自分が発達障害かどうかを知るための方法

姫野桂氏(以下、姫野):また(コメントが)来ています。

「以前、主治医に『発達障害の傾向がある』と言われたのですが、詳しく検査を受けたことがありません。発達障害の検査について詳しく知りたいです」。

これは、たぶん病院によってもまちまちじゃないですか? 

メンタルドクターSidow氏(以下、Sidow):そうですね。

姫野:でも、WAIS-Ⅲ(16歳~89歳の人に適応される知能検査で、「言語性IQ 」と「動作性IQ」と「全検査IQ」という3種類のIQを測定)を受けるところはかなり多いかも。

Sidow:そうですね。基本的にはたぶん病院に行って、「発達障害かもしれない、ちょっと検査してもらいたいです」と言って、最初に行なうのが、今姫野さんが言ったWAIS-Ⅲという、いわゆる知能検査なんですよね。

知能検査でわかるのはいわゆるIQなんですけど、IQの中にも何個か種類があり、その下位分類というのがあって、自分が得意なこと不得意なことというのがグラフで出るんですね。

それがけっこうバラバラな場合、「すごく記憶力がいいけど、図形を推測するのが苦手だ」というパターンの場合とか、「1つ1つにかなりの差がある」となると、最初は発達障害の疑いになりますね。ただ、それは確定ではないんですよね。

姫野:そうなんですよね。『発達障害グレーゾーン』という私の前著に、そのことはけっこう書いていますね。「ここからここまでが発達障害」という線引きがないので、それで診断されないという人もいるけど、確実に困りごとは抱えているという状態です。

発達障害グレーゾーン (扶桑社新書)

検査だけでは診断することが難しい

Sidow:そうですね。あとはそれぞれの人によって、「ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー)っぽいな」という人にASD用の質問用紙があったり、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)っぽいな」という人にADHD用の質問用紙があったり、そういうのは、ものによってありますね。

姫野:そうなんですよ。

Sidow:ただ、病院によってどれを重視するかというのもありますし、検査だけで決まるものではないです。

姫野:ですよね。

Sidow:いずれにせよ、小さい頃からの話を追って話して、その特性によってどのぐらい自分が困っているのかとか、そういったところが診断の一番の基準になるかなと思います。

姫野:そういえば、私は検査のとき、WAISの他に小さい頃の生い立ちとかもすごく書かされましたね。あとは、親戚とか家族に精神疾患の人がいないかどうかとかもありましたね。

Sidow:やっぱり精神科の診断ですごく大事なのが、小さい頃の様子だったり、その人がふだんどういうことで困っているのかといったことです。

だから初めて精神科に来た人は、だいたいある程度まとまった時間で、それこそ幼少時の話から始まって、いろいろ聞いた上で総合的に判断することが多いですかね。

発達障害の検査は4時間もの長丁場

姫野:そうですね。あとは、カウンセラーさんが発達障害の検査をやるんですよね?

Sidow:そうですね。先ほど言ったように、検査は基本的には心理士さんがやります。

姫野:ですよね。心理士さん。私は相性が合わなかったのか、何なのかわからないですけど、心理士さんってそうなのかな? ずっとポーカーフェイスだったんですよ。それがなんか怖くて、余計に緊張してしまって……。

Sidow:確かになー。検査のときはそうですね。みんな、けっこう冷静にやっているのかもしれないですね。

姫野:しかも、長いじゃないですか。

Sidow:長いです。あれは集中力が持たない人だと、普通より点数が下がっちゃうんじゃないかなって思いますね。

姫野:病院によってはぶっ続けでやるところもあるけど、私のときは半分半分でやってくれました。だけど、これはぶっ通しでやったら絶対集中力が持たないです。たぶん、ぶっ通しでやると4時間ぐらいかかるんじゃないですかね?

