FFS診断で自分のタイプを知る方法

岩橋ひかり氏(以下、岩橋):(参加者からの質問を読み上げながら)「自分が『拡散』か『保全』かを知るためにはどうしたらいいですか?」。(FFSの試験を)受験してください(笑)。

古野俊幸氏(以下、古野):受験してください(笑)。本を買ってください。

岩橋:本の後ろのアクセスコードから受験ができるので、それで見ていただくのが一番確実ですね。

宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み【自己診断ID付き】

古野:そうですね。簡易なものもありますが、やはり診断ってちょっとお金がかかるんです。けれども、キチッと診断をされたほうが自分の納得度も高いと思いますよ。

岩橋:そうですね。この本の受験でもけっこう精度は高く……?

古野:結果としては正規の結果のサマリーだけが出るから……。精度は高いですよ。

岩橋:どうしたら正規の受験ができるんですか? お金を払うんですか?

古野:そうです。

岩橋:(笑)。

古野:そこはちょっと必要なんです。ごめんなさい。

岩橋:それはそうですよね。

古野:他の企業とビジネスとしてそれくらいいただいていますから、結果としてそこは分けています。

FFSの診断結果は年代と共に変化する?

岩橋:質問ありがとうございます。

(参加者からの質問を読み上げながら)「(FFSの診断結果は)年代とともに変化していくんですか?」。

そうそう、これもありますよね。

古野:もちろん10年、20年という長いスパンで見たら、1ポイント上がったり、1ポイント下がるというくらいの経年の変化はゼロではない。

岩橋:私もちょっと保全性への憧れがあるんですけど。

古野:保全性なんか無理だよ。(年代と共に数値が)下がるほうだから。拡散性も下がるけど、保全性も下がる。

岩橋:じゃあ、私に何か可能性があるものはありますか?

古野:ない。

岩橋:ない(笑)。

古野:(1番目の)拡散性が、あれだけ2番目の因子と差があれば、変わりようがないんだけれども、あるとすれば拡散性がさらに洗練していくという変化があるでしょう。

岩橋:なるほど。じゃあ、私は拡散とともに生きていくしかないと……。

古野:もう生きてきたし、これからもそれでいいじゃん。それで自信を持って、もっともっと拡散しましょうということですよ。

岩橋:わかりました。

教育現場でのFFS理論の活用は可能か

岩橋:(参加者からの質問を読み上げながら)「学校現場での活用は可能ですか?」。学校などは、どうなんですか?

古野:どこの学校?

岩橋:学校って小中高どこでしょうか? 長野のカニさん。よかったらお話をしていただけますか?

質問者1:勤務しながら大学院に行っていて、組織のことを勉強したりしているんですが……。

古野:これまでの学校現場で言いますと、実は筑波大学で総合学習を担当していたM先生という方がいます。僕が筑波大学のアメフトのコーチをしていたときの監督なんですけどね。

彼が小学校向けの総合学習で、タッチフットボール(注:アメリカンフットボールをもとにした球技。危険度の高い「タックル」に代えて、ボール保持者の胴体に両手で触れる「タッチ」を行うことでプレーする)というのを1年間通じてやったんです。

小学校の先生方から言わせると、「メンバーの組み合わせによって学習効果がまったく変わる」らしいのですが、編成の仕方がわからないのです。

本当はそこにFFS理論を入れたかったんですが、今の日本の教育制度の中で言うと、こういうことは使えません。だから、小・中学校では使えない。導入されないですね。予備校などでは実験しています。「成績が上がる組み合わせ」というものがあるんです。

お互いに補完し合えるチームを作ると、全体がレベルアップする

岩橋:先生と授業の?

古野:ううん、学生同士。

岩橋:へえー!

古野:通常は予備校などは習熟度別にするんですけれども、習熟度別だと、さらに成績の差がつくのです。

岩橋:へえ。

古野:実は、いい補完をするチームを組んで、習熟度がばらついているほうが、全体的にレベルアップするという結果も出ています。

岩橋:へえー! それは教えてあげる関係で育っていくということですか?

古野:そう。教える子、優秀な子が教えることによってさらに勉強する。

岩橋:はー!

