2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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山中礼二氏(以下、山中):では3番目のセッションを始めたいと思います。テーマは『平和に貢献するテクノロジービジネスと、それを後押しする金融新時代の在り方』ということで、みなさんと一緒にディスカッションをさせていただければと思います。
私、モデレーターを務めますKIBOW社会投資の山中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ZOOMで見てらっしゃるみなさんと、YouTubeで見てくださっているみなさんもいますかね。よろしくお願いいたします。
今日は、本当にすばらしいパネリストのみなさんをお迎えすることができました。四方八方から議論をしていただいて、それを伺って私も学びたいと思っています。
簡単に自己紹介をさせてください。私、KIBOW社会投資というところで仕事をしています。KIBOWという財団は2011年の3月14日、東日本大震災の直後に立ち上がりました。最初は義援金集めから始めまして、そしてイベントですね。被災地各地を回りながらピッチイベントをやってまいりました。
さらに2015年からインパクト投資を始めています。インパクト投資といいますのは、社会を良くするような投資。社会的なリターンを得るための投資であり、同時に経済的なリターンも得る。両方の目的を持った投資のことを、インパクト投資と言っています。私たちはこれを2015年から被災地に限定することなく、さまざまな社会課題を解決しようとしている企業に対しての投資というのをやっています。
あと直近では、新型コロナウイルスによって日本各地が社会経済的に非常に大きい被害を受けているということから、コロナウイルスを乗り越えるようなイノベーションについてピッチしてもらうという、キボテンというピッチを連続的に開催しています。これがKIBOWのご紹介で、私の自己紹介でした。もう自分のことはこれ以上はしゃべりません(笑)。
セッション3のアジェンダについて、ご説明をしたいと思います。まずテーマの説明を簡単に私からしまして、そのあとでパネリストの方々に自己紹介をしていただきます。それから議題は2つですね。
1つは「日本は平和に貢献するようなテクノロジービジネスを育んでいるのかどうか?」2つ目のテーマは「金融は世界を本当に平和にするのか? それとも逆に戦争を起こしているんじゃないか?」これについて考えたいと思います。
ぜひみなさんもこの2つのテーマについて考えていただき……(スライドを指して)これですね。端的に言いますと、これがパネル3のテーマなんですが。「マネーがテクノロジーを育み、テクノロジーが平和を育むというこの構図が本当に成り立っているのかどうか」ですね。
歴史的に見ますと、どうでしょう? キャピタルとかマネーというものは、逆に戦争を起こしちゃっているような局面もあったかと思います。例えば軍事技術を促進して、それが戦争の被害につながったりですとか。またはマネーが軍産複合体のようなものを生み出したり、または植民地支配を生み出して戦争につながったりというようなことも、人類の歴史の中では何回もあったかと思うんですね。
この矢印が本当につながっているのかどうかということを、みなさんと一緒に考えたいと思います。パネリストの3人の方に自己紹介をしていただく前に、ぜひみなさんにアイデアをいただきたいんですね。
平和の実現に貢献するようなビジネスとか、貢献するような金融というふうに聞いたら、みなさんの頭の中にはどんな言葉が思い浮かびますか? というのを、ぜひこちらにご記入をいただきたいと思います。
みなさんに記入していただいている間に、さっそくパネリストのみなさんから自己紹介をお願いしたいと思います。
山中:ではトップバッターはバンク・オブ・アメリカ、メリルリンチ日本証券の、林さんにお願いしたいと思います。
林礼子氏(以下、林):バンク・オブ・アメリカ、メリルリンチの林と申します。
バンカメとかメリルリンチという会社について、ご存知ない方もいらっしゃると思うので少しだけ説明させていただきたいと思います。我が社につきましては、アメリカを本店として世界35ヶ国に拠点がありまして、20万人を超えるグローバルな金融機関でございます。
そこで私は、日本の副社長としての役割を務めておりまして。その役割の1つとしてESGの責任者を務めているという関係で、今日お声を掛けていただいたんだと理解しております。ありがとうございます。
みなさまご案内のとおり、今日のテーマでいろいろみなさまも触れられていましたけれども、最近の世界を揺るがせている大きなテーマとして2つあるかなと思っていて。1つはアメリカにおいてジョージ・フロイドさんの不幸な事件というか、亡くなられたことに端を発する大規模な抗議活動が起こっていること。それからみなさんも今、私も今日こうやって電話で参加しているような、COVID19問題があると思っております。
