Job Descriptionの目的とは?

岡安伸悟氏:改めて、Job Descriptionの目的を一旦ここで整理したいと思います。内容としては、責任範囲が記載されていること。そして職務範囲が記載されていること。目標とその達成率に応じた報酬が記載されていること。というのがまず1つになっております。

これはなぜかと言うと、やはり欧米型の社会に適した内容になっていますので、基本「このJob Descriptionが契約内容とイコールである」と考えてもいいんじゃないかなと思います。日本で言うと雇用契約に関するものが、このJob Descriptionの中身に書かれているものであると捉えていくほうがいい、というところでございます。

ですので、目標達成のための契約であり契約以外のことは基本担保されないというのが、ドライに言ってしまうとJob Descriptionの在り方かなと思います。ですので日本で言うと「それ私の仕事ですか?」みたいな発言ってよくあるんですが、Job Descriptionに書いてあるか書いてないかというのが「それ私の仕事ですか?」の範囲にあたるかなと思います。

サッカーで例える、Job Descriptionの考え方

Job Descriptionの考え方について、さっきからスポーツの話で恐縮ですけれども、例えばサッカーに置き換えていくと、わかる人にはわかるかなと思いまして(スライドを指して)この図を入れさせていただきました。同じ競技・同じスポーツをやっているけれども、大きなポジションと大きなフォーメーションによって、実はその役割が変わってくるよねとなっています。

サッカーをやったことがある方であれば、すぐにわかるかなと思うんですが。左側の一番上にFWが2名いますよね。右側には3名のFWがいるんですけれども。今までの求人要項で言うと「あなたの仕事は点を取ることです」ないしは「チームを勝たせることです」みたいなことが書かれていたんじゃないかなと思います。ないしは「サッカーのチームとして一員になってください」。野球で言うと「全員野球です」みたいな感じになるんですけれども。

そうすると「ポジションてどこですか? ポジションの中で戦略戦術って何ですか? 細かい役割設定って何でしょうか?」というところが発生してきたときに、例えば「右側の3名のFWの真ん中にいる人は、ポストとしてしっかりとボールをさばいてくださいね」とか。そういった役目、役割というものが記載されているのが、Job Descriptionかなと考えました。

これを言語化すると、(スライドを指して)このような範囲になるんじゃなかろうかというところでございます。日本語で言うと職務記述書という内容になっておりまして、実は募集要項とは違うというのが、まずは1つの整理でございます。

こちらには職務内容、職務の目的、目標、責任、権限の範囲、関わりを持つ社内外の関係性と必要とされる技術・知識、資格、経験、学歴。そういった仕事の役割と必要な能力が見える化されているものが、Job Descriptionであると私たちは整理をしております。

先ほども例として出させていただきましたが、LINEさんのJob Descriptionを見ていくと、やはりそういったものがしっかりと細かく定義されています。もちろん、そのために職種は数百のJob Descriptionを用意しているということで、細かく職種を切っている。権限範囲を切っているというところでございます。

また、(スライドを指して)右側に雇用形態から業務内容が入っているんですけれども。こちらもしっかりと必須の歓迎スキル、それ以外に歓迎する人物像、そういったものが記載されています。

Job Descriptionは応募者へのラブレター

ここから改めて「Job Descriptionが重要になる時代ですよ」ということで、Indeedなりの書き方について言及していければと思います。

改めて職務の要件定義の変化で言うと、先ほどサッカーの話でも触れましたけども「点を取ってください」というジョブから、より明確なポジション、ないしは役目、役割というものが書かれたものが、Job Descriptionであると捉えていただければと思います。

(スライドを指して)私たちはこのような棲み分けをしております。1つはペルソナ化とキーワード選定ということで、まずは採用ターゲットを明確化しましょうと。もう一方は、そういった方々が検索するであろうキーワードを抽出しましょうと言っております。

これが冒頭でお伝えさせていただいたDay1で、加藤(恭輔)さんがおっしゃっていた「誰にどう思われたいのか」というところの「誰」と「どう思われたいのか」というところが、対象になっているかなと思います。

まずは採用ターゲットの明確化。この部分から言及していきたいなと思います。これはオウンドメディアリクルーティングでJob Descriptionを語るときに、必ず入れているメッセージではあるんですけれども。「Job Descriptionは応募者へのラブレターである」と捉えています。

