2024.10.10
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姫野桂 × メンタルドクターSidow「精神科医と発達ハックについて考える」 『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)刊行記念(全6記事)
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姫野桂氏(以下、姫野):「姫野さんに出会って自己受容の大切さに気づけたのですが、Sidow先生の自己受容に対する考え方を、おうかがいしたいです」。
メンタルドクターSidow氏(以下、Sidow):はー。自己受容。
姫野:そう。「だめな自分も全部受け容れる」ということが自己受容なんですけど、私はたぶん、それができていないので摂食障害で苦しんでいるんだと思います。
Sidow:姫野さんは、それこそふだんからSNSとかで自己受容のことって発信しているんですか?
姫野:ツイキャスでこの間、話しました。
Sidow:それは例えば、どういう内容?
姫野:ちょうど太った時期だったので、それも摂食障害と絡めて話したんですよ。
だから自己受容については、よく当事者の人たちって「自己肯定感が低いからつらい」と言うんですけど、自己肯定感を高めるためには、まず自己受容をしなきゃいけないと思っています。
まずは自分を受け容れて、そこから次の段階が自己肯定感を高めるということだと思うんですよね。だから、自己受容ができていないのに自己肯定感を高めようとするのは、かなり難しいんじゃないかなと思っています。
Sidow:確かにそうですね。やっぱりけっこう精神科に来る方とか、いろいろ悩んでいる方とかって、今の状態を受け容れられないというか、「自分はこれじゃだめだ」とか、「こんなんじゃ自分に価値がない」って思ってしまったりしています。
自己受容をできていないケースとか、あとは非常に物事をネガティブに捉えてしまったりとか、自分のマイナス面ばかりに目がいってしまう人は多いです。
だから、そういうところも含めて自己受容する。それこそ発達障害だとしても、例えば得意・不得意があると思うんですけど、やっぱり自己受容ができないと不得意なところばかりに目がいってしまうんですよね。
「こんなこともできないなんて、自分はだめだ」と追い込んでしまったりするんです。
Sidow:でも、そういう人でも得意な部分があったり、それを活かせばたぶんもう少し自分の特性をうまく使える部分はあると思うんです。だけど、そこになかなか目がいかなくて、マイナスのところについつい注目してしまったりという方が多いなという印象です。
そういう意味でも、「でこぼこの自分を、すべて含めて受け容れてあげる」みたいなのは大事だなと思いますね。
姫野:私は最近、自分を甘やかすような訓練をしています。原稿を1本書いたら、その日は仕事をしないようにしています。
いろいろなメールの返信とか、そういう仕事はするんですけど、原稿を書くのは1本と決めていますね。すごく原稿が溜まっていなければですが。
私、書くのは速いんですよ。そういう特技があります。速いからといって、そのぶんまた別の原稿をやるとめちゃくちゃ疲れてしまいます。たぶん過集中なんですよ。
そういうのがあるので、今は「1本書いたら終わり」というふうに、「甘やかし」を入れているところですね。
Sidow:そうですね。今、姫野さんがおっしゃっていたように、発達障害の特性がある人って集中力がないというパターンもあれば、逆に1つに集中しすぎちゃって他が見えなくなってしまうというパターンもあります。
そこは発達障害といっても真逆の特性だと思うので、そこはちゃんと自分の特性を理解して、「ここでやりすぎると、たぶん疲れが溜まっちゃうな」とかいうのをわかって、少し抑えてあげたりとか、もしくは逆に集中力がないという人だったら、「今日はこれだけと絞って、これをやろう」と決めたりとか、そういう自分なりのやり方というのを確立させておくというのは大事ですね。
姫野:そうですね。
姫野:「カウンセリングより、当事者同士で話すのもいろいろな特性が理解しやすかったです」。
当事者会もありますね。でも、合う人と合わない人がいると思っています。私は友達にASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の子がいるんですけど、その子は「医者から『当事者会は行かないほうがいい』って言われている」と言っていましたね。その子は、「『カウンセリングも受けないほうがいい』って言われている」と言っていました。
Sidow:まあ、そうですね。合う・合わないはあるでしょうね。当事者同士でいろいろ話をして……。
姫野:情報交換とかもできますしね。
