「肩書き」は自分のためにあるものではない

寺口浩大氏(以下、寺口):じゃあ、行きたい会社からやりたいことにフォーカスしていった方がいいのかもしれないですね。そういう意味では、竹本さんは今、マーケターですよね。

竹本萌瑛子氏(以下、竹本):本業の方はそうですね。

寺口:そうですよね。個人的にも(たけもこさんの)Twitterの投稿を見ていたら、マーケティングに興味がありそうな感情をすごく感じたんですけど。やっぱり今、マーケティングって興味あるんですか?

竹本:興味はありましたね。興味を持ち始めたのは大学の時で。マーケティングって、もう広すぎてよくわからないじゃないですか。

寺口:確かに確かに(笑)。

くつざわ氏(以下、くつざわ):めちゃくちゃ広いですよね。

竹本:「マーケターになりたいです」と言っても、結局何がしたいのか、ふわっとしている子もけっこういたり。私は何かを伝えることが大学の時からずっと好きだったので、伝えることはマーケティングの1つの段階、フェーズ(だと思うんです)。

「何かをつくって伝える」というところの「伝える」に私は興味があったので。それをマーケティングと呼ぶのであれば、大学の時から興味がありました。

寺口:確かになぁ。今の話って、僕もすごく共感するところがあって。くつざわさんもたぶんそうだと思うんですけど、さっき自己紹介で困ったじゃないですか。

くつざわ:そうなんですよね。めちゃくちゃ困りました。

寺口:なので、職種とかマーケターとか、クリエイターであったり、タレントであったりという、もともとあった言葉が今、僕の周りでもいろんな活動をしている方が「えっと……」となるんですよ。「マーケターなのかな?」という。

くつざわ:なのかな? ってなりますよね(笑)。

竹本:なりますね。

寺口:そうそうそう(笑)。もしかしたらもう時代が変わりすぎて、新しい肩書きをつくっていかないといけないのかもしれないですよね。

竹本:私すごく思うんですけど、肩書きって人のためにあるなと思っていて。こういう説明のためにあるものであって、自分を表すものではないなといつも思いますね。

田中研之輔氏(以下、田中):いい言葉。

「何者かになりたい」人々

寺口:確かにそうですよね。ただ、やっぱり一方で「何者かになりたい」というのが、けっこう現代のキーワードになっているので。「マーケティングがしたい」よりも「マーケターになりたい」とか「コンサルティングがしたい」よりも「コンサルタントになりたい」とか。

実は、リアルでは「何者」から「こと」に変わっていっているんですけど。逆にキャリアのイメージが湧くときって、けっこう「こと」から「何者」に変わっていっているなと。これはねじれだなと思うんですけど、その辺りはどう思われますか? くつざわさんって、それは……難しい質問を振っちゃったね(笑)。

くつざわ:どう思われますか(笑)。なるほど。でもやっぱり、質問をいただいている中で「好きなことをやるには」とか「こういうことをしたいんです」「こういう人になりたいんです」みたいな。「そのためにはどうすればいいですか?」という質問をいただくんですけど。

前置きとして「自分の中で、くつざわさんの働き方が理想で」みたいなことを送ってくださる方もすごくいるんですね。となるとそういう方たち、フォロワーさんの中では、たぶん私が何者かに見えているということなんですよ。

寺口:そうですよね。

くつざわ:でも、自分の中ではぜんぜんやりたいこともできてないし、私は本当にただ一時期バズってフォロワーが増えただけの、フリーランスというかたちなので。自分の中では、ぜんぜん何者でもないんですよね。ただ、周りから見て何者かという立ち位置にいるだけであって。

自分の中での肩書きってやっぱりつくるのが難しいし、つくる必要もとくにないなと思っていて。肩書きとして「マーケターをやっています」とか「ライターもやっています」と提示するのは、こういうイベントであったり、肩書きを表示しないといけない場面になった時に表示しているものだけなので。

やっぱり、無理に肩書きや領域に縛られすぎないでやっていった方が、今後は働きやすい環境になっていくのかなと思いますね。

寺口:なるほどなぁ。最終的に、その世間が呼んだものが結果として肩書きになっていくということですかね。

くつざわ:そうなんですよね。

寺口:なるほどなぁ。ありがとうございます。みなさんがおっしゃっていることは、たぶん1つのメッセージで、肩書きを目指すよりは、「こと」を探求していって、結果的に周りが何者かと言うんだろうなというところになりました。ありがとうございます。今の話はもともと入っていなかったんですけど(笑)。

