかんのです。さっきの新規事業の軸を見せて、そこにストーリーを立てて、なぜこれがおもろいのかと。(少年がわらしべ長者になるまでの間に)誰に会ったかというのは、転結の人には関係ないんです。ここは水面下でやってもいいんですね。

企業が自社で「承の人材」を育てなければならないわけ

竹林:ここ(経営側に新規事業の軸とストーリーの説明をするところ)で、起承転結のうちの承の人材が必要になってくるんです。要は、さっきのパスネットを立ち上げたときのストーリーで「駅は街の入り口ですよね」と言って、「ここで情報のプラットフォームを創ったらこんなおもろいことできまっせ」とか。

だから、僕は承の人材を育てなあかんと思っているんです。起の人材は場合によっては、ベンチャーなどの外におられる。ひょっとしたら、大企業の中には起の人材がいなくてもいいかもしれません。だって、転結の人たちが選んできた入社試験で、忍者みたいな起の人は全部カットしていきますから。忍者をカットして武士ばかり選んでおいて、「イノベーションや」と言われたって武士も困るじゃないですか。

起の人間は外部でもいいかもしれませんが、承の人間は企業の中で育てる必要があります。また承の人材は転の人材を教育することで育てられると思っています。転として論理もわかった上で、承としてグランドデザインが書けたら、転の人も説得できるんですよ。

質問者A:その時にしーさんがおっしゃっていた軸を説明するということですね。見えているゴールを説明すると、「お前、言ってたことと違うじゃないか」ということが起きますから、軸を説明すると。ああ。

竹林:経営層と現場が軸を握れたら大きいです。

質問者A:わかった気がします。

竹林:タイミングが悪かったら、その中の葉っぱは散るかもしれないじゃないですか。葉っぱが1個ずつ散るたびに「新規事業にあかんやん」と言われても困るんです。でも経営者との間で軸を握れていれば、多少失敗しても次の枝や葉っぱを見つけられます。

質問者A:うーん。すごくヒントをいただいたと思います。

竹林:ぜひぜひ社長のエフェクチュエーションで。ただ、社長がエフェクチュエーションで走り倒すと、転結で誰か押さえる番頭さんのような人がいるんで(笑)。

質問者A:(笑)。誰かに頼みます。どうもありがとうございます。

竹林:ありがとうございます。