これに対して我が社が取ったアクションというのを、ご案内したいと思います。(スライドを指して)ちょうど今ご覧いただいてますけれども、6月2日にロイターに出た記事をそのまま貼り付けているんですが。我々バンカメとして、人種格差改善に10億ドルを拠出するということで。あのニュースが出た直後に10億ドル、つまり日本円にして1100億円をこれから4年間で人種格差改善に向けて拠出するんだということを、発表しました。
具体的に何に使うかということなんですけれども、非白人系住民が多い地域とかマイノリティの方に対する医療保険サービスですとか、企業支援、教育機関との提携などを予定してます。
我々はなんでこんなことをやっているかと言うと、先ほど申し上げたようにグローバル企業として多様性を受け入れることが社会、それから会社の持続的な存続にとって必要だという考え方に基づいているものだと理解しています。
次にコロナ対策という点では、アメリカの金融機関として同じく10億ドル、1100億円相当の社会貢献債という債券を発行しました。この1100億円という巨額の資金で、コロナで資金繰りが困難になっている中小企業のお客様向けの融資だったり、それからコロナ対策に従事していらっしゃる病院とか看護施設のサポート、あるいは医療機器のサプライヤーに対する投融資ということを目的としています。
先ほどお金が平和に貢献するのか? とか、戦争を起こすのか? という話がありましたけれども。資本主義のど真ん中のアメリカの金融機関が真っ先にこういう対応をするのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
私もこの会社に20年以上おりますけれども、この10年で本当にアメリカの金融機関というのは大きく変わって、先ほど(前のセッションで)ほかのスピーカーの方もおっしゃっていましたけれども、ビジネス・ラウンドテーブルでも株主第一主義から社員ですとか、コミュニティを同様に重視する姿勢に変わってきているんだなと感じています。
その考え方をサポートするものということで、最後のページ(スライド)をご覧いただければと思います。これは弊社のCEOのブライアン・モイニハンの顔写真とメッセージなんですけれども。
弊社は責任ある成長、Responsible Growthと言っていますが、これを会社の戦略と位置付けていて。その根幹にESGがあると、社内向けのメッセージだったり年次報告書だったりメディアで繰り返して言ってます。
今日のテーマでもあるんですけれども、国連のSDGsの戦略に弊社のビジネスは沿っているんだと。とくにその中でも8つのゴールに沿って、ここがキーポイントなんですが、金融機関として何ができるかということを考えて実行に移しています。
私も10年くらい前から社内のボランティア活動をやっていたんですけれども、そこから資本市場部の社員としてグリーンボンドなどのESG関連の社債の引き受けをやったり、それから最近はグリーンというか、環境だけではなくてより幅広くSDGsの観点ということでお客様と一緒に何が金融機関としてできるのかということを日々考えろということで、弊社の役員を務めています。
今、コロナウイルスの中で社会課題が浮き彫りになったなと思っていて、これからESGの発行というのもありますけれども、サステナブル投資というものが拡大を続けていくんじゃないかなと期待をしています。
日本においても最近、ESGとかSDGsという言葉が浸透してきましたけれども、本当に金融の中で大きな流れになっているかといえば……残念ながらまだなってないと理解をしていて。
今日は一緒にお話くださるすばらしいパネリストのみなさんと、どうやったら金融がこういったテクノロジーを支えたり平和に貢献できる流れになるのかということを議論できればいいなと思っております。今日はよろしくお願いいたします。
山中:ありがとうございました。Responsibleなかたちでどうやって役割を果たしていくかということで、アメリカの金融機関も大きく変わってきているんだということがよくわかりました。
山中:では次に安川さんお願いいたします。
安川新一郎氏(以下、安川):今日のセッションは楽しみにしてました。私の自己紹介を、1枚だけさせていただけたらと思います。どういった会社をやっているのかというところと、私自身どういった存在なのか、をまず簡単に。
耳慣れない言葉だと思うんですけれども、海外ではコレクティブインパクトという言葉が言われてます。
これは大きな社会の課題は政府だけでも解決できないし、企業だけでも解決できない。その地域のコミュニティとかと一緒になって、政府や企業・スタートアップ、地域コミュニティ、ボランティアも含めてコレクティブに教育の問題、医療の問題等を社会全体で解決していこうというものです。それに対する投資活動ををコレクティブ・インパクトと呼んでいます。そのコレクティブインパクトを軸に企業の支援やスタートアップへの投資活動を行っている会社です。
