2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
レクチャータイム② 澤円氏 「なぜ自己開示が必要なのか ~仕事やキャリアとの恐ろしく密接な関係について~」(全1記事)
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澤円氏:よろしくお願いします。今日は趣を変えて、ホワイトボード機能を使いながらお話をしようと思うんですけれども。自己開示、自分のことを開示していくというそのままの話ですけれども。
「じゃあ何を開示するのか?」という話からいくと、まず自分というものは2つあると僕は思っているんですね。1つが「自分の情報」ですね。もう1つが「自分の状態」。これが自己開示していくときの要素になりうるのかなと思っています。
情報なんですけど、とくに、例えば転職や就職活動をする時に「自己開示をしましょう」と言うと、ついついこっちに行きたくなるわけですね。例えば肩書きであったり、何かの賞を取ったという「情報」ですね。確かにこれは、正しく伝えることによって、自分の価値を相手に伝えることができると言えばできるんですけど。
まず、肩書きや賞というものは、端的に言うと出来事なんですよね。ちょっとよくわからないかもしれないですけど、他者から与えられた1つのマークです。ですので、肩書き……部長というのは昇格の会議などが行なわれて、役職を与えられるわけですね。出来事なんです。賞を取った。それはもちろんすごく誇りに思っていいのだけれども、これも出来事なんですよ。わかりますかね?
これらを「正しい情報として相手に渡す」というところを徹底するんだったら、それはそれでありなんですけど。
怖いのはここからですね。ここ(肩書き・賞)から、こういうもの(見せたい自分)がささやいてくる可能性があるんですよ。見せたい自分。あるいは「こう見られたい」という欲望ですね。いわゆる自己承認欲求というものです。
これが強くなりすぎると、どうしても盛りたくなるんですね。じゃあ、肩書きとか賞などを盛るのはどういうことだと思います? 端的に言うと、学歴詐称とか職歴詐称なんですよ。早い話が、盛りたい気持ちがウソにつながっちゃう可能性があるんですね。これが怖いんですよ。
例えば就職活動をしていて、「とにかくここに入りたい、入らなければならない」と思いすぎてしまって、自分の中でウソをつくハードルが下がってしまうことがあります。どうなりますかね? 信用を失うんですよ。これって絶対にやっちゃいけないことなんですよね。
結局のところ、自分を偽って信用を落とすことは誰も得をしていないし、人生にプラスになることが1ミリもないんですね。なので、「とにかく自分の情報を伝えることが自己開示だ」と思いすぎてしまうのはやばいよ、という話なんですね。
ましてやそれが過去の話、学歴なんかそうですよね。「どこそこの大学を出ました」というのは、もう起きた出来事です。過去の話なんですよ。
「現在の私は、この会社でこういうポジションにいます」というのを盛ったところで、ただのウソですよねと。ばれやすいということですよね。ですので、過去というのは事実しか言っちゃだめよと。現在もそうですけれども。
この現在というキーワードで話をするんだったら、「情報」にこだわるよりも、僕は「状態」の話をしたほうがいいと思っています。
どういうことかと言うと、例えばなんですけど、気分や機嫌というものですね。これは「状態」じゃないですか。現在の自分の状態を開示することは、大いにけっこうだと僕は思います。
例えば、今オンラインでミーティングするような機会が多いですよね。在宅勤務になったりして、オンラインでやり取りをすると。さっきも参加者の方がおっしゃっていましたけれども、「今、子どもが後ろで走っているのでごめんなさいね、カメラオンにできないんです」とおっしゃっていました。
腹が立ちますかね? たぶん誰も気にしていないと思うんですよね。「ああそうなんですね。元気がよくていいですね」ぐらいのものじゃないですか。そういうことなんです。
その状態をもっとオープンにし合えるようにするのが、実は自己開示のプラス作用の1つなんですね。だって仕方がないじゃないですか。オンラインで自宅でやってるというのであれば、当然お子さんがが後ろを走り回っているとか、猫が飛び回っているというのは、起きてしかるべき状態なわけですよ。
それについて「こういう状態なんです」と開示することは、むしろ親しみが持ちやすくなるわけですよね。ですので、現在の自分の話をするのだったら、「情報」じゃなくて「状態」の話をしたほうが、僕はベターなんじゃないかなと思います。
ウソはダメですけど、状態は大いにけっこうなわけですね。でも、ときどきいますよね。「悪いけど仕事中なんだから、子どもとかペットとか映さないでくれる?」とか言う人も中にはいます。
「そういう人たちは江戸川でウナギにでも食われて死んでしまえ」とかまでは言いません。別にそんなところまで言いませんけれども、ただ気にしなきゃいけないことは何かと言うと、その人が「どういう意味で言っているか」なんですね。
ここにちょっと1つ、キーワードがあるんですけど。まず「私はどうしても子どもの声が嫌いなんです」ということだったら、僕はまだOKだと思うんですよ。その人の好き嫌いの話だったら。好きと嫌いは自己開示になるんですね。
