2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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北野唯我氏(以下、北野):なるほど。いろんな質問、めっちゃおもしろい質問をいただいています。これはさっきの話に関連する質問です。
「仕事をする上で、どういったインプットとアウトプットのバランスがいいのか、よくわかりません。まずは徹底的にインプットしたほうがいいのですか?」という。
これはたぶん辻さんからインプットの話が出たのと、今はアウトプットの話が出たと思うので、そのバランスはどうしたらいいですかという。確かにけっこう悩みそうだなと思うんですけど。
土屋尚史氏(以下、土屋):僕はインプットとアウトプットは同時にやっていたので、ブログにも書いていたんです。僕は25歳からずっとブログを書いていて、インプットもしているし、アウトプットもしている。
グッドパッチの昔のバリューに「アウトプット・インプット・アウトプット」という言葉があるんですよ。だから、アウトプットを先にやらないと、良質なインプットが得られないということを言っていて。
辻愛沙子氏(以下、辻):確かに。
北野:なるほど。
土屋:だから、アウトプットは必ずしないとだめだったんですね。
北野:どうですか、これ。僕がすごく好きな言葉があって。僕はピカソの考えがめっちゃ好きなんですよ。「私は捜し求めない。見出すのだ」という言葉なんです。だいたい25歳とか、20代の方でも「本を出したい」「作家になりたい」という方は、相談に来るときに「でも、ちょっと自分は知見がないんですけど」と言うんです。
でも、20数年生きてきていたら、なにか1個は書けるものとか、書くに値するものが絶対にあるはずで。それをまだ見出せていない。見出すためのプロセスを経ていないというのが、僕は本質にすごく近いなと思っていまして。
土屋:僕は渡辺さんを10年ぐらい前から知っているんですよ。渡辺さんは、もともとUIのブログを書いていた人なんですよ。
辻:へー!
北野:そうなんですよね。もともとUIデザイナーですもんね。
辻:そうなんですか。
渡辺将基氏(以下、渡辺):そういう系でしたね。
土屋:そうなんです。だから、僕は渡辺さんをその当時から知っているんです。サイバーエージェントより前の会社にいたときから、この人はすごくいいポイントでUIのブログを書いているということを知っていて。
渡辺:ありがとうございます。
辻:すごい。
北野:そこから、どんどんね。
辻:巡り巡って。
土屋:だから僕からすると、やっぱり渡辺さんがのし上がっていくストーリーをずっと見ているんですよ。
渡辺:うれしい。ありがとうございます。
北野:ありがとうございます。同じ方から、「クリエイティブな仕事は一種のカリスマ性がある人がするものと思っていましたが、そういうわけでもないのでしょうか」という質問をいただいています。
それは今の話で言うと、誰でも作り続ければある程度のレベルまでいけると解釈したほうがいいものなんでしょうか?
辻:カリスマ性とはなんぞやという話なんですけど、オタクは向いている気がしますね。1個のことにはまって、ゲームをやり続けて気づいたら1日が終わっていたという人はたぶん向いています。
「君は何が好き?」「週末に何をやっていますか?」と聞かれて、だいたい同じ答えをずっと持っている人とか、「もうやめなさい」と言われてもやり続けるような人が向いているんじゃないかなと思うんです。学校では問題児扱いされたり、理解されずに苦しんでたりする人もいると思うんですけど。
渡辺:あとは、シビアな現実で言うと、やっぱり積み重ねによってどんどんできることが大きくなっていきます。例えばグッドパッチさんも、はじめは無償で仕事をやって実績を作って次に行って。
そして次に人脈ができて、また大きな仕事ができてという流れがあるので、やっぱり時間がかかるんですよ。ただ、カリスマ性がある人やスターは、影響力でその時間を短縮できたりするんです。
辻:確かに。こと広告のクリエイティブディレクターという仕事で言うと、けっこういろいろなタイプがあるのがおもしろい気がしていて。
マンガだと、たぶん主人公っぽいキャラクターで、覇気、覇王色で倒すみたいな人もいれば、分析家であまりしゃべらなくてギラギラしていないんだけど、今まで跳ねている案件を全部分析して、Excelでまとめて共通項を炙り出して企画を作るような人がいたり。自分が一番輝く型を見つけられれば勝ちなんじゃないかなと思います。
土屋:そういうのは誰でもできますよね。
辻:そう思います。
北野:なるほど。みなさん、それぞれ表現が得意なジャンルが違うと思うんですよ。まさに広告もそうだと思いますし。土屋さんの場合はたぶん、経営や組織というレベルで表現されていると思います。渡辺さんの場合はメディアなどだと思うんですけど。
でも、その表現をするツールはどこかで学習しないといけないし、今の話はそういうことなのかなと個人的にはすごく思いました。もともとの話にちょっと戻っちゃうところがあるんですけど、改めて今クリエイティブというものを学生のうち・社会人のうちに学んでおくことはプラスなのか。
どういう観点でプラスになり得るのか、学生さんが見てくださっていると思うので、みなさんのスタンスというか、見解をいただいてもいいですか? じゃあ、渡辺さんから。
渡辺:僕はクリエイティブを学ぶというのがちょっとピンと来ないというか、「どうしたらいい」というのはよくわからないんですよ。
ただ、さっき発信もその1つと言いましたけれども、そもそも今日話したような定義のクリエイティブ、クリエイティビティを持っていないと、もうなんの仕事もできないんじゃないかなと思います。
だから、ベーススキルとしてそれがないと誰にもモノを届けられないし、誰の感情も動かせないんです。なので、常にそこを考えながら過ごさなければいけないという感覚ですね。
北野:なるほど。わかりました。どうですか?