今日はビジネスとか金融の話になりますけれども、私はもともとマッキンゼーという資本主義の最先端に8年くらい、海外のオフィスも含めて居ました。そのあとソフトバンクに社長室長というかたちで転職をして、ソフトバンクは当時からかなり金融的な動きをしていましたので、社長室長としての業務をやりつつ孫正義社長と一緒に世界中の企業への投資を行っていました。
今日、山中さんともお会いしたのはその後に転職したエス・エム・エスという会社で、その会社でヘルスケアITという領域でスタートアップを支援していくことをやってきました。あとはご縁があって小池知事の東京都の顧問ですとか、吉村府知事ですとか松井市長の大阪府市の参与、政府CIO補佐官等もさせていただいています。
とくに意図したわけではないんですが、結果としては大企業とスタートアップですとか、いわゆる政府と民間企業というような異なる組織での経験をたまたま持っているので、このすべてのバックグラウンドを活かしたコレクティブインパクトというかたちで社会課題を解決していきたいということで、今はグレートジャーニーという会社を設立・経営させていただいております。
事業内容はAIとかバイオとかアグリテックだとか、エネルギーの領域の最先端技術のところに積極的に投資を行っていくということ。また政府の支援を行いつつ新技術新産業への必要な規制改革を求めていく。
また企業とスタートアップと最先端の領域を研究してますと、いろんなかたちで未来の社会の課題と未来のテクノロジーの萌芽というのが見えてきます。それらを結びつけていくということをやってますのでさらに、そこから出てくる未来に対する知見を人材育成ですとか新規事業開発、未来ビジョン策定という形でお手伝いさせて頂くということをやっております。
あとから自己紹介される丹羽社長も私の投資先の1つで、アグリ分野で非常にユニークな取り組みをされてます。創業数ヶ月くらいの段階から投資、ご支援をさせていただいている会社です。今日は楽しみにしております。よろしくお願いいたします。
山中:安川さんありがとうございました。
山中:では最後にグランドグリーン株式会社の丹羽さん、お願いいたします。
丹羽優喜氏(以下、丹羽):グランドグリーン株式会社代表の丹羽と申します。安川さんから紹介いただきましたように、我々はアグリバイオ分野のスタートアップということで、もともと名古屋大学で作られてきた技術を実際に社会実装していこうということで、立ち上がってきたチームになります。
スローガンとして「Envision Future Plants. 」ということを掲げています。植物そのものを、より良くしていくことで新たな価値を生み出そうということです。特徴的な技術としましては、これまで組み合わせが限られていたような接木技術ですね。これをあらゆる組み合わせで接木ができるようになったというところが、大きな名古屋大学での発見です。
これを利用することによって、例えば乾燥地であるとか塩害地であるとか、そういったような作物の栽培に不適な環境においてもいろんな作物が育てられるんじゃないかと。この発見が、1つ大きな起業へのきっかけとなりました。
それだけではなくて、いろんな従来の技術であったり先端技術を組み合わせながら植物を改良していくことで新たな価値、そして環境問題であったり食料の問題というところにアプローチしていこうということに、取り組んでいます。
簡単に言いますと新たな栽培体系、もしくはどんどん変わっていくような栽培環境といったところに新しい種苗を生み出していくということで、生産性を高めていく。そうすることが社会の安定化であったり持続可能な発展につながっていくだろうということを、ミッションとして我々は活動してきています。
従来の種苗開発というのは生産者を向いた非常に閉じた社会でしたので、我々はバリューチェーン全体を見ながら、もしくはこのバリューチェーンの外側にある環境問題であったり政治的な問題であったり、そういうことも意識した中で、そこを種苗で新しい価値を生み出すことで変えていこうよ、というようなことに取り組ませていただいている会社になります。
いくつか具体的な取り組み例もあるんですけれども、我々はやはりアグリ分野で活動しておりますので、いろんなSDGsの課題というものに関わってきております。こういったところに少しでもアプローチできるように事業を進めていきたい、というところで。
私、今回この金融のセッションの中で、投資を受ける側の人間としての視点というものを求められているかなとは思いますけれども。そこの収益性というところと、社会的なインパクトというのをどうやって両立させて事業を展開していくかということを、日々考えながら事業を進めております。そのあたりをみなさんとディスカッションできればいいなと思っております。よろしくお願いします。
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