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組織コンディション:コロナで何が変わったのか、これから何をすべきか(全3記事)

「まだらテレワーク」がもたらす危機 立教大学・中原教授が語る、個人と組織の“疑心暗鬼”

コロナ禍によって、多くの組織で働き方の見直しが行われている中で、組織のコンディションにも変化が起こっています。そこで、パーソル総合研究所が、テレワークの実態と働き方に関する今後の展望や、コロナウイルス感染症によって組織のコンディションがどう変化したかについて調査を行いました。本記事では、立教大学 中原淳教授による講演「組織コンディション:コロナで何が変わったのか、これから何をすべきか」をお届けします。

組織の立て直しには「見える化」と「対話」が必要

中原淳氏:始めさせていただきます。みなさんもご意見などありましたら、チャットにお書きください。その都度なるべく拾ってお話したいと思います。

まず私からはお伝えしたいのは、「まだらテレワーク」には地道な働きかけ、地道な支援、サポートが必要になってくるだろうということです。ニューノーマル論とかいう話ではなく、どうやって地道に組織を立て直していくのかが必要になるだろうと思います。

その際に大事になってくるのが、組織の状態を「見える化」することであり、「対話」なんだろうというお話をしていきたいと思います。とても地に足のついた話で、ドロドロな話をしていきたいと思います。

ただいま、ご紹介に預かりましたように、今は立教大学で教育・研究にあたっています。専門は人材開発・組織開発という領域でして、人や組織の力をうまく使い、どうやって経営や現場にインパクトを与えていくかという点が私の研究テーマなんです。

いろいろとプロジェクトをやっているんですけれども、パーソルさんとはこれまでにもさまざまな研究プロジェクトでご一緒させていただいています。先ほどお話された小林さんとも一緒にやりましたね。

私が最近フルコミットしている活動を、少しだけご紹介させていただくと、立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースという新コースの立ち上げに奔走しておりました。こちらのコースは、「経営学を基盤としながら、人材開発や組織開発を学ぶことのできる大学院」です。人材開発や組織開発のプロフェッショナルを養成します。

あとで、「リーダーシップ開発、大学院、立教」と検索していただければ、コースのHPがでてきますので、ぜひご覧ください。金曜日・土曜日の授業、フルオンラインで、修士(経営学)が取得できます!

では、先ほども言いましたように、今からドロドロな話をしていきたいと思います。

まだらテレワークから生まれるもやもや感

今日の話は、「まだらテレワーク」の時代に必要なのは、組織の「見える化」と「対話」だろうということです。なぜならば、さっき小林さんがおっしゃったように、まだらテレワーク期というのは視界不良だからです。誰にとっても視界不良な状況で、なんだか気持ち的にはモヤモヤ状態なんですよね。

そのモヤモヤの中から、あまり芳しくない状態がいろいろと出てくるので、常に組織を「見える化」しなきゃならない。組織の「見える化」をする手段としてサーベイがあります。サーベイはもともと“見渡す”という意味です。組織を見渡して、その結果を職場や現場に返していきながら、関係者間での対話を促していくことが大事なことなんじゃないかということが私の主張です。

働く個人にとってはどうでしょう、みなさん。今はまだらテレワーク期に入っていて、これからバックラッシュ・オブ・バックラッシュが来るのかもしれません(笑)。みなさん自身は、今どんな心持ちでいらっしゃるでしょうか? 

