日本にはあまりない「寄付の文化」

小笠原治氏(以下、小笠原):ちょっと45分になって質問を受け付ける時間ということなので。

水野:もうそんな時間なんだ。

小笠原:質問のある方、挙手をお願いします。

お、挙手がないということなので(笑)。

(一同笑)

わかりました。じゃあ、Sli.do(での質問)もないのかな? ああ、Sli.doのほうでご意見ですかね。

「意外と首長を集めてNew Norm Consortiumをやったら、これまで言えなかった言いたいことをたくさん言い始めてくれるんじゃないか」という意見が来ていますが。

そうですね。New Normも民間だけじゃなくて、いろんなそういう方々とつながっていくというのもありかもしれないですね。

まあ、このNew Normのような活動の地域版が、さっきの山梨の話とかですよね。東さんも提携しましょう(笑)。

水野:そうですよね。そういうところからどんどん新しい提案が生まれたらいいですよね。

小笠原:そうそう、提案がね。うん。はい。じゃあ、なかったようなので、Twitterも大丈夫かな? 

なんかこういうイベントをやっているときにTwitterを見ると嫌なこと書かれていると、ずーんってなっちゃうから、あんまり見ないようにしてるんですけど(笑)。

(一同笑)

小笠原:お、ふるさと納税を毎回家族でドラフト会議をやっているみたいな人もいるんだ。

水野:ああ、おもしろいですね。

小笠原:家族で決めるっていうのが。うん。

水野祐氏(以下、水野):そうですよね。そういうサイズ感のルール形成というか、そういうのも、すごくおもしろいし。

去年視察に行ったバルセロナでは、街角とかで市民会議を繰り返したりとか、すごくヨーロッパ的なんだけれども、それを全部「デシディム」いう電子プラットフォームにあげて、予算の配分とか、あとは新しいルールについて議論できるプラットフォームを作っていて。それなんか、すごくおもしろいというか。

本当に彼らはそういうことを「民主主義をリプログラミングする」って言い方をして真面目に議論して実行しているんですよね。そして、それは街づくりの一環みたいなかたちでやってる。

小笠原:そういうことですね。

水野:なんかやっぱりそうなんですよね。

東博暢氏(以下、東):やっぱり今のその辺はふるさと納税を考えて、シチズンシップ教育というかシチズンリテラシーってアメリカでもよくあるじゃないですか。

そこでやっぱり幸福度調査、グローバルハピネスレポートで記載されてますけれどもDonation(寄付)の文化って日本はほぼなくて。幸福度が先進国の中でも最低になっているじゃないですか。

あんまり考えないわけですよね。徴収されるものとか、自分で配るものとかDonationするものって、本当に自分で地域のことを考えるリアクションって、なかったと思うんですよ。

今回改めて、東京だったら狭い家に閉じ込められて、実家の広いところだったらな、とかですね。そこを考えるきっかけがあったと思うので。

国民、市民である程度、自らそういう関わりができるんだというところを、一番身近にふるさと納税がありますから。そういうところからやっていったらいいかな、と思うんですけれどもね。

水野:パブリックを問い直すみたいな話ですかね。

小笠原:そうですね。パブリックを問い直すというのは大事ですよね。パブリックって政府や行政だけがやれることではないですし。

New Normのために邪魔な法律

小笠原:さっき、弁護士ドットコムの橋詰(卓司)さんが手を上げてくださっていたんですが、話がおもしろくてそのまま続けちゃいました。ごめんなさい(笑)。

橋詰さん、何かあればどうぞ。

橋詰卓司氏(以下、橋詰):こんばんは。橋詰です。

一同:こんばんは。

橋詰:水野先生に笑われました(笑)。

水野:いや、いや。ありがとうございます。

橋詰:押印の話に関連してなんですけれども、東さんと水野さんが最近関わられている仕事で「さすがにこの法律はNew Normのためには邪魔なので消してほしい」みたいなのはありますか? 