どういう意味かと言うと、いわゆる「誰でもいいから付き合ってください」というラブレターと「私はあなたと付き合いたいんだ」という意味でのラブレターで言うと、後者のほうが誠意がある。ないしは、本来的なラブレターの意味をなしているかなと思います。

もう一方で、ラブレターに含んでいる意味としては「私はあなたが好きです」というような一方的なものではなくて「あなたのために私も変わります」ということを指し示していてですね。

昨日、曽山さんがおっしゃっていた「企業はそれぞれ変化をしている」というように、やはり求職者がその会社で働きたいと思うように変化をしていく。そのメッセージが、このラブレターに集約されているのではなかろうかなと思います。

まずは“理想的な人物像”を浮き彫りにする

私たちは「ペルソナを設定してください」とお伝えをしています。やはり理想的な従業員、または特定の職務の候補者を仮定して、その人物像を文章化したもの、これをまず用意しましょうと言っておりまして。

最初からJob Descriptionを書くというようには、伝えてないんですね。まずはどんな人が理想的なのか、どんな人を求めているのか。そういったものを、まずは浮き彫りにしましょうとお伝えしています。

そのメリットとして、やはり求職者を惹きつけるJob Descriptionが書けると言っています。もちろん、ペルソナでしっかりとターゲット層があぶり出されていれば、その人たちがどのようなものを求めているのかがわかりやすくなりますよね。ですのでそれに合わせて、あとはJob Descriptionを書くだけと言っています。

かつ、訴求すべきメッセージに一貫性が持てる。これもそのターゲットから見たときに、そのターゲットが読んだときにまったく矛盾のないものになっているというところでございます。

かつ、関係者全員の共通認識を持てるというのは、企業内の対策でもありますし、採用に関わる人たち。それは現場でもそうですし、採用担当者もそうかと思いますが。実際に採用してみても、現場の方々にとって「いやいや、ぜんぜん採りたい人と違ってたよ」ということがないようにするためのもの、設計書になるかなと思います。

ペルソナ書き分けのコツ

こちら、ペルソナをどこまで作成すればいいのか、というところの項目例になります。この内容に関しては、以前のオウンドメディアリクルーティングサミットでも言及しているところではありますが、経歴から行動まで入れられるものはすべて入れてくださいとお伝えしています。

今のこの環境下において、どのような人たちが雇用マーケットで仕事を探しているのかというものを、再度イメージしながら書き換えていくというのが1つかな、と思います。

これも「まず現場に聞きましょう」というのが基本になってくるんですけれども。企業さんの中で、最優秀な人材に共通するものを見極めていく。抽出していく。かつ、データを利用して理想的な採用チャネルを確認していきましょう。

あと、同僚や採用担当マネージャーに聞くであったりとか、優秀な人材に直接話を聞く。ないしは業界特有の採用トレンドを注視する。そういったものをイメージしながら、ペルソナを書き分けていきましょうね、とお伝えしております。

「必要な検索キーワード抽出」の重要性

ここから、検索キーワードに基づくJob Descriptionの作成というところに入っていきたいと思います。Job Descriptionをどう書くべきかというところですね。先ほど明確にしたペルソナをもとに、必要なキーワードを抽出していきたいと思います。

なぜ抽出が必要なのかと言うと、求職者はやはり、検索行動からJob Descriptionに訪れるというのが今ではわかりきった内容かなと。ですので求職者が求めているキーワード、クエリに捉えられると思いますが、求職者が検索枠にどんなキーワードを入れるかを逆算して、Job Descriptionを書いていきましょうとお伝えしております。

キーワードを抽出して、このような棲み分けで項目立てをしていただけるといいかなと思います。まずは1から22くらいまでが、ジョブに紐付くものかなというところですね。23から27くらいまでが、環境であったりとか企業に携わる内容になっています。

職種名、会社名、勤務地、給与、サマリー。ここらへんは通常の募集要項にも書かれていますけども、企業ミッションであったりとか、仕事の目的、また部署・チームの在り方、そして仕事概要と詳細の棲み分けと、今までプロジェクトはどんなものがあったのか、ないしはどのようなクライアント様がいらっしゃったのか。そういったものが書かれている。

