2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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北野唯我氏(以下、北野):なるほど。今、コメントをたくさんいただいています。「新R25、見ています」「新R25おもしろいです」。めっちゃファンがいますね。あと、「グッドパッチ、待ってました!」という声もいただいています。
やっぱりすごくおもしろいなと思ったのが、「なくてもいいじゃん」と言われるものとクリエイティブは紙一重というか。「それは別にいらなくない?」というものと近いのかなと、辻さんの話を聞いて思ったんですけれど。
この辺の議論を踏まえて、お二人が思うことはありますか?
渡辺将基氏(以下、渡辺):そうですね。さっきの話と若干重複するんですけれども、僕はメディアをやってコンテンツを届けていますが、例えばテレビが全盛のときは、みんな家にテレビがあって番組を見ているので、コンテンツが流通する経路は確保されていたんです。
でも、Webのメディアをやっていて思うのは、本当に普通にやったらぜんぜん見られないんですよ。コンテンツや情報自体がどんどん増えていくので、SNSのタイムラインを見てもいろんな情報が流れてくるわけじゃないですか。
だから、そこで選ばれるハードルが爆上がりしていて、普通にやるとやっぱりいろんな人の思いや考え、情報は届かないんだな、ということがよくわかったんですよね。なので、僕の中には、そこにクリエイティブが絶対に必要だという考え方はあります。
土屋尚史氏(以下、土屋):僕がちょっと思ったのは、R25というメディアは僕らくらいの世代だと、昔リクルートさんが作っていたメディアで。 メディア自体がそんなに売り上げが上がらないというか、いったんなくなったのをサイバーエージェントさんが買って、新R25にしているじゃないですか。
渡辺:そうです。
土屋:別に自分たちでゼロから普通にメディアを立ち上げてもいいのに、わざわざR25を買って、それを再構築・再定義をして新しいメディアにしているのは、なんの勝算があってやるんだろうという。
北野:確かに。どういう勝ち筋……。
土屋:その考え方がまさにクリエイティブじゃないですか。
北野・辻:確かに。
渡辺:サイバーエージェントはWebが強かったというのと、一度終わってしまったブランドを再起させるほうが、新しくメディアを作るよりもインパクトがあるなと。
成功したときの振り幅というか、インパクトがあると思ったので、おもしろそうだなと思いました。きれいに言うと、こうです。
(一同笑)
辻愛沙子氏(以下、辻):それこそ、さっきの伝える努力じゃないですけれど、新R25は吹き出しの構造じゃないですか。あの構造も、今でこそみんな当たり前に読んでいると思うんですけど、ああすることで伝わるようにする。本当に細かい機微だと思うんです。
普通にテキストがバーッと並んでいるより、テンポがあって会話みたいに読める、あれはまさにクリエイティブだなと思います。
渡辺:うれしいです。
北野:あとは、写真の選び方や写真の下にコメントを入れるのとか。確かに読者が見たいのは意外と感情で、怒ったところや「ん?」となったところを見たいけど、普通の取材だとそれはカットされるじゃないですか。でも、「本当に読者が見たいのはここでしょ」というのを提示したのが新R25ですよね。
渡辺:ありがとうございます。
辻:すごく行間が感じられますよね。
渡辺:あれは表面のアウトプットは吹き出しのデザインなんですけど、僕はとにかく情報だけを出していても届かないと思っているんですよね。
だから、情報に人格とか文脈を全部詰め込んで、それをパッケージにして届ける。一番人柄がわかるようなフォーマットを追究したらああなった、という感じかなと思っているんですよ。
土屋:僕は今日、ワンキャリアで取材してもらった記事を出したんですけれども、クリエイティブデザインと言い換えますけど、僕はデザインは「人の感情価値に対する投資」だと定義したんですよね。
北野:おもしろい。
土屋:なので、普通にやれば文字を並べるだけでも最小コストで読めるし、読める文だったらそれでもいい。でも、読んでいる人の感情にちょっとした工夫を加えていて。そこには時間的なコストもかかっているんだけれども、新R25もまさに人の感情価値に投資するという考え方でやっているんじゃないかなと思いました。
北野:みなさんはクライアントワークもされていると思うんですけれども、まさにクリエイティブやデザインに投資できる会社と投資できない会社があって。
たぶんクリエイティブやデザインは、どちらかというと投資だと思うんですよ。一発で「ここで費用がかかる」というよりは、長い目で見たときにすごく意味があって。本当にブランドを好きになってもらう意味で言うと、わりと投資に近いのかなと思うんです。
会社としてそこに投資できる会社とできない会社の違いとか、それをどうやって説得するのか、クリエイティブやデザインが好きな人からすると、常に難しいなと感じるところだと思うんですよ。そこをメインでやられているかと思うんですけど、どうですか?
