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自分と向きあう『ジョブレス時代』の過ごし方~篠田真貴子さん(エール/ALLIANCE監訳者)×大野誠一さん(ライフシフト・ジャパン)(全3記事)

肩書きがなくても、世の中に居場所はある 篠田真貴子氏がジョブレス時代に得た“人生の棚卸し”の時間

ライフシフト・ジャパン株式会社による、人生100年時代の豊かな生き方のロールモデル(ライフシフター)を招いたトークライブシリーズ「LIFE SHIFT LIVE」。今回のゲストは、ほぼ日取締役CFOを辞し、1年3ヶ月のジョブレス時代を経て、エール株式会社の取締役に就任した篠田真貴子さんです。同じくジョブレスの経験者であり、ライフシフト・ジャパン代表の大野誠一氏との対談の模様をお届けします。本パートでは、ジョブレス期間中の過ごし方について語っていただきました。

エール取締役の篠田真貴子氏が登場

大野誠一氏(以下、大野):これから篠田さんのお話をうかがっていきたいと思います。篠田さん、よろしくお願いいたします。

篠田真貴子氏(以下、篠田):よろしくお願いします。

大野:今日もほとんど定員いっぱいいっぱいまで、駆け込みで申し込まれた方もかなりいらっしゃいます。

篠田:まあ、ありがたいことでございます。

大野:篠田さんは、こういう登壇の機会も非常に多いと思うんですけれども、今日は本当に篠田さんが主役ですね。

篠田:(笑)。お恥ずかしい。

大野:じっくりお話をうかがいたいと思います。先日、私どもの「ライフシフター・インタビュー」に登場いただいて、今日来られている方は、おそらくほとんどがそのインタビューを読んでいるんじゃないかなと思います。

実は、今日の篠田さんと私のセミナーは、最初は2020年の3月下旬に、リアルでやる予定だったんですよね。

篠田:はい。日にちまで決めていましたね。

大野:それが確か3月26日でした? ちょうど3ヶ月前ですね。コロナの影響で開催できなくなって、一回延期というかたちになりました。それがオンラインで実現したんです。篠田さん、まず、コロナの期間はどのようにお過ごしだったんですか?

篠田氏の自粛期間中の過ごし方

篠田:はい。エールとしても緊急事態宣言が出るより少し前、3月の後半にはもう「フルリモートにします」ということをお客様に宣言して、そこから私も完全にリモートです。それにすっかり体が慣れまして、出かけていいことになっても、基本的にずっと家におります。

大野:(笑)。

篠田:東京は日本の中では感染者が多めですけれども、世界各国の状況に比べれば、幸いなことに日本は結果的には大きな感染爆発ということにならずに済みました。

私にはこの4月に高校生2年生になった息子と、中学1年生になった娘がいるんですが、そういう幸いな状況もあって、結果としてその自粛期間中は、夕方に家族4人で近所をウォーキングしたり、公園でバトミントンをしたりというのが日課になりました。

こんなことでもなければ、ティーンエイジャーの子どもたちが親に付き合って毎日過ごしてくれることは、なかなかないので……。

大野:(笑)。

篠田:そういった意味でも、結果的にはちょっといい時間が過ごせたなという面もございます。

エールへ転職した矢先にリモートワークに

大野:なるほど。篠田さんは、エールにジョインされたのが3月1日からでしたっけ? まさに、入った途端にコロナがやってきたという感じですね。

篠田:はい、そうなんです。

大野:もうリモートワークでということですから、会社にはほとんど行かずに?

篠田:ほとんど行っていません。

大野:新しい会社に入ってすぐという状況でも、リモートワークでとくに問題はなかったですか?