Sidow:はい。けっこうかかりますね。

姫野:私は1回と2回で分けたときですら、すごく疲れたのに。

Sidow:だからけっこう「最後のほうで集中力が持たなくて、適当になっちゃった」みたいなパターンとかもあるので、心理検査を受けるタイミングというのも大事なんですよね。

集中力やIQは精神状態によって大きく左右される

姫野:そうだと思います。私も、一番うつがひどかったときに受けていたので、主治医から「もう1回受けたほうがいい」って言われました。

Sidow:それはやっぱり、そっちに引っ張られちゃうことがけっこうありますからね。うつになっているときって、集中力が落ちるじゃないですか。ぼーっとしているとか、考えられなくなったりとか。

そのせいで点数が落ちちゃうことがあるので、できれば心理検査とかをまとまってやるときというのは、とくに大きな問題がないとき、落ち着いているときのほうがいいかなと思います。

姫野:主治医から、「あなたはこんなにIQが低くないから」と言われて、それぐらい精神面が反映されると言われました。

Sidow:そうですね。そのときの状況に左右されてしまう部分があるので、やっぱり心理検査をやるタイミングというのは、とくに長いものだと慎重に相談してやったほうがいいかなと思います。

姫野:そうですね。では、残り時間があと30分ぐらいなんですよね。先生、もしトイレに行きたければぜんぜんフリーダムに行っていただいていいですよ。見ているみなさんも、フリーダムに。

Sidow:フリーダムな感じのトイレ休憩なんですね(笑)。

姫野:(笑)。私はまだ行きたくないので、大丈夫です。行ったら絶対に、これをしようと思っています。

Sidow:アルコールスプレーですね。

姫野:こういうのにこだわるのも、きっと発達障害の特性だと思うんですよ。今日来るときも、電車で絶対に公共のものに触らないようにして来ました。つり革も握らないで、体幹を鍛えるために大股を開いて(笑)。

Sidow:ただただ、スタンディング。

姫野:スタンディングしていました。怖いんですよ。家に帰ったらすぐドアノブをシュッシュッってしますし、電気のスイッチもシュッシュッってします。

コロナウイルスと潔癖症

Sidow:ちょっと発達障害と直接関連するかはあれですけど、コロナで心配しているのが強迫性障害です。

姫野:「ずっと手を洗い続ける」とかですよね?

Sidow:そうですね。「1つのことが気になってしまってそれが頭から離れず、同じ行動を繰り返しちゃう」みたいなのが強迫性障害です。

姫野:鍵を閉めたかどうかとか……。

Sidow:そうです。典型的なのは、鍵を閉めたか確認するとか、あとは蛇口が閉まっているか何回も確認するとかです。そういうのが強迫性障害で、そのうちの1つに不潔恐怖みたいなのがあるんですよ。

姫野:潔癖症ってことですか? 

Sidow:そうですね。潔癖症も強迫性障害の1つと言われています。それこそ手洗い強迫というものがありまして、例えば自分の手が汚れているんじゃないかとか。

あとは、それこそ今だと、「自分がコロナウイルスにかかってしまわないか」というのが心配になっちゃって、もう何回も何回も手洗いを繰り返してしまったりとか、そういう人が増えるんじゃないかなと心配しています。

姫野:なるほど。なんか私もこの間、「もしかしたらコロナかも」ってすごく不安になりました。喉が痛かったんですよ。でも、よく考えたら前日に母親と長電話をしていたということでした(笑)。

Sidow:そうですね。今の状態だといろいろ過敏になっちゃうじゃないですか。それこそ咳が出たら周りからコロナ扱いされたりとか、なんとなく体調が悪かったり少し熱があったりすると、「あれ? あれ?」とかって不安になっちゃうのはありますよね。

傍目にはわかりづらい学習障害と識字障害

姫野:そうですね。なんかコメントが落ち着いてきましたね。みなさん何か質問がありましたら、お答えします。

Sidow先生、今話をしてみて、私の発達障害の特性って気づかれました? 

