やりがいがある=働き詰めになる?
北野唯我氏(以下、北野):めちゃくちゃいい質問をたくさんもらっているので、どんどんいきたいんですが、「『やりがいがある』と聞くと、働き詰めな感じがしますが、働きすぎず、楽しく働ける会社を見抜く方法はありますか?」という質問がきています。
たぶん前半が本質だと思うんです。「やりがいがある」と聞くと「働き詰め」という感じがするんです。確かに僕もそう思うんですけど、これはどうすればいいんですか?
曽山哲人氏(以下、曽山):確かに、そういうニュアンスもありますよね。そういう意味では「働きがい」と「働きやすさ」という2つのワードを同居させる方が僕はいいんじゃないかなと思いますね。
「働きがい」はチャレンジとか目標とか成長とかですし、「働きやすさ」だったら安心してやれるとか、それこそリフレッシュできるとかなので、この両面を見るのがけっこう大事だなと思います。「働きやすさ」にいっちゃうと成長があとになっちゃう。両方見ることが1つの観点としてあると思うんですよね。
北野:曽山さんがいつも言っている、「挑戦と安心はセットである」ということですね。
曽山:「挑戦と安心はセットで考える」というのはサイバーエージェントの人事のポリシーなんですけど、片方だけに偏らないことがけっこう大事なんですよね。「&」で行くということです。両方の概念を一緒にし、「いいとこ取り」をする努力をする方がいい。個人でもそうですし、組織でもそうなっている方がいいと思いますね。
北野:挑戦だけだと働き詰めで、本当に「ああ……。これは何のために働いているんだっけ?」になっちゃうし、体を壊しちゃうけど、安心があるというのがすごく大事かなと思いますね。(斉藤氏に対して)何かありますか?
「公私ともに充実していますか?」
斉藤知明氏(以下、斉藤):働きがいと働きやすさが同居するって、まさにその通りだと思うんです。Uniposって、ドイツにも子会社があるんですね。ドイツのみなさんって、労働時間がすごく短い中でプライベートを充実させることが得意な方が多いんです。
「ワークライフバランス」という言葉に落ちるのかわからないですけれども、プライベートな生活、ふだんの生活に充実感を見出している人が多いですね。それ(バランス)が取れていれば、仕事をしているときはどれだけ辛くても120パーセントやればいいんですよ(笑)。
(一同笑)
大変であっても仕事にのめり込めていて、かつ、プライベートにものめり込めるものがあったり、そっちはそっちで充実しているんだという、両立ができている会社なのかどうかが大事かなと思っています。
今、我々も3月からずっとテレワークで、2ヶ月間は出社禁止としているんですけど、いかにプライベートな時間を自分で作るかですよね。プライベートでやることのリストを作って、そのときはオフにしようというような、オンオフの境目がしっかりしている会社は、働きがいと働きやすさが両立できているという証左じゃないかなと考えます。
曽山:そういう意味では、(就職活動の際には)「公私ともに充実していますか?」という質問は、いいと思いますね。
斉藤:いいと思います。
曽山:「やりがい」という言葉で聞いちゃうと偏るというのが心配だったら、「公私ともに充実していますか?」と聞くと、プライベートを語るのか語らないのかで、けっこうばれると思います。
エンゲージメントが高い人は、燃え尽き症候群になりやすい
北野:確かにわかりやすい。加賀さんはこの中で言うと、女性というのもあって(質問者の女性の感覚に)近いと思うんですけれども、どうですか?
加賀れい氏(以下、加賀):実はエンゲージメントの対極にあるのが、バーンアウトという「燃え尽き症候群」だったりするんですけど、エンゲージメントが高い人って、バーンアウトになる可能性が高い人なんですよ。
なので、その方のおっしゃっていることは、すごく的を射ています。……と言うと、すごく上から目線なんですけど(笑)。実際にデータとしても裏付けがあります。
やはり「しんどい」ということをきちんと伝えられるような環境にいるとか、「自分はしんどい」「もうこれ以上がんばったらヤバそう」ということを周りにしっかりと伝えて、それすらも受け入れてもらえるような場にいることは、大事なのかなと思っています。
Googleが大事にしている「心理的安全性」がまさにそうだなと思っていて、自分が自分らしく、充実している状態を作り上げられる組織は、すごく強いのかなと感じます。
「仕事が降ってくる」と「仕事を取りに行く」の境目
北野:なるほど。あと、これもすごくいい質問だと思うんですが。
「『仕事が降ってくる』と『仕事を取りに行く』、この2つの境目がわかりません。自身としては、『何かやることはありますか?』と指示を仰ぐことも能動的な意味に入るのかなと思っているのですが、結局それも指示を待っていることになるので、受動的になってしますような気がします。『仕事を取りに行く』ということについて、みなさんはどうお考えですか?」という、すごくいい質問です。僕はほとんどいらない。これを読み上げるだけですね。
(一同笑)
ありがとうございます。どうですか?
