若手や中途採用社員との週1回の「ふりかえり」

倉貫義人氏(以下、倉貫):もう1個、僕らは「ふりかえり」というのを会社でやっていて。これは特に若手とか、中途採用したばかりの人が会社のカルチャーをまだわからなかったり、オンボーディングに時間がかかるところがあるので、先輩や経営陣と振り返りの時間と言って、週に1回、1週間の仕事の振り返りを共有するんですけど。

中身は形式ばって話すというよりはわりと非公式な、本当に雑談に近いものをしているということですね。そこはわりと時間を取っている。ふだんから話をするのと、週に1回ちゃんと時間を取るというのを両方やっていますね。

山田理氏(以下、山田):へえー。話すテーマを決めているんですか? それとも本当に雑談なんですか? 「最近どうなんですか」とか、もうちょっと1on1みたいな感じで進捗や仕事の話を確認していったりするんですか。

倉貫:振り返りはわりと1on1でやるんですけれども、具体的な仕事の進捗の話はあまりしない。だけど、仕事の進め方はどうだったかという話をします。

山田:なるほど。

倉貫:「今この仕事が遅れているかどうか」という話は進捗ミーティングでやって、その振り返りの中では「やっぱり最近ちょっと進捗が遅れがちだよね。なんでだろうね」という話をしたり、「最近ちょっとこの辺調子いいね」という話をする感じですね。

なので、どちらかというと仕事の進め方の見直しをネタに、結局そこから派生して「実は最近こういうことがあって……。まあプライベートでちょっといろいろあったので、進捗に影響ありまして」という話もしてもらえたら、安心もするというか。

山田:どちらかと言ったらモチベーションとか、人間関係のところをそれで拾っていくところが多かったりするイメージですか。

倉貫:そうですね。

“非公式”なコミュニケーションが必要な理由

山田:進捗管理などもそうだし、レポートとかもたぶんきっちりした業務に関するものって、だいたいはちゃんとフォローされているんだけど、さっき言ったように、コミュニケーションの周りを雑談が埋めていっているところって、そこから漏れてくるものとか、報告するラインがちゃんと決まっていないものというか。

やっぱり「何か悩んでる」とか「テンション下がってる」って、いちいち進捗会議で報告しないから。

倉貫:しない(笑)。

西舘聖哉氏(以下、西舘):しないですよね。わかります。

山田:報告しないから、会社でその時間ってないんですよね。

倉貫:ないですよね。

山田:「なんか○○とうまくいっていない」って、飲みに行ったときとか、たばこ吸ってるときとかはあるかもしれないけど。いちいち上司に「○○さんとうまくいっていないんですよね」という報告なんかしてこないから。

そういうところが、人が増えてくると余計にどんどん効いてくるというか。やっぱりチームワークを乱すじゃないけど、チームワークのコストを上げていくような気がします。

倉貫:いや、本当にそうですね。非公式なコミュニケーションがあるから、公式なコミュニケーションも伝わるというか、公式なコミュニケーションだけだと、人間はけっこう伝わらないんですよね。

なので、そこのチャネルを作るのは、けっこう大事なのかなという。山田さんとか、ザツダンは今もされているんですか? 

社員80名との30分の「ザツダン」をスタート

山田:そもそも僕の目的が若干違うかもしれないんですけど。いきなり仲の悪い2つのプロジェクトを1個ガシャンとくっつけて、僕が80人くらいメンバーのいる事業部長になって。そこにはマネジャーがいて、部長の下にリーダーみたいなのがいて、その下に……という3階層ぐらいあるわけですよ。

そこでフィルターがかかって僕のところに報告が来るじゃないですか。一人ひとり、いろんなフィルターをかけてくるんですよね。「すごくうまくいってますよ」とか「やっぱりうちはみんななんかすごく悩んでます」と言ってくるときに、「ほんまかな」というのもあって。

僕はそういう会議で上がってくる報告を見るしかないんだけど、ちょっと不安になって一人ひとり「ほんまかな」というのを自分の目で見てみたいなというのがあって「ザツダン」を始めました。

