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デジタル担当者必見- DXプロジェクトを成功に導く「顧客体験発想で考えるDX推進」(全3記事)

博報堂アイ・スタジオ流『顧客体験発想で考えるDX推進』 一度きりの難局ではない「2025年の崖」とは?

デジタルテクノロジーの飛躍的な進化、昨今のパンデミックによる社会情勢の変化など様々な要因により、企業の経営やビジネスモデル、企業の組織や風土・文化の変革が、いま求められています。そんな中、とくに必要とされるのが「機動力の獲得」。多くの困難に立ち向かいながら、企業の競争上の優位性を維持し続ける必要があります。そこで重要となるのが、デジタルテクノロジーを活用して優位性の獲得・維持の成功に導く「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。しかし、自社のリソースやスキル不足、相談パートナーの不在などにより、デジタルシフト、DXに課題を抱えている企業が数多くあります。そこで、博報堂アイ・スタジオの小國晴郎氏が「デジタル担当者必見- DXプロジェクトを成功に導く『顧客体験発想で考えるDX推進』」というテーマで語りました。

『顧客体験発想で考えるDX推進』

椎橋美月氏(以下、椎橋):みなさま、こんにちは。博報堂アイ・スタジオの椎橋と申します。本日は「デジタル担当者必見- DXプロジェクトを成功に導く『顧客体験発想で考えるDX推進』」にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。本日の司会を務めます、椎橋と申します。よろしくお願い致します。

当社、博報堂アイ・スタジオという会社について、ご存じない方も多いかなと思いますので、少しだけお話させていただきます。博報堂DYグループのデジタルエージェンシーでして、2000年、ちょうど20年前に創業いたしました。

プロモーションサイトや大規模サイト制作、UXの設計やUIデザイン、PDCA運用など、幅広くデジタルに関連した事業を行っております。最近では、DX関連のお問い合わせも増えてきておりまして、DXコンサルティングサービスを開始しております。

本日、講師を務めます小國の説明をさせていただきます。小國晴郎。2012年に当社に入社いたしました。大手クライアント企業に常駐し、数多くの広告プロモーションやマーケティングソリューションの導入プロジェクトに参画しておりました。

2017年からは、カスタマーデータプラットフォームを中心としたOne to Oneコミュニケーション基盤の構築、マーケティングデータを活用したCRM施策をプロデュースしております。現在はコンサルタントとして、DXやデジタルマーケティングの領域を戦略、立案から実行まで、幅広くご支援させていただいております。

高速で進むデジタル化により一変した、社会環境

椎橋:それでは、さっそくですがウェビナーに移りたいと思います。小國さん、準備大丈夫ですか?

小國晴郎氏(以下、小國):はい、大丈夫です。

椎橋:はい。それではよろしくお願い致します。

小國:はじめまして。博報堂アイ・スタジオの小國と申します。このセミナーをご覧になっている方の中には「DXを推進したいんだけれども、何から始めればいいかわからない」という方だったり「DX推進を1回したんだけれども、なかなか効果が得られず困っている」という方、たくさんいらっしゃるんじゃないかなと思っております。

本日はそんなお悩みに対して、明日からの業務だったりご自身のプロジェクトのヒントになればいいなと思いまして「顧客体験発想で考える! 初めてのDX推進とは」というテーマで、お話しをさせていただきたいなと思っております。

では、シートに入っていきます。昨今、さまざまなデジタルテクノロジーにより、私たちを取り巻く環境というのは劇的に変化しているかなと思っております。これをさらに促進させるのが、昨今のコロナウィルスによるパンデミックの影響です。

アメリカでは、コロナによってDX推進が大きく加速され、過去10年間のスピードと同等に変化したというデータも報告されておりました。対面での会話はもちろんのこと、一挙に集まることさえままならない状況となり、今まで以上にオフラインでのさまざまな生活や社会的活動をオンラインに移行していくことが、ある意味、強制的に進行しているかなと思っております。

みなさんも実感されているとおり、この数ヶ月で私たちの取り巻く社会環境は、高速で進むデジタル化により一変したことでしょう。

それは、企業活動にも大きな影響が及んでおり、待ったなしの対策、アクションが求められております。(スライドを指して)こちらのシート、我々が担当している企業の一例なんですけれども、昨今のデジタルテクノロジーの進化と、コロナウィルスの影響が後押しをしまして、このような集客からアフターサポートまでの顧客体験の変革というのを計画しました。