Sidow:最初に、学習障害がメインっておっしゃっていたじゃないですか。だからいわゆるコミュニケーションは……。

姫野:コミュニケーション的なものは、あまり問題ないですよね。

Sidow:あとはADHDの特性とかも……。何でしょうね。普通のあれをやってこれをやってという場面を見ていないので、正直、今はそんなに気づくところがないかな。

姫野:だから、普通にしゃべっているとぜんぜん言われないんですよ。「気づかなかった」って言われることが多いんですね。学習障害だと、そんな感じなんじゃないですかね。

噺家の柳家花緑さんはディスレクシア(識字障害)です。この間、本を出されていて、私も取材したんですけれども、あの方も識字障害って言われないとわからないという感じでしたね。でも、テレビとかナレーションの仕事のときは漢字にルビを振ってもらうって言っていました。

僕が手にいれた発達障害という止まり木

Sidow:(識字障害は)漢字がメインの感じなんですかね?

姫野:漢字がメインらしいです。やっぱり識字障害では、「学校の国語の授業のときの朗読で笑われるというのがつらかった。地獄だった」とおっしゃっていましたね。

そうそう。花緑さんの本がこの間、出版されて、花緑さんのが2020年4月10日で、私のが17日だったのかな? 今日(4月27日)ランキングを見たら、隣同士になっていました。私が7位で、花緑さんが8位でした。

紙の本とKindle版の本の売れ行き

Sidow:おー。それは何のランキングですか? 

姫野:AmazonのKindle版の発達心理学ジャンルですね。ランキングで仲良く並んでいました。はい。こちら、重版と関係してくるので、私としては紙の本のほうが売れてほしいです。でもKindle版を買う人が多いみたいです。

それがなんでかと言うと、物流が滞っているというのもあるんですが、「持ち歩けるので困ったときにすぐ開ける」というのがあるらしいんですよ。なので、私としては紙の本が売れてほしいけど、Kindle版はとても便利です。

Sidow:2冊もありかもしれない。

姫野:2冊もありですね。Kindle版と(紙の本とで)。

Sidow:Kindle版はいつでも見られる。

姫野:これ(紙の本)は保管用(笑)。

Sidow:……って、促すっていうね(笑)。

姫野:いいと思います(笑)。そうですね。もう、台本に書いてあることはもうすべて語ってしまいました(笑)。

Sidow:21時半、質問コーナーになっていますね。

姫野:質問コーナーを設けていたんですけど、先ほどリアルタイムで質問を拾っていたので、みなさまお静かになってしまいました(笑)。

Sidow:でも、Q&Aというのがありますね。これはチャットと別にQ&Aコーナーがあるんですね。たぶん始まった後からのQ&Aがリストになっているので、これをちょっと取り上げていきましょうか。

言葉通りに受け取りがちで、冗談や皮肉が通じにくい

姫野:先ほど取り上げたものが2件あるので、その次。

「発達障害だと言葉通りに受け取りがちなので、そういう悪徳に騙されやすいです」。

さっきの悪徳のね。ナンパとか悪徳の心理カウンセラーとかの話ですね。本当にあれはね……。

Sidow:「言葉通りに受け取りがち」というのは、例えば皮肉が通じないとかそういうことですよね。

姫野:そうですね。この本の対談でも書いたんですけど、編集家の竹熊健太郎先生も発達障害なんですけれども、やはり言葉をそのまま受け止めてしまうので、冗談が通じなかったり皮肉が通じなかったりしたそうです。

一時期、京都精華大学の教授をやられていたんですよ。そうしたら、偏見かもしれないんですけど、「京都の人はニコニコしながら嫌味を言う」というのが通じなくって、先生はまともに受け止めてしまって、人間関係がうまくいかなかったということをおっしゃっていましたね。

Sidow:そうか。言葉をそのまま受け取ってしまう。それって、難しいですよね。

姫野:難しいですね。

発達障害のある人は、社交辞令を言わないことが多い

Sidow:「言葉の裏を読む」ということですよね? それって一番、対処が難しそうだなという印象がありますね。

姫野:どうすればいいんだろう。私はそんなに……。ちゃんと言葉の背景がわかるんですけど……。

あれだ。この間、私、Twitterで「姫野さんと飲むのが夢だ」と語ってくださった読者の方がいたので、普通に「じゃあ、飲みましょう!」って誘ったんですよ。その子は「本当なのかな?」って戸惑ってしまったらしいんです。

