2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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松元絢氏(以下、松元):ここから、お二人のパネルディスカッションに入っていきたいと思います。事前に質問をいただいたみなさん、どうもありがとうございました。
(スライドを指しながら)今回はこちらを中心に進めていきたいと思うんですが、チャットに質問をいただけましたら、時間が許す限り、パネルで一緒にお話をしていきたいと思っております。
事前にいただいた質問は、ざっとこんな感じでございます。
澤円氏(以下、澤):はい、はいー。いい質問が出ているねー。
松元:どうですか? 気になるのはありますかね? 自己開示、けっこうみなさん真面目にというか……。
中北朋宏氏(以下、中北):(笑)。
澤:うん、若干の語弊があるな(笑)。
松元:(笑)。いや、なんかやっぱり「自分を出すって、けっこう抵抗があるな」とか、さっきのお話にもありましたけれども「距離感がけっこう難しいな」というのが……。笑いと自己開示って、そもそもちょっと遠いのかなと思うんですね。
澤:いきなり「笑い」っていうのがキーワードになっているけど、「笑わせなければならない」というのは、ぶっちゃけ自殺行為ですからね。
中北:(笑)。
松元:澤さんは前からおっしゃっていますね(笑)。
澤:慣れない人が慣れないことで「笑わせなければならない」と必死の形相でやったら、これは逆効果ですからね。
中北:本当に逆効果ですからね。
澤:失笑ぐらいは出るかもしれないけど。
松元:(笑)。
中北:あくまでも笑いというのはスパイスで、メインディッシュじゃない。あとは、勇気を持つ必要があると思っていて。それは何かと言いますと、まず「普通のことを言う勇気」を持ったほうがいいと思います。
松元:普通のことを言う?
中北:普通のことを言って、ラリーの中で笑いを取ればいいだけなんですよね。みなさんが悩んでいるのは、「質問に対して、いきなり笑いを取りにいく」っていうものじゃないですか。そんな天才はいないですからね。
松元:なるほど。
中北:5回とか3回のラリーの中で笑いを作ればいいだけなので、そんなに考えすぎずに……。
松元:バイクの話にも近い感じですかね。
中北:バイク?
松元:バイクの話。ちょっとここでは言えない……。中北さんがされていた話です。
中北:あー、そうですね! 笑いというのは、転がっていくということですね。
松元:あの法則は本にもありましたっけ?
中北:そうですね。笑いというのは雪だるまみたいに大きくなっていくものなので、基本的には最初に笑いを取るのは、「くすっ」だけでいいんです。もしくは、(最初に笑いを取るのは)人の口角がちょっと上がるぐらいしか、そもそも構造的に不可能であるということですね。それに近いと思います。
松元:そのあたりについて、詳しくは澤さんと中北さんの本を読んでいただくと書いてあるかと思います。
松元:さっそくパネルディスカッションに入っていきたいんですけど、スライドの上の段の、左から3つ(『距離感によってどう変えたら良い?』『どんなタイミングが良い?』『TPOによって変えた方が良い?』)は、ちょっと似ているなと思っています。
澤:そうですね。距離感、タイミング、TPO。まずは、本当に最初なんだけど、パッと笑顔が作れるかどうか。スッと……。顔を見るなり、いきなり大爆笑したら相手はすごく嫌な気分になるけど。
松元:(笑)。
澤:要は「微笑む」というやつね。ニコッとする。それで、「私はあなたに敵意がないですよ」と示す。アメリカ人などは、そうしないと下手すると撃ち殺されるというので、たたき込まれています。これは冗談抜きでね。防衛の策として、ニッと口角を上げる。そういうトレーニングも、どうやら受けるらしいんですよ。
中北:えー!?