古野:というのを今、個別学習塾で一部使ってくれています。

岩橋:へえ。

古野:それから、佐渡島さんつながりで、実は『ドラゴン桜』の中に今、拡散性の子と保全性の子の教え方は違うよということが一部、入っています。大学院であれば、ぜひ使ってもらいたいですね。

プロジェクトラーニングの一環として活用

岩橋:カニさんは小学校の先生で、さらに、大学院で学校組織や職員チームの「チーム理論」を勉強されていらっしゃる。

古野:ぜひ論文を読んでください。神戸大学の大学院に論文が出ています。調べていただくとわかると思います。

岩橋:カニさんのいい研究題材になりそうですね。

古野:九州工業大学で1回授業をやりましたね。

岩橋:へえ。

古野:プロジェクトラーニングの一環です。そういうことであればかなり使っていただけます。

岩橋:先生たちも職業選択の上で、保全性の人が多いとか……。どうなんですかね?

古野:先生? 学校の先生のデータはA(凝縮性)、B(受容性)、E(保全性)の人が多いですね。

岩橋:A、B、E。へえ。

古野:順番では、B、A、E。

岩橋:拡散性の子どもは虐げられて……ねぇ!?

古野:拡散性が高い人が教師になることは、最近はあんまりない。

岩橋:ないですか。でも、拡散の子どもは一定数いますからね。

古野:そうそう。

高校・大学生くらいまでに基本的な傾向が固まる

岩橋:質問が続きます。千葉のミーナさん。

(参加者からの質問を読み上げながら)「先ほど本を購入しました」。

ありがとうございます。

「これから読むので本の内容を把握していないんですが、FFSの因子は不変ですか? それとも時間によって……」。

さっき、お答えしましたね。ほぼ変わらないということでした。

古野:30歳前後で(データを)取ったならほぼ……。

岩橋:変わらない。

古野:変わらない。僕は30歳のときに取って20年経っています。ある因子は1ポイント上がって、ある因子は下がったというのはありますけど……。

岩橋:でも、そんなもんなんですね。

古野:バランスは基本的に変わらないですね。例えば、折れ線グラフにしたとすれば、それがほぼ同じ……。ちょっと凸凹はあるけど、形自体が変わるわけではない。

岩橋:血液型みたいに、「もう一生、O型の私は変わらない」みたいな?

古野:血液型で性格がわかるはずがないですからね。

岩橋:そう(血液型による性格診断)じゃなくて……。O型に生まれた人がA型にはならないように、因子は一生決まったものは変わらないということですか?

古野:そうそう。遺伝的な要素もあるわけです。とくにD(拡散性)とE(保全性)というのは遺伝的な要素だし、A(凝縮性)、B(受容性)、C(弁別性)は環境だけれども、結局、高校・大学くらいである程度その人の基本形はほぼ固まるでしょう?

岩橋:本当にもう、誰かの個性に憧れるというのは無謀だということですね。

古野:憧れても仕方ないでしょ。

岩橋:はい。

古野:やはり自分を追求したほうがいいと思いますよ。

自分が憧れる要素、足りない要素はチームとして補い合う

岩橋:シマダさんから。

(参加者からの質問を読み上げながら)「保全だから拡散に憧れます」。

ということですが、保全を追求して、それぞれ自分を追求しましょう。

古野:保全の人に関しては、拡散の人と一緒に仕事して、拡散のエッセンスを取り込めばいいんです。自分が拡散的になる必要がないんです。だから、チームなんですよ。

拡散は拡散で辛いんですよ? 「ああ、また同じ失敗しちゃった」とか、「ああ、イラッとしたな」とかね。そういうの、反省するでしょう?

岩橋:だいたい外ではにぎやかにしますけど、家の中で体育座りしてポツンとする感じですね。

古野:だいたい家で泣いていたりするよね(笑)。

岩橋:(笑)。そうそう。「あれは失敗したな。言わなきゃよかったなあ」とか思います。

古野:「一言、多く言ったよね」とかね。反省しているんです。

岩橋:大変なんです。

FFS理論の強みは、自己理解だけでなく関係性分析までできる点

岩橋:神奈川のクリバヤシさんから。

(参加者からの質問を読み上げながら)「FFSを受験してエゴグラムと似ていると思いました。関係性などありますか? 

