休業中に大活躍するLINE WORKS

大谷イビサ氏(以下、大谷):なるほどねぇ。大杉さんにも同じ話を聞こうと思っていて。休業中、従業員とどうつながったかお聞きしたいです。

大杉一真氏(以下、大杉):はい。東京の従業員は、ほぼ自宅待機というかたちで。長野もお店を開いているとはいえ、まだ研修が始まったばかりの新卒スタッフとかもいたので、そういう子はみんな自宅と。こういう言い方はアレですけど「稼げる」社員だけ前に出て、まだがんばっている勉強中の社員は家で待機。不平等な状況もマネジメントしていかなければならなかったので、このようなところが課題でした。

という中で、僕らもLINE WORKSを使って……もう何年になるんだろう、けっこう長いんですよね(笑)。初期から導入していたこともあってですね、ずっとLINE WORKSで連絡をとっていました。

具体的には、従業員が出社するときの検温のデータ。体温計を撮影して、LINE WORKSのグループチャットに上げたり。また、休業中に職業訓練をすると雇用調整助成金の上乗せがあるという情報があったので。いわゆる休業補償ですよね。それもやろうということで、ZoomのURLをLINE WORKSで共有して、そこでWeb研修を行うと。

その感想もLINE WORKSの「コロナ休業中研修用」というグループがあるので(笑)。そこに感想を書き込んで、ログを残していくと。ログがないとお金も出ないので。LINE WORKSの非常にいいところってやっぱり、トピックごとにいくつでもルームが立てられて。

普通のLINEを業務で使ってると、だいたい会社のグループ1個みたいな感じなので、細かいことはできないのですが、LINE WORKSだといくらでもグループの部屋を作れるので「コロナ休業研修グループ」「検温の画像上げるグループ」みたいに全部分かれていて、細かく従業員とコミュニケーションをとりました。

大谷:従業員の方はやっぱり、けっこう不安が大きかったんですか?

大杉:同業他社でも「出社したくない問題」があって(笑)。「なんで経営者はリスクのある場所に私たちを出社させるんだ」という問題ですよね。

大谷:ありますよね。

大杉:本来はコロナ中も開けておきたかった会社が、Twitterで「出社強要されました」と書かれて炎上しちゃったから、休業せざるを得ないとか。リスクコミュニケーションみたいなところで、日々LINE WORKS使って遠隔地でもコミュニケーションを取れていたのは、すごく活きたかなと思っています。

従業員と経営者のギャップ

大谷:今の話を聞いてると、そういった不安を解消するためにZoomやLINE WORKSを使うことで経営側と従業員の距離をどんどん短くしていこう、直接話しかけてますという状況ができたのかなと感じますが。

大杉:そうですね。「経営者が今何を考えているのか」が一番問われる時代ですね。「withコロナ」と今言いますけど、そしたら「withコロナなんだ」という話を、従業員が理解するのけっこう時間かかるわけです。一方、経営者はもう「1年はwithコロナでいくぞ」と思ってるわけですが、従業員がそれをパッと理解するかっていうと。

「これ、緊急事態宣言明けたら終わりっスよね?」という従業員と「いや1年勝負だよ、すっげぇ借入してんだよこっちは」という話。この溝をどうにか埋めないといけなくて、4月の段階でもう「withコロナです」と。「1年、2年かけて勝負していくので、今、一旦休めばなんとかなるって問題ではない。長期戦なので、それに備えてみんな準備をしているので、みんなも長期戦だと思ってがんばってね」という風にコミュニケーションを取っていました。

大谷:杉山さんもさきほど、どちらかというとオペレーションのほうよりも経営が何を考えているのか、理念を伝えるためにこのようなツールを使うんだ、というお話でしたが。やはり従業員と経営者のギャップはあったんですか。