澤:これは又聞きなので、情報ソースはいい加減です。ただ、僕もアメリカへ出張に行ったときって、向こうのエンジニアは必ず口角をニッと上げますからね。「私はあなたに敵意がないよ」という挨拶をしなきゃいけない。
なんでかと言うと、価値観がすごく違う人たちが集まっている国だからです。ニコッと笑うことによって、とりあえず最初のハードルを下げる。だから、まずは笑顔という表情を見せることで、最初に「私はあなたに敵意がない」という自己開示を行なうわけですね。これはどんなタイミングでも最初だし、TPOによってもこれは……。
正直、笑顔の質というか、レベル感みたいなものは若干調整したほうがいいかもしれないけれども、どんなTPOでもまずは笑顔でニコッと挨拶。これについて、僕は「笑顔をギブする」と考えているんだけど、それができるかどうかはすごく重要かなと思いますね。
松元:確かに。段階を踏む上でというか、土台を作る上ですごくいいということですね。
澤:そうそう。
松元:確かに。中北さん、他にありますか?
中北:僕もまったく同じで、最初は笑顔を作るということですね。「誰から?」じゃなくて、まず「自分から」笑顔を作るということです。繰り返しですが、感情というのは伝播するので……。笑顔で話しかけてきたときに鬼の形相をする人って、たぶんいかれているじゃないですか。
澤:(笑)。
中北:たぶんもう、その時点でスクリーニングができるというか……。笑顔で話すというのは、すごく重要だと思いますね。
松元:確かにわかります。私もビジネスマナーを教えたりすると、やっぱり「標準装備」とかってね。そうすると、向こうも心を開いてくれます。
中北:そうですね。澤さんが言ったように、まさに笑顔がそもそも自己開示の感情の1つ。表情に出ているというのが、まさにそうだと思っています。それもやっぱり重要ですよね。
澤:赤ちゃんだって笑うしね。だからこれは本能的に安心しているとか、敵意がないというのが、もう笑顔というところに集約されるんです。でも、笑顔というのは筋トレが必要なんですよね。
松元:確かに。
澤:よく言うことですが、少なくとも僕の知る限りにおいて、首から上って16個の表情筋があるんですよね。(頬を指しながら)細かい、こういうところも筋肉がついていて、その筋肉は常に重力にあらがわないといけないわけですよ。要するに筋トレしておかないと、力が衰えてどんどん筋肉が下がっていくわけですよね。
だから、僕がよく「満員電車に乗っているおっさんたちの顔がなんか似通ってくる」と言っているのは、あの人たちは笑顔を忘れちゃっているからなんですよね。
ニコッて笑顔を作る筋肉を忘れているからほっぺたが下がってきて、目尻が下がってきて、だんだん全体が重力にあらがえない状態になる。やっぱり筋肉を鍛えておけって話ですよね。
松元:確かに。
中北:本当に笑顔の練習ってすごく重要です。僕は笑いを教えて、お伝えしている立場なので、コミュニケーションがうまく円滑に取れていない会社に笑顔の訓練をしに行くんです。そこに、ある人が来ました。髪の毛が澤さんより長くて、膝ぐらいある男性がいらっしゃったんです。
その方は、ふだんもうぜんぜんしゃべらないそうで、「ちょっと自己紹介をしてください」と言っても、声もちっちゃくて、ぜんぜん何を言っているかわからないんです。
うちのワークの中に、表情筋を鍛えるために「爆笑してください」というワークがあるんですよ。その方の笑い声ですが、最初にどんな声で笑ったのかと言うと、「ヒャーッハハハハーッ!」って笑ったんです。
松元:(中北氏のモノマネで動画の音が)割れている(笑)。
中北:ふだん笑ってなくて、もう、ネジが取れちゃったんですよね。
澤:(笑)。
中北:それぐらい、やっぱりずれる。
松元:「運動会で足がつっちゃうお父さん」みたいな感じですね。
中北:そう、そう。ふだん笑っていないとネジがぶっ飛んでしまうので、ふだんから笑うことが大事だと思うんですよ。
松元:この「笑顔で土台を作る」というのはすごく納得なんですけど、どのタイミングぐらいから「自己開示を始めてもいい」という関係になれると判断したらいいんですかね? この辺はどうですか?
