出会う可能性のなかった人に会う機会が生まれる

山下悠一氏(以下、山下):お話ありがとうございました。いくつか質問が来ております。

森口明子氏(以下、森口):はい。対談の途中にチャットの方からいただいていたものがあるので、まずはそちらをご紹介します。

「物理的距離=心理的な距離という前提のゆらぎは強く感じています。一方で、出会いたいと思う相手としか出会わないという人々が増えてしまうのではないかという懸念もあります。私自身は、社会は面倒臭さを含めてあるべき姿だと考えているのですが、ポストコロナの社会において、ダイバーシティの意義は変化するのでしょうか? また、そうした社会を実現するに当たっては、どのようなマインドセットでいたらいいのでしょうか? よろしくお願いします。」

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):今だって、出会いたいと思う相手としか出会わないわけで、出会いたくない上司とも出会わなきゃいけないけど、そこまで人間関係が開かれて誰とでも会えるかというと、そうでもないわけですよね。

逆に言うと、移動生活をすることによって、今までまったく会う機会がない人に出会ってしまうことも起きる。もしくは移動生活じゃなくても、例えば、Zoom飲み会って最近よくやっているでしょ? あの類の中で、例えば100人くらいの会社があったとしたら、Zoom上に飲み会を設定して部屋を10個くらい作るわけです。10個くらいの部屋にそれぞれ5人くらいずつがランダムに入る。

そうすると、会社ではほとんどしゃべったことのない相手と、Zoom飲み会では偶然その部屋で一緒になったことによって、しゃべらなきゃいけなくなってしまう。つまり、アーキテクチャの作り方によっては、日頃出会わない相手と出会わせる仕組みを十分作れるんですよね。

だから、僕はそんなに心配いらないんじゃないかなという。逆に、日頃出会えない、あるいは出会う可能性もなかった人たちと出会えることの方が、テクノロジーの進化として機会が増えるんじゃないかなと思いますね。

ギブアンドテイクや「無償の愛」で接する大切さ

山下:むしろ今、グローバルのカンファレンスもあっちこっちでオンラインでやっていますから、そこにガーッと入っていって、いきなり知らない人とディスカッションできたり。とんでもなく近くなっている。

佐々木:そうなんですよね。ちなみに、初対面の相手とか、あまり親しくない人と会う時に僕が心がけているのは、マウンティングしないこと。

山下:(笑)。

佐々木:あと、与えることですね。ギブアンドテイクという言葉があって、例えば、セミナーやパーティで会っても、やたらと質問攻めにする人がいるわけですよ。もちろん、別に質問攻めにしても構わないんだけど、「今この瞬間、佐々木からいろんなものを奪い取ってやろう」という欲求が前面に出ちゃう人っていて、あまり相手にいい印象を与えないよね。

どちらかというと自分のやっていることを相手に伝えるとかじゃなくて、「佐々木さん、僕もあなたのことが好きですよ」という気持ちや、相手に愛情を伝えることって大事なんじゃないかなという。

「無償の愛」みたいなものは、僕はこの時代にとても大事で、それを人に伝えることが大事。インタビューの時なんかは本当にそうで、こういうドキュメントの対談もそうなんですよね。初めての人と会って、僕が聞き役になって誰かを聞く時に何を心がけているかというと、男女関係なしにその人を愛するんです。

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