杉山慎吾氏(以下、杉山):最終的にスタッフが役務の提供をしていますので。我々が言ったことをみなさんが良しと思わなければ、まったくお客さんには提供ができないものなんです。その意味でいくと、労働集約型の産業であるがゆえに、よりベクトルが一緒の方向に向いたら強いんです。でもこれがなかなか難しいです。規模の問題もありますし、会えない時間も多いですし。

今は会えないことが当たり前のようになってますが「コミュニケーションというのは会うだけじゃないんだ」ってわかったのが、私はすごく良かったなと思っています。文字でもコミュニケーションは取れるし、文字で伝えて残すことが、みんなにとってはベクトルを同じ方向に向ける最短の道だったりすることがあるんだな、というのが。

見えないので不安な部分はありつつも、自粛期間中に逆にスタッフから「今日はこんなところを散歩してきました」とか写真が送られたり。誕生日迎えた人に対して、うちの社長が熱唱した動画を上げて。

(一同笑)

みんながそれに反応して(笑)。本当はたわいもない話です。会っていれば大した話じゃないんですけど、それが文字でできるっていうことはすごいなと。文字でも、すごく心に響くんだなと。

伝えるということに「めんどくせぇな」「ギャップがあるな」って思ってはいけないなと。伝えなきゃいけないんだ、コミュニケーションとらなきゃいけないんだ、というのを改めて感じさせてもらった期間でした。

大谷:豊月さんって私、(以前に)取材してるじゃないですか。そこで、LINE WORKS使ってる画面は見せていただいてものすごく印象的だったのが、料理人が「新しいメニューができたんですよ」って写真を上げているんですよね。

それで、その人たちが「いい!」「すごい」「素晴らしいメニューですね」っていうのを上げていて、かつ「これはいいデジタル革命ですね」みたいなコメントをなさってる人がいて。「あっ、これって作られたコミュニケーションの中にはないな」みたいな。それをすごく感じたんですよね。

LINE WORKSは従業員にスムーズに浸透したのか

大谷:あと1点だけアンジェラックスさんにお聞かせいただきたいのが、現場の人たちがけっこうLINE WORKS使って長いという話だったのですが。リテラシーとか使い勝手とか、すぐ馴染んだのかについてお聞かせいただきたいなと。先ほど冒頭で「決してITに明るいわけではないし、DXぜんぜん進んでない業界なんですよ」とお話を聞いたので。

大杉:はい。最初、いろんなビジネスチャットサービスを探しました。ただこの業界全般、ITリテラシーが高くないので、使えないんですね。ITリテラシーだけじゃなくて、英語も詳しくないんですよ(笑)。

なので、例えば某チャットだと「ルーム名が英語だけど」で、もうアウトだったり。やはりみんなが使い慣れてるものじゃないと使えないという問題は、ありました。もともとLINE WORKSの導入前から、LINEではみんなコミュニケーションをとっていましたが、でもLINEはプライベートを侵食してしまって「これの代替サービスないのか」ということで、LINE WORKSを導入しました。

大谷:そしたらもう決まってきちゃいますよね(笑)。

大杉:とにかく「スタンプが使える」という条件が、僕の中にはすごくあったので。また、UIがLINEと変わらないのでITリテラシーなしで使えるのは、サービス業界との相性がすごくいいと思っています。

「お仕事のLINEみたいなものですよね」と、さきほど豊月さんのお話の中でもありましたが。LINEは、若い世代も高齢者世代も使っているので、すべての従業員がツールを入れたその日から使えるのは、いろんな人がいる会社で分け隔てなくやれてすごく助かっています。

大谷:ありがとうございます。でも杉山さんの所は「スタンプは今のところ使ってない」という方針ですよね。

杉山:はい。未だに絵文字・スタンプは禁止です(笑)。大杉さんのお話を聞いて「なるほどな」って。そうするともっといいんだな、って思いましたが。まずはおっかなびっくりで始めたというのが、経緯かなと思います。