篠田:おかげさまで。エールという会社のサービス自体がリモートと言いますか、副業をなさっているような方々が、オンラインで大企業の社員の方のお話を聞くというサービスを提供しているんです。

それから、まだまだ小さいベンチャーであるということもあって、いわゆる「オフィスにみんなが出勤して、顔を突き合わせて仕事をする」というスタイルが、もともとそれほど強くなかったんですね。

それに加えて私自身も、さまざまな職場を経験してきましたけれども、20年前から基本的にリモートワークが可能な環境でした。とくにエールに入る前の1年は「ジョブレス」なので、基本的に何かをやるとしても自宅でした。だから、そういう意味では実は体が慣れていたんだなと、そのときになって思いました。

大野:なるほど。わかりました。ありがとうございます。

「ジョブレス」という言葉が生まれた経緯

大野:今日は参加者のみなさんから、事前にとてもたくさんの質問をいただいています。これから21時までの間、私が質問を拾っていくかたちで、なるべく質問にお答えいただけるような進め方をしていきたいと思っています。

最初に、「ジョブレス」という言葉ですが、僕は初めて聞いた言葉です。これは、どこから生まれた言葉なんですか?

篠田:(笑)。初めは本当に冗談だったんですが、仕事を決めずに辞めて、2~3ヶ月の間をおきたいなと思っていたのが、2人の友人から「もうちょっと長く休んだら?」と言ってもらい、自分でも「そうだな。もう、1年にしてしまおう」と決めたんです。その仕事がない状態を「無職」とか「プータロー」と言うのは、どうもかっこ悪いなと思ったんですね。

英語で無職の状態を「ジョブレス」と言って、雇用統計などでも失業申請を「ジョブレス・クレイム」と呼ぶなど、普通の言葉です。単に英語にしただけなんですが、「ジョブレスってどうかな?」ってFacebookに書いたら、ことのほかウケまして(笑)。

大野:(笑)。

篠田:すっかり調子に乗って、まずは友人の間で「ジョブレス、ジョブレス」と(笑)。「『ジョブレス篠田』とか、リングネームみたいだよね」とか言って笑っていたら、たまたま『日経ARIA』という40~50代の女性をターゲットにしたWebメディアに取材をいただいた際に、そちらで「ジョブレス」という言葉を使ってくださって、それで市民権を得てしまった感じです。

大野:なるほど。私も『日経ARIA』で「ジョブレス」のインタビューを拝見したときに、「最近篠田さん、『ジョブレス』って言っているんだ」と思いました。

篠田:(笑)。

ジョブレス期間中の不安は、最初の1週間で払底

大野:みなさんからいただいている質問です。まず今日は「ジョブレス」がタイトルにも入っているので、「ジョブレス」がらみの質問がたくさんあるんですけれども、「ジョブレスのときって、不安や焦りはなかったんですか?」というのが、一番素朴な質問としてたくさん寄せられています。そこはいかがだったんですか?

篠田:私の場合はすごくラッキーで、1週間ぐらいで不安が払底されたんですよね。それはたまたまなんですが、退任したちょうど1週間後に、それ以前から決まっていたあるカンファレンスに登壇する機会がありました。

そこが自分に社名がついていない状態で、知り合いじゃない方に「こんにちは」ってお会いする、初めての機会だったんですよね。

今振り返れば、当たり前と言えば当たり前なんですが、つつがなく登壇を終えまして、自分の中で「ああ、私は会社の所属名がなくても、こうやって世の中とつながっていけるのだな」という、ちょっとした腹落ち感が生まれたんです。

なので、もちろん経済的なこととか、いろいろありますけれども、少なくとも素の私でも社会に居場所があると言いますか、辞めて1週間後にそういう感覚を持つことができたのは、その後にすごく心の支えになりました。

ジョブレスになることで得られたもの

大野:なるほど。ありがとうございます。今お話にもありましたが「ジョブレスになりたいとか、なる可能性があるんだけれども、やっぱり生活のことを考えるとものすごく不安で、踏み込めない」という方からの質問も来ています。

篠田さんの場合とはちょっと違うかもしれませんが、50歳前後ぐらいの時期に「ジョブレス」になるということを、篠田さんは1年3ヶ月経験されました。その「ジョブレス」期間を経過する意味というか、少し前向きな意味で言うと「価値」というか……。どんなふうにお感じになりましたか?