ただし「私はそれが嫌いなんです」と言う、嫌いの自己開示というのはネガティブに振れる可能性がやっぱり大きいですよね。だから、どちらかと言えば……やらなきゃいけないということじゃないです。でも、やっぱり好きの方が、結果的にはいいことが起きやすいですね。
さっき言った子どもが後ろを走り回っているということに対して、嫌だと言った場合、その価値観がこれ(正しいか間違っているか)だった場合。「仕事中に子どもがいるなんていうのは正しいことじゃない」というのはその人の価値観であり、押し付け。
価値観の押し付けは、残念ながら自己開示としてはあまりいい手じゃないですよね。価値観を押し付けて賛同を得られることはほとんどありませんから。そう考えると、これはよろしくないかなと思うわけです。
ですので、好き嫌いはまだいいです。あるいは機嫌がいい悪いというのを、「今日は機嫌悪いんだよ」というのは、ぶっちゃけこれはありだと思うんですよ。「機嫌が悪いんだから、もう何かおいしいものでも食べて寝ちゃったらどうですか」というアドバイスもできるんですね。ですので、機嫌を伝えることも僕はぜんぜんありかなと思っています。
時系列として過去と現在の話をしました。1つ抜けていますよね、未来の話です。これは実は、非常に重要なキーワードになります。どういうことかと言うと、「私はこのようになりたい」「私はこのようにありたい」「今は違うけれども、こういうふうに人生を進んでいきたい」という自己開示。
「私はこうありたい」「今この状態である」という人もいます。「私はもうありたい自分でいます」「未来永劫、私はありたい自分で居続けたいんです」、大いにけっこうなんですね。こういう自己開示ができることが、これからの世の中において非常に必要になってきます。
なぜ必要なのか。今まで、とくに資本主義社会を中心にして世界はどういうふうに運営されていたかというと、このキーワード(組織)なんですね。まず組織があり、それに役割が付いて、ここ(役割の部分)に人がいたんです。
要するに組織というのは、ある仕組みです。その仕組みを運営していく上で役割を与えられた人が、例えば営業をやったり、マーケティングをやったり、経理をやったりというようなかたち。これが役割なんですよね。
それを仕事にして組織に貢献し、その組織が何らかのビジネスの価値を生んで世の中に貢献して、場合によってはそれでお金を得るようになっていったと。これが仕組みになっていました。
今まではそうだったんですけど、コロナ以前から綻びはぼちぼち見えていて、もう見事にだいぶ変わっているんですね。世の中はどんどんコミュニティ化していっているんですよ。これがよく言われることです。
コミュニティは組織と違って、求められるのは役割じゃないんですね。コミュニティというのは、場合によっては趣味の集まりであったり、何らかのボランティアの集まりだったりするわけですよね。
こういったコミュニティは、組織とは違って、役割というものを強く求めるという性格ではありません。どちらかというと、ここではもう存在していればいいわけですよ。コミュニティに所属して存在しているだけで、本来はもうOKなんですよね。
さらにここでは、存在するだけではなくて個性を発揮できる場所なんですね。どんどん個性を出すという。何となくわかりますかね。みなさんもコミュニティの中に入っていて、例えばカメラのコミュニティだと、「おっ、そんなの買ったの!?」という感じで、相手が持っているものが違うものを見せると、「あ、いいね!」という話になったりする。
コスプレイヤーのコミュニティなどもけっこう盛んですけれども、それも「いいね! そのコスプレ!」という感じで、個性を褒めあう。これが今日の話にもあった、心理的安全性です。これは鶏と卵なんですけど、心理的安全性が担保されたコミュニティは、非常に活性化します。
そして、これからのビジネスは、このコミュニティを中心にしてどんどん行なわれていくことになりますので、その心理的安全性の中でそれぞれが個性を発揮し、そして大きな力になっていくというのがまさに今求められていることだし、もうすでに実現されていることなんですね。
今までは組織+役割、そこに人を配置するというやり方でどんどん発展してきたのが、どんどんコミュニティ化していきます。コミュニティ化していく中で、最も重要なのはまず心理的安全性で、これは誰かが与えるものではないんです。お互いに与え合うものなんですね。
Give&Giveなんですよ。お互いがGiveをするんです。この精神なんですね。そのためには「私は何々です、そしてこうありたいんです」。これは僕はよくBeingというキーワードでお話をしているんですけども。
ありたい自分。ありたい自分をさらけ出し、それが受け入れられる場所が、みなさんにとって居心地のいいコミュニティです。それを作るのは今、参加されているみなさん自身なんですね。
みなさん自身がどんどん「ありたい自分」を外に出していけば、お互いにそれを出し合えるようになって、心理的安全性が担保されて、そしていい世の中になっていくということになります。
ですので、みなさんはこれから未来の話をずっと考えていただいて、「私はこうありたいんだ」という、この「こうありたい(Being)」ということを念頭において、常に生活していただければいいかなと思います。ということで、私の持ち時間はここまでになります。ありがとうございました。
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