先ほども言いましたが、私はまだらテレワーク期というのは、視界不良のいわゆるモヤモヤ期なんじゃないかな、と思います。ちょっとだけ小林さんの講演を振り返りますと、印象深かったところはここです。テレワーカーの不安感はまだらのときに一番強くなる点。なるほどと感じました。

あと、テレワークで業務をやっている人が不安なのは、「これって本当に評価されるの?」とか、「私のキャリアにとってプラスになるの?」といった点。ちょっと深刻な、心のモヤモヤが生まれてきてるように思います。

コロナ禍で働く個人というのは、おそらくいろいろな点で揺さぶられている。ここに漂っている不安感や不公平感は、みなさんも感じているんじゃないでしょうか。

「今まではみんなが一緒にやってきたのに、私だけなんでオフィスにいるの? みんなテレワークしてるじゃない」とか。「どうして私だけが自宅で、私だけ評価されないの?」とか。こういう感じで、まだらテレワーク期というのは、心理的な意味で言うと、おそらく視界不良のモヤモヤ期に入ってくるのだろうなと思います。

疑心暗鬼になりやすいですよね。お互いに疑ったりして疑念が生まれやすい時期ですね。

組織の帰属意識や求心力が低下している

コロナ禍での働き方の変化、みなさんの会社はどうでしょうか? 6月上旬に行った調査結果を見ると、さまざまな点で組織を揺さぶっています。小林さんの発表にもあったように、上司や同僚とのやりとりも減るだろうなと。

あとは、組織の一体感も減っていますね。仕事の満足度、生活の満足度はちょっと上がる人もいるんですけれども、あとは総じてかなり厳しい状態ですよね。一体感が低下している。帰属意識が低下する。貢献したい気持ちが減る。満足度が減る。そんな調査結果が出ています。

今を端的に言うと、たぶん組織の中心に向かってみんなでなんとかがんばろうとする力、いわば求心力ですね。その求心力がだんだん失われ始めてきてますね。組織がバラバラになって遠心力が増えているとも言える。

みなさんに聞いてみたいんですけれども……先ほどの小林さんの発表で「信頼」と「安心」という話が出てきましたけれども、組織の中の「信頼」、職場の中の「信頼」が、今けっこう危機的な状況に入ってきてるのかなと。いかがですか?

職場の信頼が失われると、まだらテレワークの状況はあっという間に成立しなくなると、先行研究では言われています。なぜなら、相手が働いているところが見えないので、相手のことをもし信頼できなかったら「あの人、もしかしたら今ソファに寝そべって、テレビを見ながらみかんを食べてるんじゃないの?」みたいに思ってしまうわけですよ。

信頼度を測る4つの尺度

これはよく知られている「信頼」に関する尺度なんですけれども、

*職場のほとんどの人は基本的に正直である*職場のほとんどの人は信頼できる*基本的に善良で親切である*職場内のほかの人を信頼している

これらの設問につき、「その通り」を5点、「まったくそう思わない」を1点として、合計してみて下さい。全部5点だと合計20点ですよね。最低が4点。みなさんの職場は何点ですか?

ちょっと採点してみてください。チャットで教えてください。ちょっと怖くて、見られない気もしますが(笑)、どうでしょうね。

(チャットBOXを見ながら)4点、4点、泣けますね(笑)。19点。8点。3点。4点……これをずっとやっていると、この講演がこれで終わってしまうような気もしますね(笑)。

ほら、これだけね、やっぱりみなさん目に見えるじゃないですか。20点のところもあれば、9点のところもあれば、4点のところもあるわけですよ。すごく分散しますよね。

「信頼」というのは先ほど申し上げましたように、リモートワークやテレワークを支える手段です。これが失われてくるとかなり厳しいことになってきますね。回答へのご協力ありがとうございました!

テレワーク実践者は、働きがいを持っている人が多い

今度は個人を見てみるとどうでしょう? さっき、まだらテレワークはいろいろな問題を起こすよと言いましたが、個人の中でもすごくまだらなんですよね。テレワークになってイキイキする……実は私もそうなんですけど。ただ、この世にはテレワークになって、ピチピチする人と、なんだか元気がなくなってしまう人がいるのかなと思います。

テレワークでノリノリの人もいるんですよ。そういう人たちは、ポストトラウマティックグロースと言うのですが、なにか大きな悲劇が起こったあと、そこをチャンスに変えていけるんじゃないかくらいに思ってるわけですね。そういう人がいます。