まさに、これからのデジタル時代に最適な顧客体験を、テクノロジーの力を駆使して実現し、ビジネスへの貢献を目指して取り組んでいるということかなと思っております。

本日は、このようなデジタルテクノロジーの進化と、そのデジタル技術を駆使した新興企業の登場によって起こる企業活動への影響へ。そして、企業の競争上の優位性の獲得を目的としたデジタルトランスフォーメーションの推進、アプローチについてお話をしていきます。

私がしゃべる時間としては40分、短いお時間ですけれども最後までお付き合いいただければうれしいです。

博報堂アイ・スタジオの取り組み&小國氏の活動

小國:冒頭にもありましたが、簡単に私のほうからも当社のご紹介させてください。2000年に創立したというお話しはあったんですけれども、いわゆるインターネット黎明期と呼ばれる時代から、デジタルコミュニケーションを手掛けている会社でございます。

私たちはこの4月に「デジタルトランスフォーメーションを推進したいんだけれども、IT人材のリソースだったりとか、スキル不足みたいなことだったり、あとは近くにすぐに相談できるパートナーがいないぞ」という企業、たくさんいらっしゃるのかなと思います。そういったことについて悩んでいる企業に向けて、DXを推進するコンサルティングチームを立ち上げさせていただきました。

これまで、当社は、デジタルコミュニケーションのプランニングだったりとか、サービス、プロダクトのPDCAによる最適化。あとは大規模、多くの部門にまたがるような案件のプロジェクトマネジメント。あとは我々、制作会社でありますけれども、我々が最も得意なインターフェースの設計制作だったり、システム開発というところを中心に行ってきました。

これからは、これまで培ってきたスキルだったりとか、当社のスペシャリストのリソースを使いまして、企業のDXを計画するための顧客体験設計だったり、顧客体験の最適化、企業のDXを推進するためのプロジェクトマネジメント。DXを推進する上で障害となるようなインターフェースだったりとか、システムの課題解決支援というところを中心に、みなさまをご支援していきたいなと思っております。

あとは私自身の紹介も遅れてしまったんですけれども、改めまして小國と申します。2012年に当社に入社いたしまして、大手クライアント様に常駐しながらさまざまなプロジェクトをリードしたりですとか、デジタルマーケティングにまつわるいろんなさまざまなプラットフォームを導入したり、活用していくということだったり。CRM施策のコンサルティングを担当してきました。

現在は、当社のコンサルティングチームのリーダーとして、DXだったりとか、デジタルマーケティングの戦略立案から、実行までのサポートを日々やらせていただいております。

DXの定義と必要性

小國:アジェンダです。はじめに、デジタルトランスフォーメーションの定義と必要性についてお話をしたいなと思っております。その次に、当社が掲げる「顧客体験発想」でDXを推進することについてお話をいたします。

DXの成功確率をより上げるためには、顧客体験を基軸にして、物事を整理して考えていくということが非常に重要かなと思っていて、そのステップについて本日は詳しく解説をしていきます。

続いて、また顧客体験最適化のお話なんですけれども。今度は事例を使いまして、最適な顧客体験ってどういうふうに実際にプロジェクトで設計しているのか、みたいなところについて触れていきたいなと思っております。

冒頭にも申し上げましたけれども、顧客体験設計以外の領域として1つ目、プロジェクトマネジメントのお話ですね。どのような組織、体制でDXを推進していけばいいのかというところをお話させていただきたいなと思っております。

最後に、DXを進める上で我々が避けて通れないと思っているシステムの課題については、どのように回避をしていけばいいのか、事例とともにご紹介をしていきます。では、短いお時間ですがよろしくお願いします。

はじめは、DXの定義と必要性についてでございます。

もともとDXという言葉は、アカデミックな意味で申し上げますと「人間の生活のさまざまな面において、デジタル技術が引き起こす、または影響する変化一般のこと」と言われております。

しかしながら、昨今のビジネスシーンで言われるDXは、もう少し違うことを意味しているかなと思っております。経済産業省のDXレポートでは「デジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