大谷:ありがとうございます。

篠田麻実氏(以下、篠田):日々のオペレーションのやり取りをしながら、それを今後へのナレッジとしてストックをするためにLINE WORKSのようなグループウェアを導入されようとした豊月さんと、もともとLINEにあったチームの勢いを可視化できるようビジネスツールにも持ち込みたい、というベースで始められたアンジェラックスさんで、重んじていることも違い、同じツールでも活用のされ方が違ってて、おもしろいなと感じてます。

大谷:そうですね。だから逆に言うと、LINE WORKSってそういう意味では、組織によって使い方変えられたりいろんな使い方ができますね。

テクノロジーに対する期待

大谷:最近、杉山さんはテクノロジーで何か試したりすることはありますか?

杉山:最近は、LINE WORKSのアンケート機能をうまく使っています。いつもは、お客さんの担当をした仲居さんたちが毎日、報告書を手書きで書きます。「手間だけれど、その情報は欲しい」ということで、アンケートの機能を使って、そのまま答えるようなかたちで情報を蓄積したら楽なんじゃないか、というのを試しています。

あと、最終的にお風呂に入るっていうリアルは絶対変わらないんだけど、そのお風呂に入るお客さんのための準備をITを駆使した状態でより効率よく、スムーズに。お客さんの満足度を上げられるようなことをしたいと思い……人感センサーカメラをベースにして、大浴場に今どれぐらいの方が入っているかっていうのがわかる仕組みを、知り合いの方と一緒に作らせていただいていて。

大谷:「今は混んでるからちょっとあとでね」みたいな感じなんですね。

杉山:そうです。「混んでます」という情報は、もちろんお客さん次第になってしまいますが。また「今混んでるか混んでないか、どれだけ使ったか」によって、清掃に行くタイミングで「絶対に今を逃すな」とか。それで、いかにお客さんに見えないように、常にバスマットがきれいに乾いてる状態にするかとか。

そこに実は、LINE WORKSのBOT機能ですね。チャットBOTの機能を連携させて、5人入ったら通知が来るようなことができないかっていうので、今後挑戦しているところです。

大谷:おもしろいですね。お客さんからしてみても、別に密になりたくて行ってるわけではないので。大杉さんにも「テクノロジーに対する期待」をおうかがいしたいと思ういます。若い従業員の方も多いので、あまり抵抗感なくいろんなものをどんどん使ってくれるんじゃないかと思いますが、テクノロジーに対する期待を教えてください。

大杉:会社をよりデジタル化していくということに関しては、もう必須だなと思っています。後ろ(背景)に写っているのが、僕らの新しいブランドで外苑前に出た「エントランス」ってお店ですが、完全キャッシュレスなんですね。

大杉:完全キャッシュレス、サブスクリプションというかたちで。去年の10月にオープンしましたが、とにかくデジタル化が遅れたエステの業界で「なるべくフルデジタルでやろうぜ」ということで、紙なしで始めてみました(笑)。

チェックインのところからスマホだけでできる。お会計も全部スマホだけでできるというところで、始めてみて「20代、30代の人が中心の利用になるだろうな」と思ったら、意外と40代が一番多いと。

大谷:ほぉー、なるほど。

大杉:意外な事実がありまして(笑)。利用者も徐々に増えてきていますが「ただ既存のお店の紙媒体を全部デジタルに置き直す」のは、やはりすごく難しく。これからだと思っていますすが、とにかくクラウド上に「お客さんが今、何のチケット持っていて、いくらプリペイドチケットがあって」みたいなことも今後チャレンジしていきたいと思います。

このwithコロナの世界で生き延びていく中で、LINEカウンセリングを始めたりとか、デジタルツールで顧客接点を持つということは始めてはいますが。まだまだ足りないと思っているところです。

集まれない状況でチームワークを実感した瞬間

篠田:ありがとうございました。聞きたいことがたくさんありますが、お時間もきておりますので、質問も受けてまいりましょうか。「集まれない中で、組織やチームワークが良くなったと実感した瞬間はどんなときですか?」というご質問、いただいております。