だから、僕の場合は最終的には自分がレポートラインだけど、現場のマネジャーやリーダーがその間に入ってるから、メンバーは僕に直接レポートする必要はないので、本当に「何か困ってることある?」「なんか悩んでることはある?」とか、もうそれだけですね。

僕の場合は人のところに行って話をすることはあまり得意じゃないし、全員それをやるって大変だし、抜け漏れがあるのもいやだったから、全員のスケジュールを30分押さえて。

倉貫:(笑)。

山田:とりあえず、いきなり事業部長からスケジュールがぽーんと、みんなに入ってくるんですけど。そういう感じで……。

倉貫:最初はみんなちょっとびびりますよね。事業部長からね。

西舘:びびると思います(笑)。

山田:びびる、びびる。役員だし、創業期からずっといて、僕は基本的に強面だし。「またガーッて理さんに詰められるんちゃうか」みたいな。いきなり戦々恐々としながら始まるんですよ。

まあ、30分あって、話も盛り上がらへんかったら、10分でも20分でも切っていいって。とりあえず枠だけ取ってやり始めた感じですね。

大事なのは、社員一人ひとりとの距離感を掴むこと

山田:進捗の話は一切しない。だから僕のは本当に「ザツダン」なんだけれども、まさに鋭い突っ込みというか、カタカナで書いたところは「遊んでるわけちゃうで」という。一応仕事として必要だったから僕はやってるけど、だから漢字で「雑談」とは書けへんねん。だからといって、1on1みたいな進捗管理でもないから。

ただ、うまく話せる子と話せない子がいて、その辺も何周かして思ったのは、それでいいかなと。だから、大事なことは距離感を掴むということ。この子はどんな子で、僕と合うか合わないか。ひょっとしたら困ったときに僕に相談しやすい子なのか、しにくい子なのかということも含めて、距離感だけを持っておく。

「この子は僕に直接しゃべらずに、誰かを経由してしゃべったほうがいいのかも」というところとかも含めて、僕が一人ひとりの距離感や人柄を見ておくところもあって。

だから僕は、毎回ずっと(ザツダンを)やり続けるということをやめて、ある程度の距離感を掴めたら、あとはマネジャーがやればいいという話ですね。大事なのはそういうところと、あとは解像度かな。

例えばAさんのところに行ったときに「なんかある?」と言ったら「いや、大丈夫ですよ。うまくいってますよ」と言って。それでBさんのところに行ったときに「まあま、ぼちぼち」みたいな。

それでCさんのところに行ったら「自分は大丈夫なんだけど、AさんやBさんがなんか最近うまくいってないみたいなんですよね」という話になって。「へー、どんなのがあんの」と言ったら「こうで、こうで……」みたいな。というのをずっと80人やって。

次にまたAさんのところに戻って。「なんか問題ある?」と言ったら「いや、大丈夫ですよ」みたいな。「へー」と言って。それで、「Bくんとかとこのプロジェクト一緒にやったりして、こういうところで問題はないの?」と言ったら「え? それは実は、Bくんのほうが○○で」とかなんかがポコポコ出てきて。

それで、Bくんのところに言ったらまた同じような話が出てきて。今度はどんどんいろんな登場人物が出てくる。結局、僕は全員のところに行くので。それを3周させたら、もう会社の中がすべてわかる。本当にすべてわかると。だから、僕は警察の取り調べってこういうことなのかなと思って。

西舘:(笑)。

ミーティングを削ってでも「ザツダン」をやるべき

山田:グループで犯罪をやっていた人を、一人ひとりを呼んでいったりすると、1個1個出てくるから、それをずっとやっていったら、会社で何が起こっているのかすべてわかる。1回すべてわかるようになったら、あとはフィルターがかかった報告を聞いていても、だいたいなんとかなる。どういうフィルターがかかって来ているのかがわかるようになるので。

これはコストをかけてでも、50人とかやっぱり100人でも、自分が責任者としてあるんだったら、ミーティングを削ってでも、ザツダンは何回転かは絶対したほうがいいと思います。ずっとやる必要はないけど。