辻:必ずしもクリエイティブが効くケースとそうじゃないケースがあると思っています。今だとコロナの中で、外に出ないからわかりやすく売り上げが減る。なんで売り上げが減るかというと、今まで外需要ありきで作ってきたブランドや商材は、なかなか難しいわけですよね。
例えば、髪の毛を固めるスプレーは「風が吹くところに行かないから使わないよね」とか。そもそも買いませんという話になると思うんです。
それが必ずしもクリエイティブによって、すぐに売り上げが伸ばせるかというと……。もちろん、手法によってはできることもあると思うんですけど。例えば、外で売っていては(外出自粛で)買ってもらえないからECサイトを作りましょうとか、そのECの中でもクリエイティビィティはありますし。
飲食店だったら、イエナカ需要のものを作りましょうとか、家で食べられるパッケージを作りましょうとか、わりと愚直な施策が効くこともあって。
たぶんクリエイティブはアートみたいな、「ファンシーでぶっ飛んでいる変わったもの」というふうに思われがちだと思うんです。例えば、私は毎週報道番組でコメンテーターをしているんですけど、「クリエイターなのに普通のこと言うなよ」みたいなクソリプがたまに来たりするわけです。
でも、王道や正攻法が効いたり必要になる時もあると思っていて。突飛なものが効くこともあれば、必ずしも変わったことをしたり新しいことをするのが有用じゃないこともある。それをちゃんと言えるクリエイターかどうかが、私はすごく大事だと思っていて。
北野:おもしろい。そうですよね。ちなみにコメントで「辻愛沙子さん、NEWS ZEROに出演しているので拝見しています」という声をいただいております。
あとは、別の方からも「クリエイティブといったら、新しいものを生み出すゼロイチばかりを考えていました。情報を広く伝えるための手段、なるほどね」という視点をもらっています。
これはいわゆるアートやクリエイティブ、デザイン論に近いのかなと思うんですけど、土屋さんは今までの議論を聞いていて何か思うことはありますか?
土屋:そうですね。なかなか抽象論に寄りがちなので、どうやって具体的な話をすればいいかなと考えていました。どうしたらみなさんが思っている疑問に答えられるかをちょっと考えていて。
視聴者のみなさんは、クリエイティブな仕事を考えたときに何を思い浮かべるのかなと。そこからみなさんが思っているところと僕らが考えているところのギャップを言語化できると、けっこう価値のある議論ができそうだなと思います。
北野:なるほど。僕は、自分の仕事をちょっとでもクリエイティブにするというか、ちょっとでもデザインの要素を決めることならできそうな気がしていて。視聴者の方が、いきなり「アートのディレクターになれるか」と言われて「いや、それはちょっと僕、自信ないですね」という人でも、ちょっとだけ付け加える、0.1を加えることはできる気がしていて。
そのときに意識できる思考法なのか、それとも「こういうトレーニングがあるよ」というものがあれば、ちょっと聞いてもいいですか? これ、難しい質問ですかね。
土屋:僕!?