大谷:杉山さんからお願い致します。

杉山:はい。集まれないときにチームワークが良くなったのは、例えば、休業の延長を何回か繰り返しています。それをみんなに伝えなきゃいけないのも、LINE WORKSを使って一斉配信をします。

普段は「既読スルーOK」というルールなので、ぜんぜんリアクションないのですが、このような重要な局面のところでは、会えなくても「リアクションはしよう」という意識を持ってくれていましたね。

みんな大人数で集まっていたら「はい」としか言わないかもしれないのですが、一人ひとりのコメントが入ってこられる、返信ができる、想いができるというのは、これはおもしろいなと。逆にこういうグループウェアとか使っているからこそ、感じられた部分だったと感じました。

大谷:打ち合わせのときにお話していたのが「情報共有と浸透は違う」と。これは神コメントだな、と思います。

(一同笑)

杉山:今は、withコロナの状態では「共有」が一番メインです。それと「周知」ですね。でも本来の私たちがやりたかったのは、それを1年後、2年後にも残すということで。それ自体が頭に入る、もしくは体で動かせる、ベクトルが一緒になるっていうほうの「浸透」にも、役に立つのではないかなと。

「ログ」という言葉があります。要は、過去に振り返って履歴を見られるのは、普通の会話ではできないことなので。少し怖さもありますが、うまく使っていきたいな、と思っています。

篠田:「このときのオペレーションどうしたっけ?」とか、そういう振り返りということですね。

杉山:また、ルールとして「この時期にこういうオペレーションしました」ということもそうですし。例えば今日(イベント当日は大雨)少しもし停電が起きたときに「こういうことがあったからこの対応しました」というのを、履歴に残しておく。そうすると次に停電があったときに参考にして同じような対応ができると。

一番やりたいのは、季節の花が咲くタイミングはだいたい1年に1回しかないので、毎回「この花何だっけ?」という話になっていますが、それをなんとか避けるために履歴を残す。いつでも振り返れるという環境に持っていきたいと思ってます。

大谷:ありがとうございます。

篠田:アンジェラックスさんにもひと言、今の「離れた中でもチームワークが良くなったと実感した瞬間」というところを教えていただけますか。

大杉:シンプルに言いますと、東京のスタッフは休んで、長野のスタッフは働いている中で、長野から「東京のぶんまで稼ぎます」と言ってくれて、東京の人は「休んでいたぶん、復帰した際には長野のぶんまで稼ぎます」と言ってくれたっていう時には、すごく実感しました。

大谷:チームワークですね。

篠田:そうですね。ありがとうございます。いくつかほかにも質問はいただいていますが、そろそろお時間ですね。

では御二方にお話をおうかがいするのは、ここまでとさせていただきたいと思います。イビサさん、どうでしたか?

大谷:実際「会えなくても仕事が進む」と言ったけど「本当に進むんだな」って思いまして。やはりビジネスチャットで、ほかの人が何やってるのか可視化でき、ふだん当たり前のようにやってることができなくなった状態で、できるようになるということに、可能性を感じましたね。

篠田:ある意味で「使わざるを得ない環境だったことで一気に進んだ」っておっしゃる経営者の方は、最近多くて。そういったところでも差が出てくる中で、先行事例として非常に参考になるお話だったのではないかなと思いました。

篠田:ではみなさま、ご視聴いただきましてありがとうございます。LINE WORKSでは、新型コロナウイルス感染の影響を受けまして、現在フリープランの導入相談・セットアップ支援というところも無料で行なっております。LINE WORKSの始め方、使い方に特化したウェビナー、そしてユーザーコミュニティの情報も掲載しておりますので、サイトでチェックいただければと思います。

それでは『TECH.ASCII.jp』大谷イビサ編集長とともにお送りしてまいりました本日の配信、ここまでとさせていただきます。みなさん、ありがとうございました。またのご参加、お待ちしております。