斉藤:「仕事ありますか?」は「降り待ち」ですね。
北野:ああ、やっぱりそうなんだ。
斉藤:そういう考え方をしちゃいますね。「仕事を取りに行く」って、仕事を作ることなんですよ。自分たちが会社として目指している理想の状態を知っていると、それに対して足りないものっていっぱい見えるはずなんですよね。
課題って、理想と現状の境目です。(理想と現状の)差分イコール課題であるという考え方をすると、今取り組んでいるタスクは「課題に対してタスクがある」という状態なだけなので、理想に対しての現状の差分を見ると、取り組めていない課題の方が多いはずなんですね。
イシュー・ファインディング。その課題を見つけて、それに対して「こういう解決の仕方をするといいんじゃなかろうか?」という提案をして、「じゃあ、私ならそれができます」というのが仕事を作りに行く、取りに行くということなのかなと思っています。「何かできることはありますか?」って、けっこう上司の人はドキッとするんですよね。
(一同笑)
(周りを見渡すそぶりをしながら)「何かあるかな……」って(笑)。
(一同笑)
人から与えられた仕事を自分の仕事にする
北野:確かにドキッとする。曽山さん、これはどうですか?
曽山:まず、僕の個人的な意見ですけど、「何か手伝えることはありますか?」と言われたら、僕はめちゃくちゃうれしいです。
(一同笑)
加賀:おもしろい。
曽山:さらにいいのは、「私にこれをやらせてください」というふうに取りに行くことです。まさに今のお話のものが一番いいなというのがあります。
さっきの質問とは少しずれるかもしれませんが、そうは言っても若いうちは、どちらかと言うと「これをやれ」と言われたものを受けることの方が多いのがリアルだと思うんですよ。僕もそうでした。
そのときにやれることとして1つあるのは、「決断を再生産しよう」という考え方ですね。上司から「お前はこれをやれ」と言われたものを、「はい、わかりました」と言って作業だけやるんじゃなくて、「この仕事の意味は何なのか」を再定義して、「自分にとってその意味があるから、これをやろう」ともう1回自分で決める。そうすると、人からもらった仕事でも自分の仕事にできる。そういうことを、ぜひ活かしてもらえるといいと思います。
自分なりの仮説や意志を持つことが成長につながる
北野:どうですか? 加賀さん、何かありますか?
加賀:そうですね。私も「何かやることはありますか?」って聞かれたらうれしいタイプではあるんですけど(笑)。
(一同笑)
北野:うれしい(笑)。
加賀:うれしいタイプではあるんですが、もう一步進められるといいなと思うのが、「自分はこう思うけど、どう?」という、自分の中に仮説ないしは意志がある状態で確認すると、どんどんその精度が高くなってくと考えます。
意志がないのに「何か教えてください」だと、学びが少なく成長しにくいので、その仮説検証を数多くこなすのがいいのかなと思います。
曽山:そう思います。そういうふうに来たら、僕も「何をやりたい?」と聞くようにしています。
(一同笑)
うれしいと言いながらも、「何をやりたい?」と聞くと、そこで初めて1個、自分で意思表明しないといけない状況が出ます。これで決断を経験して、成長しますからね。
北野:なるほどね。僕が個人的に仕事を取りに来てくれるのが上手だなと思う人は、1つ上の人のレイヤーで考えて、その人が求めていることができる人です。(そういう人が)いわゆる仕事を取りに行くという意味で、すごくポジティブ人かなと思います。
「私はこれをやりたいんです」と言われると、「いや、でも今はそこじゃないんじゃないかな……」みたいな(人もいます)。
(一同笑)
曽山:ずれちゃう!
北野:「そこじゃないんだよ。おいー……」みたいな。でも、まだ動いていないんだけど、聞いたときに「要はこれですよね? これが重要ですよね!?」と言われたら、「そうそう、それなんだよ!」というふうになるから、1個上の人のレイヤー・視点で考えられることもけっこう重要な要素なのかなと思います。
自分の言葉で説明できる人には権限移譲しやすい
斉藤:でも僕も言ったんですけど、最初は難しいと思いますよ。
(一同笑)
すごく難しいと思っていて、その中で曽山さんがおっしゃっていたみたいにやる。とはいえ、「降る仕事」が多い、マジョリティだということについては、イエスだと思うんですね。僕は自分が第二新卒として入ってから、いつも考えていたことがあります。
本当に最低限ですが、もらった言葉に対して「何でこれが必要かと言うと、こういうことですか? こういうために必要なんですかね?」というのを、オーダーされたときや説明を受けるときに、自分の方が6~7割、しゃべるんですよ。
すると、「こいつ、わかっているな」と思われるし、相手は正しくパスしやすい。権限を移譲するって、移譲する側からすると、ちゃんと仕事を果たしてくれるか怖いものです。そこに対して、自分の言葉で説明できる人には、どんどん移譲しやすいんです。
北野:そうですね。
斉藤:そうすると、難しいチャレンジもどんどん渡して行きやすくなるし、上の視点が見えるようになって、やっと自分で「これはどうですか?」という提案ができるようになる。実は「降ってきたものに、超ポジティブに取り組む」というのがコツなのかなと思います。
物事の本質が見えるようになる「要約返し」の習慣
曽山:僕は「要約返し」という言葉を使っているんですよ。預かった言葉を要約して「これって、こういうことですか?」って、まさにそう。これが言えるといいです。頭を一瞬でがーっと使って「こういうことだな」と意味を定義して投げ返すのは、筋トレみたいなものです。これでどんどんシンプルにできると物事の本質が見えるようになるので、すごく大事だと思います。