古野:エゴグラムはもともと「交流分析」と言って、質問文がないんです。日本だけしかないんですね。あれは、もともとはP(Parent)、A(Adalt)、C(Child)の3因子なんです。第2構造化ができて、ペアレントが2つ、チャイルドが2つに分かれて5つになったんです。

岩橋:なるほど。

古野:ただ、よく知らないです。どういう背景から作ったかというのは、学者の先生ごとにあるので、僕らが他の理論を語ることはありえない。僕はFFSしか知らない。

類似のものは一応勉強はしたけれども、背景が違います。しかも交流分析は臨床で、臨床というのは「変わっていいよ」というのが基本ですから、もともとのベースが違う。なので、似ているところはあるでしょうけれどもFFSとは違います。

ビッグファイブ(注:1990年代に提唱された性格分析理論。外向性、開放性、勤勉性、協調性、神経症傾向の5つの因子で分析を行う)というのもあり、「5つの因子で見る」というのはそれなりの合理性あるというのは、心理学の中で言われています。

しかし、(数ある理論のうち)「どれが正しいか」というのは、「自分のところが一番いいと思っている」と思ってください。僕はFFSが一番いいと思っている。一番使い勝手がいいと思っているだけです。

岩橋:あまりそれぞれを比べるよりは、「それはそれ、あれはあれ」という感じですか?

古野:ただ、関係性分析までできるのは、今のところ論文ベースで見てもビジネスベースで見てもFFSしかない。それだけは言えます。

岩橋:そうか。多くのものは自己理解、自分の強みや自分を知るというところで留まっているという感じですね。ありがとうございます。

こちらを最後にしようかな。

自分の強みをどう伸ばしていくかを考える

岩橋:(参加者からの質問を読み上げながら)「枠組みが広がって、保全性の人でも拡散性の因子を持っているように見える話に、とても納得しました。因子を強めていくのと、枠組みを広げて他の因子を含むようになっていくのと、どちらのほうがいいんでしょうか?」。

古野:他の因子を取り込むわけじゃなくて、保全の人の成功モデルが枠をどんどん広げていくということなんですよ。弁別は弁別として判断の軸がある。受容は受け入れるでしょ?

今のたとえで言うと、保全性が高いのであれば、きちっと体系化して、積み上げて積み上げて、自分の枠組みや経験の領域を広げていけば、いろんなことに対応できます。

つまり、初めての体験でも「それは初めての体験なんだけれども、あれと類似しているから、あの方法が使えるよね」ということで、不安が払拭されるのです。

そういうことが、保全性の成長なんですよね。別に拡散になるわけじゃない。結果的に周りから見れば「あの人はすごく俊敏な動きだし、いろんなことに対応してくれるから柔軟で、拡散っぽく見えるよね」と思うかも知れないけど、本人は保全性を活かしているだけ。

僕のビジネス面でいろいろと補完してくれた人がいます。保全性の因子が20なんですよ。キチッと体系化して、不安になるのが嫌なので、関連を全部調べるんです。

30分のプレゼンで、100枚~200枚ぐらいのスライドを作っているんです。どんな質問が来ても全部答えられるように準備している。それぐらいやると、周りからは「あの人は拡散だな」と思われるけれども、本人は不安で不安で仕方なくて、すごく慎重だから準備しているだけなんです。僕のスライドも万人にわかりやすいように手直ししてくれたのです。

これこそが、「強み」を活かしているということで、そこまで目指そうねということなんです。拡散になるということじゃないんです。

「真似る」よりも「活かし合う」ことが重要

岩橋:保全のことを知れば知るほど、すごいですね。

古野:保全いいよね。

岩橋:すごい。

古野:でも、なれない。だから、そういう保全の高い人をパートナーに置く。その代わり、彼ら彼女らができないことは、僕が得意なこととして持っているから、そのアイデアを出したり、「おもしろいと思うんだけど、どう思う?」「うーん、じゃあ、ちょっと調べてみようか?」と調べて、「こうやったらいけるよ」と言う。そうすると、実現可能性が広がるんです。

だから、やはり拡散性と保全性というのは補完なんです。活かし合うことが重要であって、真似ることじゃないんです。

岩橋:事前準備とか……すごい。

古野:苦手でしょ?