Sidow:情報交換して、例えば「あ、みんなこういうことで迷っているんだ」とか「困っているんだ」って、自分の気持ちが楽になる人もいれば、逆にその人たちと比べてしまって、「自分はもっとだめなんだ」と思ってしまったりという人もいます。そこもやっぱり相性かなと思うんですよね。
姫野:あとは、当事者会でありがちなのが「不幸マウンティング」。「自分はこれだけ辛い。あなたは幸せでいいね」みたいなのはありがちなので、それに「マウンティング禁止」というルールを設けているところは知っていますね。
Sidow:前の著作での、「グレーゾーンの会」みたいな……。
姫野:そうですね。「ぐれ会!(発達障害グレーゾーンの茶話会)」はマウンティング禁止ですね。
Sidow:そうですよね。やっぱり、そういうところに巻き込まれたりする可能性もなくはないと思うので、「合うところ探し」みたいなところは、何においても大事ですよね。
姫野:私は当事者会は必要ないタイプで、仲の良い友達と一緒にいればいいかなという感じですね。新宿2丁目が大好きなので、よくゲイバーに行って、そこでストレス発散をしています。
今は(新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い)夜のお店が閉まっているので、ちょっとストレスが溜まっています。こないだは、4リットルの鏡月を買ってしまいました。
Sidow:業務用のやつですよね? それこそカクヤスとかで買うやつじゃないですか(笑)。
姫野:そうです。カクヤスで買いました(笑)。(チャットの質問を)どこまで読んだっけ?
「発達障害と睡眠障害、とくに昼間の眠気について何かわかることがあれば教えていただけないでしょうか?」。
あー!
Sidow:これはなんか、本にも書いてありましたよね。昼間眠たい……。
姫野:そうですね。ナルコレプシー(注:日中、場所や状況を選ばず起こる睡眠障害。主な症状は強い眠気の発作)の方の例を挙げています。
Sidow:睡眠障害。発達障害イコール睡眠障害が出るというよりは、睡眠障害も発達障害の2次障害の1つと考えたほうがいいかなと思っています。それこそやっぱり、周りに対して感覚過敏だったりすると、どうしても情報過多になってしまって疲れやすかったりします。
あとは、夜でもちょっとした物音とか光とかで目が覚めてしまったりとか、そういうので夜の睡眠がうまく取れなくて、その結果、日中眠くなってしまったりとか、パフォーマンスが落ちたりということもあるかなと思います。
それプラス、先ほどのナルコレプシーで日中にすごく眠くなってしまうとかですね。別のものが合併している可能性もあるので、やっぱり関連はあるなと思います。
姫野:私は入眠障害のほうで、それでお薬を飲んでいるんです。小学生ぐらいからもうずっと眠れなかったんですよね。
Sidow:小学生からですか!?
姫野:夜、なかなか寝つけなかった。高校生になって、それがどんどんひどくなりました。でも、親は「体が疲れていないからじゃないか?」と言うので、10キロ走ったりとかしていたんですけど、それでもだめだった。成人してお酒が飲めるようになったら、もうお酒に逃げてしまいましたね。
Sidow:よくない典型例ですけどね(笑)。
姫野:お酒って、寝つきはよくなるけど、睡眠の質は落ちるんですよね。
Sidow:そうですね。やっぱりそのせいで、熟睡できなかったりします。あと、お酒とお薬の相性は……。
姫野:そうですよね。よくないですよね。
Sidow:よくないと思います。
姫野:本当。でも、主治医にはあんまり特別に言われていないので、まあいいかなと思っています。
Sidow:そうなんですね。ちょっと担当の先生とよく相談の上で、という感じですかね。
姫野:「発達障害を持つ子どもの教育に関わっているものです。姫野さんに『子どもの頃に周囲の大人にこういうふうに接してほしかった』『こういう関わり方がありがたかった』という思いが何かあれば、お聞きしたいです」。
うーん。子どもの頃って、関わる大人が極端に少ないんですよね。親と学校の先生しかいない。なんか、「もっといろんな大人と関わりたかったな」と私は思います。
ピアノを習っていたんですけど、ピアノの先生と相性がよかったんですよ。でも、私の親が過干渉で、レッスン中もずっとそばにいたんです。なので、本当は先生と二人っきりになりたかったなという思いはありますね。
Sidow:発達障害のお子さんのことで言うのであれば、やっぱり親との関係ですね。そこがたぶん一番大きいなと思います。
姫野さんがおっしゃったように、やっぱりほとんどの子どもが、知っている大人ってだいたい親とか先生ぐらいだと思います。なので、親がいかに本人の特性を理解して、それに合わせて環境の調整をしてあげられるかみたいなところが大事かなと思うんですよね。
姫野:そうですね。