要は、ビジネス界で言われるDXとは、一般的に経営文脈での競争上の優位性を目的としたデジタル活用とご認識いただくのが正しいかなと、私たち考えております。特にご理解いただきたいのは「競争上の優位性の確立」というところです。

さまざまなところで今、DXが語られていると思うんですけれども、この単純なデジタル活用、デジタル化ではデジタルトランスフォーメーションの目的を果たしたとは言えないかな、と考えております。

DXの必要性を訴える「2025年の崖」

小國:続いて、なぜDXが必要なのかについて解説をしていきます。これだけ国内でDXという言葉が広まったのは、経済産業省のDXレポートの発表に大きく起因しているかなと思っています。この中で「2025年の崖」ということについて言及があります。

簡単に要約いたしますと、デジタル技術により業界破壊が進むことが確実で、デジタル技術を活用した新サービス創出だったりとか、柔軟な改変ができるような体制に移行していく必要があるぞということを説いております。

しかしながら、これに対して国内の企業は、システムのブラックボックス化だったりとか、IT人材不足、現場の反対といった要因で「体制移行がなかなか難しい」と言っており、いわゆる企業のDX推進の大きな足枷になるであろうと説明をしております。

デジタル技術により業界破壊が進む、ということはどういうことなのでしょうか。これは、Googleだったりとか、Amazon、Uberが代表的な企業に挙げられますけれども、新たなデジタル技術を活用して、これまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者による業界破壊で、既存のさまざまな企業の先行事業が侵食され、顧客を奪われていくという現象のことです。

また、影響を受けるのは業界や産業だけでなく、一人ひとりの顧客体験でさえもアップデートされていきます。それに合わせて、企業や事業だけでなく、新しい、もしくは最適な顧客体験を柔軟に変化しながら、生み出し続けるということが重要になってきます。

このデジタルディスラプションというのは、とうの昔に起きているかなと思っております。(スライドを指して)敢えて昔のデータを持ってきましたが、2017年時点で既に企業の幹部の48パーセントが、デジタルディスラプションによる市場の大きな変化が、既に起きていると答えておりました。

また、それは起きているだけではなく、既に既存の事業に影響を及ぼしていると言えます。2018年には、31パーセントの企業の幹部の方が、自社に対し「変化を迫るような影響を与えている」と回答しておりましたし、44パーセントの幹部の方は「大きな影響を与えている」と回答しておりました。

また「2025年の崖」と聞くと、なにか一度きりの通り雨的な難局を乗り越えればいいというイメージをしがちなんですけれども、そうではございません。

既存産業に対し、デジタルディスラプションがいつ発生してもおかしくなく、それはデジタルテクノロジーの進化とともに継続的に発生していくはずです。企業や業界によっても発生タイミングだったりとか、回数は異なってくるでしょう。

企業が一度きりの難局を乗り越えるために、小手先の対策ということをするのではなく、このような難局が何度訪れても乗り越えていける、冒頭に申し上げた競争上の優位性を、ある意味、維持し続ける企業体質に変化していくことが求められるのかなと思っております。

このデジタルディスラプションへの対抗、ないし、回避をしていくために、企業に求められるのはなんだろうと考えると、この「機敏性」が必要と思っております。

デジタル技術により、業界の破壊的変化に対応して、例えば企業だったり経営戦略レベルでは、社会情勢やトレンドに合わせて、このデータを使って柔軟に戦略を変えられる機敏性。

ビジネスモデルだったり、事業自体では、常に登場する新しいテクノロジーを駆使して、然るべきアクションを実行できる機敏性。これらを推進するための組織だったり、従業員個人の機敏性。こんな機敏性を持ち合わせることで、この難局を切り抜けていく必要があると私は考えております。

DXの成功確率をグッと上げるには?