土屋:そうですね。1つは感情に敏感になるということでしょうか。さっきも言った世の中の、目の前にいる人の感情もそうだし。
でもその総和が、世の中の人々の感情のバイアスになったりするんですよね。目の前にいる人もそうですし、その人の感情を読み取る努力をすること。常に当たり前を疑う。
やっぱり感情のバイアスが出てきたときに、「みんなこういうことを言っているな」というポイントがあって、時折思うわけです。「もう、みんなこれを言いはじめたな」というときに、常に「本当にそうか?」と考える。
「みんな言いはじめた。でも本当にそうかな?」と思うと、自分の意見を考えるんですよ。「自分はどうなんだろう」と思いはじめるので。その「みんなが言いはじめたな」というのを感じる力は、すごく重要だと思います。
北野:なるほど。確かに。おもしろい。
土屋:だから、それに対して「みんなが言っているから逆をやろう」とか。僕が出資を受けるとき、デザイン会社が出資を受けるということは過去にまったくなかったんですね。
だから、いろんな同業や同じような受託をやっている会社の社長みんなに「出資を受けたほうがいいですか?」と聞きに行ったんですよ。
そうしたら、全員が「やめたほうがいい」と反対したんですよ。「会社が乗っ取られるぞ」と。10人ぐらいに聞いて、みんなが反対したので「じゃあ、やろう」と思ったんですね。
辻:逆張りしている。
北野:そうですよね。いわゆるピーター・ティールの話ですよね。
土屋:そうです。ピーター・ティール、大好きなんですよ。
北野:じゃあ、辻さん。
辻:そうですね。たぶん2つある気がしていて。さっきお二方がおっしゃっていたことももちろんそうですし、他者への想像力というのがまず1個目かなと思います。
ファインアートはまたちょっと別な気がするんですけど、いわゆる商業の世界でのクリエイティブだと、最終的に目的の誰かに届けることが前提です。そうすると、その届け先への想像力が絶対的に必要なんですよね。まずは相対するクライアントさんの目線だったり、その先の生活者の目線だったり。だからこそ、例えば言葉1つとっても、自分が持っていない視点や自分が知らないことがあるという前提で、他者への想像力を最大限に働かせないといけない。
「これを言って誰かが傷つくかもしれない」「こういうものを必要としている」という他者への想像力を持つことは、まずめちゃくちゃ大事なことだなと思います。それをするためには、さっきおっしゃっていたとおり、社会の機微を読むことも1つだと思っていて。
ただ、どうしてもアウトプットのことを考えると、アウトプット先のことばかり考えちゃうんです。「どうやったら受けるか」「どうやったらフォロワーが増えるか」ということばかり考えてしまう人も、けっこう多いと思うんですよ。
でも実は、自分の中から湧き上がってくるもの、自分のスタンスがやっぱり一番大事だと思うんです。内省的になりつつ、他者への想像力を大事にすることのバランスを取りながらやれるといいのかなと思いました。
北野:わかりました。ありがとうございます。すごく抽象的なので、めちゃくちゃ難しいテーマだったと思うのですが、お三方の話がすごく勉強になったし、おもしろかったです。
あと30秒ぐらいしかないので、学生さんへのメッセージを一言ずついただいてもいいですか? じゃあ、渡辺さん。
渡辺:情報のインプットよりは、考える時間を作るほうが大事な気がしますね。手を止めて考える時間。なので、それをがんばってください。
北野:ありがとうございます。じゃあ、土屋さん。
土屋:ぜひ、当たり前を疑ってください。
北野:(笑)。なんか本で聞いたことがありますね。ありがとうございます。じゃあ、辻さん。
辻:社会や世の中で、今はいろんなことが起こっていると思うので、「自分だったらどうするんだろう」と、いろんなことにアンテナを立てて考えて、就活をがんばってください。ありがとうございました。
北野:はい。ということで、ONE CAREER SUPER LIVE、ROOM Xの特別セッションでした。クリエイティブやデザインという概念が少しでも身近になって、「あ、自分もできるかもな」と思ってくれたら、本当にこのセッションをやった意味があったかなと。僕個人としても、たぶん登壇してくださったみなさんも思われているかなと思います。
では、ONE CAREER SUPER LIVE、引き続きお楽しみください。また会いましょう。
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