例えば、「テレワーク実践者群」と「そうでない群」で、今回調査をやってみましたけれども、やりがい、働きがいを持って働けている人であったり、自分の仕事人生の中でやってみたいことがあったりするかを比較すると、テレワーク実践者のほうは「働きがいを持っている人」が多い。

こんなふうにいいところもあるんだけれども、一方で職場の仕事がまだらになっていたり、働いている人と働かない人に格差が生じていたり、まあまあいろいろなことが起こってきています。

テレワーク実践者とテレワーク未実践者をこういうふうに分けていくと、職場の業務の割り振りに「ばらつき度指数」という謎の指数があるんですけど、これはやっぱりテレワーク実践者のほうがぜんぜん高いのです。要するに「なんかこの仕事の振り方っておかしくない?」という状況が生まれてきている。

仕事の頼みにくさや疲労感が増大

今回の調査で見てみましたけれども、テレワーク実践者の31.4パーセントは「ほかの人に仕事を頼みにくい」と言っています。あとは、恐らくみなさんの職場もそうなんでしょうが、「あの人、正直何の業務をやっているんだろうな?」という疑念も生まれていると思うんですよね。実際に、フリーライダーが生まれ、モラルハザードになっていく……。

人によっては、Zoomで打ち合わせをしているときに“地蔵化”してる人もいる。「あの人、本当に働いてないな」とか。「なんで私だけ」と感覚が生まれやすいですね。

どうでしょうか、今続々とみなさんからチャットでご意見をいただいています。

「職場が自宅になることで、ライフとワークをうまくブレンドできている人もいる」。その一方で、「両者の対立が深まってる」。そうですよね。私もたぶん、組織の中に分断が生まれてると思います。

あとは「言っていることと行動の結果が伴わない現状が増えてくると、疑心暗鬼になっています」というご意見。ありがとうございます。そんなふうに、いろいろ疑心暗鬼が生まれたりする……あっ、おもしろいですね。「先生、弊社のことをどこかでご覧になっていますか?」(笑)。いやいや見てない、見てないんですけど(笑)、なんとなくそう思いますね。「分断中です」というコメントもありますね。

テレワークの人たちは、けっこう元気で、ピチピチな人もいるんだけれども、やりがいはあるんだけど、ちょっと疲れてきてる人もいますよね(笑)。実際、僕も若干疲れてきていますね。疲労度というものを見た場合に、テレワーク実践者のほうが大きいわけです。

疑心暗鬼を生まないための「見える化」の必要性

今日の話から少しずれてしまうかもしれませんけれども、一段上の従業員の管理とか、広い意味での健康管理、エンゲージメント管理、あとはストレス管理。その手のものはやっぱり必要になってくる気がしています。

そういう意味でも、いろいろとまだら化した職場や個人の現状というもの、見えないものをどんどん「見える化」するように努力していかない限り、組織は見えないものがさらに見えなくなっていく。これからの組織は見えないものがさらに見えなくなり、その中で悪化していく。疑心暗鬼が生まれていく状態になるんじゃないかなと思うんですね。

最近メンタルの不調者も出ているようなんですが、その対処療法ももちろんしなきゃならないんですが、それを果てしなく繰り返していくよりも、組織をヘルシーにしてしまったほうがいいんじゃないのと思うわけです。

組織の状態を時々で健康診断しながら、常に「見える化」していって、組織に対して何かしら対処していったほうがいいんじゃないかなと思います。本当にそうなんですよ。見えないものを「見える化」しようにする努力が、やっぱり必要なのではないでしょうか。

(チャットでの質問を見て)「疲労度やメンタル不全はテレワークによるものなのか、コロナ禍社会の不安によるものなのか」、これは切り分けが難しいですね。おそらく両方から生まれているんじゃないかなと思います。

(チャットでのコメントに対して)「もともとあった組織課題が顕在化しているんだと思います」。そうですね、たぶんもともとあったんだと思います。さらに今、急加速化していると言えるんじゃないでしょうか。ありがとうございます。

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