パンダはなぜ白黒模様なの?
オリビア・ゴードン氏:ジャイアントパンダは、見てすぐにそれとわかります。黒と白の配色を持つ哺乳類は、他にはそういません。
オス、メス、幼体、老体を問わず、すべてのパンダには、あの特徴的な模様があります。
ところで「パンダは、なんであんな模様なのだろう?」という疑問を持ったなら、あなたは一人ではありません。実は、科学者たちも同じ疑問を抱いたのです。
科学者たちは、あの大きなふわふわの毛の塊が白黒模様なのには、ちゃんとした理由があるに違いないと考えました。果たして、理由は存在したのです。しかも、複数がありました。
パンダの特徴的なカラーリングの理由については、科学者たちは長年、多くの仮説を唱えてきました。例えば、鮮やかなコントラストは外敵に対する警告だとか、黒い毛は保温を助るためだ、などというものです。
しかし個体数が少ないうえ、人里離れた生息地にいるため、野生のパンダの研究はなかなかに困難です。
2010年にカリフォルニア州を拠点とする研究者グループは、それまでとは異なるアプローチを取りました。他の動物を研究することによって、パンダについて調べようとしたのです。
研究者たちは、まず195種の他種の肉食の哺乳類と39種の熊の、さまざまな体の部位の明るさと暗さを、写真を基に数値化しました。次に体の部位の色彩の平均値と、動物の生息環境や習性との間の関係性を調べました。
例えば、寒冷地に生息する動物種の足の色は白い傾向にあるのか、群れを作って暮らす動物種の耳の色は黒い傾向にあるのか、などといった事柄です。そして研究者たちは、パンダが白黒である理由は一つだけではないという結論を出しました。
なんだか矛盾しているようですが、パンダのあのよく目立つ体色は、どうやらカムフラージュの役割を果たしているようなのです。
食性が必要とする“夏と冬の両方のカムフラージュ”
さて研究者たちは、毛色が白であることと、生息地が積雪地帯であることには関連性があることを明らかにしました。特に冬眠せず、白い背景に溶け込む必要がある動物種はそうでした。
一方で黒い毛色は、うっそうと茂った夏の木漏れ日にカムフラージュする必要のある動物種に見られました。
そしてパンダの場合では、その食性により、夏と冬の両方のカムフラージュが必要だったのです。
まずパンダの主食は、それほど栄養分に富んでいるとは言えない笹です。さらに残念なことに、パンダは肉食動物の系統の末裔であり、その消化器官は植物の消化には不向きです。
つまり冬眠して冬を越す量の皮下脂肪を溜めることは、絶対に不可能なのです。そのため、雪の季節でも木漏れ日の季節であっても、活動せざるをえません。パンダが白黒模様なのには、こうした理由があったのです。
ところでパンダの頭部の黒毛に関しては、まったく異なる理由が考えられます。先に挙げた分析結果によれば、黒い耳は外敵からは攻撃的に見え、警告の枠割を果たしているようなのです。
目の周りの黒毛に関しては、個体の識別のために発達した可能性があります。実際にそのような役割を果たしており、パンダは模様を識別するだけでなく、さまざまな特徴を1年近く記憶することができます。
とはいえ実際のところは、雪や木陰のカムフラージュ、他の種族への警告、個体の識別などが、パンダの白黒の絶対的な理由だとは言い切れません。パンダの色が進化したのは、他の肉食獣とは異なる理由である可能性も捨て切れないからです。
はっきり言えるのは、パンダは、寒冷な中国の山間部での1年を通しての生息に、よく適応しているということです。パンダの特徴的な外見は、それに大きく貢献しているに違いありません。そして永く愛される理由でもあるのです。