渡辺:土屋さんの時間です(笑)。
土屋:そうですね。僕は決して元から……今もクリエイティブかどうかはわからないんですけれども。
僕はもともと地頭がそこまでいいわけじゃないと思っているので、とにかく20代はめちゃくちゃインプット量を増やしました。世の中のいろんな事象を幅広くインプットをすることを心がけていたんです。
なので、仕事をしていても、土日はどちらか一方で学校に通っていたり、毎月本に1万円分の投資をして、いろんな分野の本を読んだりしていました。
僕らの時代にはRSSという、いろんな情報を取れるリーダーがあったんですけど、それですごくいろんなカテゴリーの記事をひたすら見て。とにかく自分にはなにもないので、まずインプットをすることをやっていました。
僕は、脳みその中にちゃんとカテゴリー分けして、構造化して情報をしまっている人がわりと頭のいい人だと思うんですよ。
でも、珍しいかどうかわからないですけど、僕のアイデアの出し方は、 平面に全部の情報を入れているんです。わかりますか? 平面にばっと並列で情報を並べていて、トークのときにその平面の中からピンポイントで情報を取ってくるんですね。
平面に並べているので、そこに直接いけるのと、ぜんぜん違うカテゴリーに入っている情報もつなげることができるんです。
辻:ああ、けっこう近いかもしれない。
土屋:僕はそういうアイデアの作り方をするんですよ。
北野:へー、辻さん、似てるかもしれないって。
辻:私はけっこう、並列というより4次元ポケット的な感じで。机もそんな感じでごちゃっとしているんです。たぶん整理整頓が苦手だからこそなのかなと思うんですけど、「普通はこうだよね」というものを取り払えるのがクリエイティビティだと思っていて。
例えば、まさに土屋さんがおっしゃったとおりで、頭のいい人やちゃんとしている人は順番に、1個目があったら「次はロジックで考えるとそこからこう派生して、こういうふうに派生するよね」とつなげて考えると思うんです。
だけど、まったく違う点と点をつないで、それが遠ければ遠いほど「これとこれがくっつくとおもしろい」みたいな。例えば、結婚式場で健康診断のイベントを開催したんですよ。タピオカ屋さんで選挙のキャンペーンをしたり。一見ぜんぜんつながりがないと思うんですけど、一緒にやってみたらすごくおもしろいものができるとか。
そういうふうに遠いものほど、実はつないでみるとおもしろかったりするので、真面目に箱の中に閉じこもりすぎないというか。
お題があって、「これ、どうしたらいいんだろう?」というときに、ぜんぜん違う本を読んでみたり、ぜんぜん違うところと結びつけてみたらどうなるだろう、という思考実験の癖をつけるのが大事かなと思います。
土屋:そのためには、「世の中の当たり前は何か」を知っていることもすごく重要ですよね。
渡辺:確かに。まさにそう思います。
辻:確かに。
土屋:「世の中の多くの人がこう考えるだろう」というものが、いわゆるバイアスなんです。それが正しいことも正しくないこともあるんですけど、世の中の当たり前を知らずにいきなりクリエイティブ、創造的なものはやっぱりできなくて。当たり前を知るからこそ、その逆ができる。ちょっと外すことができるんですね。
辻:それはすごくわかりますね。
北野:格言が出ましたね。「当たり前を知ることが大事だ」と。
渡辺:発想法は僕もそんな感じですね。要は、普通からの逸脱の幅がアテンションになるので。
だから、天才型でいきなり突飛なアイデアがひらめくというよりは、「みんなこう考えている」「最終的にはこれを伝えたいんだけど、まっすぐ言ってもちょっと伝わらないかな」「これが普通だから、あえてこういって、ここにたどり着こう」と。
普通からの幅を作ることが、「えっ」というギャップになって、誰かに見てもらえる。そういう作り方だと思うと、普通の人がクリエイティブを作れるんだということがわかると思いますね。
土屋:そうですね。
北野:確かに。新R25はそういう記事の構成をされていますよね。「みんながこう思っていたでしょ? 違うんだよ」ということをやりますもんね。あれが近いということですよね。
渡辺:そう。まさにそうです。
土屋:だからこそ、バイアスを意識するために、世の中に流れている情報をある程度、なんとなくでいいけれども、空気感・肌感で感じていることがすごく重要だと思っていますね。
辻:確かに。社会の流れを捉えることはめちゃくちゃ大きいと思っていて。今だと、それこそコロナの中で社会に対して何ができるんだろうと。最近だと、ヒカキンさんが1億円募金とかされていましたよね。
「今、社会がどういう状況にあって、どういうふうに人は動くんだろう」「今のみんなのベーシック、みんなの普通はなんだっけ」ということに、常にアンテナを立てているのは大事かもしれないですね。
土屋:だから「コロナが続いたら、リモートが前提になるよね」というバイアスが出ているんですけれども、そこで「本当にそうかな?」と思えるようなマインドが重要かなと思いますね。
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