澤:これはやっぱり、お互いに「ジャブ」を打ち合う必要がありますよね。
松元:ジャブ。ああ、なるほど。
澤:『人前でかっこつけてしまうことはある?』とか、『開示しすぎて引かれたことはある?』という質問ですが、格闘技をやっている人だったらわかるかもしれないけど、これは要するに最初から「必殺技」をあまり出さないってことなんですよ。
必殺技と言うか、大技だね。どんな格闘技、どんな競技でもそうかな。最初からフルパワーというのは奇襲みたいなもので、あんまりないんですね。なぜかと言うと、リスクが高すぎるからなんですよ。
なので、まずは組み立てることがすごく大事ですよね。組み立てるには、当たり前ですけれども、共通項を探していくことがすごく重要です。共通理解ができるような言葉を探すのが、まずはすごく大事かなと思いますね。
松元:共通理解を探す。
中北:僕もそう思います。タイミングもそうですけど、まずは前提として恥ずかしさとかそういう話の前に、ジャブという話ですね。そもそも、自己開示して1回で信頼獲得が100パーセントに上がることも、絶対にないと思っています。1回で終わらないし、失敗もほぼないという感じですね。「おうかがいを立てる」ということだと思っています。
中北:距離感みたいな話で言うと、「じゃあ、どういうふうに距離感を測っていくのか?」という1個の基準として僕がよくやるのは、「相手の名前の呼び方を変えていく」という手法です。
それが何かと言うと、例えば最初は「澤さん」と呼んでいるところから、次に「円さん」と呼び始める。「ここまでは大丈夫だな」と確認する。そして思い切って、最後は「兄さん」と呼ぶんです。「兄さん」と呼べたら、だいたい大丈夫。そういうふうに、距離をどう詰めていくかという基準を作ったりしていますね。
澤:なるほど。最初は「澤さん」で、次に「おい、澤」って言うのかと思ったら、それはさすがにないわね。
松元:(笑)。
中北:それは、ただの失礼なやつですね(笑)。
澤:うん(笑)。「おい」とか、そうじゃない。
中北:距離を詰める型、「物差し」を自分の中で持っているのが重要なのかもしれない。
澤:それは大事だね。
松元:確かに。「感想でちょっとため口を挟む」とかね。相手に話しかけるときだけじゃなくて、そういうこともやると、だんだん詰まっていくのかな。だから、距離が詰まってから自己開示するのが大事ということですね。
澤:『恥ずかしさを乗り越えるためには?』という質問もそうなんですけど、要するにそれも含めて自己開示しちゃえばいいと思うんですね。
松元:うん、うん。
澤:「私は恥ずかしいんです」とか、『人前でかっこつけてしまうことはある?』という質問もそう。人前でかっこつけてしまうのも、「ついつい、かっこつけたくなるんですよ」と口に出すのは、十分な自己開示だと思うんですよね。
中北:そうですね。
澤:それをめちゃくちゃ卑下する必要もないし、さっき言ったように、自分の中でそれを受け入れて、開示すればいい。それだけの話ですよね。
中北:僕もやっぱり、人前でめちゃくちゃかっこつけちゃう癖があるんですよ。そのときには、自己認知して、「かっこつけて、すみません」って謝るようにしていますね。
澤:(笑)。
中北:いや、かっこつけたのって恥ずかしいじゃないですか。そう思うんです。芸人さんで言う「イタい」という言葉があるんですけど、この「イタい」という言葉が、まさにこういう話なんです。
「イタくない人」は、例えば「彼女いるの?」って聞いたら「いません」と言う。「イタい人」は「今は、いません」って、ちょっとブレーキがかかっているんですよ。
澤:(笑)。
中北:「『今は』はいらんやん!」みたいな(笑)。そういう「かっこつけ」というのが、けっこうあると思っています。そういうのは、「かっこつけて、すみません」って謝ります。
松元:それに気づいたときに言えばいいんですね。確かに、いいですね。
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