2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
The Nuclear City Lost Under Ice Camp Century(全1記事)
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オリビア・ゴードン氏:1959年のことです。アメリカ軍がグリーンランドに町を建設し始めました。この町は「キャンプ・センチュリー」と名付けられました。科学の学術研究が主な目的ではありませんでしたが、キャンプ・センチュリーでは、それまででもっとも長い「氷床コア」が採取されました。この氷床コアが、地球の気候変動史をひも解く扉を開いたのです。
さらにもう一つ、特筆するべきことがあります。何と、キャンプ・センチュリーが作られたのは、氷床の「上」ではなく「中」でした。
キャンプ・センチュリーは、グリーンランドに作られた唯一の米軍基地ではありませんでしたが、完全に地下に建造された唯一の基地だったのです。そしてそれは、窮屈な穴蔵のような代物などではありませんでした。キャンプ・センチュリーには、床屋や映画館ほか、小さな町にありそうな施設は何でもありました。すべては表層から地下8メートルの氷の下に作られたのです。
しかし、氷の下に作られたがゆえに、1960年のすべてのトンネル完成後でも、キャンプ・センチュリーは矢継ぎ早に建設上の問題に悩まされました。天井は全面で氷の重みにより上から圧迫され、建物や人間が発する熱や、氷床そのものの移動などで、基地全体が常に何らかの補修を余儀なくされたのです。
建設からわずか数年が経つころには、居住者が最大時でも200人しかいなかった基地にもかかわらず、約50人が毎日、トンネルを維持して崩落を防ぐべく、チェンソーで氷を切り続けました。
さらに、基地には原子力発電機がありました。キャンプ・センチュリーの電力源は、世界初の移動式原子力発電機だったのです。この原子力発電機は、基地の外で設計され、グリーンランドに持ち込まれた後にIKEA方式で組み立てられました。キャンプ・センチュリーでの設置に時間がかからないための配慮でした。
発電機は豊富な電力を供給しましたが、大量の熱も放出したため、壁の溶解問題が一層深刻化しました。しかも放射性廃棄物が発生し、基地の撤収後には氷の中に遺棄されました。この話には後ほど戻りましょう。
表向きには、キャンプ・センチュリーは研究施設でした。時代は冷戦のさなかであり、軍は極限で隔絶された環境下での生活と拠点設置の研究を試みたのです。しかし、悪名高い厳格な冬のために、軍の計画はどこかで必ず頓挫するだろうと思われました。
ところが、軍には科学者チームが同行していました。グリーンランド氷床の研究には、またとないチャンスだったからです。
氷床は長い年月をかけて堆積した雪の層で、その深部は古い時代の雪で形成されています。雪の中には大気が閉じ込められており、科学者たちは降雪当時の大気の成分を調べることができます。例えば当時の二酸化炭素量もわかりますし、火山の噴火や、火山灰を大量に大気中に噴出した状況なども明らかにできます。
地球の気温の変動も、水素や酸素などの原子の同位体、アイソトープの量に影響を与えます。そのため、科学者たちはこれらの成分を基に、雪が降って氷床の一部となった当時の地球の気温を解析できるのです。
氷床をこのような研究に活用する手法は、1930年代から行われてきましたが、キャンプ・センチュリーは、氷床を1キロメートル以上掘削する機会を初めて提供してくれました。
氷床コアは、科学の永続的な遺産です。氷床コアは、科学者たちが他の証拠から推測した、氷河期や間氷期などの過去1万年間の地球の気候変動が、推測通りであったことを示してくれました。長く連続した過去のサンプルを、1つにまとめて提供してくれるキャンプ・センチュリー氷床コアは、断片的にしかわからなかった他のデータの資源もまた、地球の気候を正確に記録していることを示してくれたのです。
とはいえ、このようなデータからは、現代ほどあからさまではなかった過去の気候変動の影響までを明らかにすることはできていませんでした。
一方で、キャンプ・センチュリー氷床コアは、将来の研究への基盤を築いてくれました。キャンプ・センチュリー氷床コアや他の氷床コアは、現在の気候変動は自然のサイクルに依るものではなく、人間のせいだということを明らかにしてくれたのです。
キャンプ・センチュリー氷床コアは、現在でもなお発見をもらたしてくれます。2019年、1人の研究者が、氷床コアの中に閉じ込められていた泥を調べたところ、グリーンランド氷床は約100万年前にできたらしいことが明らかになりました。
さて、キャンプ・センチュリーは、もともと研究目的で建造されたものではありません。何度も言いますが、時代は冷戦です。
キャンプ・センチュリー建造の真の目的は、グリーンランド一帯に何百本ものトンネルを掘り、その1本1本に核ミサイルを充填する計画を試行するためでした。世界にとって幸運なことに、氷床はこの計画に協力的ではありませんでした。
軍は、ミサイルを充填するためのトンネルを掘っては補強するのですが、氷床が動いたり溶け出したりするため、トンネルが変形してしまうのです。ミサイルを充填するのであれば、これは大ごとです。
軍がこれに気づいた時、キャンプ・センチュリー撤収は時間の問題となりました。トンネルが崩壊を続ける中、この小さな町は1967年には見捨てられていたのでした。原子力発電機は、その数年前に撤去されていましたが、建屋やディーゼル燃料、放射性廃棄物はそのまま遺棄され、永遠に氷の中に閉じ込められたままだと思われました。
ところが、キャンプ・センチュリーが白日の下に晒した、まさにこの気候変動が、「永遠」の予定をかなり前倒しにしています。グリーンランド氷床が動きつつあるのです。レーダーは、キャンプ・センチュリーが、かつての位置から数百メートル西に移動していることを示しています。さらに、町は以前よりも厚い氷の下にあるのですが、この状況もまた変化しつつあります。
2016年に、ある研究チームが行った試算によりますと、キャンプ・センチュリーの廃棄物は、グリーンランド氷床の溶解により、2090年ころには地表に晒されるというのです。気候変動が加速すれば、その時期がより早まる可能性もあります。放射性物質以外の他の有害な物質もまた同様です。
現時点では、氷があまりに厚すぎて回収は不可能ですが、いずれはその必要があるでしょう。
氷の下に眠るこの町から教訓を得られるか否かは人類次第です。キャンプ・センチュリーが教えてくれたように、氷床は永遠には存在しない可能性があるのですから。
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