篠田:はい。先ほどのご質問ともつながるんですけれども、私もそれまでに複数回の転職をしましたが、常に組織に所属しているサラリーマンなわけですよね。

今回は、それがない状態が初めてでした。組織に所属する以上は、度合いはさまざまであれ、要は「やれ」という仕事がある。そういう状況から、初めて(命じられる仕事が)まったくないことになりました。

そのときに、少し時間をおいたことで「誰にも頼まれていないのに、自然に興味が向いてしまう方向」であるとか、別に私に頼んでいただく義理もないのに、私に「相談したい」と言ってくださる方がいました。

それをちょっと客観的に眺めたとき、「自分はやっぱり、実はこのあたりの領域に興味があるんだな」とか、言い方は難しいんですけど、世の中との接点を求められていると言いますか、最低限の需要があると言いますか……。

「このあたりなんだな」ということを棚卸しするのにすごくいい時間でしたし、私にはあの1年3ヶ月が必要だったんだなとも思います。

ジョブレスに関心がある人へのアドバイス

大野:なるほど。「誰でも彼でもジョブレスを経験するべきだ」とまでは、なかなか言えないとは思うんですけれども、「ジョブレス」を少し経験してみて、「おすすめできますよ」という条件の方とか、タイミングというものはありますか?

篠田:そうですね。やっぱり過剰に不安になってしまうと、今私が申し上げたような、「ちょっと自分を冷静に見つめてみる」という気持ちのゆとりが失われてしまうかもしれないので、そういった意味では、少し時期は選ぶものかもしれません。

それは、人によっては経済的な条件かもしれませんし、ご家族の状況かもしれません。そのように思いますね。でも、そこが一番大きいかな。

大野:「一般的な転職市場では、ジョブレス期間があることはマイナスに響くんじゃないでしょうか?」という質問があるんですけど、篠田さんの場合はどうだったのか。ないしは、そういう感覚ってお持ちではなかったでしょうか?

篠田:今回、私は初めて次を決めずに辞めました。もともとはそういう感覚を非常に強く持っていましたし、転職を考えている方が、キャリアのどのあたりにいらっしゃるかによっても、間が空くということの評価は変わってくると思います。

なので、一概に「空けていいんだ」「空けちゃいけないんだ」とは、ちょっと言いにくいかなと感じました。

本当に幸運なことに、私の場合は「間を空けます」ということに関して、とくにネガティブな状況は生まれなかったですね。時代もあるのかな。それこそソーシャルメディアがあって、私はFacebookなどがわりと好きなので、ある意味、そこでみなさんと何の利害関係もなく交流できて、それが自分のインプットになっていく感じがありました。

そんな方はいらっしゃらなかったですけど、仮に職探しをして、私がジョブレスだったことに関して疑問を呈された場合には、「これはこういう意味で、私のキャリア上で非常に意味があるんです」ということは、嘘偽りなく言えたかなと思います。

ジョブレス以前・以後で変わったこと

大野:なるほど。インタビューの中に出てきていることでもあるんですけれども、今このタイミングで振り返ると、篠田さんは「ジョブレス」のビフォーアフターで何が変わったのかについて、どう思われます?

篠田:そうですね。やっぱり以前よりは、ちょっとメタに自分を見ると言うんですかね……。世の中には「間」があって、いろんな方がいらっしゃるうちの1人に、私がいる。そういう視点が持ちやすくなった気がします。

大野:なるほど。

篠田:それまでだと、自分と所属組織というところがどうしても視野の中心になっていたのが、逆に中心におくべき組織がなくなったことで、もう少し視野が広がった。「自分の身をどこにおいたらいいか」という観点での視野を広げることができた。それが、過去にはちょっと得られなかった視点です。

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