ないしは必須経験と歓迎経験、あとは求める人物像。ここらへんはよく中途採用でも使われるくだりではあるんですけれども、そういったものが書かれている内容になっております。

Indeed Japanの、Job Descriptionの一例

これはIndeed Japanの、今まさに出ているJob Descriptionの一例です。エンジニア向けが多いんですけれども、UX、UIのデベロッパーであったりとか。ソフトウェアエンジニア、シニアと書かれています。その下がプリンシパルのソフトウェアエンジニア、そしてセキュリティオペレーションのエンジニア、そしてディレクターとしてのソフトウェアエンジニアリングというかたちで。

ソフトウェアエンジニアがシニア、プリンシパル、ディレクターというかたちで、ポジションが実はそれぞれ役割が分かれているというかたちになっています。これをJob Descriptionで見ていくと、この次のページにまた出てくるんですが。

先ほどあったように、Indeedに関してはキャリアステップの考え方と実際の職務の考え方を切り分けています。キャリアレベルとして大枠で言うとメンバーなのか、シニアなのか、マネージャーなのか。そういったところで、まずはポジションレベルというものを切り分け、何をするべきなのか、どんな仕事をするべきなのか、そういったことが書かれています。

それ以外に本来的な職務ですよね。それが今回開発で言うとコーダーなのか、ソフト開発なのか、ネットワークエンジニアなのか。そういったものが、しっかりジョブレベルで書かれているというものになっております。

公開される、全職種・ポジションの給与レンジ

1点、社内的な事例として、2019年に弊社内のポリシーに基づいたTransparency。要するに透明性ですね。情報の透明性については、Indeed内でかなり大掛かりに公開に踏み切っている内容でして。全職種、ポジションの給与レンジを公開するに至っています。

これは先ほどのページの、ポジションが上がることによってどれくらい給与レンジが上がっていくのか、ないしは違うジョブに転換をした際にどれくらいの給与レンジになるのか。そういったものが、しっかりと見える化されている内容になっております。

あそこに記載されていたJob Descriptionを見ていくと、このような……英語になっておりますので私のほうで日本語で……最初に項目立てがあったかと思いますが、その項目順に記載されている内容を整理しております。

一番左上の太文字になっているところに職種名、クチコミ評価、勤務地、給与、雇用形態が入っています。これがいわゆる、一般的な求人要項で語られる部分かなというところなんですが。

その下にOur mission、企業ミッションとThe teamsと書いてあるんですけれども。仕事の目的・意義とか、部署・チームについて。ないしは、働く環境についてというものが記載されています。どのようなオフィスがあるのかとか、どれくらいのチームが動いているのか、どのようなメリットがあるのか。そういったものが書かれていて、給与がまた書かれていると。

仕事の概要として、Your jobと書かれているんですけれども。この仕事に就くことによって、どんなことが成し遂げられるのか。どんなことを実現してほしいのか。具体的に言うとこういうことですということで、仕事詳細が書かれているのが左側になっております。

それに対して右側は求める人物像ということで、About youと書かれていますが。ここで必須経験・スキルであったりとか、歓迎経験・スキルというところで、What we are looking forと書かれていますが、ここにどのような経験を今までやってきたのかというところが記載されています。

それに基づく福利厚生、これは別途にリンクが貼られているんですけれども。福利厚生だったり働く環境であったりとか、採用プロセスだったり。そういったものが先ほどTransparencyとお伝えしましたが、透明性を持ってこのJob Description内にすべて掲載されているのが、Indeed Japanの事例になっております。

もう少し解像度を上げると、(スライドを指して)このような書き方になっていますね。Your job、In short, you will……というところで。As a leaderと書かれていますが、リーダーとして……これはディレクターなんですけれども、引っ張っていってくださいねと。2020年の大きな目標に向かって、ぜひともチームを引っ張ってくださいと書いてあります。

具体的に言うとみたいなところで、書かれている内容は新しいチャレンジ、能動的にどれくらいの人数のエンジニアを引っ張れるか。そういったことが書かれているところでございます。右側に関してもそれに呼応するように、どんな経験スキル、今までどんな仕事に携わってきたのか、どれくらいの規模感のチームを引っ張ってきたのか。そういったことが右側に書かれている内容になっております。