Sidow:やっぱりそれこそ、そういうところがあまりわかっていない親御さんだと、例えば、「できないんだったらひたすら努力しろ」とか余計にストレスをかけて、それをなんとかさせたりします。
そうすると、発達障害ってある意味、そこができないのが特性で、例えば努力してとか、時間をかけてとか、無理な部分は無理なんです。なので、それに時間をかけることによって余計に本人にストレスがかかってしまうということがあります。
できれば「苦手なところを潰す」ということよりも、「得意なところを見つけて伸ばす」というのを、やっぱり小さい頃からできたらいいなとは思いますけどね。
姫野:これは感謝しているんですけど、確かに私も、親から作文の能力は伸ばしてもらえたと思っています。数学・算数はぜんぜんだめだったけど、作文で賞を取ってそれで褒められたりしたし、それはよかったなと思っています。
姫野:(次の質問を読み上げて)「『コロナうつ』になりかけています。私は変化にかなり弱いASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー)タイプです。急に通勤時間の変更や在宅を命じられたり、行きつけの店が閉まったりで、その変化についていけないです。胃腸はもうやられていますし、ストレスを感じています。よいハック術はありますか?」。
これはASDで決まったルーティンを好む方って、今は絶対に、かなりパニックになっているんじゃないでしょうか?
Sidow:そうですね。もう今の状況って日本中がかなりイレギュラーというか、普通じゃない状況じゃないですか。
たぶん、何かしらに困っているとか悩んでいる人が、大多数だと思うんですよね。だから難しいですよね。けっこう患者さんでも不安が強まったりとか、心配事が増えてしまったりしている人は増えていますけれども、根本的な解決をしてあげられないのが自分としても歯がゆいというか……。
姫野:確かに。ウイルスのせいですからね。
Sidow:そうなんですよね。環境依存的といいますか、今の環境のせいでそうなっているのがあるので、さっさと収束しろと思っていますね。
姫野:そういえばこの間、主治医に言われたんですよ。私はこれをTwitterでツイートしたらちょいバズしたので、知っている方は知っているかもしれないんですけど。
Sidow:俺もリツイートしました。
姫野:あ、そうだったんですね。ありがとうございます。私もやっぱり、毎日コロナのニュースを見ていたんですよ。そうしたら、どんどん不安になってきて……。
うちの地域って、1日3回も「3密を避けましょう」みたいな放送が流れるんですよ。それを聞いてもなんだかぞわぞわしてしまって、「どうしましょう?」って先生に言ったら、「映像のニュースは刺激が強すぎるから、インターネットのニュースで、文字だけにしなさい」ということを言われました。
東日本大震災のときに、被害を受けていない西日本の人がPTSDになったというのは、映像のニュースのせいだと言われているらしいです。
なので「コロナうつ」を心配している方は、できるだけ映像のニュースは見ないようにして、情報を遮断したほうがいいのかなと思います。
Sidow:そうですね。やっぱりそれは大事だと思います。
姫野:でも、私はついつい見ちゃうんですけどね。
Sidow:(姫野さんの)本に関係するところだと、何かストレスを感じる状況をあえて遮断する、例えば「嫌な人がいたら距離を置く」とか、「飲み会とかに最初から参加しない、断る」とか、そういうライフハックがけっこう載っていたと思うんです。
「あらかじめリスクを避ける」というやり方は、もちろん発達障害に関わらず人生を生きる上で、自分のストレスを溜めないシンプルな方法かなと思いますね。
姫野:なるほど。ある程度、嫌なものから目を背けるということですね。
Sidow:そうですね。やっぱり自分が見て嫌なものとか、付き合って嫌な人とかは、物理的な距離を置く。最初から会わないようにしておくとか、それこそSNSとかもそうだと思うんです。
姫野:SNS。そうなんですよね。私はちょっと、ネトウヨ(注:インターネット上で右翼的な言動を展開する人々を指す「ネット右翼」の省略形)系の人を仕事の関係でフォローをしていたんです。だけど、もうネトウヨ情報が流れてくるのが嫌で仕方なくて、こっそりフォローを外しちゃいました。
Sidow:そうですね。SNSとかだと、心無い発言だとか誹謗中傷をする人とかはもちろんいるので、速攻でミュートするとかブロックする。「これはちょっと自分に合わないな」と思ったら積極的に距離を置くというのは、やったほうがいいかなと思います。
姫野:今、「オンライン飲み会」も流行っているじゃないですか。あれってけっこう危険な気がしています。私、こないだ潰れちゃったんですよ。
Sidow:オンライン飲み会で潰れたんですか?