(一同笑)

くつざわ:そうなんだ(笑)。

寺口:そうなんです(笑)。もともと入っていなかった。

「組織内キャリア」が神話だと気付き始めた、若い世代

田中:キャリア論の視点から補足しておくと、その組織内キャリアというのが今の話で。我々は大学を出て、どこかの企業にいくじゃないですか。そしたら「その中の人」というふうに洗脳されていくわけ。だから組織の中のキャリアや肩書きを背負って生きていく。

終身雇用の時は、退職するまでそれを背負って、この会社の部長でした、終わり。それで地域に行ったらネットワークがない、ということが問題だったんだけど。この「組織内キャリア」が神話だったということに、今の世代は気づき始めたんですよ。

だから、感覚的にわかっている人たちは動き出していて。肩書きなんかいらないし、自分たちのやりたいことを突き詰めていくと、組織は活躍する場所であって、別に我々を囚われ人にする檻じゃないということですよね。

寺口:なるほどなぁ。おもしろいです。僕もはじめての転職の時に、キャリアアドバイザーの方に「会社で出世したいんですか? 社会で出世したいんですか?」と聞かれて「社会です」と言いましたね。やっぱり(笑)。そうですよね。

田中:そうそう、そういう時代よ。

理想の働き方ってどんなもの?

寺口:なるほどなぁ。ありがとうございます。ちょっと言葉遊びみたいになっちゃいましたけど。本編に戻しましょうか。理想のワークスタイルを見つけようということなんですけれども、みなさんご自身のお話を聞いていきたいなと思っていて。

「みなさんの理想の働き方ってどんなものですか?」と聞かれたら、言語化できますか? くつざわさん、どうですか。

くつざわ:理想の働き方ですか? うーん、そうですね。私は一応フリーとして企業と業務提携というかたちで仕事をしたことはありますけど、いち社会人としては、やっぱりぜんぜん経験が少ないので。まだどっちがいいとか比べようがないんですね。

だから「これがいいよ」とか「あれがいいよ」という説明は、まったくできる立場じゃないんですよ。ただ、私の今のフリーランスという働き方はすごく好きだし、もし今後これが仮に法人化されても、さほど働き方に変化はないと思っています。

寺口:なるほど。ちなみに今ってもうめちゃくちゃ朝早くから、めちゃくちゃ夜遅くまで働いている感じなんですか?

くつざわ:正直、それは日によりますね。もちろん1ヶ月ずっと休みがない日もあれば、3日連続でグダグダできる日もあるという感じなので。それはもう本当フリーランスの特徴で日によるというのと。働き尽くしの時もあれば、ずっと休める日もあるし。本当に、こちら側が企業さんのスケジュールに合わせて動くかたちなので。

寺口:じゃあ花金みたいなものはないということですね。

くつざわ:花金はないですね(笑)。

寺口:花金は自分でつくる?

田中:花金は古いよね(笑)。

寺口:花金って古いですか?

田中:古いよ(笑)。ないない、花金はないでしょ。

竹本:いや、使いますよ(笑)。

くつざわ:使います、使います(笑)。

田中:ある!? 花金に何やるの? 飲むの?

竹本:花金は飲みます。同期とかと(笑)。

田中:あ、じゃあこっち側? 世代的にこっち側?(笑)。

(一同笑)

寺口:そうですよね、やっぱりね(笑)。

田中:つまり土日はオフってことね。

竹本:土日はそれこそ複業を活動に当てたりすることが多いですね。

田中:スイッチを切り替えるときの時間なんですかね。本業から土日の複業に切り替える花金みたいな。

竹本:飲んだ瞬間(笑)。

寺口:切り替える。

田中:昔の花金というのは、要はうわーっと働かされてきて、もうきついねと。「土日は会社から逃げられるね」という、ストレス発散。たぶんうちらより上の世代にそういう人が多かったのね。それで、新橋で飲むみたいな。

寺口:「24時間働けますか」ですね。CMでやっていた時ですよね。

田中:そうそうそう、リゲインのね(笑)。そんな感じだよね、花金はね。でもまだ残っているんだね。

寺口:あのタクシーをお札で呼んでみたいな。

田中:そうそう、チケットでね。

竹本:バブリーだな(笑)。

寺口:ライブ感ありましたね(笑)。

田中:変わんないよもう、変わらないよ(笑)。