小國:ここまでの話で、デジタルトランスフォーメーションに取り組むべき理由については、ご理解いただけたのかなと思っております。しかしながら、なかなかその第1歩を踏むこと、そして結果を出すのも難しいのが事実です。

現に、2015年から2018年の間で、デジタルディスラプションに積極的に対応していると答えた企業は依然少ないままでありますし、DXをやって期待どおりに成果が出たと答えた企業はわずか5パーセントです。

(スライドを指して)一番右のマッキンゼーのレポートでも、DXの成功確率はわずか13パーセントと報告されておりました。

それでは、どのようにすればDXの成功確率をグッと上げていくことができるのでしょうか。その鍵となるのが、最適な顧客体験、CXだと私たちは考えております。顧客体験を基軸に置き、DXでやるべきことを見定めて、当社が掲げる顧客体験発想によるDXを推進していくことについて、お話をしていきます。

兎にも角にも、経営レイヤーでのDX戦略を実現するためには、新たな最適な顧客体験は何かを考えることがスタートラインになります。最適な顧客体験を生み出すために、この顧客体験発想で考えることが重要と考えております。

まずは、Webサイトやアプリを作ろうであったりとか、なにかシステムの課題を解決しようであったり、店舗での顧客の管理方法を変えようと、ファンクション単位のデジタルシフトを考えるのではなく、今、まさに向き合わなければならない顧客に対して、どんな顧客体験を提供しなければならないのかを主軸に考えることが、DX推進の成功の鍵だと考えております。

最適な顧客体験を描くためのステップ

小國:では、そのステップについて詳しく解説していきましょう。まずは顧客を知ることから始めていきます。既存の顧客体験を整理する中で、顧客のインサイトを把握し、次に顧客のインサイトをベースに最適な顧客体験を描いていきます。

新しい顧客体験を実現するためには、新しい顧客との接点、チャネルが必要だったりとか、顧客の体験のアップデートが必要だったりとか、今まで行っていなかったコミュニケーションが必要になると思っております。

こういった既存の顧客体験と理想の顧客体験の差分こそが、DXで何をするべきかの指針となってくるのと思っております。

先ほど、理想的な顧客体験を描こうと申し上げましたが、これは決して簡単なことではございません。参考までになんですけれども、体験設計の基本プロセスについても触れておきます。

よく「カスタマージャーニーマップを作ったんだけれども、なかなかうまく行かなかった」というお言葉を聞きます。その理由は、その適切なプロセスでプロジェクトを進めていないからだと、私たちは考えております。

まず、はじめにすることは、現状分析、予測と仮説形成です。ちなみに、通常多くの人たちが現状の課題などに集中しがちです。しかしながら、未来を正しく想像しない限り、理想的な顧客体験を発想することはできません。

未来の自分たち、競合の状況、トレンドを想像した上で、体験価値の仮説形成をすることが、DXプロジェクトのあるべき方向性を考える上で重要です。その後、ユーザー調査や分析を行います。デプスインタビューやプロトタイピングを使ったコンセプトの受容性のテストなどを行い、ファクトを整理した後にやっとインサイトの抽出に入ります。

最後に、ターゲットを策定して、カスタマージャーニーマップやストーリーボードを策定し、DXで実現しなければならない顧客体験を想像していきます。

次に課題の優先順位を整理します。通常は、ビジネスインパクトとその投資コストの掛け合わせで判断することが多いです。そして、その課題に対して必要なソリューション、各組織が何をしなければならないのかを整理していきます。

この整理も簡単なことではございません。正しくプライオリティを評価すること、正しく必要なステークホルダーを特定すること、この裏には、必要な情報が整理されていることと、これを整理する推進組織にインプットされていることが必要です。

(スライドを指して)これらは、私たちがプライオリティやステークホルダーを把握するために、実際の案件でコンサルティングの準備として、クライアントとともにまとめたドキュメントの一例です。

全体の業務を把握するプロジェクト検証や、部門チームごとのSOW(statement of work)、システムを把握するためのさまざまなドキュメントを準備して、プロジェクトに望む必要がありました。

そして、最後に課題に対して整理したソリューションと、それを実行するために必要なレイヤーや組織とともにプロジェクト化して、実際にDXを推進していきましょう。ちなみにDXプロジェクトにおいて、この部分が一番難しいと私は考えております。

やることはわかっているのに、なかなかプロジェクトが推進されないご経験、みなさまもあるのではないでしょうか。DXプロジェクトは、経営レイヤーと現場の各部門の密な連携が必要ですし、さらには多くの業務部門だったりとか、IT部門との連携も必要になります。

そのため、PMOやプロジェクトマネジメントの領域は極めて重要となり、DXを推進する組織としての役割を正しく与え、正しく実行させていくことが重要です。

このパートでは、当社が考える顧客体験発想でのDX推進についてお話をさせていただきました。

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