(一同笑)

橋詰:なんでかというと、ご存知かもしれませんけれども、私どもはクラウドサインというものをやってまして。考えたんですけど、押印の法律というのは、電子署名法だなと。電子署名法が押印を認めているんですけれども、変な認め方をしているので、むしろないほうがいいと。

「あとはご自由に」という状態にしていただいたら、その中で一番いいサービスとかいいやり方。電子的な合意の仕方をユーザーに選んでいただけるので。

電子署名法で中途半端にこういう方法だったら推定効という、法律的な効果を認めるよと中途半端に書いているので、もうやめてくれというのを規制改革推進会議に、なくしてくれというのを言ったりしました。

そういうことでかなり法律そのものを消してしまえという。消費者保護法を消すとかはちょっと乱暴なんですけど、なんか中途半端な、余計なお節介法律みたいなのがあったら、消したらNew Normが生まれるんじゃないかなというのはちょっと思ったりしましたということで、そんな質問を考えました。すみません。以上です。

小笠原:消してほしい法律。

水野:(笑)。なんかそういう答えを、色々なところで期待されてる感はありますね。個別でなんかこれやりたいんだけど邪魔な法律があるとか、ここがハードルになるみたいなのって、出てくるんだけど、やっぱり理由も……。電子署名法3条に関しては私は変えるべきだと思っていますけれども。

だけれども、他の法律、著作権法とか建築基準法、都市計画法、道路法とか、あとは資金決済法でもなんでも……。

橋詰:建築規制とかは私はすみません、ぜんぜん詳しくないんですが、水野先生がやられているところで、こんなもんがなんであるんだという議論があるのかなと思ったり、勝手に想像していました。

水野:でも、だいぶ国交省もがんばって変えたりして、変えられるところは変えられてきている気はしますけどね。

なので、僕はそういう意味ではそんなにその法律のこれを変えるべきとか、この法律で今はターゲットですみたいなのって、実はあんまりなくって。

あるはあるけど、あんまり……。なんというか、出すって感じじゃないという。

橋詰:(笑)。

水野:だけど、どちらかというと、なんか電子署名法もそうなんですけど、なんか法律を変えなきゃハードルになっているんだとか、法律があるからだめなんだとか……。繰り返しになっているんですけど、そういうメンタリティ自体が僕は苦手というか。

だったらクラウドサインさんも戦略上やっていると思いますけど、もう商慣習を先に作っていっちゃおうよと。だから著作権法におけるクリエイティブコモンズみたいな契約でどんどんやっていっちゃおうとか、新しいルールを、民間でもう作っていっちゃおうという考え方のほうがなじみがあるし、もうそれでいいじゃんというふうに。

もちろん電子署名法を改正してよりスムーズに移行できる会社を増やすというやり方は、ある種のナレッジの手法としてあり得るけれども、それはもちろん両輪でやらなきゃいけないんだけれども。

そういう法律がハードルになっているという考え方自体、諦めているという言い方もちょっと変だけれども、そんなふうに考えていますね。ちょっと伝わったかどうかはわからないですけど。

敗戦以降、法律は増え続けている

小笠原:今日ずっと聞いてきて、水野さんってきっと、いろんなことを達観しているんですね。

水野:そうですか? わからないですけど。

小笠原:その上で、これはきっと…。

水野:実際にできないことはそんなにないという感じ。

:この話って、国家戦略特区とかいろんな話があるときから続いている議論じゃないですか。レギュラトリーサンドボックスとかグレーゾーン解消制度とか、今回のスーパーシティ法とか。私、社会実装見据えて色々と新たな取り組みをレギュラトリーサンドボックスに投げ込んでやろうとしたことがあったのですが、意外と各省庁と議論してると解釈でできたとかあるわけです。

グレーゾーンでできたりとか。できるんですよ。ある種、民間の人が言いがちなのが「この法律はだめだ」とか「これは邪魔だ」と「規制改革をやってくれ」と言うんですが。

一方で国の立場からしたら「じゃあどういうことをやりたいので、何の法律のどの項目、何条何項にかかるんですか?」と言った瞬間に、民間はフリーズする。簡単に言うと抽象論で空中戦をずっとやっているんですよ。