岩橋:いつも「これをやる」と決めて、わーっとやっていたらできましたけど、ギリギリ直前までドタバタ準備しています。

古野:でも、僕はそれをわかっているので、事前準備はあまりしませんけれども、「とりあえずこんな感じかな」という簡単な絵を1回書くんです。書くけど忘れる。

岩橋:あと、私はうまくいくイメージだけは、すごく持っています。

古野:それでいいんです。でも、それは保全性の人も同じです。拡散性と保全性は情動なので、「おもしろそう=ワクワクする」が重要なんです。

岩橋:そうなんですね!

古野:うまくいくイメージ。保全の人は、不安なイメージを持ったら、不安で動けないんです。ポジティブな発想をしましょう。ただ、そこに行く道はキチッと設計しましょう。拡散はイメージするんだけれども「まあいいか」と。イメージしたからって準備しないからね。

異文化コミュニケーションの壁を乗り越えるためにFFS理論を活用

岩橋:今日、この1時間をどう着地するかとかはぜんぜん……。でも、いいセミナーになりましたよね?

古野:それは我々が決めることじゃなくて、みなさんが決めることです。

岩橋:(笑)。そうですね。最後に1個だけ。

(参加者からの質問を読み上げながら)「異文化の方々が受けると、どうでしょうか。FFSの発祥はどちらですか?」。

古野:異文化?

岩橋:海外の方ということですかね。

古野:実は、このFFSは88ヶ国43民族のデータを取って、国際平均を持っていますから、海外の方々のことはある程度わかります。

ホンダが中国法人で活用してくれています。日本の駐在員が中国に行って、ローカルの人たちとコミュニケーションを取ってもうまくいかない。異文化コミュニケーションに差があるということで、全社で取り組みました。

実はうまくいっている組み合わせと、うまくいっていない組み合わせがある。うまくいっているのは、関係性が良かった組み合わせなんです。

文化的な違いよりも個人の性質に着目

古野:つまり、似ている者同士ってやはり意気投合しやすいんですよ。うまくいかないときの原因を、異文化コミュニケーションってしがち。だから、1対1とか個にフォーカスしたら、やはり個と個の差のほうが大きい。なので、それさえ乗り越えようとしたら意外と「そうなんだよね」とか通じ合えます。

岩橋:冒頭の女性、男性の話と一緒ですね。

古野:もちろん、宗教観とか食べ物など、いろいろと違いはあります。それは違いとしてありますが、だからといって、完全に異文化コミュニケーションでずれるということは思わないです。

だって、拡散なら拡散同士でアメリカに行ってもヨーロッパに行っても、「Hi」で通用しているわけですよ。僕はどちらかと言うとアメリカなのですが、英語はほとんどできないんだけれども、なんとかなる。ニューヨークに行っても、サンフランシスコに行っても。なんとなく、お互い阿吽の呼吸というか……。

岩橋:私のアメリカ人の友だちは、すごく日本人っぽいアメリカ人で、私はアメリカ人っぽい日本人。彼女はいつもすごく心配していて、たぶん保全なんですよ。いつもいろいろな身の回りのことを気にしていて。

FFS理論の提唱者は日本人

岩橋:(参加者からのコメント・質問を読み上げながら)「結局は個性です。個性が一番大きいということ」。発祥はどこですか?

古野:この理論のですか?

岩橋:はい。

古野:この理論は、カナダのモントリオール大学の国際ストレス研究所で研究されて、その次にアメリカのフロリダ大学で応用研究をしている。

岩橋:生まれ自体がそもそもグローバル基準で作られたものを、たまたま日本で展開しているというような感じですよね。

古野:この理論を提唱したのは日本人の小林惠智博士です。

岩橋:はい、というところで、延長戦も一旦ここで終了にしたいなと思います。延長戦も80人近くの方がご参加いただいて、ありがとうございました。オンラインセミナーは、これで終了したいと思います。代表の古野さん、ありがとうございました。

古野:どうもありがとうございました。みなさん。

岩橋:ありがとうございました。

(一同拍手)