発達障害の人が言う「飲みましょう」というのは、本当に「飲みましょう」だから、大丈夫だと思って……。

Sidow:逆に言えば、いわゆる「社交辞令」じゃないパターンが多いですよね。

姫野:実際に飲みに行きましたね。

Sidow:おお、すごい。

姫野:そういう発達障害で、いろいろ仕事とかで悩んでいるような方でした。でも、楽しく飲みましたよ。これがたくさん「飲みましょう」って来ると、ちょっと大変なのであんまり……。私にも、選ばせてください(笑)。

Sidow:確かに(笑)。

姫野:あとは基本的に、男性からの誘いはお断りかなと思っています。

ゼロ100思考を持つこと自体が悩みの原因になる

姫野:じゃあ次、ハルさんから。

「ゼロか100かの思考のクセがあるのですが、境界性パーソナリティ障害か発達障害のどちらかかなと思っています。精神科医にはとくに問題がないと言われてしまいました」。

ゼロ100思考はなあ……。

Sidow:ゼロ100思考はどんな人でもなり得るかなとは思いますけれど、発達障害でもやはり、「極端に考えてしまう」というパターンはありますかね。

姫野:そうですね。

Sidow:やっぱり極端に考えてしまうことって、けっこういろいろな思い悩むリスクになってしまいます。なので、やっぱりその(ゼロ100の)間。それこそ「グレーゾーン」を自分で取るというのは大事だと思いますね。

姫野:境界性パーソナリティ障害だとそうですね。先生、これは? 

Sidow:境界性パーソナリティ障害は、発達障害と必ずしも一緒ではないというか、被るところはあっても、ちょっと別の概念ではあるんです。

パーソナリティ障害というのは、基本的には性格、もともとの本人の性格に極端な偏りがあったりというのがあって……。

姫野:見極めが難しそうですよね。

Sidow:難しいですね。やっぱりオーバーラップする部分があります。

姫野:そういう性格の人なのか、障害なのかが(わかりづらい)。

境界性パーソナリティ障害による日常生活の支障

Sidow:一応、境界性パーソナリティ障害とか、「障害」って名前がついているのは「それによってどれだけ日常生活に影響を受けているか」というところがやはり関係してきます。

ただ、やはりパーソナリティ障害というのは性格、パーソナリティです。発達障害で言うと、発達障害は「脳の何かしらの異常」ということになっていますけど、パーソナリティの場合は「極端な性格の偏り」なので、ちょっとそこの概念が違うというか……。

もちろん見極めるのが難しいというのはあるんですけれども、そこの違いというところが鑑別、それぞれを分けるポイントになるかなと思います。

けっこうパーソナリティ障害というのは、成長の影響をすごく受けるんですよね。例えば境界性パーソナリティ障害の方でよくあるのが、過去に虐待を受けていたとか親の愛情をちゃんと受けられなかったとか、それで性格が極端に偏ってしまうということです。

小さい頃にそういう問題がなければ普通に成長できたはずなのに、性格ってやっぱり後天的なものに影響を受けちゃいます。なので、小さいときに何かしらの問題があってパーソナリティに影響が出てきてしまうということも、やっぱりありますね。

姫野:なるほど。パーソナリティ障害の人は、主にどんなことで生活に支障が出るんですか? 人間関係とかですか? 

Sidow:そうですね。境界性パーソナリティ障害だと、けっこう人との距離が取れなかったりとか、物とか人に依存してしまったりとか、見捨てられるとすごく不安になって気持ちが落ち着かなくなっちゃって自傷行為をしてしまったりというところですね。そういうのにつながるので、生きづらさみたいなのがやっぱりありますよね。

姫野:なるほど。