小笠原:よく見かけますね。

:お互い「何をやりたいんですか?」みたいな話が、延々と続いているでしょ。

小笠原:すごい今の話、納得感があるなと、お二人の話を聞いていたんですけれども。とはいえ敗戦以降、法律って増え続けているんですよね? きっと。

橋詰:そうですよね。消すという活動はないですよね。

水野:うん。

小笠原:減ってないですよね。

水野:廃法にするインセンティブが政治家にも官僚にもないからですね。

:そう、そう。

水野:規制改革は票にならないとか、霞が関ではよくそういう言われ方をされますけど。

小笠原:まあ基本的には「複雑になりすぎたのでシンプルにしよう」は、あってもいいのかなという気がしているんですね。

水野:だから法律を作る法律、というか、メタルールというか。例えばトランプ政権がオバマのときにたくさんできた法律を緩和しようと、1つ新しいルールを作るには、2つルールを廃法にしなきゃいけないという、そういうメタルールを作ったりしているんですが。

そういう規制の仕分け論みたいなところで、そういうメタルールみたいなものも必要だったりするとは私も思います。それは私もすごく賛成だし。規制の仕分けですね。

あとはスーパーシティも実は、各国から所管している省庁をすっ飛ばして法改正できるみたいなルールを実は狙っていたらしいんですけど、やはり難しいという流れになったという経緯もあったりとか。

なんか、やっぱりそういうことを考えていたりとか、そういう所轄の法律、省庁が保管しているメタルールというか暗黙のルールとか、これは暗黙のルールではなくてちゃんと法律があったりしますけど。内閣法とか。

そういったところを、メタルールを変えていくというやり方はすごくありだなと思いつつ、でも超大変という(笑)。

日本の法律は、非常事態の時ややこしい

小笠原:ずっと聞いていて、2つアプローチがあるなと思っていて。

水野さんが本にも書かれていますけれども、クリエイティビティ高く解釈していくことで、やってやれないことってあんまりないはずだということ、もう一つは全体として複雑化してきているので、さっきの認知限界じゃないですけど、法律をすべて捉えて生きていくなといっても無理なので、基本的にいろいろやりやすくするとか、今ならこの法律がなくても十分国民の生活が担保されているとか、そういう仕分けというのはものすごく大事だなと。

ただ、それを些末なところだけでやると、ものすごくしんどくて長くて難しいものになっていくので。

:すごく水野さんに共感したのが、メタ的な思想がないというのと、もう1つあるのがすごく抽象的なことが多いという、解釈によってなんとでも読めると。

あるいは特にこういう非常事態のとき、すごくややこしくて。

特に海外ってそもそも戦争をしているじゃないですか。だから有事法で具体的な方法を細かくオペレーション的に記載している。あれはコマンドアンドコントロールを効かすために。

小笠原:(笑)。

水野:そこは難しいところもありますけれどね。抽象的に書いているからこそ、柔軟性が高いみたいなこともあるから。

:ぶつかることもあるし。

水野:そこは本当に両極端だったりするんですけれども、日本人はそれが、どっちにも取れる解釈というのはなんかネガティブに働きやすい、みたいなところがあるのかもしれない。

:だからそういう意味では先ほど申し上げた、デュアルモードソサエティって、デュアルモードなんですよね。国民の安心・健康を優先するモードと経済優先のモード。基礎自治体と中央政府の間にもデュアルモードの考え方がないので、こういう非常時と言われるときにバタバタする。

小笠原:日本はそうですよね。戦争を放棄しているので。戦争という有事があるわけがないんですよね。

水野:(笑)。確かに日本でデュアルユースと言った瞬間に、なんかおかしくなるみたいな話がありますよね。

:そうなんですよ。だからパンデミックは想定していない、ここまでは想定していなかったので。

小笠原:こういう、さっきの1つ前のセッションで言うと、モビリティの発達速度が著しく伸びたことで、パンデミックの可能性がものすごく上がったので、新しく考え直すべき、これも有事と捉えるべきみたいな議論があってもいいのかもしれないですしね。

水野:なるほど。

小笠原:時間になってしまったので残念ですが、橋詰さんの質問、もうちょっと前に聞いておけば、この話もっとできたなと思って。

水野:すみませんでした。

小笠原:もったいないことをしたと思いながら。すみません。ありがとうございました。

橋詰:ありがとうございました。

小笠原:前回30分じゃぜんぜん短いというご意見をいただいたので、1時間にしてみたんですが、僕的にはもっと話したいことがいっぱいあるなと。

かといって次90分とかやるとぶっ倒れるので、また来月の月末ぐらいに予定していますので、よかったら見ていただけたらと思います。お二人ともありがとうございました。

一同:ありがとうございました。