姫野:Zoomですね。1軒目は、錦山まるさんという漫画家さんのツイキャス飲み会に参加していました。まるさんは筋トレが得意なので、簡単に取り入れられる筋トレをしながら説明してくれるんですよ。それをしながら飲んでいたら、お酒が回ってしまって(笑)。
それで、2軒目は物書き仲間のZoom飲み会に行ったんですけど、そのときはもうろれつが回ってなくて……。
Sidow:なんですか? Zoom飲み会って2次会みたいなのがあるんですか?
姫野:その日、(予定が)かぶっていたんですよ。「○時からはZoom飲み会だ」って思っていましたが、もうろれつが回ってないし、グラグラしているし……。
Sidow:「こいつ、飲んできたな」みたいなのが、みんなわかりますよね。
姫野:「もう退出します」と言って、たぶん5分もいなかったと思います。
Sidow: Zoom飲み会で潰れた人は見たことないんですけどね。
姫野:でも、「家に帰らなくていい」という安心感からか、けっこういるっぽいですよ?
Sidow:心理的なものもあると思いますけど、確かに家で飲むほうが酔いやすいですよね。
姫野:それで今、お酒が売れているというニュースが……。
Sidow:それは、精神科医として非常に危惧しているところです。自分の動画でも話したんですけど、アルコール依存症が増えるのではないかなと思っています。
姫野:だってリモートで家にいると、飲んでいても別にばれないし(笑)。
Sidow:そうですね。見た目に出ない人とかは、変な話、別に顔でわからなければ普通にお酒飲みながら会議もできるし、朝起きてからすぐ仕事に行かなくてよければ、ついつい飲んじゃうという人もいるでしょう。
これはちょっと、この状況が長く続くと、本当に精神科医が忙しくなるかなと思うので、そこは注意したいですね。
姫野:アルコール依存症も含めて、いろんな不調を訴える患者さんって、増えていますか?
Sidow:そうですね。増えてはいます。たぶん増えているといっても、やっぱり自粛しているから、実際に受診につながっている人は増えていないんですよ。だからもともと通っている人で「調子を崩しました」みたいな人はけっこうわかるし、ピックアップできるんです。
でも、この期間に「調子を崩しました」という人が、じゃあ初めましてで精神科に行くかというと、やはり外出しないほうがいいだろうということで、たぶんあまり積極的に行こうとはならないと思います。
そう考えると、トータルで増えてはいるけれど、それをキャッチできていないんじゃないかなと思いますね。
姫野:なるほど。じゃあ緊急事態宣言が解除されたら、一気になだれ込んでいきそうじゃないですか?
Sidow:まあ変な話、その可能性はぜんぜんあると思います。ちょっと戦々恐々としているんです。この一連の騒動が終わった後、身体的な問題よりも精神的・メンタル的な問題で病院のニーズが高まりそうだなというのは、ちょっと考えていますね。
姫野:私もふだんなら仕事がすべて終わって夜に寝酒しかしていなかったのに、コロナウイルスのせいで飲む時間が早くなってしまったというのが今の悩みですね。
Sidow:そうですね(笑)。それはちょっと、4リットルの鏡月とかを買っていたら……。だって、あったら飲んじゃいますもん。
姫野:でもまだ1.8リットルのが残っているので、まだそれ(4リットル)には手をつけていないんですよ。
Sidow:えっ!? 合計5.8リットルあるということですか?
姫野:そうですね。今、うちにあります。
Sidow:それはいいと言えるかは、ちょっとわからないですけど(笑)。
姫野:本当はビールが好きなんですけど、摂食障害で減量中で、ビールは糖質があるので……。焼酎・蒸留酒なら、ダイエット中でも大丈夫って言われているじゃないですか。だから焼酎にしたんですけど、コスパがとてもよかった。
Sidow:やばいですね。コスパにいくとちょっと、一番危ない気がします。
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