倉貫:ずっとやらなくてもいいですよね。

山田:はい。ぜんぜん、大丈夫。

倉貫:1回やっておくと、そこでだいぶ違ってくるという。

山田:本当にそうです。だって後で入れ替わったときは、入れ替わった人とザツダンすればいいだけの話だから。

「ザツダン」はずっとやり続ける必要はない

倉貫:そうですね。そういう意味で言うと、僕らの会社は入社前に面談するので。まだ人数がそんなに多くなくて45人ぐらいなので、入社前に一応全部僕が見ています。そこでまずはなんとなく距離感というか雰囲気を掴んだ上でというのがあって。

やっぱり入社直後の人はちょいちょい振り返りをするんですね。新卒の若い子も振り返りはちょいちょいしていて。年次が深くなっていくほど振り返りの機会が減りますね。7年8年も一緒にやっている人たちとは「わざわざやらなくてもよくわかってるよ」という関係になるので。

山田:そうそう。リアルでやる必要もあまりないし。僕が途中からやめたのは、別に「ザツダンをやめます」と言ったわけじゃなくって、したかったら継続的に時間は取るし、「オンラインでぜんぜんいい」って言うならオンラインでするし。「もう不定期で必要なときだけでいい」と言うんだったら、必要なときにするしということで、だんだん自然消滅的になったりします。

倉貫:ちなみにそれをやり始めたときに、言ってみたら公式のマネジャーたちは、事業部長が中を抜いていくわけじゃないですか。そこの人たちとのコミュニケーションって、山田さんはどうされたのかなって。

山田:その部長もリーダーも、全員とします。部長というか、1つ下の(階層の)百戦錬磨のこの人たちは週1でする、それ以外の人たちとは月1でしたりして、ある程度まとめて報告していって。

「こんなん出てきてるけど知ってる?」「これに対してどう対処してる?」というコミュニケーションを常にずっとしている感じですかね。それも含めてだから。

やっぱり最初僕が「全員とザツダンをする」と言い始めたときに、みんなも忙しいし、「あなたは暇かもしれへんけど……また痛くもない懐を探られてなんか出てきてもやだな」と、やっぱり警戒する。

警戒するけど、そこは何か話させてというのだけ、やっぱりちょっとハードル(がありました)。そこは僕が権限があったこともありましたけど、やりましたね。

「ザツダン」はマネジャー層へのアドバイスにも役立つ

山田:実際にそうやってぽんぽん出していったら、マネジャーを詰めることはもちろんありますけれども。ただ、どちらかと言ったら、こうやってしゃべってやっていくことで彼らも知らないことがあったり、それに対して僕がどう思うかというところも含めたり。

当然のことながら、僕はずっと人を見てきているから、「この子を採用したときにはこんな感じで、こんなことをやりたいと言っていて、こういうコミュニケーションがうまくやれて、こういうフォローをしたほうがいいと思うよ」というアドバイスはマネジャーにしていく。

その辺はあまりマイナスになっていなかったから、続けられたというか許してくれたところがあるんですね。

倉貫:逆に、マネジャーにフィードバックできる中身の具体性も増しますよね。

山田:そう、そう。

倉貫:「どういうマネジメントしたらいいんだ」というフィードバックをするときに、通り一遍のことを言うんじゃなくて「Aさん・Bさん・Cさんはこういう人なのでこういうふうにしたほうがいいよ」という、非常に具体的なアドバイスができるようになることがわかりますよね。

山田:そうですね。ちょっと繰り返しになるかもしれないですけど。ザツダンが絶対(必要だ)という感じになるかもしれないですけど、僕なんかはやっぱり最初に把握するというリアルを……。百聞は一見にしかずだし。事実を見るというところを、マネジャーをする方には必ずおすすめするというところぐらいで。

「コストをかけてずっとザツダンし続けたほうがいいですよ」と言うつもりも本当にないんですけどね。ちょっとザツダンという言葉が、うちの会社の中というか、本を書くと、「ザツダン」「ザツダン」と言われて。「山田さん今でもずっとザツダンしてるんですか」と言われて、いや、そんなことはないと(笑)。

アメリカでも人数が多くなってきたら、ちょっと一通りザツダンしたり、逆にそういうのを向こうのマネジャーの人に、「そういうかたちで拾うといいことがあるよ」というか。

こういうふうにしておくことって、すごく大事だよと伝えていて。あとは、やるかやらないかは各現場に任せている感じですね。