自社目線ではなく、求職者ファースト

改めまして、最初にWe help people get jobsとお伝えしましたが。もう一方のバリューである、Job Seeker Firstが1つ入ってくると。自社目線で記述するのではなくて、求職者ファーストでJob Descriptionを考えることができるんじゃないかなと思います。

ですので、Job Descriptionの冒頭でもラブレターであると書きましたが、やはり採用するにあたってそれぞれの職務の在り方、そしてJob Description、ペルソナの在り方というものを都度都度、見直していって、マーケット環境に応じて求職者側も企業側もそれぞれ動きが変わっている。しっかりとそれをキャッチアップしながら変化していくというのが、1つ今回のコロナに応じて対応できるJob Descriptionの戦略の在り方かなと思います。

Job Descriptionがさらに重要になる時代へ

改めましてJob Descriptionがさらに重要になる時代へというところで、次のページがまとめとなります。ニューノーマル時代というところで、ニューノーマルって何だろうというアプローチから、なぜメンバーシップ型とジョブ型というものが今運用が求められているのか。かつ、昨日のパネルディスカッションでも基本的には状況、経営に応じてハイブリッドで運用していくよというお話があったかなと思います。

また反面、ジョブ型雇用を推進するためには今までのような評価軸ではなくて、成果評価を行える環境が必須になってくるといったところでございます。繰り返しになりますけれども、とはいえ市場は変わっていて、かつ、そこにいる求職者も変わっていくというところで。市場に即してジョブを再定義し、役割を明確にしていく。

また新しい仕事が出てくれば、その新しい仕事をしっかりと定義付けをし、採用に紐付けていくことが必要になるかなと思います。

Job Descriptionを作る際には採用ターゲットの明確化、そして検索キーワードからの逆算が重要であるというところでございますので、どのように書くのかという王道をよく聞かれるんですが。今日のような考え方をして、自社が置かれている環境、自社に見合う人材、その中で今求められている仕事内容。そういったものを考えていけると、しっかりとしたJob Descriptionと求めている人材からの応募があるのではないかなと思います。

在宅勤務下でのコミュニケーション設計

こちらで本日の内容はすべて終了になるんですが、1点ご質問をいただいておりますので、お答えできればなと思います。

「刻々と変化する世の中に対応するために、こまめな役割変更が必要と考えます。その点において、作成したJDの内容が社員の動きを限定させ横のつながりが難しい組織を作り出す懸念。生産性の低下や、イノベーションが生まれにくい環境になる懸念があります。JD作成には多大な労力を費やすので、その点も含めてご理解、ご教示いただきたいです」。

おっしゃるとおりですね。やはり欧米型の組織体というものはもともとが縦型になっていて、組織間での人と人、ないしはチーム間での交流というのがなかなか難しいというところではありました。今回、日本でも緊急事態宣言において在宅勤務が進んでいく中で、細かいコミュニケーションが取りにくくなっていたんではなかろうかなと思います。

ですので1つは会社として、Job Descriptionから少し外れてしまうかもしれないんですけれども、私たちが掲げているShared Value Contentの文脈において、どのように社員のキャリアステップ、ないしはキャリア育成、ないしはコミュニケーション設計をしていくのかというところが1つ重要かなと思います。

とくに私も、Indeedで3月からずっとリモートワークを進めていますけれども。今週で29週目かな? になるんですが、例えばオフィス環境にいた場合は、まったく仕事に関係のない方たちであっても、例えば喫煙場所で会話をする機会があったりとか。Indeedには大きなキッチンがあってですね、そのキッチンで、横のつながりを増やしていくためのコミュニケーション設計が行われていたんですけども。

やはり業務態度以外に、キッチンで見られる私生活に準じた態度、マナー、倫理観というものをしっかりと見定めて、その社員ないしはメンバーを評価できるような、見られるような部分があったんじゃないかなと思います。

もちろんJob Descriptionにおいては評価軸、成果軸というものをしっかり設計していきながら、ここに書かれている横のつながりをしっかりとつなげられるようなコミュニケーション設計だったり、そのような場というものを会社として用意していくというのが次の縦と横のつながりになっていくのではないかな思います。

というところでお時間となりましたので、私の回はこちらにて終了とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。